2008年12月20日
自力本願
※データ及び所属球団は2008年シーズン終了時点 もう何年前のことになるだろうか。かつて野茂英雄がドジャース時代に語った言葉をふと思い出した。先発投手として好投しながらも、味方の援護に恵まれず惜敗した試合後のコメントである。 「打線が1点しか取れないのなら、投手は0点に抑えなければならない」 どこまでストイックなのかと問いたくなるほどの実に彼らしい発言だが、おそらくこれが野茂の描く“エースのあるべき姿”なのだろう。打線の調子に関わらず失点を最小化できる投手こそ、チームの大黒柱としてふさわしい存在であるというわけだ。今季の日本プロ野球において、最も打線の恩恵を受けた先発投手は館山昌平(ヤクルト)である。1試合平均での援護点は5点台後半に及び、防御率2.99の館山は多くの試合で勝利投手の権利を得やすい状況にあったといえる。決して味方打線に甘えていたわけではないだろうが、リーグ最高勝率のタイトル獲得に与えた影響が大きなものであったことは間違いない。 チームの1試合平均得点との比率で見ても、館山の先発登板試合ではヤクルト打線が奮起していたことがわかる。チーム平均の1.4倍近い援護は、規定投球回到達を果たした全29投手のなかでも群を抜く数字だ。こればかりは偶然の要素も否めないが、味方打線を奮い立たせる何らかの投球術を館山が備えているとすれば、それも先発投手の資質として認めるべき重要な特性かもしれない。 今や日本を代表するエースとして名高いダルビッシュ有(日本ハム)は、平均援護点4点未満と恵まれない状況ながら、館山と並ぶ勝率8割の好成績を残した。日本ハムはチームの1試合平均得点が両リーグ最低の貧打線であるにも関わらず、貫禄の投球で勝ち星を積み重ねたのだ。 冒頭の“野茂論”に基づいた観点からいえば、ダルビッシュはその理想像に限りなく近い投手ではないだろうか。打線の援護に頼らず、自らの手で勝利を引き寄せられる存在だ。多くの登板で接戦を強いられながらも、威風堂々の投球でチームをけん引する姿は、まさしく野茂のエース哲学を体現している。もっとも、1試合3失点で不調と映ってしまう怪腕にとっては、これだけの援護があれば十分なのかもしれない。来春に控えた世界の大舞台でも、その変わらぬ快投が披露されることを願うばかりである。
一方、勝率の伸び悩んだ面々だが、何といってもグリン(日本ハム)の不運ぶりが際立つ。平均援護点わずか2.76と全くもって得点に恵まれず、結局リーグ最多の14敗(7勝)を喫しオフには自由契約となってしまった。チーム比率でも0.75倍と、ただでさえ大量点を期待できない日本ハム打線が“半ストライキ状態”とあってはこの低勝率も無理はない。グリンの防御率3.64は決して特筆すべき数字ではないが、一人で借金7を抱え込むほどの成績でもないだろう。館山と対照的に、援護に恵まれない何らかの要因があったのだとしても、これほど顕著に表れると、もはや同情の念まで抱いてしまう。ちなみに、名誉挽回を期して臨んだクライマックスシリーズでは、2度の先発登板で合計15失点と今度は自身が炎上し、打線の援護云々といった状況ではなかった。 味方打線による援護を生かすも殺すも最後は投手次第なのかもしれないが、援護点の多少が彼らの勝率に影響を及ぼしていることは確かだ。援護に恵まれないがゆえに成績を伸ばせない投手も少なくはないだろう。しかし、その置かれた状況のなかで結果を出すことを理想としてきた男もいるのだ。野茂の言葉には頭が下がるが、この精神こそがパイオニアとして海の向こうで成功を収めることができた大きな要因なのではないだろうか。ユニフォームを脱ぎはしたが、現代さらには次代のエースたちが学ぶべき姿勢であることに変わりはない。今後、一人でも多くの“野茂論者”が現れることを祈ろう。
posted by 山田 隼哉 |17:05 |
日本プロ野球 |
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今季の日本プロ野球において、最も打線の恩恵を受けた先発投手は館山昌平(ヤクルト)である。1試合平均での援護点は5点台後半に及び、防御率2.99の館山は多くの試合で勝利投手の権利を得やすい状況にあったといえる。決して味方打線に甘えていたわけではないだろうが、リーグ最高勝率のタイトル獲得に与えた影響が大きなものであったことは間違いない。
チームの1試合平均得点との比率で見ても、館山の先発登板試合ではヤクルト打線が奮起していたことがわかる。チーム平均の1.4倍近い援護は、規定投球回到達を果たした全29投手のなかでも群を抜く数字だ。こればかりは偶然の要素も否めないが、味方打線を奮い立たせる何らかの投球術を館山が備えているとすれば、それも先発投手の資質として認めるべき重要な特性かもしれない。
今や日本を代表するエースとして名高いダルビッシュ有(日本ハム)は、平均援護点4点未満と恵まれない状況ながら、館山と並ぶ勝率8割の好成績を残した。日本ハムはチームの1試合平均得点が両リーグ最低の貧打線であるにも関わらず、貫禄の投球で勝ち星を積み重ねたのだ。
冒頭の“野茂論”に基づいた観点からいえば、ダルビッシュはその理想像に限りなく近い投手ではないだろうか。打線の援護に頼らず、自らの手で勝利を引き寄せられる存在だ。多くの登板で接戦を強いられながらも、威風堂々の投球でチームをけん引する姿は、まさしく野茂のエース哲学を体現している。もっとも、1試合3失点で不調と映ってしまう怪腕にとっては、これだけの援護があれば十分なのかもしれない。来春に控えた世界の大舞台でも、その変わらぬ快投が披露されることを願うばかりである。
一方、勝率の伸び悩んだ面々だが、何といってもグリン(日本ハム)の不運ぶりが際立つ。平均援護点わずか2.76と全くもって得点に恵まれず、結局リーグ最多の14敗(7勝)を喫しオフには自由契約となってしまった。チーム比率でも0.75倍と、ただでさえ大量点を期待できない日本ハム打線が“半ストライキ状態”とあってはこの低勝率も無理はない。グリンの防御率3.64は決して特筆すべき数字ではないが、一人で借金7を抱え込むほどの成績でもないだろう。館山と対照的に、援護に恵まれない何らかの要因があったのだとしても、これほど顕著に表れると、もはや同情の念まで抱いてしまう。ちなみに、名誉挽回を期して臨んだクライマックスシリーズでは、2度の先発登板で合計15失点と今度は自身が炎上し、打線の援護云々といった状況ではなかった。
味方打線による援護を生かすも殺すも最後は投手次第なのかもしれないが、援護点の多少が彼らの勝率に影響を及ぼしていることは確かだ。援護に恵まれないがゆえに成績を伸ばせない投手も少なくはないだろう。しかし、その置かれた状況のなかで結果を出すことを理想としてきた男もいるのだ。野茂の言葉には頭が下がるが、この精神こそがパイオニアとして海の向こうで成功を収めることができた大きな要因なのではないだろうか。ユニフォームを脱ぎはしたが、現代さらには次代のエースたちが学ぶべき姿勢であることに変わりはない。今後、一人でも多くの“野茂論者”が現れることを祈ろう。
2008年10月20日クライマックスシリーズ第1ステージ第3戦。阪神・岩田、中日・吉見の両先発の投手戦により、8回までお互い無得点。阪神はここまで中日打線を1安打に抑えていた岩田を下げ、守護神・藤川を送り込んだ・・・。
思い返せば、守護神・藤川とは岡田監督が創り上げたものだ。2005年にジェフ・ウィリアムス、久保田智之、藤川球児の配置転換を図ると、この3投手による継投=「JFK」という勝利の方程式を作った。JFKは岡田阪神の象徴とも言え、競り合った試合はいつでもJFK。ランナーを出してもそのイニングを最後まで一人に託した。自分の信じた選手だから使った。打ち込まれても起用し続けた。その結果、以下の成績を残し、今では名将・野村監督に「近代野球の新しいスタイル」と言わせるほど、日本球界に大きな影響を与えることとなった。
話を戻すと、9回に登板した藤川は2死三塁で4番ウッズを迎え、カウント2-3から投じた渾身のストレートは無情にもレフトスタンドへ吸い込まれた。こうして阪神のクライマックスシリーズ敗退と同時に、5年間に及ぶ岡田阪神の終焉を迎えた。
試合後に、「最後、おまえで打たれてくれて良かった」と藤川にかけた言葉からは人情味あふれる人柄を感じ、監督と選手の信頼関係に感動を覚えた。
来季は真弓新監督を迎えて新しい阪神がスタートする。JFK解体との報道もあるが、いったいどんな虎を見せてくれるのか。新生阪神に注目したい。
執筆担当:伊藤順平
1イニングあたりに出塁を許した走者のおおよその数を示す「WHIP」は、先発中継ぎを問わず、その投手の能力が表れる最も明確な指標だ。いくら被打率の優れた投手であっても、四球を連発するようでは高い信頼は得られない。メジャーリーグでは公式記録として扱うほど重要視されている。
一般には1.30前後が平均的な目安とされるが、今回取り上げた10投手の平均値は1.05である。限りなく完ぺきに近いものを求められる、抑え投手とはそういった役割を担う立場なのだ。
今季は藤川球児(阪神)が圧倒的な数字をたたき出した。他投手と比較しても、群を抜いて優れた成績だ。単純計算にして、1度の許出塁につき4アウト以上を奪うのだから、その完成度の高さには脱帽するばかりである。
では、得点状況別に見るとどうだろう。1点差の状況では多くの投手が成績を落とすなか、唯一プラスに転じたのが岩瀬仁紀(中日)である。合計での数字こそ10投手中最低だが、失点の許されない緊迫した場面で集中力を発揮するあたりはさすがといったところだ。10年連続50試合以上登板を記録した鉄腕の意地とプライドすら垣間見える結果となった。
抑え投手といえどもその投球スタイルはさまざまだ。よって、三振を奪うことが必ずしも最高の形とはいえない。しかし、時には火消し役として登板する機会もある立場だけに、失点の可能性を限りなくゼロに近づけるという点で、奪三振率は安易に無視できない数字である。特に、必要な場面で狙って奪えるか否かは、クローザーとして重要な能力のひとつといえるのではないだろうか。
得点圏に走者を置いた状況こそ、最も三振が求められる場面だ。失点の確率が高まるあまり、10人中6人の投手が奪三振率を低下させた。岩瀬にいたっては、得点圏走者のいない状況と比べ3分の1にも満たない数字である。前出のデータでは特筆すべき成績を示しただけにこの結果はかえって際立つ。必要とされる場面で三振を奪えなかったことが、例年に比べやや不調を感じさせた今季の投球を表しているのかもしれない。
どれほど優れた投手でも、相手打者を常に封じ込むことは容易ではない。ピンチの可能性をいかにして最小限にとどめるか、これもクローザーとして欠かせない重要な要素といえるだろう。被安打ひとつにしても、当然ながら長打は避けたい。走者を背負った状況であれば、なおさら回避したいものである。
被長打率においては、藤川とクルーン(巨人)が2割台を切る優秀な成績を残した。抑え投手のなかでも指折りの球威を誇る両右腕だけに、この結果は大いにうなずける。しかし、走者状況別に見るとその差は歴然だ。藤川が走者を置いた場面ほど長打を許していないのに対し、クルーンはそれと正反対の結果を示している。今季、両者の防御率が1.50余りひらいた要因のひとつは、こんなところに潜んでいるのかもしれない。
さらに、浴びた一発がそのまま失点に直結する被本塁打は、少ない得点差で登板する抑え投手にとって致命傷となりかねない。長打を献上しやすい林昌勇(ヤクルト)の被本塁打率はやはり厳しい結果となった。10投手のなかで唯一1本台を示したツバメの守護神は、“一発病”という大きな不安を残して来日2年目のシーズンに臨むことになる。
抑え投手といえばまずはセーブ数――。紙面ではそれが当たり前かもしれないが、そんな身近な成績をあえて最初に掲載しなかったのは、クローザーの過大評価につながりかねない不透明な指標から視線をそらせるためである。WHIP、奪三振率、被長打・被本塁打率といった詳細なデータを基に分析すると、セーブ数ひとつでは見えてこない要素がいくつか浮き彫りになった。
結論として、あらゆる部門において優秀な数字を示した藤川こそ、球界ナンバーワンの抑え投手といって間違いないだろう。チームが彼を“絶対的”存在として据えるかぎり、猛虎のブルペンはしばらく安泰であると断言したい。
今回、冒頭で取り上げたボロウスキーほど“飾り付け”された投手は見当たらなかったが、表面上では明らかにならないデータによって、彼らが持つ本来の能力や欠点を少なからず提示できたのではないだろうか。これによって来季以降、各球団が誇る“守護神”なる存在を少しでも異なった角度から眺めていただければ幸いである。
※データ及び所属球団は2008年シーズン終了時点

