2010年03月26日
Batted Ball Pitching Stats
Batted Ball Statsとはバットにボールが当たった打球についてまとめたものである。区分けはそれほど難しくなくゴロ・フライ・ライナーなど、従来のスコアで十分に集計できるものだ。この数字をまとめると攻守両面でチーム・選手それぞれの特性を理解するのに役立つ。表1は2009年の各チームの守備側から見たBatted Ball Statsだ。最初の2列はバットにボールが当たらないケース(三振と四球)。この二つは純粋に投手力を表している。次の3列はバットに当たった打球の割合を表している。NPBの平均ではゴロが48.4%、フライが43.4%、ライナーが8.3%になっている。次の2つの列からは少し様相が異なる。IF/Fは内野フライをフライ全体で割ったものだ。内野フライはそのほとんどがアウトになるため、内野フライが多ければそれだけ失点を抑制できる。 次のHR/OFは外野に飛んだ飛球が本塁打になった割合である。本来なら球場の影響など補正をかけるが今回はそのままである。NPB平均では9.4%で、この値を大きく逸脱している場合は運やそのほかの要素が影響していると考えられる(守備の場合)。 次の二つはゴロの打球をアウトにする割合と外野に飛んだ飛球をアウトにする割合である(本塁打は含まず)。内野ゴロ・外野フライを適正にアウトにできなければ、投手に対する負担は増してしまう。ゴロの処理では巨人・ヤクルト・中日・阪神・日本ハムが平均を上回るゴロを処理している。横浜・広島・楽天は内野ゴロの処理に問題を抱えていたようだ。フライではヤクルト・中日・広島・日本ハムが優秀だ。逆にロッテやオリックス・阪神は外野の守備範囲に問題があり、投手の足かせになった。 ここまでのデータでチームのディフェンスに対して大まかな影響は見える。しかし、外野フライをアウトにできない割合が増えることで、どれだけ失点につながっているのか詳しくはわからない。この問題を解決するのが、得点期待値をもとにしたライナー・ウエイト・システムだ。これは、各事象(単打・二塁打・本塁打・四球・凡打など)が発生する前後の得点期待値を比較することで、その事象の価値を算出するものだ。リンゼイ、パーマーによって開発されたこの手法は、現在でも多くの分析に使用されている。
表2はパーマーがMLB求めた値と2004~2009年データを基にしたNPBの値である。MLBでもNPBでも似通った数字が出ている。 ゴロ・フライ・ライナーなどのBatted Ball Statsもこの手法を適応すれば得点への影響を算出可能することが出来る。
表3は2008~2009年データで打球性質別の影響を算出したものだ。バットに打球が当たらない三振や四死球は別々に算出している(NIPとして合算し、投手の純粋な能力評価となる)。打球性質別に見てみると、ゴロは得点へ負の影響がある。ライナーは最も得点への影響が高い。フライは飛ばした距離によって、影響が大きく変わる。ゴロとフライを単純に比較すると、フライを打たせることはかなりリスクを伴うことが分かる。三振を奪え、打たれてもゴロの割合が多い投手が安定した力を発揮するのだろう。逆に三振を奪えず、外野への飛球が多い投手は、たとえ単年で良い成績を収めても、長い期間活躍することは難しい。
表4は、各球団の打球性質ごとに失点を算出したものである。平均との比較では、打球性質別に失点見込みと実際の失点を比較している。マイナスが多ければ、見込みより失点を減らしていることになる。日本一に輝いた巨人は、すべての項目で平均よりも失点を防いでいる。これは投球・守備の両面で優れていたのだろう。パ・リーグを制した日本ハムは、守備が投手を強力にバックアップした。下位に低迷した横浜・オリックスはすべての項目で平均を下回っている。横浜は内外野共に問題を抱え、オリックスの外野守備は壊滅的だったことが分かる。フライの数値は環境の違いも浮き彫りにしている。トップの中日は、おそらく飛ばないボール+ナゴヤドームという環境でこの値が極めて高くなったのだろう。もちろん投手も優秀だったが、昨年の投手成績を他の球団と比べるのは過大評価だろう。 Batted Ball Statsを見ることで、失点の構造をより階層別に見ることができる。2010年シーズンはすでに始まっているが、各球団の編成&新監督が、どこに問題意識を持ち、何を改善したのかその答えを1年かけて出してくれるだろう。
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posted by 岡田 友輔 |18:43 |
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表1は2009年の各チームの守備側から見たBatted Ball Statsだ。最初の2列はバットにボールが当たらないケース(三振と四球)。この二つは純粋に投手力を表している。次の3列はバットに当たった打球の割合を表している。NPBの平均ではゴロが48.4%、フライが43.4%、ライナーが8.3%になっている。次の2つの列からは少し様相が異なる。IF/Fは内野フライをフライ全体で割ったものだ。内野フライはそのほとんどがアウトになるため、内野フライが多ければそれだけ失点を抑制できる。
次のHR/OFは外野に飛んだ飛球が本塁打になった割合である。本来なら球場の影響など補正をかけるが今回はそのままである。NPB平均では9.4%で、この値を大きく逸脱している場合は運やそのほかの要素が影響していると考えられる(守備の場合)。
次の二つはゴロの打球をアウトにする割合と外野に飛んだ飛球をアウトにする割合である(本塁打は含まず)。内野ゴロ・外野フライを適正にアウトにできなければ、投手に対する負担は増してしまう。ゴロの処理では巨人・ヤクルト・中日・阪神・日本ハムが平均を上回るゴロを処理している。横浜・広島・楽天は内野ゴロの処理に問題を抱えていたようだ。フライではヤクルト・中日・広島・日本ハムが優秀だ。逆にロッテやオリックス・阪神は外野の守備範囲に問題があり、投手の足かせになった。
ここまでのデータでチームのディフェンスに対して大まかな影響は見える。しかし、外野フライをアウトにできない割合が増えることで、どれだけ失点につながっているのか詳しくはわからない。この問題を解決するのが、得点期待値をもとにしたライナー・ウエイト・システムだ。これは、各事象(単打・二塁打・本塁打・四球・凡打など)が発生する前後の得点期待値を比較することで、その事象の価値を算出するものだ。リンゼイ、パーマーによって開発されたこの手法は、現在でも多くの分析に使用されている。
表2はパーマーがMLB求めた値と2004~2009年データを基にしたNPBの値である。MLBでもNPBでも似通った数字が出ている。
ゴロ・フライ・ライナーなどのBatted Ball Statsもこの手法を適応すれば得点への影響を算出可能することが出来る。
表3は2008~2009年データで打球性質別の影響を算出したものだ。バットに打球が当たらない三振や四死球は別々に算出している(NIPとして合算し、投手の純粋な能力評価となる)。打球性質別に見てみると、ゴロは得点へ負の影響がある。ライナーは最も得点への影響が高い。フライは飛ばした距離によって、影響が大きく変わる。ゴロとフライを単純に比較すると、フライを打たせることはかなりリスクを伴うことが分かる。三振を奪え、打たれてもゴロの割合が多い投手が安定した力を発揮するのだろう。逆に三振を奪えず、外野への飛球が多い投手は、たとえ単年で良い成績を収めても、長い期間活躍することは難しい。
表4は、各球団の打球性質ごとに失点を算出したものである。平均との比較では、打球性質別に失点見込みと実際の失点を比較している。マイナスが多ければ、見込みより失点を減らしていることになる。日本一に輝いた巨人は、すべての項目で平均よりも失点を防いでいる。これは投球・守備の両面で優れていたのだろう。パ・リーグを制した日本ハムは、守備が投手を強力にバックアップした。下位に低迷した横浜・オリックスはすべての項目で平均を下回っている。横浜は内外野共に問題を抱え、オリックスの外野守備は壊滅的だったことが分かる。フライの数値は環境の違いも浮き彫りにしている。トップの中日は、おそらく飛ばないボール+ナゴヤドームという環境でこの値が極めて高くなったのだろう。もちろん投手も優秀だったが、昨年の投手成績を他の球団と比べるのは過大評価だろう。
Batted Ball Statsを見ることで、失点の構造をより階層別に見ることができる。2010年シーズンはすでに始まっているが、各球団の編成&新監督が、どこに問題意識を持ち、何を改善したのかその答えを1年かけて出してくれるだろう。
岩隈、田中の2枚看板に昨季13勝を挙げた永井が台頭。リーグトップクラスの3本柱を確立し、残りの先発枠をめぐる争いも激しい。だが、楽天投手陣の次なる課題は救援陣、とりわけストッパーの存在となるだろう。チームは05年の創設以来、開幕からシーズンを通して守護神を確立した経験がなく、球団最多セーブは06年に福盛が挙げた21セーブ。昨季も開幕からストッパーを固定できず、シーズン半ばに復帰した福盛を起用して急場をしのいだ。
今季そのストッパーを期待されるのは福盛ではなく、新外国人のモリーヨだ。メジャーの登板経験こそ少ないが、3Aで主に救援として登板。奪三振率の高さが目立ち、福盛の3A成績を物差しにすると好成績を見込めそうだ。“自己最速167km/h”の触れ込みはともかく、三振の取れる投手であることは確かだろう。
対して楽天捕手陣の競争は、例年以上に激しさを増している。リードに関して各選手を見ると、嶋が被打率を抑える好リード。その一方で中谷はマスクを被った時のチーム防御率が最も低く、得点を与えないリードという面では嶋を上回っていた。また、盗塁阻止率でも.391と、出場試合数が少ないながらもリーグトップクラスの数字を残した。
打撃面では中谷が最多の3本塁打を放つも、打率2割と確実性に課題を残した。嶋は打率.233ながら、四球を選ぶことで出塁率3割超の成績を残すことに成功。藤井は捕手陣で唯一打率を3割台に乗せて好調をアピールした。いずれも一長一短の成績で、バットに関しては各選手の間に大きな差がない。
昨季最もマスクを被ったのは嶋であり、おそらく正捕手に一番近い存在だろう。しかし中谷の台頭を受け、シーズン終盤には控えにまわる機会が増加。ベテランの藤井に成長株の伊志嶺も虎視たんたんとポジションをうかがっており、今季も正捕手の座をめぐって一進一退の攻防が行われることになりそうだ。
【日本ハム】
エース・ダルビッシュを擁して盤石に思える日本ハム投手陣だが、先発に関しては不安要素を抱えている。チームの勝利数に対する先発投手の白星割合は67.1%に留まり、リーグ最下位と振るわない。これは救援陣の優秀さを示す数字ともいえるが、安定した試合運びを目指す上で先発陣の充実は欠かせない。さらに、日本ハム先発陣はダルビッシュへの依存度が非常に高く、ダルビッシュを除いた先発陣の勝率はどうにか5割を超える程度。防御率も4点台と安定感を欠いている。
このため、チームは今オフ、カーライル、ケッペルと二人の助っ人先発候補を獲得。カーライルは01~02年に阪神でプレーした経験を持ち、ケッペルは今年で28歳と若く、昨季メジャーで自己最多の37試合に登板した伸び盛りの選手だ。この2選手に加え、昨季9勝の八木をはじめとした先発陣の奮起が求められる。
一方の野手陣だが、昨年は攻守のバランスが良かったように思える。その中でもハイレベルな守備陣の存在に注目したい。昨季ゴールデングラブ賞に7人が選出されたように、リーグの中で頭一つ抜けた安定感を見せている。本塁打を除く全打球をアウトに取った割合を測るDERを見ると、近年の躍進そのままに4年連続リーグトップ。リーグ平均がほぼ.680台中盤で推移しているのに対し、シーズン5位に終わった05年を除いて常に.700台をキープしている。これは平均的なチームに比べ、2~4%の安打を凡打にしていることを示す数字だ。“水物”の打線と対照的に、安定してチームの成績に貢献してきたといっていいだろう。
しかし、強固なディフェンス力を得た見返りに、チームは長打力を手放した。長打力を計るチーム本塁打数・IsoPを見ると、ともにリーグトップの成績を残した06年を最後にこの3年間でいずれもリーグ下位に留まる。だが、5年間で3度の優勝という結果は、守備力重視の選択が理にかなったものであることを雄弁に物語っている。
昨季27本塁打を放ったスレッジが横浜に移籍し、今季のチームはさらなる長打力低下が予想される。ぽっかりと空いた外野の定位置をめぐり、未完の大器・中田、比較的攻守にバランスの取れた陽、俊足好守の村田、そしてリーグトップクラスの守備力を誇る森本と4選手の争いが見込まれている。あくまで従来の方針を貫いて村田・森本の守備力を取るか、それとも中田のパワーを取るか。あるいはバランスのいい陽を起用するか…。日本ハムベンチの選択から、チームの方針を読み取ることが可能となりそうだ。
昨季圧倒的な強さでペナントレースを制した巨人。投手陣において圧巻だったのが山口の存在だ。球団新記録となる73試合に登板しながらも防御率は1.27。1イニングでどれだけの走者を許したかを示すWHIPは、リーグの救援投手平均の1.26を大きく上回る0.92と、抜群の安定感で最優秀中継ぎ投手のタイトルを獲得した。しかしながら、今季の山口は先発起用が濃厚。となると必然的に左の中継ぎがウィークポイントになる。事実、昨季20試合以上登板した左投手は山口以外におらず、さらに山口を除いたチーム全体の救援防御率は3.47とやや頼りない。
そこで期待されるのが、今季4年目を迎える金刃である。金刃はルーキーイヤーこそ先発ローテーションの一角を担い7勝を挙げるもその後は低迷していた。しかし昨季の終盤には救援としての登板を増やし、安定した投球で2年ぶりの勝利を挙げるなど、復調の兆しを見せている。その金刃の対左右打者別被打率に注目してもらいたい。年度によってムラはあるものの、左打者に対して好成績を収めているのがわかる。左の中継ぎという、巨人の数少ないウィークポイントをさらに減らせるかどうかは、金刃がポスト山口となれるかどうかにかかっている。
リーグトップのチーム打率.275を誇った攻撃陣。中でも自慢の長打力は健在だった。長打率はリーグで断トツの4割を超え、小笠原、ラミレス、阿部の3人がそろって30本塁打以上を放つなど他を圧倒した。その強力打線を支えたのが打線のつながりだ。チーム進塁打率はリーグで唯一の4割台に達し、併殺打はリーグ最少の71を記録するなど、昨季の巨人は打線がうまく機能した。今季はさらに走攻守の三拍子を兼ね備えた新人・長野の加入などで打線は厚みを増している。“世界最優秀”監督が「つながり」を崩さずにどのような打線を組むのか注目である。
【中日】
昨季も中日は“投手王国”ぶりを発揮した。エース・川上のメジャー移籍に伴う先発投手の穴を、誰が埋めていくのか不安視されていた。しかし、その心配とは裏腹に吉見が最多勝、チェンが最優秀防御率のタイトルを獲得する活躍。朝倉と川井も2ケタ勝利を挙げ、先発陣を支えた。そんな先発陣に負けじと救援陣も奮闘。チーム救援防御率は阪神に次ぐリーグ2位。IR%、WHIPはともにリーグ1位を記録した。
特に浅尾の活躍は目覚ましかった。昨季は開幕投手を務めるなど、シーズン当初は先発の軸として期待された。しかし先発では防御率4.73と振るわず、前年に結果を残したセットアッパーへ。実績のあるポジションで浅尾は見事に復調した。前の投手が残した走者をどれだけ生還させたかを示すIR%(リーグ平均=27%)や、前述のWHIP(リーグ平均=1.26)で、ともに抜群の安定感を誇った。その浅尾が今季は開幕からセットアッパーとしての役割を期待されている。浅尾の存在は他球団にとっての脅威となるに違いない。
昨季の中日は、荒木、井端の1・2番の活躍と、ブランコを加えた強力クリーンアップが攻撃の軸となった。1・2番の打率、出塁率はともにリーグトップ、さらにクリーンアップの得点圏打率もリーグトップと、上位打線が十分に機能した。しかしその後を打つ6番打者の成績はいまひとつで、中軸と下位をつなぐ打順を固定できなかった。今季、さらなる攻撃力アップのためには、和田、藤井のほかに昨季固定できなかった外野の一枠がカギを握るのではないだろうか。
和田、藤井に次ぐ出場数の外野手は4選手。守備固め、代打、対左右投手別など起用法はさまざまだったが、その中で目立ったのは平田だ。左投手に対して.346と結果を残したことは強みになる。しかし右投手に対しては.237と、レギュラー定着にはまだまだアピールが必要だ。新外国人のセサルやオープン戦で本塁打を放った新人・松井佑などライバルは多いが、右投手への対応力を高め、打線にさらなる厚みを加えることができるか注目だ。
2009年のペナントレースに起こった異変の1つといえば、前年王者・西武の苦戦だろう。開幕から3カ月連続で負け越し、Aクラス入りすら果たせなかった。その最たる原因といえるのが、救援陣の不振だ。涌井、岸ら先発陣が奮闘したのに対し、彼らは多くの借金を背負ってしまった。救援投手の防御率がリーグ5位、勝率がリーグ最低と、守護神・グラマンの不在による影響の大きさを痛感させられた格好だ。
そんな中、オフに頼もしい新戦力がやって来た。昨季はロッテで抑えも務めたシコースキーである。日本球界9年目を迎える“古株助っ人”の1人だが、近年は特に成績が素晴らしい。安定感十分のWHIPと、剛腕ぶりが漂う奪三振率の高さは、一昨年のグラマン(6.63)を大きく上回る。唯一気がかりなのは被本塁打率に映る球威低下の疑いだが、弱体化したブルペンの再建を思えばぜいたくは言っていられない。日本一返り咲きに向けて、シコースキーが背負う期待は大きい。
一方、打線は強力だ。特にクリーンアップは抜群の破壊力を誇る。昨季は打率こそ特筆すべき数字ではなかったが、長打率と得点圏打率がリーグで最も高かった。中島の勝負強さと中村の長打力が反映された結果といえる。
それだけに、彼らの前を打つ1、2番の責任は大きい。昨季は片岡と栗山がその役割を担ったが、いずれも出塁率が十分でなく(片岡.309、栗山.339、リーグ平均.334)、チャンスメークできていなかった。3番打者の全打席中、得点圏走者がいた打席の割合はリーグ最低だ。犠打が極端に少ないことも大きな要因だが、結果として、得点力の高いクリーンアップにチャンスで回せなかった事実は反省すべき問題といえる。1、2番と中軸がかみ合ってこそ、西武打線は本来の爆発力を発揮するのだ。
【ソフトバンク】
昨季、前年最下位からの3位浮上で屈辱を晴らしたソフトバンクだが、クライマックスシリーズでのあっけない敗退は意外だった。なぜなら、1点差試合でのリーグ最高勝率が示すように、短期決戦に求められる接戦での強さを、最も備えていたのは彼らだったからだ。
小差のゲームを制する上で投手力は欠かせない条件の1つだが、ソフトバンクは杉内、ホールトンの安定した先発2枚だけでなく、ブルペンも盤石の布陣を誇っていた。何しろ、パ・リーグの救援投手防御率トップ5に3人が名を連ねたのだから、疑う余地はないはずだ。シーズン終盤に調子を乱した馬原はWHIPが優れないが、ほか2人同様、奪三振率の高さは心強い。他球団もうらやむであろう強力救援陣は、森福や三瀬といった左のリリーフが充実することで、さらに揺るぎないものとなるだろう。
打線のラインアップを眺めると、上位には本多と川崎の1、2番コンビが並ぶ。昨季、打率が振るわなかった2人(本多.262、川崎.259)だが、彼らには小技という大きな武器がある。ソフトバンクの1、2番は出塁率で見てもリーグワースト2位と不振だったが、犠打と盗塁においてはいずれも2位以内の数字を記録していた。つまり、安打や四死球以外での進塁を積極的に狙い、成功させたことになる。しかも、本多と川崎の強みは、2人そろって年間40盗塁以上を決めるほどの俊足であるという点である。これによって、いずれかが塁に出れば、自力でクリーンアップの打席にチャンスをつくり出せる、という構図が成り立っていたのだ。
さらにこの攻撃力の高さは、打順1番から始まったイニングの得点率に大きく表れる。あくまで仮想上の話だが、前イニングの終了打順にかかわらず、1試合9回すべての攻撃を1番から始めた場合、ソフトバンクの得点はリーグトップの数字を示す。それも2位以下を大きく引き離して、だ。1、2番がうまく機能しなければ、この結果は期待できないが、本多、川崎は打率向上の余地が大きいだけに、今季はさらなる得点力アップを期待できる。李ボム浩や長谷川といった新たな中軸候補の存在も楽しみだが、打線のカギを握るのはやはり、おなじみの1、2番コンビのようだ。
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昨季、ヤクルト投手陣で最も顕著となった課題は救援陣だ。月別救援防御率では、シーズン前半の4~6月がリーグトップクラスであったにもかかわらず、シーズン後半の7~10月にはリーグワーストを争う形となった。
シーズン序盤は松岡・五十嵐・林のリレーがチームの躍進を支えていた。しかし、シーズン後半の失速は彼らのWHIPを見ても明らかで、特にヒジ痛に悩まされた松岡の不調が救援全体へ響いてしまった。しかし、同じく救援の柱であった五十嵐が米・メッツへ移籍したことで、これまで以上に松岡へかかる負荷は大きくなる。昨オフにメスを入れた右肘の調子次第で、ヤクルト救援全体の成績が左右されることは間違いなさそうだ。
そして、五十嵐の抜けた穴をどのように埋めるかも、もう一つの課題であろう。まず、候補として挙がるのは左肩痛からの復活にかける石井。2007年から登板はないものの、それまでの実績と、今季に賭ける意気込みに期待をしたい。また、押本も2年連続して50試合に登板し、防御率は3点前後と成績を残しているだけに楽しみだ。石井に過度な計算は出来ないまでも、マウンドでこの二人の姿が頻繁に見られないようだと、厳しいやりくりを強いられそうだ。
攻撃面では、リーグ盗塁王・福地の活躍もあり、1・2番の盗塁数は50回を数えリーグナンバーワン。その甲斐あってかクリーンアップの得点圏打席数はリーグ1位と、より多くの好機を迎えられていた。しかし、クリーンアップの得点圏打率はリーグ5位と低迷し、得点数を伸ばすことが出来なかった。
その打開策として高田監督は青木を昨年の段階で開幕4番に指名。昨季の終盤に青木を4番で起用し、上記のように高アベレージをマークしたことが、決定打となったのであろう。昨年はガイエル・デントナがポイントゲッターとして不発だっただけに、青木の活躍がどのようにチームの変化を生みだすのかに注目してみたい。
【阪神】
昨年のシーズン開幕前に『JFK』の解体を宣言した真弓監督。不安のある中での船出となったが、終わってみれば救援防御率はリーグトップを記録した。しかし、今季はアッチソン・ウィリアムスが抜け、再び救援陣への不安は募る。実績からすれば江草・渡辺にかかる期待は大きく、復活を狙う久保田の起用法も、浮上のポイントになってきそうだ。
一方の先発陣だが、昨季はローテーションが固定できずに低迷し、先発投手起用人数はリーグワーストタイの15人。また、先発投手の指標となるQSもリーグワーストと、弱さを露呈する形となった。能見の台頭は光明となったが、安藤・福原・下柳らが復調しない限り、優勝争いに加わることは難しそうだ。そうなると、新外国人投手のフォッサムやドラフトで獲得した二神、藤原の即戦力候補に期待せざるを得ない。
野手陣では赤星の引退に大きな衝撃が走った。足でチャンスを拡大できる唯一の選手だっただけに、その代償は大きい。チームの盗塁数ランキングを見ると、赤星の31個に次ぐのが狩野で10個。今季は城島の加入により狩野の出場機会激減が予想され、機動力の作戦が使用できないことは、大きな懸念材料だ。
しかしながら、ファームでは期待の星が着々と成果を出しており、2年目を迎える上本と柴田には一軍定着のチャンスが訪れそう。昨季のファームで上本は16、柴田は9盗塁と俊足をアピール。特に柴田は赤星と同じ外野手ということと、打つ方でも打率.320を記録するなど、ポスト赤星筆頭だ。盗塁成功率は低いものの、これから経験を積むことで、盗塁能力の向上は可能だろう。
いずれにせよ、今季の阪神は若トラの台頭が例年以上に必要なシーズンとなりそうだ。
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