2008年04月27日

パナソニックの勝因は?

皆様、こんにちは。
どんなGWをお過ごしでしょうか。

さて、ブログを始める上で、ひとつのルールを自分で決めました。

ブログを開設している他のライターさんもおそらく心がけていることだと思いますが、
ブログで書くネタと、記事として媒体に書くネタを差別化することです。
一応、「雑感」というタイトルをつけ、主観で物事を記そうとしていますが、
やはり、どうしてもバレーの話になると、
本業である執筆とかぶる部分が出てきてしまいます。

基本的には媒体で「書ききれなかったネタ」や「必要とされなかったネタ」、
「媒体の売り上げには支障をきたさないくらい昔に書いたネタ」などは
ブログでも記していますが、たとえば、これから書くであろうテーマについては、
使うか使わないかは別として、使うことを前提として執筆が終わるまで、
全ネタをストックしておくのが記者の務めだと考えています。

それが取材のために必要な申請、手配などの手間をかけてくださった出版社や、
「わたしの記事」という商品に対価を支払ってくださる方々への当然の礼儀だと思うからです。

ということで、日によってはテーマに深く言及できていなかったり、
せっかく質問をいただいても返事が曖昧だったりするのは、
そういった「自分で決めたルール」のせいもありました。
ご了解ください。

本題です。
今日は、今さらですがVプレミアリーグのファイナルを振り返りたいと思います。
ある媒体でファイナルに少し関連した記事を書く予定があったため、
上記の理由により、試合直後はなかなか突っ込んだことを書けませんでした。
そちらの執筆も無事終わりましたので、重ならない部分を
黒鷲旗が始まる前に記しておきたいと思います。

以前、このブログではパナソニックの勝因は山本隆弘選手とフォンテレス選手が
安定した力を発揮したからだと書きましたが、ファイナル終了後、
山本選手にお話を聞いたところによると、
彼ら2人を含めた選手たちの意思の確かさも関係していたように感じました。

まず印象的だったのは山本選手が試合後の記者会見で言った一言でした。
「サイドアウトはフォンテレスが、ブレイクは僕が決めるという
チームのパターンが確立していたので、余裕を持って試合に臨めました」

ご存じのかたも多いと思いますが、サイドアウトというのは
相手にサーブ権がある状況を指します。
レセプションが崩されずにセッターへと返れば、
クイックを始めとするどんな攻撃でも使用可能ですから、
こちらにとっては有利な状況といえるでしょう。

逆にブレイクはこちらにサーブ権がある状況ですので、
相手チームが有利と言えます。
相手の攻撃を防御した際に生まれる「攻撃機会」ですから、
チャンスボールが返ってくるのはごく稀で、
それほど状態のいいトスばかりが上がるとは限りません。

有利な状況でトスを上げられる可能性が高いサイドアウトでは、
速いトスが得意なフォンテレス選手を。
不利な状況の可能性が高いブレイクでは、
2段トスを得意とする山本選手を。
それぞれの選手の特徴を加味し、長所を生かした戦い方だったと感じました。

長所を生かすと口で言うのは簡単ですが、それを戦略に盛り込むためには、
徹底した自己分析が必要となります。

近年、ほぼすべてのチームが使用しているデータ解析ソフトでは、
それぞれの選手の、トスの種類別のスパイク決定率、効果率まで出すことができます。
その選手の得意、不得意なプレーが数字によって丸裸になります。

では、その結果をどう試合運びに生かすか。
短所を隠し、長所を浮かび上がらせるような戦略を、
首脳陣やアナリストなどチーム一丸となって考えることが重要になります。
実際、フォンテレス選手は試合を見る限り、2段トスを打つことが苦手なようで
その決定力は低かったように感じます。
しかし、そんな「弱点」が目立たないくらい、「長所」が際立っていました。
偶然、際立ったのではなく、「際立たせるような戦略をパナソニックが生み出したのだ」と
わたしは感じています。


数日後には黒鷲旗が開幕します。
各チームとも全日本選手は不参加ですので、主力不在のチーム編成となります。
各チームの戦略がどれくらい主力選手以外にまで浸透しているか、
確認できるチャンスですね。

posted by 市川忍 |18:52 | コメント(5) | トラックバック(0)
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2008年04月20日

カレッジフェスティバル

宣言通り、昨日は久しぶりに大学バレーを見に行きました。
インカレ以外でこうして大学バレーを見るのは2年ぶりくらいでしょうか。

パっと見たところ、全体的に選手が小粒になったなぁという印象です。
背の高さに目を引かれてパンフレットでプロフィールを確認すると、
それほど高身長ではない、180㎝台後半。
190㎝台の選手が本当に少なくなったのだなと痛感しました。
バレーボールの将来にとっては、危機的状況です。

そんな中、心惹かれたのは順天堂大の16番の選手。
小柄ですが機敏で、守備でも攻撃でも、相手のプレーの先を読んで動いていました。
それと、日本体大の2人のミドルブロッカーは、まだまだ伸びしろのある選手だと思います。

ただ、残念ながら「成長を見逃すわけにはいかない」と感じて、
毎試合、足を運びたくなるほど吸引力のある選手は見つけられませんでした。

わたしが最も大学バレーに通っていたのは
北島武選手が筑波大に在籍していた4年間でした。
上級生には篠田歩選手、朝長孝介選手、山村宏太選手、柴田恭平選手らがいて、
同級生は勝野裕士選手、下級生には石島雄介選手がいました。

リーグ戦はもちろん、大学まで練習も見に行きました。
いったい、どういう練習をして試合に臨むと、
これほど見ている人の心を動かすプレーができるのか。
その裏側を覗いてみたくなるくらい、心身ともに強い選手が揃う、強いチームでした。

NECの金子隆行選手のいたころの東海大も同様です。

金子選手が2年生の春リーグでしたか。
試合の直後、がっくりと肩を落としている東海大の選手たちに遭遇しました。

金子選手はうずくまって、床を叩いて涙を流していました。

勝った試合なのに?
4年最後のインカレではなく、まだ2年生なのに?
しかも春のリーグ戦の初戦なのに?

あとで聞いたところによると、「試合内容に納得ができなかったから」だそうです。
この選手はいったい、どれほどひとつの試合、
ひとつのプレーに執着しているのだろうとビックリしました。

サポーターの皆様が何かのきっかけで特定の選手のファンになるように、
わたしの仕事にも「この選手を見続けて行きたい」と思う瞬間が存在します。

そもそも「主観を排除しない文章を書き慣れたい」と、このブログを始めたわたしですが、
どの選手を取材したいとか、この選手の記事を書きたいと感じている時点で、
わたしの文章には今までも、多かれ少なかれ主観が含まれていたのかもしれません。

取材対象との大切な出会いに、これからも敏感でいたいと思います。

posted by 市川忍 |10:37 | コメント(2) | トラックバック(1)
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2008年04月19日

取材こぼれ話 《きっかけ》

先日、野球の記者をしている友人と、こんな話題で意見が一致しました。
「一度、話を聞いてみたいと思いつつ、
なかなかそのタイミングがつかめない選手っているよね」

実際、なんと声をかければいいのか迷っている間に、
あっという間に何年か経ってしまっていたというケースが多々あります。
(これは記者としてはあまりお勧めできない例なのですが)

わたしやその友人のようなフリーランスの記者は、
特定の媒体で記事を書くことがまだ決まっていない場合、
球場や試合会場で「ちょっといいですか?」と怪しげ(?)に選手を呼びとめ、
「ぶら下がり」と呼ばれる立ち話、もしくは歩きながらでの取材を
お願いすることが多くなります。

顔見知りならまだしも、初めて口を利く選手に、
まだ記事にできるかどうかもわからない状態で声をかけるのは、
仕事とはいえ、なかなか勇気のいる行為です。
「これを絶対に聞きたいんだ」という覚悟がないと、きっかけがつかめません。

しかし、友人とそんな話をしていた直後、幸い、長い時間、
タイミングを逃してきた選手にご挨拶するチャンスが訪れました。

以前、セッターの力量についての記事の中で、
「まだじっくりお話をしたことはないが、その配球から意図を感じる」と書いた
パナソニックの岩田正之選手です。

全日本合宿の、練習後のほんのちょっとの時間だったのですが、
Bカットからのトスについての見解などをうかがいました。

今シーズンのパナソニックは、レセプションがAカットで返らなくても、
サイドやパイプの決定力が高いという印象が強かったのですが
岩田選手のお話を聞いて、その理由がわかりました。
チーム単位で「Bカットでのサイドアウト率をどう上げていくか」という
課題に取り組んできたそうです。
練習の成果がこうしてはっきりと試合に表れるのは、
練習効率がよく、選手の理解度も深い証拠です。
パナソニック優勝の理由が少し解明できた気がします。

そもそも北島武選手や柴田恭平選手、阿部裕太選手らが選ばれていた
ジュニアの世界選手権当時から、何度か選抜合宿の取材にはうかがっていたし、
もちろん大学でもVリーグでも、岩田選手のプレーを見るチャンスはたくさんありました。

ジュニア時代の岩田選手の印象は、とにかくアタッカーからの評価が高いセッター。
誰に聞いても「岩田のトスは打ちやすい」という言葉が返ってきたのを覚えています。
これほど一貫して評価が高いセッターは珍しく、
その動向がずっと気になっていました。
気になっていたものの、話をするチャンスがなく現在に至っていたのです。

今回、シニア代表には初選出ということで、今後の合宿でも注目してみたいと思います。

関東は雨が上がりました。
今日は久しぶりに大学バレーを見に行こうと思います。

皆様もよい週末を。

posted by 市川忍 |09:09 | コメント(4) | トラックバック(0)
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2008年04月14日

全日本登録選手について思うこと

皆様、こんにちは。

ここのところ、前記事に書いた「マネー・ボール」の内容を思い出したり、
野球の日本代表のケースはどうだったかと振り返ったりして、
「選手を選ぶということ」について、いろいろと考えていました。

100人が100人、満足する選手選考というのはあり得ないのかもしれません。
それだけ、人の意見は多種多様です。

先日、22名の「今年度の全日本登録選手」が発表されましたが、それについても、
様々なご意見があるのではないかと推測できます。

わたし自身も感じることがあったのですが、まだ考えがまとまりませんので、
今の率直な気持ちを記しておきたいと思います。

まず、ご存じのかたは多いと思いますが、今回の22名は
OQTのあとに行われるワールドリーグの登録を視野に入れた人数です。
この顔ぶれについては、Vリーグの監督陣や強化委員からなる
テクニカル委員会で承認を得なければ決めることができないので、
多くの賛同を得た人選だと判断していいでしょう。

そして、この22名の中から最終的に、OQTのベンチ入りメンバー12名を決定するのですが、
OQTの登録メンバーは、ワールドカップ時から3名までしか変更することができません。

22名の人選についてはひとまず置いておいて、
わたしは、この「変更可能な3名の枠」は、
使わなくて済むならば、使わないに越したことはないと考えています。
それは、ここ2大会、全日本男子が五輪予選で出場権を逃す姿を、
目の前で見てきた上でたどり着いた意見です。

選手を入れ替えれば当然、セッターとアタッカーのコンビネーションなど、
組織力の再構築が必要になります。

もちろん、代表に呼ばれ、いきなり組織として動けるくらい個々の能力が高ければ、
世界ランク上位国のように代表合宿期間が短くても問題はないのでしょうが、
近年の代表の試合を見る限り、現状で、
日本の選手にそれを求めるのは難しいと感じています。

組織力を高めるためには、ある程度の時間を要します。
そのためにアテネ五輪出場を逃してから今までの
準備期間があったのだと、わたしは思っています。

OQTの開幕までの練習時間は限られています。

22名の中から何人が合宿に参加するのかは知りませんが、
その「貴重な時間」をなんのために使うのか。
新しく代表に入った選手とのコンビネーション練習に使うのか。
それとも、ワールドカップで露呈した課題の修正、
チーム力のより一層の向上のために使うのか。

後者のほうが重要な気が、わたしはしています。

以前、このブログでも優先順位の話を書きましたが、
こういう時期こそチームのプランニングの手腕が試されるのではないかと考えています。

ぜひ注目したいと思います。

posted by 市川忍 |01:00 | コメント(9) | トラックバック(0)
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2008年04月10日

男子バレー雑感 《貢献度》

今年度の全日本登録選手が発表されました。
ワールドリーグも見据えたメンバー構成でしょうが
復帰組が多いのでかなり驚きました。

さて、このブログで、いろいろと「数字」について語っている記事が多いせいか、
ものすごくマニアックな人間だと思われているかもしれませんが、
基本的にはライブ観戦が好きで、ときには仕事を忘れ、
「試合の行方に一喜一憂してみたい」と憧れています。

……と言いながら、今日も数字の話になります。

過去、決定率、効果率などのお話をしてきましたが、
ひとつ書き忘れていたことがありました。
アタッカーの特徴によっては決定率と効果率が高くなくても、
チームに貢献している場合があるということです。

たとえばサントリーの荻野正二選手、JTの徳元幸人選手や
NECの金子隆行選手などのように、ブロックに囲まれるなどして、
自分にとって不利な状況で打たなければいけないときに、
無茶をせず、リバウンドをとり、味方のチャンスボールにする
テクニックと視野の広さを持つ選手がいます。

リバウンドを取るスパイクは、相手はシャットアウトをねらって手を出してくるわけですから、
かなり高い技術が必要なプレーではないかとわたしは考えています。
レシーバーが待っている位置に確実にリバウンドを返すためには、
多くの訓練を要するでしょう。

ただし、決定率は単純な「決定本数÷打数×100」ですし、
効果率は「決定本数-ミス+シャットアウト数÷打数×100」ですから、
彼らがチームのために「あえて自分で決めようとしなかった」という事実は
公式記録上、見過ごされます。
効果率には多少、表れるかもしれませんが、
打数と決定数は変わらないので、さほど大きな差にはなりません。

たとえ決定率が伸びなくても、チームに貢献していると考えれば、
彼らは高い評価を得るべきなのですが実際、こういったケースは
公式記録では確認できないのです。
となると、首脳陣や見ている人の判断にゆだねられることになります。

野球の打率であれば、バントや犠牲フライなど、
チームに貢献したプレーは打席数から除かれます。
ただしバレーの場合は、そういったプレーの見極め方が
バントや犠牲フライほど簡単ではないため、致し方ないのかもしれません。
(野球も、チームのための進塁打であっても
明らかなバントでない限りは「凡打」と記録されますし)

そんな風に考えているとき、ふと、以前、友人に勧められて読んだ
「マネー・ボール」という書籍のことを思い出しました。
独自の算出方法で選手の出塁率、選球眼の良さなどの「貢献度」を割り出し、
スカウティングに役立て、弱小チームを強化していくメジャーリーグ球団の話です。
チーム編成にかけられる予算(契約金など)が少ないため、
そうやって他のチームとは違う視点で選手を選ぶようになるのがきっかけなのですが、
チーム強化のため、「知恵」と「工夫」がどれだけ武器になるか、
その様子が描かれていて非常に興味深く読んだ覚えがあります。

興味のあるかたはぜひ。

ちなみに今日は久しぶりに球場へ行って生で試合を見ました。
千葉ロッテの西岡選手の走塁技術、データや経験値に基づいた
思い切りのいいディフェンスに感銘を受けました。
ファイティングスピリッツが表に出るところもいいですね。
そういえば、このブログには「ときどき野球も」というサブタイトルがついているのに
なかなか野球を語るチャンスがありませんでした。
これからは、少しずつ、野球についても書き込みたいと思います。

posted by 市川忍 |00:55 | コメント(2) | トラックバック(0)
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2008年04月06日

男子ファイナル 雑感

ご存じのようにパナソニックの優勝でVプレミアリーグが幕を閉じました。

山本隆弘選手、フェリッペ選手がシーズンを通じて安定した働きを見せたことが
最も大きな勝因だと思いますが、ファイナルラウンドに入ってからは
フェリッペ選手、谷村孝選手、永野健選手の
レセプションの正確さも光っていたように思います。

そもそも、東レはブロックとレシーブからなる
組織的な守備力に長けたチームだという印象があります。
レアンドロ選手次第で勝敗が決まるイメージが強い東レですが、
東レの強さは鋭い分析力と、その結果に沿ってチーム一丸となって動ける
組織力だとわたしは感じていました。

優勝決定戦ではレセプションが正確にセッターに返ることで、
パナソニックの攻撃がしぼりにくくなり、東レの長所である
ディフェンスがこれまでほど機能しなかった気がします。

一方、パナソニックの守備はというと、
セットの終盤はレアンドロ選手にトスが集まることを予測していたのでしょう。
ミドルブロッカーはオトリに入ったセンターに全く釣られることなく、
素早い動作でレアンドロ選手の前に移動していました。
レアンドロ選手は、ブロックを避けようとしてミスする場面も多く
本来なら東レの売りであるディフェンス面でも
パナソニックが上回ったという印象です。

さて長かったリーグが終了します。
毎週、当然のように行っていた試合会場に
向うことがなくなるのは、寂しい気もします。

次は黒鷲旗の開幕を楽しみに。

皆様も応援、観戦、お疲れ様でした。

posted by 市川忍 |20:34 | コメント(3) | トラックバック(0)
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2008年04月01日

ターニングポイント

昨年から執筆を続けてきた書籍が発売しました。

「復活」 all for victory
全日本男子バレーボールチームの挑戦

角川書店より4月1日発刊です。


この書籍の取材を通じて、13名の選手にそれぞれの「転機」をうかがいました。

すべての作業が終わり、発売を目前にしたときに、ふと、
自分の記者としての転機はいつだったのだろうかと考えました。

わたしにとっては、「とにかくガムシャラに、与えられた仕事をする」時代から、
「自分の書きたいことがはっきりと見えるようになった」瞬間が、
記者としてのターニングポイントだったように思います。

それは2002年、富士フイルム・プラネッツが休部したときです。

当時、不況による業績不振のため、バレーボールに限らず、
さまざまな企業の運動部が次々と休部していました。
90年代には10年間で男女合わせて20以上のバレー部が活動を停止しました。

2000年には新日鐵が、地域密着型のスポーツクラブ、
堺ブレイザーズとして活動を開始していましたが、
堺のようにクラブ化に移行するのは異例で、
ほとんどのチームが休部とともにVリーグから姿を消していきました。

そして2002年の黒鷲旗終了後、古豪、富士フイルムの休部が発表されたのです。

わたしは当時、専門誌の派遣記者としてその発表会見に出席していました。
会見では富士側の関係者から、休部の理由がこう語られたと記憶しています。

「バレーボール部が社内で福利厚生としての意味を持たなくなった」

人気、実力ともに日本リーグを支えたチームがまたひとつ表舞台を去りました。

会見が終わり、席を立ったとき、ひな壇にいた
富士フイルムの当時の監督と目が合いました。
監督はわたしに向って「頑張れなくて、ごめんね」とおっしゃいました。

それを聞いた瞬間、涙が止まらなくなりました。
監督も目を潤ませていました。

富士フイルムと同じように、休部になったチームの、
最後の会見に臨んだ人たちの表情が次々と思い浮かびました。

富士の監督の言葉を聞いたとき、本当は皆、
頑張りたかったのではないかと感じました。
頑張ってチームを存続させたい。
頑張りたいけれど、個人の力ではどうすることもできなかった。
そんな風に歯がゆい思いをした選手や関係者、ファンが
数多く存在したことを思うと胸が痛みました。

同時に、たくさんの人が断念していく中、それでもクラブ化に踏み切ったチームが
どんなに大きな決断をしたのか、どれだけの勇気が必要だったのか、
そのときにようやく気づいたのです。

クラブ化、企業からの自立と、文字にするのは簡単ですが、
そこには想像を絶するような努力が必要です。

それでも、バレーボールをすることに意義や価値を見出している人がいる。
そんな人たちを追い、いつかは形に残したいと決意したのが2002年のことでした。

それまで「記者というのは取材相手の言葉を伝えればいいもの」と、
のほほんと仕事をしていたわたしに、
切実に「伝えたいこと」が生まれた瞬間でした。

まだまだ知識不足で、至らない点も多く、
いつも壁にぶち当たっては悪戦苦闘しています。
特にクラブ経営、経済の話題となると、
取材をする前に、まずは自分自身が学ばなければいけないことが、
たくさんあると痛感しています。

これからも目標の実現を目指して努力したいと思います。
この本が目標への第一歩になることを願っています。

posted by 市川忍 |19:57 | コメント(15) | トラックバック(0)
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