2009年06月26日

キングの挑戦

※掲載データは2009年6月20日現在

 長い長いベースボールの歴史の中で、ハンク・アーロンよりもベーブ・ルースが「本塁打の象徴」として語り継がれてきたのは、おそらく彼が時代を支配したからだろう。ともに通算700を超える本塁打を放ちながら、アーロンが4度しか本塁打王になれなかったのに対し、ルースは実に12度もの栄誉を手にした。長年タイトルを守り続けることは、その存在が人々の記憶に刻まれる最もシンプルな形なのかもしれない。

 今日の日本球界にも、2年連続本塁打王として君臨する一人の和製大砲がいる。横浜不動の四番、村田修一だ。彼が日本人屈指の長距離打者であることは今や疑う余地もない。2007、08年といずれも激しいホームランダービーを制し、今季も当然のごとく本塁打王候補の筆頭に挙げられた。

 ところが、WBCでの負傷が影響し、“王座防衛”には黄色信号がともっている。復帰戦以降、コンスタントに数字を伸ばしてはいるものの、トップを走る中日・ブランコに7本差をつけられるなど、依然として厳しい状況だ。そこで、横浜が60試合を消化した時点での各打者の成績を基に、ペナントレースの優勝ラインならぬ「本塁打王ライン」を算出してみた。下がその表である。

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 用いたデータと計算式は以下の通り。

対象選手…セ・リーグ本塁打ランキング上位3名と村田
使用データ…①出場試合数、②打数、③本塁打数、④所属チームの残り試合数
計算式…(目標本塁打数-③)÷(②÷①×④)

 左端列は目標となる本塁打数、右4列は各打者がその本数を達成するために要する本塁打率を表したものとなっている。つまり、ブランコが40本塁打に到達するには、残りのシーズンで本塁打率.064をマークする必要があるというわけだ。

 では、村田が3年連続の王冠を奪取するためには、どれほどのペースで数字を積み上げればよいのか。ブランコとの対比で探ってみよう。6月20日現在で、ブランコの本塁打率は.079である。仮にこれが維持されたならば、シーズン終了時には45本塁打を記録する計算となる。村田がそれを上回るには、本塁打率.110以上を残さなくてはならない。およそ9打数に1本の割合で本数を稼ぐ必要があり、その道のりはやはり険しいものといえる。


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 しかし、それが決して不可能ではないこともまた事実だ。タイトルを獲得した過去2年の本塁打率推移をグラフ化すると、いずれも右肩上がりの折れ線が表れた。これは、村田が打者としてスロースターターであることを意味する。特に昨年は、シーズン中盤以降に本塁打を量産し、61~144試合限定での本塁打率は驚異の.118を記録していた。北京五輪参加による欠場期間があるため安易な比較はできないが、仮に今季残り試合を昨年と同じペースでばく進するとなると、計算上、何と48本塁打の達成が見えてくるのだ。もちろん容易なことではない。ただ、前例があるだけに、わずかながら希望の光も差す。

 セ・リーグでの3年連続本塁打王は、1974年の王貞治(13年連続)以来誕生していない。30年以上経ったいま、村田がその資格を得た。日本における「本塁打の象徴」の足元に、手をかけるチャンスを得たのだ。これは、彼に課せられた一つの使命なのかもしれない。21世紀を代表するホームランアーティストへ――。男には、それを成し遂げるだけの、底力と価値がある。


posted by 山田 隼哉 |17:04 | 日本プロ野球 | コメント(0) | トラックバック(0)
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2009年06月25日

選手分析 ~西武 #18 涌井 秀章~

※文章、表中の数字は2009年6月17日現在

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 昨季は10勝11敗に終わり、自身の成績としては不本意だった涌井。しかしWBCを経て、2年連続の開幕投手としてスタートした今季は、ここまで7勝を挙げ順調に白星を積み重ねている。17勝を挙げ最多勝を獲得した07年をほうふつとさせる安定感だ。

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 最近3年で比較してみると、目を引くのが被打率の低さと奪三振率の大幅な向上だ。特に奪三振率はキャリアハイの前年を大きく上回り、今季は9イニングあたり2つ以上も多く三振を奪っている。では、多彩な変化球と高い制球力を持ち、“技巧派”としてのイメージが定着しつつあった涌井の投球に何の変化があったのだろうか?

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 今季の涌井の “変身”ぶりを紐解く鍵は、ストレートにあった。追い込んでから様々な球種を投げていた昨季に比べ、今季は40%を超える割合でストレートを選択。一方でスライダーやカットボールの割合は減少し、いわゆる“力で押す”場面が増えているのだ。追い込んでからのストレートの平均球速を昨年と比較しても、3km/hほど増しており、「球速以上のキレを誇る」と評されるストレートにより力強さが加わっていることが見てとれる。

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 ストレートの向上は被打率・被長打率の面からも明らかだ。ともに昨季から大きく良化しており、“勝負球”として申し分のない数字を残している。さらにストレートの威力が増したことの副産物としてか、フォークの威力も向上。被打率、長打率ともに0割台をキープしており、この2つの球種が今季の好調ぶりを支える一因となっている。

 今季は狙って三振を奪える投球をテーマにストレートを磨いてきたという涌井。先で示したように、ここまでは思惑通りに事が進んでいると言える。これも今季から松坂大輔(現BOS)の背番号「18」を受け継ぎ、本人としても心に期すものがあったからなのだろう。2年連続の栄冠に向け、頼もしいエースがチームを高みへと導く。


posted by 佐々木 浩哉 |13:37 | 日本プロ野球 | コメント(0) | トラックバック(0)
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2009年06月19日

選手分析 ~中日 #42 ブランコ~

※文章、表中の数字は2009年6月15日現在

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 昨季は主に米マイナーの2Aでプレーし、決して前評判の高い選手ではなかった中日・ブランコ。しかし、ここまで18本塁打を放つなど、並み居る強打者を抑えて本塁打ランキング単独トップの好調ぶりだ。本塁打1本あたりに要する打数は12打数強と高い数字を残し、ナゴヤドーム天井直撃弾を放つなど、ずば抜けたパワーの持ち主である。その驚異的な長打力で他球団の投手陣を震え上がらせている。

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 開幕直後から4番に据えられたブランコだが、当初はその責務を果たせているとは言いがたく、4月は2割台前半の低打率に本塁打も4本のみ。それでも、才能を見込んで根気よく起用し続けた落合監督に応えるように、5月は一気に打撃成績が向上。中でも注目したいのは本塁打率で、月を経るごとに一発の出る確率が倍増している。交流戦が主となる6月に入ると約6打数に一発と驚異的な数字を残しており、ほとんどが初対戦となるパ・リーグ球団の投手陣にも対応ができている。

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 ブランコの打撃で特徴的なのはとにかく積極的な姿勢だ。ファーストストライクは見逃さず、スイング率はリーグ平均を大きく上回る69%。また、ストライクカウント別の打撃成績でも、その理由が垣間見える。追い込まれるとどうしても脆さが出てしまうので、有利なカウントのうちに勝負しようという思惑なのだろう。ブランコと対戦する投手は、ファーストストライクをいかに取りに行くか、という点が勝負の大きな鍵となる。

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 昨季まで主砲として君臨したウッズと比較しても、チームへの貢献度はブランコが上回る。昨季得点圏打率が2割前半に留まったウッズに対し、ブランコはここまで.333と好成績。球界でも屈指の長打力を誇ったウッズの長打率すら上回り、本塁打・打点ともこのペースでいけばウッズの昨季残した数字を超える見通しだ。ウッズの抜けた穴を埋めるどころか補って余りあるほどの活躍を見せており、チームにとって嬉しい誤算となっている。

今や中日打線において最重要警戒打者となったブランコ。今後は各球団ともあの手この手でブランコ対策を講じてくることだろう。ここまで勝率5割前後をさまようチームにとって、4番打者の落ち込みは致命傷ともなりかねない。また、必ずやってくるであろうスランプや壁をいかに乗り越えるかが、ブランコの、そしてチームにとっての正念場となる。ブランコに求められるものは、もはやウッズの穴埋めだけに留まらない。


posted by 佐々木 浩哉 |02:57 | 日本プロ野球 | コメント(1) | トラックバック(0)
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2009年06月12日

選手分析 ~巨人 #49 ゴンザレス~

※文章、表中の数字は全て2009年6月7日終了現在

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 助っ人外国人を多数抱えるチームの中で、意外な男が台頭を見せた。ヤクルトを退団し、今年から巨人にやって来たゴンザレスだ。5月初旬の一軍昇格後、6度の先発登板で防御率1点台、41回1/3イニング連続無四球と、チーム随一の安定感を発揮している。

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 好調の要因はいくつかある。まずは、先頭打者の出塁を許さない点だ。昨年3割台半ばだったイニング先頭打者への被出塁率が、今季は大きく改善された。各イニング最初のアウトを確実に奪うことで、ピンチの拡大を最小限に抑えているのだ。

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 また、防御率の変動に直結する部分でも、その好調ぶりは発揮されている。得点圏走者を置いた場面での粘り強さは、被打率が示すとおり驚異的なものだ。昨季の大きな課題だったピンチ時の不安定感を克服し、打たれ強い投手へと変貌を遂げたのである。

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 そして、得点圏被打率の飛躍的向上は、球種の投球割合から立証できる。ゴンザレスの武器となる球種は、被打率が最も低いスライダーだ。しかし、昨季はそのスライダーを、得点圏に走者がいる場面で多投することはなかった。状況に応じない単調な投球内容といえるが、今季は明らかに違う。得点圏時におけるスライダーの割合増加が顕著に表れているのだ。失点の危険性が高まると、得意球を生かしたスタイルに切り替える。これが功を奏し、大事な場面で確実に打者を抑えているのだ。捕手陣の好リードを示すデータでもあり、ゴンザレスが巨人移籍に際して得た、最大の恩恵といえるのではないだろうか。

 エース・グライシンガーが復調しない中で、ゴンザレスの台頭は巨人にとって嬉しい誤算だったはずだ。目下リーグ首位快走中のチームに不安は少ないかもしれないが、シーズンは長く、昨年苦杯をなめた日本シリーズも控える。思わぬ助っ人が、救世主として巨人を支えるかもしれない。


posted by 山田 隼哉 |10:19 | 日本プロ野球 | コメント(0) | トラックバック(0)
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