2009年07月03日

スライダーは本当に飛ぶのか

※掲載データは2009年7月1日終了現在

 解説などで、「甘く入ったスライダーは飛ぶ」という言葉を良く耳にする。失投を本塁打された後に聞かれる言葉だ。スライダーの回転の仕方がバットに当たった後の飛距離に影響を与えるという説もあるらしいが実際のところどうなのか。力学的には速い球ほど強い打球になりにくいと言われるが、データの観点から調べてみた。

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 スライダーは、他の球種に比べ肩や肘への負担が少なく、比較的容易に投げる事が出来ると言われる。それだけに、配球におけるスライダーの割合は他の変化球よりもずば抜けて比重が重く、全体の約4分の1を占める。現在の日本野球界において最も重要な変化球である事は間違いない。

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 ほとんどのピッチャーが投げているといえる球種だけに、被打率はそこまで目を見張るものではない。問題は本塁打が占める割合である。一口にスライダーと言っても個人差があり、今回は飛びやすいかどうかの問題なので、安打の中で本塁打になった打球の割合という観点から見てみた。噂どおり、他の球種に比べスライダーは捉えられると本塁打になる確率は高いようだ。とりわけ打たれにくいわけでもなく、それだけ危険が伴う球種であるのに、配球の4分の1を占めるほど重宝されるのはなぜだろうか。

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 ストライクゾーンに投げても、打者が見送る可能性が高く、比較的空振りをとりやすい球種である事がわかる。カウント球としても、決め球としても使えるという事だ。実際に、捉えられた場合は確かに他の球種よりも打球が飛びやすい傾向にあるかもしれないが、投げやすさや使いやすさから考慮すると、それを差し引いても使い勝手の良い球種だと言える。

 という事は、使い勝手が良く頻度が高いだけに、打者からも予測しやすくなり、その結果芯を捉える可能性が高いとも言えなくはない。今後、時代の変化とともに野球も変わり、投球割合やリードも変わってくるだろう。そうなった時、スライダーの存在が今と比べてどうなっているのか、それでもスライダーは飛びやすい球種だと言われているのだろうか。また、その時改めて、傾向を調べると今回とは違った結果が出るかもしれない。


posted by 伊藤 秀亮 |20:11 | 日本プロ野球 | コメント(0) | トラックバック(0)
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2009年06月26日

キングの挑戦

※掲載データは2009年6月20日現在

 長い長いベースボールの歴史の中で、ハンク・アーロンよりもベーブ・ルースが「本塁打の象徴」として語り継がれてきたのは、おそらく彼が時代を支配したからだろう。ともに通算700を超える本塁打を放ちながら、アーロンが4度しか本塁打王になれなかったのに対し、ルースは実に12度もの栄誉を手にした。長年タイトルを守り続けることは、その存在が人々の記憶に刻まれる最もシンプルな形なのかもしれない。

 今日の日本球界にも、2年連続本塁打王として君臨する一人の和製大砲がいる。横浜不動の四番、村田修一だ。彼が日本人屈指の長距離打者であることは今や疑う余地もない。2007、08年といずれも激しいホームランダービーを制し、今季も当然のごとく本塁打王候補の筆頭に挙げられた。

 ところが、WBCでの負傷が影響し、“王座防衛”には黄色信号がともっている。復帰戦以降、コンスタントに数字を伸ばしてはいるものの、トップを走る中日・ブランコに7本差をつけられるなど、依然として厳しい状況だ。そこで、横浜が60試合を消化した時点での各打者の成績を基に、ペナントレースの優勝ラインならぬ「本塁打王ライン」を算出してみた。下がその表である。

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 用いたデータと計算式は以下の通り。

対象選手…セ・リーグ本塁打ランキング上位3名と村田
使用データ…①出場試合数、②打数、③本塁打数、④所属チームの残り試合数
計算式…(目標本塁打数-③)÷(②÷①×④)

 左端列は目標となる本塁打数、右4列は各打者がその本数を達成するために要する本塁打率を表したものとなっている。つまり、ブランコが40本塁打に到達するには、残りのシーズンで本塁打率.064をマークする必要があるというわけだ。

 では、村田が3年連続の王冠を奪取するためには、どれほどのペースで数字を積み上げればよいのか。ブランコとの対比で探ってみよう。6月20日現在で、ブランコの本塁打率は.079である。仮にこれが維持されたならば、シーズン終了時には45本塁打を記録する計算となる。村田がそれを上回るには、本塁打率.110以上を残さなくてはならない。およそ9打数に1本の割合で本数を稼ぐ必要があり、その道のりはやはり険しいものといえる。


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 しかし、それが決して不可能ではないこともまた事実だ。タイトルを獲得した過去2年の本塁打率推移をグラフ化すると、いずれも右肩上がりの折れ線が表れた。これは、村田が打者としてスロースターターであることを意味する。特に昨年は、シーズン中盤以降に本塁打を量産し、61~144試合限定での本塁打率は驚異の.118を記録していた。北京五輪参加による欠場期間があるため安易な比較はできないが、仮に今季残り試合を昨年と同じペースでばく進するとなると、計算上、何と48本塁打の達成が見えてくるのだ。もちろん容易なことではない。ただ、前例があるだけに、わずかながら希望の光も差す。

 セ・リーグでの3年連続本塁打王は、1974年の王貞治(13年連続)以来誕生していない。30年以上経ったいま、村田がその資格を得た。日本における「本塁打の象徴」の足元に、手をかけるチャンスを得たのだ。これは、彼に課せられた一つの使命なのかもしれない。21世紀を代表するホームランアーティストへ――。男には、それを成し遂げるだけの、底力と価値がある。


posted by 山田 隼哉 |17:04 | 日本プロ野球 | コメント(0) | トラックバック(0)
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2009年06月25日

選手分析 ~西武 #18 涌井 秀章~

※文章、表中の数字は2009年6月17日現在

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 昨季は10勝11敗に終わり、自身の成績としては不本意だった涌井。しかしWBCを経て、2年連続の開幕投手としてスタートした今季は、ここまで7勝を挙げ順調に白星を積み重ねている。17勝を挙げ最多勝を獲得した07年をほうふつとさせる安定感だ。

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 最近3年で比較してみると、目を引くのが被打率の低さと奪三振率の大幅な向上だ。特に奪三振率はキャリアハイの前年を大きく上回り、今季は9イニングあたり2つ以上も多く三振を奪っている。では、多彩な変化球と高い制球力を持ち、“技巧派”としてのイメージが定着しつつあった涌井の投球に何の変化があったのだろうか?

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 今季の涌井の “変身”ぶりを紐解く鍵は、ストレートにあった。追い込んでから様々な球種を投げていた昨季に比べ、今季は40%を超える割合でストレートを選択。一方でスライダーやカットボールの割合は減少し、いわゆる“力で押す”場面が増えているのだ。追い込んでからのストレートの平均球速を昨年と比較しても、3km/hほど増しており、「球速以上のキレを誇る」と評されるストレートにより力強さが加わっていることが見てとれる。

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 ストレートの向上は被打率・被長打率の面からも明らかだ。ともに昨季から大きく良化しており、“勝負球”として申し分のない数字を残している。さらにストレートの威力が増したことの副産物としてか、フォークの威力も向上。被打率、長打率ともに0割台をキープしており、この2つの球種が今季の好調ぶりを支える一因となっている。

 今季は狙って三振を奪える投球をテーマにストレートを磨いてきたという涌井。先で示したように、ここまでは思惑通りに事が進んでいると言える。これも今季から松坂大輔(現BOS)の背番号「18」を受け継ぎ、本人としても心に期すものがあったからなのだろう。2年連続の栄冠に向け、頼もしいエースがチームを高みへと導く。


posted by 佐々木 浩哉 |13:37 | 日本プロ野球 | コメント(0) | トラックバック(0)
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2009年06月19日

選手分析 ~中日 #42 ブランコ~

※文章、表中の数字は2009年6月15日現在

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 昨季は主に米マイナーの2Aでプレーし、決して前評判の高い選手ではなかった中日・ブランコ。しかし、ここまで18本塁打を放つなど、並み居る強打者を抑えて本塁打ランキング単独トップの好調ぶりだ。本塁打1本あたりに要する打数は12打数強と高い数字を残し、ナゴヤドーム天井直撃弾を放つなど、ずば抜けたパワーの持ち主である。その驚異的な長打力で他球団の投手陣を震え上がらせている。

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 開幕直後から4番に据えられたブランコだが、当初はその責務を果たせているとは言いがたく、4月は2割台前半の低打率に本塁打も4本のみ。それでも、才能を見込んで根気よく起用し続けた落合監督に応えるように、5月は一気に打撃成績が向上。中でも注目したいのは本塁打率で、月を経るごとに一発の出る確率が倍増している。交流戦が主となる6月に入ると約6打数に一発と驚異的な数字を残しており、ほとんどが初対戦となるパ・リーグ球団の投手陣にも対応ができている。

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 ブランコの打撃で特徴的なのはとにかく積極的な姿勢だ。ファーストストライクは見逃さず、スイング率はリーグ平均を大きく上回る69%。また、ストライクカウント別の打撃成績でも、その理由が垣間見える。追い込まれるとどうしても脆さが出てしまうので、有利なカウントのうちに勝負しようという思惑なのだろう。ブランコと対戦する投手は、ファーストストライクをいかに取りに行くか、という点が勝負の大きな鍵となる。

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 昨季まで主砲として君臨したウッズと比較しても、チームへの貢献度はブランコが上回る。昨季得点圏打率が2割前半に留まったウッズに対し、ブランコはここまで.333と好成績。球界でも屈指の長打力を誇ったウッズの長打率すら上回り、本塁打・打点ともこのペースでいけばウッズの昨季残した数字を超える見通しだ。ウッズの抜けた穴を埋めるどころか補って余りあるほどの活躍を見せており、チームにとって嬉しい誤算となっている。

今や中日打線において最重要警戒打者となったブランコ。今後は各球団ともあの手この手でブランコ対策を講じてくることだろう。ここまで勝率5割前後をさまようチームにとって、4番打者の落ち込みは致命傷ともなりかねない。また、必ずやってくるであろうスランプや壁をいかに乗り越えるかが、ブランコの、そしてチームにとっての正念場となる。ブランコに求められるものは、もはやウッズの穴埋めだけに留まらない。


posted by 佐々木 浩哉 |02:57 | 日本プロ野球 | コメント(1) | トラックバック(0)
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2009年06月12日

選手分析 ~巨人 #49 ゴンザレス~

※文章、表中の数字は全て2009年6月7日終了現在

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 助っ人外国人を多数抱えるチームの中で、意外な男が台頭を見せた。ヤクルトを退団し、今年から巨人にやって来たゴンザレスだ。5月初旬の一軍昇格後、6度の先発登板で防御率1点台、41回1/3イニング連続無四球と、チーム随一の安定感を発揮している。

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 好調の要因はいくつかある。まずは、先頭打者の出塁を許さない点だ。昨年3割台半ばだったイニング先頭打者への被出塁率が、今季は大きく改善された。各イニング最初のアウトを確実に奪うことで、ピンチの拡大を最小限に抑えているのだ。

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 また、防御率の変動に直結する部分でも、その好調ぶりは発揮されている。得点圏走者を置いた場面での粘り強さは、被打率が示すとおり驚異的なものだ。昨季の大きな課題だったピンチ時の不安定感を克服し、打たれ強い投手へと変貌を遂げたのである。

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 そして、得点圏被打率の飛躍的向上は、球種の投球割合から立証できる。ゴンザレスの武器となる球種は、被打率が最も低いスライダーだ。しかし、昨季はそのスライダーを、得点圏に走者がいる場面で多投することはなかった。状況に応じない単調な投球内容といえるが、今季は明らかに違う。得点圏時におけるスライダーの割合増加が顕著に表れているのだ。失点の危険性が高まると、得意球を生かしたスタイルに切り替える。これが功を奏し、大事な場面で確実に打者を抑えているのだ。捕手陣の好リードを示すデータでもあり、ゴンザレスが巨人移籍に際して得た、最大の恩恵といえるのではないだろうか。

 エース・グライシンガーが復調しない中で、ゴンザレスの台頭は巨人にとって嬉しい誤算だったはずだ。目下リーグ首位快走中のチームに不安は少ないかもしれないが、シーズンは長く、昨年苦杯をなめた日本シリーズも控える。思わぬ助っ人が、救世主として巨人を支えるかもしれない。


posted by 山田 隼哉 |10:19 | 日本プロ野球 | コメント(0) | トラックバック(0)
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2009年05月31日

イムの正念場

※掲載データは2009年5月30日現在

 燕軍団の守護神、林昌勇が絶好調だ。WBCの激戦を終えた右腕から、心身の疲労は感じ取れない。韓国屈指の快速サイドハンドは、紛れも無く、今季序盤戦における12球団最高のクローザーだ。

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 20試合を投げて失点は無し、走者も多くを許さない。弱点の見当たらぬ安定感は、もはや無敵とさえ映る。今後の戦いに向け、果たして懸念はあるのか。

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 昨季も開幕直後は無失点登板を連発した。5月8日に初失点を喫するまでの11試合がそれだ。ところが、直後の6月に入ると、信じ難いほどの不振に陥った。月間成績の跳ね上がりが顕著に物語る。さらに、一時の復調を経て、9月には再び荒波が訪れた。疲労の蓄積によるものと考えるのが自然だが、今季もその可能性がゼロであるとは言い切れない。まもなく迎える6月、上位争いが激化するシーズン終盤を乗り切ってこそ、来日2年目の真価が発揮されるのだ。

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 さまざまな登板間隔への適応も、課題の一つと考えられる。際立つのは、日程が大きく開いた際に生じる成績の悪化だ。実戦感覚の回復に難があるようにも映る。救援投手の登板日は流動的で、個人がコントロールできるものではない。それだけに、いかなる条件においてもベストな状態を保つことが、零封投球の継続には必要不可欠となる。

 もっとも、一年間無失点というのは、あまりにも非現実的な発想だ。連続試合記録はいずれ途絶えるだろう。しかし、肝心なのはその後だ。ずるずると調子を崩すようでは、昨年と何ら変わりない。守護神の本領は、長いシーズンが終わって初めて明らかとなる。


posted by 山田 隼哉 |12:37 | 日本プロ野球 | コメント(1) | トラックバック(0)
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2009年05月28日

選手分析 ~横浜 #18 三浦 大輔~

※文章、表中の数字は2009年5月24日終了現在

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 不振にあえぐチームの中で、三浦が好調だ。昨オフにはFA流出を取り沙汰された経緯もあり、今季にかける意気込みは並々ならぬものがある。リーグ防御率ランキングで5位につけ、5勝はリーグ2位タイ。今季は安定感ある投球が目立っているが、1イニングあたりの走者出塁数を表すWHIPは脅威の0.778をマーク。3イニングを投げて出塁を許す走者がおよそ2人となる計算で、リーグの先発投手の平均が1.227であることからその好調ぶりは際立っている。

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 加えて圧巻なのが走者を出してからの粘り強さだ。昨季も走者を出してからの被打率が2割台前半と優秀な数字を記録していたが、今季はそれをはるかに上回る.115。走者を背負っても抜群の集中力を発揮し、身上の粘りの投球により一層磨きがかかっている。

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 そこで、この好調の要因の一つとして挙げたいのがストレートである。直近3年間のストレートの投球成績を比較するとその違いは一目瞭然だ。被打率は言うに及ばず、被長打率の低さが特に目を引く。被打率と被長打率が1割台いうことは、今季ここまでストレートをほとんど長打されてないことを表している。過去2年痛打を浴びていたストレートの質が、以前より向上していること。これが、今季の好調につながっていると言える。

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 また、ストレートが打たれていない理由としては、外角にしっかりと制球できていることが大きい。真ん中へ甘く入ってくる割合は、昨年に比べ8ポイント減の11%。投球の基本である外角への制球を徹底し、必要とあらば巧みに内角を突く三浦のスタイルはさながら生きた教科書である。ストレートがどれだけ良くても、失投が多ければ意味をなさない。正確にコースへ投げ込む制球力こそが三浦の真骨頂だ。

 5月半ばにして事実上の監督交替を余儀なくされ、チームは今季も下位を低迷。そのような状況下にあって、絶対的エースである三浦に掛けられる期待や果たすべき責任は限りなく大きい。チームが浮上するためには、たとえ孤軍奮闘となっても好投を続けていくしかない。「強いところを倒して優勝したい」残留会見で発した三浦の言葉からも、その覚悟のほどが窺い知れる。


posted by 佐々木 浩哉 |11:02 | 日本プロ野球 | コメント(0) | トラックバック(0)
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2009年05月16日

選手分析 ~楽天 #17 ラズナー~

※文章、表中の数字は2009年5月4日現在

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現役のメジャーリーガーが、日本球界でどれだけの活躍を見せられるのだろうか。今季より楽天に入団したラズナーは、昨季名門ヤンキースでほぼ一年間にわたって先発ローテーションを守った経験を持つ。通算9勝と成績こそ一級品とは言い難いが、まだ28歳と若いこともあって球団の寄せる期待は並々ならぬものがある。

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 ラズナーの武器といえば140キロに迫る手元で鋭く曲がるカットボール。投球割合の4割近くを占め、被打率もここまで2割台前半と優秀な数字を残している。開幕から1ヶ月を過ぎ、恐らく他球団の警戒が最も集まっている球種だろう。その一方でストレートは平均140キロそこそこと目立った数字ではなく、バリバリのメジャーリーガーのストレートをイメージしていると面食らうかもしれない。被打率も4球種の中で最も悪い数字となっており、190cmを超える大柄な体格を持ちながら力で押すパワーピッチャーではないことが分かる。

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 そして、ラズナーの最大の持ち味はその制球力にある。とにかく逆球が少ないのだ。与四球率でも2.20と低い数字を記録しているのだが、全投球に対する逆球率は脅威の3.0%を誇っているのだ。その数字は制球に定評のある岩隈をはるかにしのぐ。捕手の構えた位置から大きく外れることがほとんど無く、本当の意味で制球力を持った投手といっていいだろう。140キロそこそこのストレートながら、メジャーの舞台で戦ってこられた理由がここにある。

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 もちろん課題もある。リーグ平均と比較して見ると分かるとおり、本来であれば低めが最も打たれにくいものだが、ラズナーは低めをよく打たれている。さらに低めのボールゾーンでもあまり空振りを取れておらず、低めを有効に使えていないのだ。今は開幕してから1か月と日が浅く球に力があり高め付近の球でも打たれていないが、疲労が蓄積し始めるシーズン中盤以降を乗り切るためには投手の生命線とも言える低めの制球力の向上が必要不可欠となる。

 岩隈・田中の強力二枚看板をそろえ、念願のクライマックス・シリーズ進出が夢ではなくなってきた楽天。春先とはいえここまで常に上位をキープしており、チーム状態は好調そのものだ。「春の珍事」で終わらせないために必要なのは「第三の先発」の確立。名門ヤンキースのローテーションを守った男に掛ける期待としては、決して過大なものではないだろう。メジャーのプライドを掛け、ラズナーが楽天のキーマンとなる。


posted by 佐々木 浩哉 |22:29 | 日本プロ野球 | コメント(1) | トラックバック(0)
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2009年05月11日

パの田中、セの坂本

※掲載データは2009年5月8日現在

 “今が旬”と表現するのは、あまりにも安易かもしれない。弱冠20歳の若武者二人が、今季のプロ野球において最も輝かしい光を放っている。躍動感に満ちあふれた彼らの存在は、まさしく日本球界の希望だ。

■ 田中 将大(楽天)

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 田中将大は楽天にとって、もはや「未来のエース」ではない。開幕以降、2度の完封を含む4連続完投勝利はまさに圧巻だった。今季は投球の安定感が劇的に増している。驚異の防御率0点台に加え、WHIP も3イニングあたり2人以上の出塁を許さない計算となる。さらに、1イニングに要する平均投球数(P/IP)が07、08年と比べおよそ3球も少ない。安定かつ効率的な投球によって、右腕の連続完投は達成されていたのだ。

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 今季の田中はめりはりのある投球を習得したようだ。奪三振のデータがそれを物語る。走者を背負った状況での成績を年度別に算出すると、今季は極めて高い割合で三振を奪っていることがわかった。走者の進塁を防ぎたい場面で、確実に奪三振を狙うことができる。必要性に応じた能力の発揮が、好成績を生む大きな要因となっているのだ。“神の子・マー君”の進化は計り知れない。

■ 坂本 勇人(巨人)

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 坂本勇人は打撃の開眼が著しい。今季の打率は3割台後半と、飛躍的な成長を遂げている。中でも特筆すべき点は長打の多さにある。本塁打数は早くも5本をマークし、8本にとどまった昨年を大きく上回るペースだ。IsoP(長打率-打率)も大幅に上昇しており、長打力の向上は明らかなものといえる。さらに、フライアウトに対するゴロアウトの割合(GO/AO)が1以下の坂本は、比較的打球弾道が高いタイプに分類される。将来的に、長距離打者として大成する可能性を秘めた逸材でもあるのだ。

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 坂本がこれまでのキャリアで放った全13本塁打は、いずれもレフトスタンドへたたき込まれたものである。彼は“引っ張り”で力を発揮する打者なのだ。そして、今季は左方向への打球が全体の半数以上を占めている。これは、坂本にとって理想的な打撃が実現されていることを意味する。驚異的な好調ぶりは、打球の傾向としても顕著に表れているのだ。巨人の未来を背負って立つ男に、首位打者戴冠の期待が膨らむ。

 彼らは、将来的に“球界の至宝”となるだけの素質を備えている。共に06年の高校生ドラフトで1位指名を受け、田中は1年目、坂本は2年目からメディアの高い注目を浴びてきた。3年目を迎える今季、序盤の好調がシーズンを通して維持されたならば、二人は名実ともにまた一歩“至宝”への階段をのぼるだろう。彼らが両リーグを代表する選手となる日は、きっとやって来る。


posted by 山田 隼哉 |16:34 | 日本プロ野球 | コメント(0) | トラックバック(0)
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2009年05月01日

ブルペンエース

※データは2008年シーズン終了時点

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 「ブルペンの球は、球界でも5本の指に入る」。今季から楽天投手コーチを務める佐藤義則コーチは、青山を評してこう語る。力のある140キロ後半のストレートに多彩かつキレのある変化球。その素質を高く評価されながら、未だ目立った実績を残せていないのが実情だ。昨季残した数字から「ブルペンエース」青山の投球内容を検証したい。

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 青山の投球スタイルはスライダー・シュートを使った左右の揺さぶりにある。右打者に対してはシュートで内角をえぐり、外角のスライダーで勝負。左打者にはスライダーで内角を突き、外角へのシュート・フォークで仕留めに掛かっている。だが表2のとおり、肝心のスライダー・シュートの被打率が3割前後と芳しくない数字が並ぶ。

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 スライダーを打たれるパターンはとにかく高さ。真ん中より高めに抜けると高い確率で痛打されている。低めに決まった時は被打率も低く、被本塁打も0。月並みではあるが、徹底して低めに投じる意識を持つことがスライダーを生かすポイントとなる。

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 シュートに関しては厳しい数字が出た。揺さぶりの鍵となるべきボールが、コースへ投じているにも関わらず非常に高い被打率を喫しているのだ。特に右打者への内角シュートが打たれているのはいただけない。同コースに投じられたストレートがほとんど打たれていないことから、投球パターンを読んだ打者に狙われていると見るのが自然だろう。シュート自体を減らすか、あるいは割り切ってボールゾーンへの見せ球に徹するなど配球に工夫が求められる。

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 「ブルペンエース」と評される投手は往々にして精神面に課題を持つとされる。そして残念なことに、青山もその例外ではないようだ。最もプレッシャーの掛かるであろう1点差の状況において、被打率.375。2点差以上の状況から1割以上も悪化し、接戦での苦しい投球がそのまま数字に表われている。ここを改善できないとチーム内での信頼を得られず、重要な局面での起用は難しくなってしまう。

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 だが、悲観することばかりではない。走者を置いた場面での粘り強さは年々増しているのだ。06年の被打率は3割後半の厳しい数字に終わったが、昨季は2割前半の好成績。走者を出しても簡単にタイムリーを許すことなく、我慢の投球ができるようになった。この課題を克服してきた点は大いに評価されるべきだろう。ただ、その反動か走者無しの場面では反比例して被打率が悪化。投球にリズムを作るためにも走者を出さないピッチングを心がけたいところだ。


 チームは開幕以来白星先行と順調なスタート。とはいえ、先発・救援ともに枚数不足の感は否めない。今季は春季キャンプ中のケガにより開幕一軍入りを逃した青山だが、万全となればすぐにでも一軍に呼ばれることだろう。それだけの期待を背負っているだけに、いつまでも「ブルペンエース」の地位に留まっているわけにはいかない。青山がその殻を破った時、チーム悲願のクライマックス・シリーズ進出が大きく近づいているはずだ。


posted by 佐々木 浩哉 |19:13 | 日本プロ野球 | コメント(1) | トラックバック(0)
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