2009年05月31日

イムの正念場

※掲載データは2009年5月30日現在

 燕軍団の守護神、林昌勇が絶好調だ。WBCの激戦を終えた右腕から、心身の疲労は感じ取れない。韓国屈指の快速サイドハンドは、紛れも無く、今季序盤戦における12球団最高のクローザーだ。

input-91698.jpg

 20試合を投げて失点は無し、走者も多くを許さない。弱点の見当たらぬ安定感は、もはや無敵とさえ映る。今後の戦いに向け、果たして懸念はあるのか。

input-91699.jpg

 昨季も開幕直後は無失点登板を連発した。5月8日に初失点を喫するまでの11試合がそれだ。ところが、直後の6月に入ると、信じ難いほどの不振に陥った。月間成績の跳ね上がりが顕著に物語る。さらに、一時の復調を経て、9月には再び荒波が訪れた。疲労の蓄積によるものと考えるのが自然だが、今季もその可能性がゼロであるとは言い切れない。まもなく迎える6月、上位争いが激化するシーズン終盤を乗り切ってこそ、来日2年目の真価が発揮されるのだ。

input-91700.jpg

 さまざまな登板間隔への適応も、課題の一つと考えられる。際立つのは、日程が大きく開いた際に生じる成績の悪化だ。実戦感覚の回復に難があるようにも映る。救援投手の登板日は流動的で、個人がコントロールできるものではない。それだけに、いかなる条件においてもベストな状態を保つことが、零封投球の継続には必要不可欠となる。

 もっとも、一年間無失点というのは、あまりにも非現実的な発想だ。連続試合記録はいずれ途絶えるだろう。しかし、肝心なのはその後だ。ずるずると調子を崩すようでは、昨年と何ら変わりない。守護神の本領は、長いシーズンが終わって初めて明らかとなる。


posted by 山田 隼哉 |12:37 | 日本プロ野球 | コメント(1) | トラックバック(0)
このエントリをlivedoorクリップに登録 このエントリをはてなブックマークに登録 newsing it! このエントリを Buzzurl に追加

2009年05月28日

選手分析 ~横浜 #18 三浦 大輔~

※文章、表中の数字は2009年5月24日終了現在

input-91162.jpg

input-91163.jpg

 不振にあえぐチームの中で、三浦が好調だ。昨オフにはFA流出を取り沙汰された経緯もあり、今季にかける意気込みは並々ならぬものがある。リーグ防御率ランキングで5位につけ、5勝はリーグ2位タイ。今季は安定感ある投球が目立っているが、1イニングあたりの走者出塁数を表すWHIPは脅威の0.778をマーク。3イニングを投げて出塁を許す走者がおよそ2人となる計算で、リーグの先発投手の平均が1.227であることからその好調ぶりは際立っている。

input-91164.jpg

 加えて圧巻なのが走者を出してからの粘り強さだ。昨季も走者を出してからの被打率が2割台前半と優秀な数字を記録していたが、今季はそれをはるかに上回る.115。走者を背負っても抜群の集中力を発揮し、身上の粘りの投球により一層磨きがかかっている。

input-91165.jpg

 そこで、この好調の要因の一つとして挙げたいのがストレートである。直近3年間のストレートの投球成績を比較するとその違いは一目瞭然だ。被打率は言うに及ばず、被長打率の低さが特に目を引く。被打率と被長打率が1割台いうことは、今季ここまでストレートをほとんど長打されてないことを表している。過去2年痛打を浴びていたストレートの質が、以前より向上していること。これが、今季の好調につながっていると言える。

input-91166.jpg

 また、ストレートが打たれていない理由としては、外角にしっかりと制球できていることが大きい。真ん中へ甘く入ってくる割合は、昨年に比べ8ポイント減の11%。投球の基本である外角への制球を徹底し、必要とあらば巧みに内角を突く三浦のスタイルはさながら生きた教科書である。ストレートがどれだけ良くても、失投が多ければ意味をなさない。正確にコースへ投げ込む制球力こそが三浦の真骨頂だ。

 5月半ばにして事実上の監督交替を余儀なくされ、チームは今季も下位を低迷。そのような状況下にあって、絶対的エースである三浦に掛けられる期待や果たすべき責任は限りなく大きい。チームが浮上するためには、たとえ孤軍奮闘となっても好投を続けていくしかない。「強いところを倒して優勝したい」残留会見で発した三浦の言葉からも、その覚悟のほどが窺い知れる。


posted by 佐々木 浩哉 |11:02 | 日本プロ野球 | コメント(0) | トラックバック(0)
このエントリをlivedoorクリップに登録 このエントリをはてなブックマークに登録 newsing it! このエントリを Buzzurl に追加

2009年05月16日

選手分析 ~楽天 #17 ラズナー~

※文章、表中の数字は2009年5月4日現在

input-88840.jpg

現役のメジャーリーガーが、日本球界でどれだけの活躍を見せられるのだろうか。今季より楽天に入団したラズナーは、昨季名門ヤンキースでほぼ一年間にわたって先発ローテーションを守った経験を持つ。通算9勝と成績こそ一級品とは言い難いが、まだ28歳と若いこともあって球団の寄せる期待は並々ならぬものがある。

input-88827.jpg

input-88828.jpg

 ラズナーの武器といえば140キロに迫る手元で鋭く曲がるカットボール。投球割合の4割近くを占め、被打率もここまで2割台前半と優秀な数字を残している。開幕から1ヶ月を過ぎ、恐らく他球団の警戒が最も集まっている球種だろう。その一方でストレートは平均140キロそこそこと目立った数字ではなく、バリバリのメジャーリーガーのストレートをイメージしていると面食らうかもしれない。被打率も4球種の中で最も悪い数字となっており、190cmを超える大柄な体格を持ちながら力で押すパワーピッチャーではないことが分かる。

input-88829.jpg
 
 そして、ラズナーの最大の持ち味はその制球力にある。とにかく逆球が少ないのだ。与四球率でも2.20と低い数字を記録しているのだが、全投球に対する逆球率は脅威の3.0%を誇っているのだ。その数字は制球に定評のある岩隈をはるかにしのぐ。捕手の構えた位置から大きく外れることがほとんど無く、本当の意味で制球力を持った投手といっていいだろう。140キロそこそこのストレートながら、メジャーの舞台で戦ってこられた理由がここにある。

input-88830.jpg

input-88831.jpg

 もちろん課題もある。リーグ平均と比較して見ると分かるとおり、本来であれば低めが最も打たれにくいものだが、ラズナーは低めをよく打たれている。さらに低めのボールゾーンでもあまり空振りを取れておらず、低めを有効に使えていないのだ。今は開幕してから1か月と日が浅く球に力があり高め付近の球でも打たれていないが、疲労が蓄積し始めるシーズン中盤以降を乗り切るためには投手の生命線とも言える低めの制球力の向上が必要不可欠となる。

 岩隈・田中の強力二枚看板をそろえ、念願のクライマックス・シリーズ進出が夢ではなくなってきた楽天。春先とはいえここまで常に上位をキープしており、チーム状態は好調そのものだ。「春の珍事」で終わらせないために必要なのは「第三の先発」の確立。名門ヤンキースのローテーションを守った男に掛ける期待としては、決して過大なものではないだろう。メジャーのプライドを掛け、ラズナーが楽天のキーマンとなる。


posted by 佐々木 浩哉 |22:29 | 日本プロ野球 | コメント(1) | トラックバック(0)
このエントリをlivedoorクリップに登録 このエントリをはてなブックマークに登録 newsing it! このエントリを Buzzurl に追加

2009年05月11日

パの田中、セの坂本

※掲載データは2009年5月8日現在

 “今が旬”と表現するのは、あまりにも安易かもしれない。弱冠20歳の若武者二人が、今季のプロ野球において最も輝かしい光を放っている。躍動感に満ちあふれた彼らの存在は、まさしく日本球界の希望だ。

■ 田中 将大(楽天)

 input-87907.jpg

 田中将大は楽天にとって、もはや「未来のエース」ではない。開幕以降、2度の完封を含む4連続完投勝利はまさに圧巻だった。今季は投球の安定感が劇的に増している。驚異の防御率0点台に加え、WHIP も3イニングあたり2人以上の出塁を許さない計算となる。さらに、1イニングに要する平均投球数(P/IP)が07、08年と比べおよそ3球も少ない。安定かつ効率的な投球によって、右腕の連続完投は達成されていたのだ。

 input-87908.jpg

 今季の田中はめりはりのある投球を習得したようだ。奪三振のデータがそれを物語る。走者を背負った状況での成績を年度別に算出すると、今季は極めて高い割合で三振を奪っていることがわかった。走者の進塁を防ぎたい場面で、確実に奪三振を狙うことができる。必要性に応じた能力の発揮が、好成績を生む大きな要因となっているのだ。“神の子・マー君”の進化は計り知れない。

■ 坂本 勇人(巨人)

 input-87909.jpg

 坂本勇人は打撃の開眼が著しい。今季の打率は3割台後半と、飛躍的な成長を遂げている。中でも特筆すべき点は長打の多さにある。本塁打数は早くも5本をマークし、8本にとどまった昨年を大きく上回るペースだ。IsoP(長打率-打率)も大幅に上昇しており、長打力の向上は明らかなものといえる。さらに、フライアウトに対するゴロアウトの割合(GO/AO)が1以下の坂本は、比較的打球弾道が高いタイプに分類される。将来的に、長距離打者として大成する可能性を秘めた逸材でもあるのだ。

 input-87911.jpg

 坂本がこれまでのキャリアで放った全13本塁打は、いずれもレフトスタンドへたたき込まれたものである。彼は“引っ張り”で力を発揮する打者なのだ。そして、今季は左方向への打球が全体の半数以上を占めている。これは、坂本にとって理想的な打撃が実現されていることを意味する。驚異的な好調ぶりは、打球の傾向としても顕著に表れているのだ。巨人の未来を背負って立つ男に、首位打者戴冠の期待が膨らむ。

 彼らは、将来的に“球界の至宝”となるだけの素質を備えている。共に06年の高校生ドラフトで1位指名を受け、田中は1年目、坂本は2年目からメディアの高い注目を浴びてきた。3年目を迎える今季、序盤の好調がシーズンを通して維持されたならば、二人は名実ともにまた一歩“至宝”への階段をのぼるだろう。彼らが両リーグを代表する選手となる日は、きっとやって来る。


posted by 山田 隼哉 |16:34 | 日本プロ野球 | コメント(0) | トラックバック(0)
このエントリをlivedoorクリップに登録 このエントリをはてなブックマークに登録 newsing it! このエントリを Buzzurl に追加

2009年05月01日

ブルペンエース

※データは2008年シーズン終了時点

input-86045.jpg

 「ブルペンの球は、球界でも5本の指に入る」。今季から楽天投手コーチを務める佐藤義則コーチは、青山を評してこう語る。力のある140キロ後半のストレートに多彩かつキレのある変化球。その素質を高く評価されながら、未だ目立った実績を残せていないのが実情だ。昨季残した数字から「ブルペンエース」青山の投球内容を検証したい。

input-86046.jpg

 青山の投球スタイルはスライダー・シュートを使った左右の揺さぶりにある。右打者に対してはシュートで内角をえぐり、外角のスライダーで勝負。左打者にはスライダーで内角を突き、外角へのシュート・フォークで仕留めに掛かっている。だが表2のとおり、肝心のスライダー・シュートの被打率が3割前後と芳しくない数字が並ぶ。

input-86047.jpg

 スライダーを打たれるパターンはとにかく高さ。真ん中より高めに抜けると高い確率で痛打されている。低めに決まった時は被打率も低く、被本塁打も0。月並みではあるが、徹底して低めに投じる意識を持つことがスライダーを生かすポイントとなる。

input-86048.jpg

 シュートに関しては厳しい数字が出た。揺さぶりの鍵となるべきボールが、コースへ投じているにも関わらず非常に高い被打率を喫しているのだ。特に右打者への内角シュートが打たれているのはいただけない。同コースに投じられたストレートがほとんど打たれていないことから、投球パターンを読んだ打者に狙われていると見るのが自然だろう。シュート自体を減らすか、あるいは割り切ってボールゾーンへの見せ球に徹するなど配球に工夫が求められる。

input-86049.jpg

 「ブルペンエース」と評される投手は往々にして精神面に課題を持つとされる。そして残念なことに、青山もその例外ではないようだ。最もプレッシャーの掛かるであろう1点差の状況において、被打率.375。2点差以上の状況から1割以上も悪化し、接戦での苦しい投球がそのまま数字に表われている。ここを改善できないとチーム内での信頼を得られず、重要な局面での起用は難しくなってしまう。

input-86050.jpg

 だが、悲観することばかりではない。走者を置いた場面での粘り強さは年々増しているのだ。06年の被打率は3割後半の厳しい数字に終わったが、昨季は2割前半の好成績。走者を出しても簡単にタイムリーを許すことなく、我慢の投球ができるようになった。この課題を克服してきた点は大いに評価されるべきだろう。ただ、その反動か走者無しの場面では反比例して被打率が悪化。投球にリズムを作るためにも走者を出さないピッチングを心がけたいところだ。


 チームは開幕以来白星先行と順調なスタート。とはいえ、先発・救援ともに枚数不足の感は否めない。今季は春季キャンプ中のケガにより開幕一軍入りを逃した青山だが、万全となればすぐにでも一軍に呼ばれることだろう。それだけの期待を背負っているだけに、いつまでも「ブルペンエース」の地位に留まっているわけにはいかない。青山がその殻を破った時、チーム悲願のクライマックス・シリーズ進出が大きく近づいているはずだ。


posted by 佐々木 浩哉 |19:13 | 日本プロ野球 | コメント(1) | トラックバック(0)
このエントリをlivedoorクリップに登録 このエントリをはてなブックマークに登録 newsing it! このエントリを Buzzurl に追加