2009年12月11日

柏木の移籍と積極的に補強に動くフロントの狙い

即戦力MF獲得へ 柏木移籍でクラブ方針【中国新聞】
http://www.chugoku-np.co.jp/Sanfre/Sw200912110094.html

まだ正式に決まったわけではないにしろ、中国新聞でここまで書かれている以上、柏木の浦和移籍は確実なようです。

ユース出身の選手の移籍という感傷的な問題だけでなく、戦力的にも大打撃なところが悩ましいところです。

いっぽうでは柏木が移籍してもトップ下の人員は揃っているので大丈夫という意見もあります。

しかし実際のところ全然大丈夫ではありません。


柏木にはある重要な役割が与えられていました。

現在の広島には、その役割をこなせる選手が柏木一人しかおらず、このまま補強なしだと来シーズン大きな問題を抱えることになるでしょう。

けれどもそれを防ぐため優秀なる広島フロントは、大分トリニータの金崎夢生やアビスパ福岡の田中佑昌の獲得に動いているそうです。


柏木には速攻の際にドリブルでボールを前線に運ぶという役割が与えられていました。

柏木以外に個人技でボールを前に動かせる選手はミキッチしかおらず、この2人を封じられると佐藤寿人へ縦パスを放り込むくらいしかカウンターのオプションがありませんでした。

今シーズンはそのオプションすべてを封じられて、一方的に波状攻撃をくらっていた試合が何試合もありましたが、来シーズンは柏木が移籍するためカウンターの攻め手が減り、一段と劣勢に立たされることが予想されます。


それではマズイと広島フロントが獲得に動いた選手が、金崎と田中佑のふたりです。

金崎夢生
http://www.youtube.com/watch?v=ecWu_7C_9C0

田中佑昌
http://www.youtube.com/watch?v=M8mKf_2MLOU

この2人はスピードがあり、ドリブルに優れ、単独でカウンターからゴールを奪え、さらには柏木がこなしていたもうひとつの役割、サイドに流れて両翼をサポートするプレーも出来ます。

以前紹介した柏レイソルのポポも同様の役目を任せられますが、費用と将来性を考えるなら彼らの方がよいでしょう。


ただひとつ問題があります。

報道では金崎に正式に断られ、獲得の可能性があるのは田中佑だけとのことなのですが、田中佑はボールを持つとサイドに流れてクロスか中央に切り込んでシュートかの二択しかなく、他のFWとコンビネーション・プレーを試みることがほとんどないという点です。

パスサッカーが信条のペトロヴィッチ監督がそれをどう判断するかが気になるところ。

ペトロヴィッチ監督は悪い意味でこだわりの強すぎる監督です。

一昨シーズン、いまモンテディオ山形で救世主扱いの西河にベンチを温めさせ続け、対人能力に問題のあった森崎和を頑なにストッパーに固定し続けたのは周知の通りだと思います。

仮に田中佑を補強しても、パスサッカーに合わないとして、他の美点を無視し、起用しない可能性があります。

悪い予想はなるべくなら当たって欲しくないのですが・・・さてさて。

posted by hume |21:30 | J1 | コメント(7) | トラックバック(0)
このエントリをlivedoorクリップに登録 このエントリをはてなブックマークに登録 newsing it! このエントリを Buzzurl に追加

2009年07月20日

【広島VS千葉】なぜリアクション・サッカーで先手必勝なのだろうか

 ジェフ千葉はエースの巻をスタメンから外してきた。3トップの頂点に谷澤、その右サイドに深井、左サイドに太田が入り、実質0トップという布陣だった。千葉のミラー監督は、広島とまともに主導権争いをしても歯が立たないと考えたのかもしれない。だからこそ最初から広島に主導権を明け渡し、ドリブルに定評のある3人を前線に置き、速攻でゴールを狙おうとしたのだろう。しかしミラー監督の思い通りにはならなかった。

 まず千葉のスタメンにはサイドの人選に問題があった。右ウイングに深井、左ウイングに太田というかたちだったが、どう考えても逆に配置した方が良い結果を得られたはずだ。

 深井は足元へボールを納め、そこからドリブルで局面を打開しようとするタイプのアタッカーである。サイド深くに侵入し、クロスを上げるようなプレーは、レパートリーに持っていない。左サイドから中央へ切り込ませ、右足でシュートを狙わせたほうが、持ち味を活かせた可能性が高い。

 左サイドに太田というのもよくなかった。太田はスペースへ縦に走り込み、サイドへボールを引き出すプレーは見せても、中へ切り込む動きはほとんど見せなかった。これでは左サイドに右利きの選手を起用するメリットをまるで活かせない。利き足ではない左足でクロスをあげられる点を評価されたのかもしれないが、クロスを上げさせるだけなら本職の右サイドでプレーさせた方が期待が持てた。深井が試合から消えていた点も考慮すると、太田を無理にレフトウイングで使う意味は、全くなかった。

 さらに問題だったのが、クロスの受け手がひとりもいかなったことだ。足元にボールを欲しがる深井と谷澤が、広島の守備網に封じ込められ、受け手として機能していたのは、パスを引き出す動きに長けた太田ひとりだけだったため、この試合の千葉の攻撃は、太田の左サイドからのクロスが唯一のオプションだった。にも関わらず空中戦に強い巻がベンチにいたことから、広島の守備陣にピンチらしいピンチは訪れなかった。

 千葉の守備で特徴的だったのは、柏木・高柳・青山へのマンマーク・ディフェンス。それぞれに坂本・工藤・アレックスがマークに付き、オフ・ザ・ボールの動きで守備をかく乱しようとする広島の攻撃を抑え込もうとした。多大な運動量が要求されるため、長時間継続するのは無理だろうと思っていたが、案の定、前半35分あたりからマークがルーズになり、広島の攻撃陣はいくつかのチャンスを創った。

 ミラー監督がこのような戦術を採用した理由はよく分からない。巻のパワープレーというオプションがあったのだから、後半勝負でも良かったはずなのだが。なぜか前半から中途半端なプレスで消耗したあげくに、ヘトヘトとなった後半に広島の攻勢に耐えられず4失点で惨敗した。先手必勝というのならば、広島のDFラインにハイプレスを仕掛けるという手もあった。いったいどういった意図があったのだろうか。わけがわからない。

posted by hume |22:39 | J1 | コメント(7) | トラックバック(0)
このエントリをlivedoorクリップに登録 このエントリをはてなブックマークに登録 newsing it! このエントリを Buzzurl に追加

2009年07月11日

オシムがセンターバックにボランチの選手を起用した本当の理由

・決定力不足の原因はCBにあり

 世間一般では「日本代表が決定力不足に陥っているのは優秀なFWがいないためだ」と思われているようだ。確かに一理ある。

 Jリーグ得点ランキングの上位は、外国籍選手にほぼ独占されており、7月11日現在でトップ12入りしている日本人選手は、たったの4人にすぎない。そのうち日本代表に選出されているのは興梠慎三と岡崎慎司(清水)の2人だけである。これでは「FWの能力不足がゴールを奪えない原因」と考える人がいても仕方がない。

 しかし一方で、それとはまったく反対の意見もある。元横浜Fマリノス監督のハビエル・アスカルゴルタは「日本代表が決定力不足なのは優れたFWがいないためではない。優れたCBがいないためだ。」と述べている。


・消化不良な全員攻撃

 日本国内ではユースレベルでも浸透している全員守備に対して、全員攻撃はプロレベルでも中途半端な形でしか理解されていない。

 実践的なプレッシング戦術理論が日本に紹介されたのは、1995年8月に出版された瀧井敏郎著「ワールドサッカーの戦術」が最初だろう。それから約14年の歳月が過ぎ、イタリアへ遠征した日本の高校生チームが、現地のコーチを驚嘆させるほど成熟したプレッシング・サッカーを披露するなど、全員守備は日本サッカー界へ着実に根付いている。

 それに対して全員攻撃は、最近ようやく認知され始めたといった段階だ。大半のCBはフィードを蹴るだけで満足してしまい、パスを繋いで攻撃を組み立てようという意欲を持つ者は、ごく一握りの選手に過ぎない。けれどもここに日本代表の得点力不足の原因が潜んでいる。


・甘やかされるCBと燃え尽きるFW

 日本ではCBは温室育ちな半面、FWが馬車馬のようにこき使われるのが当たり前のようになっている。積極的なチェイシングで守備陣を助け、プレッシャーを掛けられると遠くにボールを蹴り飛すしか能がないCBに代わり、中盤まで下がって攻撃の組み立てをサポートし、それらを完ぺきにこなした上でさらに前線で得点に絡むプレーを義務のように言われている。

 これは明らかに過重労働だ。ディフェンスにゲームメークにと走りまわったあとでは、FWにゴールを奪う余力など残っているわけがない。


・日本人にも優秀なFWはいるのだが

 得点数ランキング上位の日本人FW共通の特徴は、パスを引き出す動きに長けているという点である。茂木弘人(神戸)や佐藤寿人(広島)は、外国人FWのように圧倒的な個人技でゴールをこじ開けるといったまねは期待出来ないが、パスの出し手と呼吸が合いさえすればいくらでも決定機を得られるだろう。

 けれども最終ラインからロングフィードばかりでは、彼らも持ち味を生かしようがない。彼らは周囲のサポートを得て初めて輝けるタイプのFWだ。チョンテセ(川崎)やダヴィ(名古屋)のように、持ち前のパワーとスピードで単独突破できるFWならばともかく、CBに「あとは任せた」と言わんばかりのロングボールを放り込まれても、準備万端で待ち構えるディフェンス陣に囲まれた状態では、彼らも途方に暮れるばかりだろう。


・最先端を突き進む広島

 まずは以下のランキング表を観ていただきたい。

第1位:広島(26/92.9%)
第2位:横浜FM(21/100%)
第3位:FC東京(20/90.9%)
第4位:鹿島(20/80.0%)
第5位:柏(15/78.9%)
第6位:神戸(15/75.0%)
第7位:清水(15/71.4%)
第8位:大宮(15/68.2%)
第9位:千葉(14/87.5%)
第10位:山形(14/77.8%)
第11位:新潟(12/42.9%)
第12位:浦和(11/50%)
第13位:G大阪(11/37.9%)
第14位:磐田(10/43.5%)
第15位:京都(8/44.4%)
第16位:名古屋(8/42.1%)
第17位:大分(7/63.6%)
第18位:川崎(7/25.0%)

 これは各チームの総得点(第16節終了時)から外国籍選手(在日枠も含む)の得点数を引いた数字を順位づけしたものだ。同数の場合は、日本人選手の得点数の割合が高いチームを上位としている。オウンゴールもカウントしているため正確なものではないが、各チームの日本人選手の得点数をランキング化したものと考えてよい。

 ご覧のとおり攻撃的3バックを擁するサンフレッチェ広島が、2位の横浜FMに5点差をつけ、ダントツの結果を残している。総得点数でトップを争うG大阪、名古屋、川崎の3チームには倍以上の大差をつけたことからも、その突出ぶりがわかるだろう。

 このランキング表からわかることは3つある。

 ひとつめは日本人のゴールの割合が高いチームは得点力不足に悩まされる傾向があるという点だ。2位の横浜FMはゴール総数で10位、3位のFC東京も7位に過ぎない。

 ふたつめは強力な外国人アタッカーの獲得がゴール数アップの最短の道だという点だ。13位のG大阪、16位の名古屋、18位の川崎が総ゴール数でトップ4に入っているという事実からもうかがえるだろう。

 そして最後は、広島のように攻撃センスに優れたCBを起用すれば、外国人アタッカーに依存しなくてもゴールを量産できるという点だ。最終ラインがゲームメークに参加できるなら、FWの負担は減り、ゴール前にボールが供給されるまで体力を温存することができる。そうなれば必然的にフィニッシュの精度も上がる。決定力不足もある程度は解消されるだろう。


・阿部の起用法にみるオシムの考え

 オシムが千葉では阿部勇樹をボランチで起用していたにもかかわらず、日本代表ではCBで起用していた点を疑問視している人がいた。だが、これはオシムにすれば何の矛盾もない。オシムが率いたチームが、日本代表ではなくクラブチームだったならば、オシムもジェフ千葉にマリオ・ハースを呼んだように手っ取り早く外国人アタッカーを補強して攻撃力UPを図り、DFラインには阿部のようなボランチの選手ではなく、水本裕貴(京都)のような本職のストッパーをもちいたことだろう。

 しかし、オシムは日本代表チームの監督だった。外国人アタッカーの帰化は容易な話ではない。いま現在はG大阪のレアンドロの帰化という話も出ているが、当時は日本語もろくに話せないジュニーニョの帰化話くらいしかなかった。だからこそオシムは、決定力不足解消のため、岩政のような屈強の長身CBではなく、阿部や今野泰幸などのボランチの選手を最終ラインに抜擢したのだろう。

 例え巻誠一郎(千葉)や田代有三(鹿島)といった日本屈指のストロングヘッダーを前線に取り立てたとしても、190センチ超級のCBとのマッチアップが予想されるW杯本大会では、彼らが通用する可能性などほとんどない。世界の強豪と渡り合うためには、攻撃的CBの登用が必要不可欠なのである。

posted by hume |12:19 | J1 | コメント(39) | トラックバック(0)
このエントリをlivedoorクリップに登録 このエントリをはてなブックマークに登録 newsing it! このエントリを Buzzurl に追加

2009年06月22日

【サンフレッチェ対ヴィッセル】現場監督の不在と支離滅裂な采配

 森崎和幸が「慢性疲労症候群」という難病に倒れた。森崎和幸は、単に日本屈指のボランチというだけでなく、選手が戦術を決めるサンフレッチェ広島おいて、実質的な現場監督の役割を担っていた。4-3と大荒れな試合内容だったヴィッセル神戸戦では、その現場監督の不在がチームに多大な影響を及ぼしていた。

 2-0から3失点を喫したわけだが、これは特に問題ないだろう。3つのゴールは、どれも偶然性の高い不運な失点であり、守備が崩されていたわけではなかった。ヴィッセルの4-2-3-1は、両SHが中央に寄り過ぎていたため、攻撃に幅というものがまったくなかった。そして前線のマルセウと大久保が、2人とも中盤へ下がっていたことで、攻撃の奥行きも見られなかった。後半、茂木が1トップに入ったことにより、多少の改善が見られたが、茂木の飛び出しを活かすパサーもいなかったことから、たいした脅威にはならなかった。

 問題だったのは、逆転直後のペトロヴィッチ監督の采配である。足を滑らせて逆転劇を演出してしまった盛田を懲罰的にベンチへ下げ、ボランチに高柳を配置し、中島を最終ラインにコンバートしてしまったのだ。この交代は、とんでもない悪手だった。1トップのヴィッセルに対し、盛田を削り2バックにシステム変更で攻撃に人数を掛けようというならばともかく、対人プレーにめっぽう弱い中島を右ストッパーに下げるなど暴挙としか言いようがなかった。

 さらにペトロヴィッチ監督の迷采配が続く。PKを取られたミキッチと交代にFWの平繁を投入した。これによりサンフレッチェからは、戦術的秩序が完全に失われてしまった。平繁と佐藤寿の2トップ以外に具体的な指示が行われなかったのだろう。平繁交代当初、ミキッチの代わりに右サイドへは、誰も配置されなかったのだ。さすがに数分後、槙野が右WBに上がり、中島、ストヤノフ、青山の3バックという布陣に落ち着いた。けれども1点差を追いかける展開にもかかわらず、攻撃のメカニズムが完全に崩壊し、ほとんど効果的な攻撃は見られなくなってしまった。ペトロヴィッチ監督自身は、試合後の記者会見で「4-4-2ではなく、2人で守って8人で攻撃したのだ」などと述べていたが、実態は青山(もしくは中島、ストヤノフ)を一人最後尾に残り、他の9人全員で敵陣に突撃していた。1人で守り、9人で攻める。これで攻撃が機能していないというのだからこっけいな話である

 幸運だったのは、パニックがヴィッセル神戸にも伝染したらしく、カウンターでゴールを脅かされたのは、楠瀬がドリブルで抜け出した一回だけで済んだことだ。今シーズン・アウェー未勝利という結果が選手のメンタル面に影響したのだろう。半狂乱になりながら総攻撃を仕掛けるサンフレッチェの勢いに圧倒され、怖気づいて守備一辺倒になってしまったのだ。冷静にカウンターを狙っていれば2-5、2-6といった展開になってもおかしくはなかっただけに、浮き足だって引きこもるヴィッセルの未熟さは、サンフレッチェにとって好都合に働いた。

 そんななかストヤノフのロングパスからサンフレッチェが同点に追い付く。佐藤寿と北本の競り合いからのこぼれだまを柏木がダイレクトでゴールに蹴り込んだ。ヴィッセルはロングボールに弱く、私が調べただけでも、今シーズンはロングボールから5失点をきっしている。ヴィッセルの守備陣が引き過ぎてしまい、ストヤノフにフリーでロングキックを蹴らせてしまった時点で勝負ありだった。

 キックオフ直後、カウンターでサンフレッチェが再逆転に成功した。アタッカー陣の戻りが遅れたヴィッセルをしり目に、空いた中盤のスペースから高萩がミドルシュートを放ち、4-3と試合を再度ひっくり返したのだった。アウェー戦1分6敗という負の連鎖への予兆が、ヴィッセルの選手たちに重くのしかかったのだろう。勝利を求めるあまり、試合終盤同点という状況を無視し、攻撃に人数を割き過ぎてしまったのだ。

 ドンデン返しでひと安心と思いきや、サンフレッチェ側も選手の動揺が一向に収まらない。リードしたことで槙野が最終ラインに戻ってしまい、右サイドがまたもがら空きになってしまったのだ。しばらくすると高柳が右WBに入り穴をふさいだが、もう少し遅ければ、右サイドのスペースを突かれ、再再逆転という展開もありえなくはなかっただけに、終盤の混乱ぶりは反省しなくてはならないだろう。

 ロクに指示も出さずにシステム変更なんてことが、あっていいわけがない。選手たちも話し合いで何とか修正していたが、あまりにも時間が掛かり過ぎていた。森崎和がいてくれたならば、もう少しはスムーズにフォーメーションをチェンジできていたのかもしれない。けれども森崎和は、当分のあいだチームに戻ってこないだろう。このように適当なマネを続ければ、必ず後でバチが当たること間違いなしだ。早急に何らか対策を取る必要があると思う。

posted by hume |20:27 | J1 | コメント(13) | トラックバック(0)
このエントリをlivedoorクリップに登録 このエントリをはてなブックマークに登録 newsing it! このエントリを Buzzurl に追加

2009年06月19日

【日本代表】勝ってしまったオーストラリア代表の不幸

 オーストラリア代表は弱かった。主力が出てなかったことを差し引いて考えても弱すぎた。弱いオーストラリア代表に日本代表がなぜ負けてしまったのか、それをこれからオーストラリア代表の戦術分析をメインにすえて解説したいと思う。

 オーストラリア代表のフォーメーションは、日本代表と同じ4-2-3-1。攻撃はケネディ、ケーヒルへの最終ラインからのロングボールが中心で、ホームにもかかわらずショートパスを繋いで攻めようなことはしなかった。

 これは中盤の底にいたグレッラとカリーナに原因がある。グレッラもカリーナもオフェンシブな攻守万能型MFで、歯車として優秀でもチームの軸は荷が重いといったタイプだった。この2人のダブルボランチは、ゲームを組み立てられず、守備のバランスも取れずとデメリットが少なくないコンビだ。とはいえ彼らの代役がいないのもまた事実で、オーストラリア代表のピム・ファーベック監督もW杯本大会まで頭を悩ませることだろう。

 この試合に限って言えば、攻撃で足を引っ張っていたのは、このコンビだけではなかった。彼らの前に陣取る4人のアタッカーも低調なパフォーマンスに終始していた。攻撃の奥行きも幅もまるでなく、サイドからクロスを上げたシーンも、DFラインの裏へ走り込むシーンも、ほんの数回しか見られなかった。しかし、彼らにも弁護の余地がないわけではなかった。それは彼らが全員トップ下をベストポジションとする選手たちだったからである。

 右SHのステリョフスキーは、本来CFのやや後方が主戦場であり、カールもドリブルとプレースキックを武器とする日本代表で言うなら中村憲のような選手だった。ケーヒルは説明するまでもないだろう。

 名古屋グランパスの移籍がほぼ決まっているケネディは、見た目こそどうみてもCFだが、194センチの長身を買われて前線で起用されているだけで、後方からのロングボールにはほとんど競り合わず、パスを外す動きも少ない。いちおうクロスのターゲットにはなるが、CFにはあまり向いていないのだ。むしろ体格を生かした懐の深いボールキープや足元のテクニックに特徴のある選手だった。以前の所属チームでもたびたび中盤で起用され、この試合でも交代出場のマクドナルドの1トップ下でプレーしていた時間帯が、一番パフォーマンスが良かった。名古屋もひどい買い物をしたものである。

 トップ下4人の同時起用は、どう考えても無理があり過ぎた。アタッカーがピッチの中央に集まってしまため、橋本と今野のダブルボランチの守備網に完全にからめとられてしまい、流れの中では1ゴールも挙げられなかった。

 ディフェンスもオフェンスに負けず劣らず悲惨なものだった。CBのノースと二ールは、SBもこなす守備のユーティリティで機動力を備えていたが、どちらもラインをコントロールすることが出来ず、裏のスペースに飛び出されると、ズルズルとDFラインを下げる傾向があった。しかもダブルボランチがそろってスペースケアを苦手としていたため、空けてはならないMFとDFの2ラインの間がしょっちゅう空いていたのだった。これで日本代表が中央突破主体で攻めていたなら守備がズタズタにされていたことだろう。けれども幸運なことに日本代表の攻撃はサイドアタックが中心だった。

 好パサーとスピーディーなFWが揃う日本代表が、なぜサイドアタック主体なのか、オースラリア代表側も正直わけが分からなかったのではないだろうか。クロスへの対応を得意としているのは岡崎一人だけなうえ、その岡崎もCFがDFの注意をひきつけているうちにスペースに飛び込みクロスに合わせるシャドーストライカータイプだった。玉田がサイドに流れがちで実質0トップの日本代表では、岡崎も常にCBの監視下に置かれていた。さすがの岡崎も大型CBとのガチンコ勝負では歯が立つわけもなく無得点に終わってしまった。

 このように書くと大型FWの不在がクローズアップされてしまうかもしれないが、問題はそこにはない。問題なのはDFとの駆け引きに長けたCFを起用しなかった点だ。小柄でもゴール前でマークを外そうと細かく動きまわれる佐藤寿や興梠のようなCFがいたなら、CBの注意を引きつけ、岡崎らシャドーストライカーをフリーにさせることも可能だったろう。サンフレッチェ広島の高萩、柏木がゴールを奪えるのも佐藤寿がオトリとなってDFのけん制しているおかげである。彼らのようなCFがいなかったため、日本代表は苦戦を強いられたのだ。

 セットプレー3発の2-1という結果からもわかるとおり、このオーストリア代表対VS日本代表の試合は、どちらにとっても悲しいほどお粗末な内容だった。どちらもディフェンスに大きなほころびがあったが、攻撃の欠陥はそれ以上だった。いまのままなら両チームとも南アフリカでは全敗に終わることになるだろう。オーストラリア代表は、この勝利によって修正する機会を失ったのかもしれない。逆に日本代表は、敗北によって得るものがあったのかもしれない。是非ともそうであってほしいものだ。望みは薄いかもしれないが。

posted by hume |23:06 | 日本代表 | コメント(16) | トラックバック(0)
このエントリをlivedoorクリップに登録 このエントリをはてなブックマークに登録 newsing it! このエントリを Buzzurl に追加