Baseball 一究入懇

1日だけのマイナー契約―Nomar引退に想う

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 最初は英文でこのニュースを見たので、そこに書かれていることの意味が十分に理解できなかった。自分の英文読解力の拙さなのかと疑いつつ、ノーマ・ガルシアパーラがRedSoxと契約したという部分が、強調して読み取れたからだ。次第に、それは引退表明をする為であることが全体の主旨から理解されてきた。こうした文章を受け止め理解するにも、何やら複雑な感情が自分を支配しているということに、改めて気付くのである。

 昨季、アスレチックスの一員としてボストン・フェンウェイパークに戻ってきたノーマ。ボストンのファンたちは、彼が第一打席を迎えたとき、総立ちでいつまでも鳴りやまない拍手を送り続けた。中には「Welcome back」の表示を掲げるファンも目立った。何度もメットを脱いで観客に応えるノーマ。その光景を映像で見て、日本に居ながらにして立ち上がり拍手を送り感涙にむせぶ己の姿があった。ボストンのファンにとって、彼の存在は何よりも大きいことを、この時改めて知ることができると同時に、自分の中でも遊撃手である彼の存在こそが、レッドソックスに愛着を持ち始めた原点であるのだと自覚できたのだ。そして、未だレッドソックスにおいては彼を乗り越える存在がいないということにもなると思う瞬間でもあった。

 日本の野球に熱中していた自分が、MLB、特にレッドソックスを愛するようになったのは、2003年のポストシーズン。リーグチャンピオンシリーズでのヤンキースとの死闘を観たからである。お互いが一歩も譲らない闘いの緊張感の中に、日本野球が失ってきていたBaseballを観ることができた。その中に、ノーマ・ガルシアパーラの姿があったのだ。自分自身が野球をしていたときに遊撃手だったこともあり、チームを見る時、まず遊撃手の力量やタイプを見極める。2度の首位打者に華麗な守備という実績と、何より地元ボストンのファンに愛されている彼の姿に、惚れ込まないわけはない。レッドソックスを愛する「原点はノーマにあり」なのだ。

 翌2004年夏、初めてボストン・フェンウェイパークを訪れた8月の初め。生で彼の華麗な守備を観るのが何よりの楽しみであった。しかし、そこにノーマの勇姿を観ることはできなかった。7月のトレード期限間際での電撃移籍。レッドソックスの遊撃の定位置には、とって代わって、オーランド・カブレラが座っていた。この運命は何だろう?なぜ彼の勇姿が観られないのか?というぶつけようもない不満。周囲のボストンファンも、カブレラが打席にはいると「ノーマ」を連呼して止めない人がいて、今でもその叫びが耳に残っている。自分にはノーマの幻影が遊撃の位置に踊る中、カブレラのプレーが怠慢にも情けなくも見えてしまった。しかし、実はカブレラはゴールドグラバー遊撃手、彼をこの時点で獲得したレッドソックスは、この年のWCに向かって走り続けた。その荒削りに見えるが勝負強い打撃であるカブレラの存在は欠かせない原動力であった。ポストシーズンでのカブレラの守備力は、何度もチームを救ったと記憶している。

 かつてのスーパースター「ボストンの貴公子」とまで呼ばれた選手のトレード。結果的にこれが、GMの英断となってこの年のワールドシリーズ制覇。その電撃性にリアルタイムで関わってしまった運命の出会い(というか別れ)。そのことがむしろ自分の中では、「永遠なるボストンの貴公子」を記憶の奥に封印する結果となったのだ。それゆえ、今回の「1日だけのマイナー契約=引退表明」という、最高の贈り物を球団がノーマに与えたことには、心の底からの讃辞を送りたい。

 引退発表は、レッドソックスのキャンプ地、フロリダ州フォート・マイヤーズで行われたという。今月末には当地を訪れ予定だが、どこかに「永遠なるボストンの貴公子」の影を追ってみたい。ロースター表の1枚にでも、彼の名前が印刷されていたら、その場で大声を上げて泣いてしまいそうだ!

 そして、新たな遊撃手スクータロ、そして、ノーマのように打席に入る前に何度も手袋を確かめるペドロイアの二遊間に、2010の新たなレッドソックスを見極めてみたい。春になって、ようやく己の中で、野球の虫が顔を出したようである。それは、やはりノーマの再来からであった。

 オフの間、しばらく更新していなかった小欄を、これを機に2010シーズンのスタートと宣言しておくことにする。

 ありがとう!ノーマ!!! 永遠なるボストンのノーマ!



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1日だけのマイナー契約―Nomar引退に想う

管理人さんの仰るように、
さすがはメジャーの歴史を作ってきたボストン・レッドソックスでした…
ファンの心情を一番に考えたフィナーレを演出してくれましたね。本当に感謝です。
ファンあってのメジャーリーグ・ベースボール…名選手・ノマー・ガルシアパーラと名チーム・ボストン・レッドソックスに、大きな拍手を送ります。そしてありがとう!

私は今年もMLBは絶対見るぞー!!仕事がなんだ!!女房がなんだ(汗)
今年もMLBは見なきゃ損…あっちもこっちも、アッチソン…ミジメ(汗)

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野球からBaseballへ、長年その魅力と魔力に心打たれています。主な観戦対象はMLBですが、そこから見えてくるものを日米比較することで、日本野球の進むべき道も模索したいと思います。直接的な取材も何もないからこそ、ファンとして意味ある見方ができると思います。選手の真意ではないかもしれませんが、1球に客観的な解釈を施すことで、Baseballの奥行きは更に広がるという信念を持っています。
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