2009年11月15日
イタリア人の中に日本人が混じって練習から見えた日本人の課題
前回の記事「イタリア人の中に日本人が混じって練習(http://www.plus-blog.sportsnavi.com/idalia_calcio/tb_ping/120)」の続きで、今回はそこから見えた日本人選手の課題について思ったことを書きます。 ひとつだけ先に言っておきますと、今回遠征に参加した子ども達はひとつのチームとしての参加ではなく、さまざまなクラブから希望者だけが参加したものであるため、チームとしての成熟度ではなく個々の選手個人としての課題ということで書いていきます。 前回の記事でも書きましたが日本人選手はイタリア人選手に比べても足元の技術のレベルは比較的高いと言えるでしょう。これは多くの人が語っていることであり日本にいるみなさんも既にご存知だと思います。 しかしサッカーにおいて「足元の技術がある=サッカーが上手い」といった式が成り立つでしょうか?答えは「NO」です。 むしろサッカーにおいて足元の技術(ここで言うのはリフティングや対面パスなどの所謂基礎練習で行うような技術)が優れているからと言って「技術がある」と言ってはいけないのかもしれません。 それが顕著に現れたのが遠征時に行われた「A.C SIENA」のジュニアユースとの練習試合でした。 対戦相手のSIENAのジュニアユースは現在全国リーグ(イタリア全土を7ブロックに分けたリーグ戦の1ブロック)の1位にいる強豪チームでした。セリエAのプロクラブの下部とあり、Perugiaの選手よりも質も高くて体格的にも比較的大きな選手が多く、日本の子ども達にとっては少し格上の相手でした。 試合で見られた日本の課題を順にいくつか挙げていきたいと思います。 ・「前に運ぶ意識」の低さ ボールを失うことを恐れているからか、最終ラインでボールを回すばかりでボールが中々前に運べない。次第にプレスをかけられてボールを失うか、もしくは仕方なく後ろからロングボールを蹴らされる(体格的に劣る相手に前線でそのボールをキープすることもできない)ことを繰り返す場面が多かったです。 ・「パススピード」の遅さ 全体的にパススピードが遅く、ほとんどのパスが相手に引っかかる、もしくはインターセプトされてそこからカウンターを受ける場面も非常に多かったです。 練習で対面パスをやらせても非常に正確に蹴れる・止めれる子は多いのですが、試合の中で強く・相手に取られないパスを蹴れて、それを正確に止めれる選手はまだ少ないように感じました。 ただ試合の後半になってくると選手達も弱いパスで取られていることに気づいたのか、パスを強く出す選手が出てきたことには改善しようという意思表示が見られたことでよかったかなと思います。ただそれを受ける方は対応しきれていませんでしたが、これはトレーニングが必用であるためにすぐには改善できませんね。 ・相手との間合い(日本人相手と外国人では間合いが違う) ドリブルをさせても非常に上手な子はいます。ボールが足元にくっついたように扱い、細かいタッチでスルスルと抜けるようなドリブルをする子どもがいました。 しかし普段相手している日本人選手と、今回のように手足の長い外国人相手とではその間合いが異なってきます。いつもの感覚で抜けたと思っても後ろからスッと伸びてくる、届かないと思った場面でも足先が届いてボールを突かれるといった場面に遭遇した選手は多かったと思います。 これは日本では中々経験できることではないでしょうから、子ども達にとってそれを経験できたことは非常に大きかったのではないでしょうか。 また、一人抜いてもすぐに次の相手がくるとどうしても一人では打開できません。日本人の子の方が上手いと言っても一人で何人もの選手をスルスルと抜けるような技術やスピードの差はないのが現実です。 また、この遠征の午前中はイタリアサッカー協会コーチであるGianpaolo Colautti氏,によるトレーニングが行われました。 Gianpaolo氏は12年程前から毎年日本からイタリアにやってくるチームの指導や、日本にも講習会やトレーニングをしに行ったことがあることから日本人選手の特徴を非常に理解しているイタリア人の一人でもあります。 そんな彼が日本人の子ども達に行ったトレーニングに「早くシュートまで持っていく」というテーマを含ませていました。 上にも書きましたが、日本人の子ども達はボールを前に運ぶ意識が非常に少ないというのが彼も感じていることのようで、「点を取るためにはボールを前に運ぶ必要がある」「そのために後ろの選手は常に前を意識し前線にボールを運ぶ準備をする必要がある」「前線の選手は常にボールを受ける準備をし、すばやくシュートまで持っていく」こういった要素を踏まえたトレーニングを行っていました。 また特に「シュートを打つ」という意識が日本人は低いということも指摘しており、どんどんシュートを打っていこうという声かけを常にしていました。 これだけを見ていると、「イタリアサッカーっぽく後ろから前に蹴ってばっかの単純なものに見え、日本がやるべきサッカーじゃない」なんて思う方もいらっしゃるかもしれませんが、決して後ろからロングボールを放り込む練習でもなく、基本パスは浮かさない、ディフェンス→中盤→フォワードと順に経由していくようなトレーニングであったことを説明しておきます。大事なのは常に前を意識して素早くボールを前に運ぶこと。そしてシュートまで早くもっていくこと、それが今回のテーマでありました。 「ボールをポゼッションしてためを作ることも必要な時もサッカーにおいてはあったりしますが、試合終了5分前に点を取りにいくにはこういった前を意識することも必要だろ」とGianpaolo氏は言います。こういった試合状況や流れによってプレーを変える選択肢を持つことが非常に重要だと思います。 最後にひとつトレーニングにおいて気づいた面白い部分なのですが、Gianpaolo氏は常に「トレーニングがどういった意図であるのか理解しなければいけない」と言っていました。 「素早くシュートまで持っていく」といった練習をやった後にその最終系としてハーフコートで8vs8のトレーニングで、ボールタッチ数はフリー、でも3本パスをしたらシュートを打たないといけないといったトレーニングをしました。(浮きだまパスは禁止) 子ども達はボールを早く前に運んでシュートを早く打たないといけないという気持ちからかパスを繋ぎはじめます。しかしパスを行えるのは3本まで。ショートパスなどを繋げようものなら3本などあっという間に過ぎてしまいます。浮きだまパスも禁止なのでロングボールも蹴れません。 それを見ていたGiampaolo氏は「スペースがあるのにドリブルで前に運ぼうという考えも持たないと」と言っていました。 今までの練習がタッチ制限のある練習が多く、どうしても前線へのパスコースを探し素早く前に運びシュートまで持っていくといったトレーニングが多かったために、状況が変わったことでプレースタイルを変更する考えにまで及ばない子どもが多かったのです。 これがGianpaolo氏が言っていた「練習の意図を理解すること」の重要性だと思います。 このトレーニングはどういった目的なのか、どういった意図で行うのか、それをプレーする選手が常に考えることにより、状況が変わったらそれにあわせてスタイルも変える、そういった臨機応変さや柔軟さがサッカーには必用なんだなと感じました。 そういった能力が試合においてもさまざまな状況において対応できる力に繋がっていくのだろうと思いました。 最後に、今回の遠征を通して選手も指導者の方も様々な体験ができ非常にいい経験になったと思います。 また帯同させていただいた私にとっても普段見ることのできない日本人選手を間近で見ることができイタリアとの比較ができたことはとても貴重なものでした。 この経験をお互いに活かして今後の子ども達の成長に繋がってくれればと思います。
posted by idalia_calcio |19:33 |
日本サッカー |
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イタリア人の中に日本人が混じって練習から見えた日本人の課題
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なるほど、と思いました。
A代表の欠点と子供たちの欠点は、ほとんど同じです。
特にパススピードと練習の意図のくだりには、へぇ〜と感心してしまいましたね。
posted by ジダ | 2009-11-15 21:33
イタリア人の中に日本人が混じって練習から見えた日本人の課題
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日本のトレーニングの問題点は選手に考える機会を奪ってしまう点だったりするのかもw答えを知ってるかどうかではなく、答えの出し方を覚えて、状況にあった答えを導き出すトレーニングなのかもしれない。
posted by tom | 2009-11-15 21:35
イタリア人の中に日本人が混じって練習から見えた日本人の課題
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とても貴重な体験談をみせていただきました。
やはり他の国とサッカーで戦うには、そのレベル
に合わせないといけないかもと思いました。
競り合いの厳しさ、パスの速さ、ドリブルのタイミング等
無理なことかもしれないけど海外で年中
サッカー出来る環境がないと難しいのかなと思いました。
日本でできること難しそうです。
posted by さっかー好き | 2009-11-15 21:35
イタリア人の中に日本人が混じって練習から見えた日本人の課題
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素人ですが勉強になります。
手段が目的化してしまうのは、サッカーに限らず日本では良くあることだと思います。
目的合理的な意識の少なさの現れですね。
posted by とおりすがり | 2009-11-15 22:10
Re:イタリア人の中に日本人が混じって練習から見えた日本人の課題
コメント投稿者ID :
確かに日本のバックラインでのボール回しのスピードは世界と比較してもかなり遅いですね。
また練習の意図を指導者を含めて理解しておらず、ただ与えられたものをやっていると言った感じです。
私も指導者のはしくれとして非常き考えさせられる内容でした
posted by チェザーレ | 2009-11-16 07:05
イタリア人の中に日本人が混じって練習から見えた日本人の課題
コメント投稿者ID :
>ジダさん
結局は小さい頃からそういったことを意識してトレーニングできてるかどうかが上の年代ででているのだと思います。
パススピードに関してはまだまだ土のグラウンドでの練習をしている子どもが多い日本では仕方ない部分もあるんですよね。土だと芝より地面の摩擦力が低いため軽く蹴ってもスピードあるボールになってしまう。そういった意味でも日本でもっと芝のグラウンドで練習できる場所が整っていくことが望ましいですよね。
>tomさん
日本でも数年前から選手達に「答えを与える」のでなく、「考えさせる指導」というものがなされてきています。しかし問題なのは引き出しの空っぽな子どもに対して「考えろ」というのは酷なことで中身がなければ空けてもでてくるわけありません。
なのである程度の詰め込みも必用ですし、重要なのはそのあけ方を子ども達に習得させることだと思います。
必用な時に必用な引き出しを開けることが(しかも現代サッカーではそのスピードも問われます)今後日本が成長する鍵となると思ってます。
>サッカー好きさん
国によって様々なサッカーがあるのはもちろん、チームの数だけサッカーの形もあると思います。
自分達のサッカーを持ち、それを実行することはもちろん大事だと思いますが、相手の特徴を如何に把握して消すかということも勝負には非常に大事な部分だと思います。
環境的にも文化的にもサッカー先進国には及ばない部分ももちろんありますが、日本にも解決の糸口は絶対にあると思います。無理だと言ってしまったらもう成長はないですからね。
>とおりすがりさん
>「手段が目的化してしまうのは、サッカーに限らず日本では良くあることだと思います。」
仰るとおりだと思います。
例えば「日本のサッカーは走れなければ」と言い出したら単にとことん量を走ればとなりペース配分や緩急がつかないサッカーになったり(最終的にガス欠)、「ポゼッションサッカーが日本にあってる」と誰かが言えばボールを回すことばかりに集中してしまいゴールを奪うという大事なの目標が曖昧になったり、ひとつひとつが目的を達成するツールのひとつであることを、それ自体が目的になってしまっている部分は多くあると思います。
だからそれが失敗した際に他の手段がなかったりして手詰まりになるのだと思います。
>チェザーレさん
まだまだ「日本サッカー協会がこの練習を推奨しているから」とか「海外の×××のチームがこんな練習をしているから」とその練習の意図を指導者が理解せずに真似をして行っているだけのところも実際にあるようです。
もちろん協会が推奨する練習も指導する側がしっかり意図を理解して行えば有効なトレーニングとなることは明らかでしょうが、大事なのはどのトレーニングに対しても指導者がその意図をはっきり理解しそれをトレーニングを通して選手に伝えることができるかだと思います。
posted by イダリア | 2009-11-16 23:46
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