2010年02月19日

日本サッカーが世界に羽ばたくために・・・その2 『長所をそのまま評価できない日本人』

 「ファーディナンドを見てみろ。アイツが出来るのはボールを弾くだけ。でもそれで世界のトップだ」
 「ファーディナンドの)足りない部分を補える選手をつければ、物すごいセンターデュオができる。」

 これは昨年12月に発行されたサッカー批評の中で、オランダのフィテッセで監督をしていたアデモス氏の言葉です。
長所と長所の掛け算。
非常にシンプルな考え方であり、当たり前といっては当たり前の言葉なのですが・・・日本において、こうした考え方や意見を聞く機会がほとんどありませんでした。

 中沢選手と闘莉王選手のセンターバック二人であったり、その控えが岩政選手であったり。
果たしてこのメンバーがお互いの長所を掛け合わせ、足りない部分を補い合えるユニットであるのでしょうか?
そして多くの方の意見を目にしていても、現状の代表のセンターバックの並びとほぼ大差ないものが多い印象です。
両選手の組み合わせがどうだ、という意見よりは、中沢選手と闘莉王選手のどちらかが欠けたときの備えをどうするんだ?という意見が主ですよね。

 と、偉そうに言う私自身も多くの方と同じような考えでした。
どこか「選手と選手の掛け算」というのをわかっていたようでわかっていなかった。
日本において、まだまだこの「掛け算」という意識は低いのではないかと思います。


 何故、当たり前のことが日本ではできていないのか・・・。
文化的なものや民族的なものもあるでしょうが、UEFA A級ライセンスをもっているという林雅人さんの言葉が日本サッカー界全体のレベルを言い表しているように感じました。

 林雅人さんの言葉によれば、
「何かに特化した選手は、指導者としては使い方が難しい」
指導者全体の質の問題というのが一つ。
これは指導者だけの問題ではありませんが、選手をよく見ている指導者自体が、選手の長所を評価しきれない、もしくは、使い方がわからないという問題があるのでしょうね。

「短所は見えやすい。でも長所を見つける方は奥が深い」
この言葉も、選手を見る目の難しさをあらわしていると思います。

また、痛烈な言葉として、
「選手に自分の知識を押し付ける。それをオランダでは、指導者の初歩的なミスだと言います。引き出しが少ないと、枠にはめずに育てるのが難しい。間違った選択をした選手に、間違いだと指摘するのではなく、どうしてそれが間違いだったのか、と我慢強く問いかけるような指導ができない。選手が『ダメだからこうしろ!』と言われ、その通りに成功しても、それは『よくやった』ではなく『よく聞いた』なんですよ」と言われた部分は、サッカー界全体の指導者・・・いや、日本の教育すべて含めて耳が痛いものがあります。


 「日本人はサッカーに向いているか?」
というテーマで書かれたこの、サッカー批評という本。
発売当時読んで・・・また今読んでも、多くのことを感じさせてくれます。
短所にばかり目がいきがちなサッカーファンが多い日本人ですが、長所について深く理解し、生かすためにどうするか?と考える必要があるのだと、東アジア選手権を見ていても思いました。

 例えば、岡崎選手に対する評価。
評価の際によく、「世界で通用しない」という言葉が書いてあります。
理由としては、足が遅い、フィジカルが弱い、といった身体的理由により、彼の持ち味である危険なスペースへの侵入を高いレベルではさせてもらえないというものです。

 これは理に適っていると思います。
確かに岡崎選手がどんなに頑張っても、今の日本代表がブラジルやスペインから得点を取れるとは思えない。
危険なスペース自体を消されて岡崎選手は仕事を一切させてもらえないでしょう。

 でもこの適っているはずの理には落とし穴があるのではないでしょうか?
例えば、今の日本代表にC・ロナウド選手がいたとしましょう。
今の代表がC・ロナウド選手にドリブルを仕掛けて独力でシュートを打てるだけのスペースや時間をつくってあげることが出来るか?
私はNOに近いと思います。
ということはつまり、C・ロナウド選手が日本にいたとしても、仕事をさせてもらえない可能性が高いということです。
(ただこの理屈の落とし穴は、もしC・ロナウド選手がいたら、岡田監督は今の戦術すべてを投げ打って、一人の選手のためのやり方にしてしまう可能性があるということです。世界的なスーパースターがいれば、監督の思考も変化するかもしれません)

 もっと岡崎選手の長所を引き出して補える選手とユニットを組ませれば、生きてくるのではないでしょうか?
それは例えば、キープと人を使うプレーが得意な平山選手であったり、もしかしたら速いボールに点で合わせられニアに飛び込むことが得意な佐藤寿人選手であったりするかもしれません。
ペナルティエリアの角からドリブル突破を仕掛けまくるキレキレ状態の玉田選手との2トップであれば、彼のドリブルで引き付けられて生まれたスペースを突けるかもしれません。
(そのためには、ドリブル突破を玉田選手の最大最高の仕事としてあげなければいけないため、他の部分で組み合わせが生まれてきますが)

 もっと選手の長所を深く見れば、考え方や視野が広がるのだと思いました。
サッカー批評の中において、foot!!でもおなじみの鈴木良平さんが、小野選手と中村俊輔選手の長所について面白い見方をしていました。

 小野選手については、
「ひょっとしたらFWが向いていたんじゃないかと思う。もちろん素晴らしいパスは出すけれども、それだけでトップ下と決めてしまうのはどうだったか。相手のゴール前、ペナルティエリアの中で、あの技術を発揮されたほうが相手は嫌だったのではないか」

 中村俊輔選手については、去年の12月時点で
「エスパニョールでレギュラーポジションをとれないのではないか」とおっしゃっており、その理由を、
「タッチライン際で芸術的なテクニックを使って突破する。それが中村本来のプレーだと思うのですが、ボールを失うリスクを避けて簡単にさばいたり、無理をしなくなっている。ミスをしないサッカーに傾いている気がします。本来は、相手がどうやって抜かれたのかわからないぐらいの技術をもっているのに、リスクを負ってそれを駆使するプレーをやらなくなった。チームがそれを期待していたのなら、レギュラーでは起用されなくなってしまう」
スピードの欠如ですとか言語の問題ですとか言われてますが、私も中村俊輔選手の失敗はリスクを冒さないことだと思い、ずっとそれを言い続けてきました。
たぶんこの状況のままでは、Jリーグでもスタメンから控えへと落ちていくでしょう。
横浜・F・マリノスに移籍したとして、ボール回しならスピードもある狩野選手、突破が魅力の山瀬選手と前にいい選手が二人もいて、決定的な仕事をしないならばいずれ最後の仕事ができる二人に負けて起用されなくなる。
ボランチは・・・松田選手や河合選手の守備力を差し引いてまで起用されるとは思えない。
となると・・・リスクを冒せないならば控えですかね?
決定的な仕掛けやパスを強引にでも出すようになれば、スタメンは確実な実力はありますが。

 ここでもしかしたら、
「さっきまで選手の長所の掛け算だと言ってたじゃないか!何故、中村俊輔だけユニットでなく単独の評価をするのか!足りない部分を補い合える選手と並べたら、彼は素晴らしいプレーをする!!」
とおっしゃる方がいるかもしれません。
ですが、長所の掛け合わせが大きな力を生むのであって、長所を出そうとしない選手は0であり、いくら掛けても0にしかならないということです。
・・・そしてこのことは、今の日本代表にも言えることだと思いますが・・・。


 と、随分と長いエントリーになってしまいました。
語りたいことはまだまだあるのですが・・・次のエントリー内容と多少絡んでくるので、そちらに回したいと思います。

 最後に、ここまでの内容だと、単なるサッカー批評の回し者になってしまうので、私なりに考えるユニットを書いて終わります。

 FWは、上記に書いた理由で、平山選手と岡崎選手の2トップ。
ただし、SBにクロスが得意な選手と配置して速い段階でのサイド攻撃をするならば、点で合わせることが最も得意な前田遼一選手とワンタッチゴーラー佐藤寿人選手の2トップがFW,SBのユニットとして面白いかと。
その場合のSBは、駒野選手や阿部翔選手ですかね。

 センターバックには、カバーと危険察知、そしてスピードと組み立てにも参加可能な伊野波選手を是非。
前に行って奪える闘莉王選手とカバーの伊野波選手を組ませるとビルドアップの面から見ても面白いかも。


 みなさんも長所と長所の組み合わせとして、面白いんじゃないかと思えるユニットをコメントで残していっていただけるとうれしいです。

posted by ittyo1 |17:29 | 日本代表 | コメント(5) | トラックバック(0)
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日本サッカーが世界に羽ばたくために・・・その2 『長所をそのまま評価できない日本人』

コメント投稿者ID : NID00001761

長所と長所の掛け合わせの考え方自体はいいと思うんですが、「それがいついかなるときも当てはまるという前提」がおかしいと思います

長所と長所の掛け合わせでいいのは攻撃型の選手に関して、の注釈がいると思ってます

なぜなら攻撃に関しては攻撃する側がどうせめるか、早い選手にスルーパスでいくのか、高い選手に合わせるのかといった選択肢を自分で選ぶことができるから

だから自分たちのやりたいように長所長所の組み合わせでいいんです


でも防御は違うでしょ
相手の攻撃にあわせた防御が必要ですよね?
防御ってものはいつでも相手主導なんですよ

で、ここで考えなきゃならんのは外国勢の長所はなんですか?
ってこと
・・やっぱり高さと強さでしょ?
速さじゃないですよね
これはどの攻撃型の日本人もいってること
クイックネスやアジリティなら勝てるってね

だからことセンターDFに関しては高さと強さを両方とも持ってる選手を並べるのが一番いいんじゃないですかね

posted by タイガース | 2010-02-19 23:55

日本サッカーが世界に羽ばたくために・・・その2 『長所をそのまま評価できない日本人』

コメント投稿者ID : pyon32

初めまして、スポナビでブログ「天の声・点の声」をやっている天野声雄です。

共感する部分があってお邪魔しました。

監督には、自分の描いたグランドデザインを実現するために、消去法で選手を選ぶタイプと積極法で選手を選ぶタイプに大別できると私は思っています。

岡田監督は消去法で選手を選ぶタイプだと私は思っています。
消去法で選手を選ぶタイプの監督は、自分のサッカーを行う上で、選手の長所よりも欠点の少ない(穴の少ない、ムラがなく安定感のある)選手を選ぶ傾向にあり、リスクを負った戦術や個の力よりも組織の連動を優先する傾向にあると思っています。

他方、積極法で選ぶタイプの監督は、選手の欠点よりは長所を優先しているため、組織的な連動の中にも個の力を活かす戦略を執り、ある程度のリスクを負いながらも長所を活用する戦術を執る傾向にあると思っています。

最初から東京タワーというジグソーパズルを埋めるための規格に合致するピースを選ぶのが岡田さん。

時には東京タワーにもエッフェル塔にもなるピースを選ぶのがフアーガソン

それくらいこの両タイプは違うと思っています。

posted by 天の声・点の声 | 2010-02-20 00:19

日本サッカーが世界に羽ばたくために・・・その2 『長所をそのまま評価できない日本人』

コメント投稿者ID : NID00001775

長所と長所の掛け算。当たり前のようで見落とされている大事な考え方だと感じます。
例えば鹿島の岩政と伊野波なんてまさにこういうコンビではないでしょうか。岩政はヘディングが強くポジショニングが正確ですが、足が遅く地上戦が苦手で相手に合わせる守備が上手くないと感じます。他方、伊野波は足が速くカバーリングや頭を使う守備に長けるものの競り合いやヘディングでたびたび負け、強さのあるCBの居ないFC東京では控えかボランチの選手でしたね。岡崎も玉田も、自分にない高さと強さのあるFW(ヨンセン、ケネディ)と組むことで真価を発揮していますね。
しかし、中村俊輔のくだりは納得できません。遠藤を例に出しますが、リスクを冒さないプレースタイルはリスクを低減する布陣でチャレンジしやすい環境を作ってやれば良いのではないでしょうか。ガンバで言えば、例えば別種の才能を持った二川を用意してマークを軽減、さらに橋本明神にカバーさせて奪われたときのリスクを軽減しています。「長所を出そうとしない選手」には「長所を出させるような戦術選択」をすれば十分使えると思います。意識面あるいは戦術理解面の短所を持っている選手は世界的にも決して少なくありません。そういう選手でもスペシャルなものをもっているなら、使いこなせるように考えるのは監督の責務だと思います。前提としてそういう特別扱いをするほどスペシャルな才能を俊輔が持っているのかという議論がありますが・・。
岡田監督は「技術のある選手」というのを最低限の選考基準としています。でもこれは長所の取捨選別であり、別の長所を持った選手をスポイルする結果になっていると感じます。同じショートパスサッカーを志向するガンバや大木監督時代の甲府に(言い方は悪いがへたくそな)バレーがフィットしたように、他の選手にない長所を持った選手を考えた方が結果として良いサッカーが出来ると思っています。初カキコ&長文失礼しました。

posted by ひい | 2010-02-20 02:13

日本サッカーが世界に羽ばたくために・・・その2 『長所をそのまま評価できない日本人』

コメント投稿者ID : NID00001786

はじめまして、先日の日韓戦を見て、私もにたようなことを考えておりましたのでコメントさせていただきます。

特にCBユニットについては、選手交代で、岩政を入れた時に強く違和感を感じました。中澤と岩政では、ボールが捌けないので阿部の方がよいのではと・・・。日本のようなパスサッカーを志向していれば、ある程度パスの捌けるCBが必要なはずで、後半はゴールがほしい展開にも関わらず、CBでボールが、とまってしまうことが多かったように思いました。

またFWについては、おっしゃるとおりで玉田と岡崎のコンビでは長所を生かしきれておらず、試合後の岡崎のやるせない表情が、全てを物語っていたように思います。


日本はどうしても、個で勝つは難しいので、このユニットや組み合わせの長所×長所の考え方が大切にしていきたいですね。

posted by tossii | 2010-02-20 07:01

日本サッカーが世界に羽ばたくために・・・その2 『長所をそのまま評価できない日本人』

コメント投稿者ID : ittyo1

 みなさんコメントありがとうございます。

>タイガースさん
 守備に関して、おっしゃりたいことはわかります。
ある一定の総合力というのはどうしても必要になってくるでしょうね。
ただ、実際に監督をしている方の意見として、タイプの違う二人による組み合わせというのも非常に面白いと思います。
非常に扱いは難しいでしょうが。


> 天の声・点の声さん
 日本の場合、岡田監督だけでなく選手にも問題があるかなと思ってます。
そもそも選手が長所を出しているのか、疑問です。
ファーガソン監督が日本代表の監督をしていたとしても・・・どうだったんでしょうかね?


>ひいさん
 中村俊輔選手についてですが、現在の日本代表で、そういった「リスクを軽減するスタイル」をとっているにも関わらず、チャレンジをしない。
私はそういう風に感じています。
才能に関しては、本当に素晴らしいと感じています。
今回のエントリーの原さんの言葉、ここに私の想いがぎゅっと詰まっています・・・。


>tossiiさん
 確かに私も阿部選手か今野選手の方が良いのでは?とは思いました。
個と個の掛け算というのは、「言うは易し行うは難し」だと思います。
だからこそ、多くの考えが必要。
なので多くの方があちらこちらでこういった議論をできるようになっていくことが、日本サッカー界のレベルアップには大切かな~と考えたりしています。

posted by 管理人 | 2010-02-22 22:40

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