2010年03月17日

【VS神戸】戦術家監督のジレンマ

もうちょっとすっきり勝たなきゃいけない展開でしょ、これは。

妙なPKで点を取られる前にもっと追加点を取れるビッグチャンスはあったし、神戸が前掛かりにきた時間帯は、むしろこっちのほうがチャンスが多かった。向こうの攻めは完全に手詰まりだったし、石櫃のアーリーぐらいしか怖い攻撃はなかったわけだから。しかも相手に高い選手が居るわけでもないので、セカンドボールが厳しいゾーンにこぼれてくることも少なかったし。

やっぱり、もうちょっとシュートの意識がほしいところ。洋次郎はようやくらしいプレーを出してくれたんで、やっぱり浩司。多分シュートゼロだと思う。あのポジションと展開でシュートゼロだと厳しい。あと何試合かで感覚が戻ることを期待しておきたい。


ところで、この試合の監督のコメントは対照的であった。




ペトロヴィッチ監督(広島):

Q:ここまで惜しいところで勝点を失っていたが、何を選手たちに指示したのか。

「私は本を読んで選手たちを指導しているのではなく、選手・監督としてサッカーに携わってきた経験をもとに、彼らに接している。
私自身、選手としても監督としても、ロスタイムに追いつかれたり負けたりしてきた経験は何度もある。ただ、セットプレーの失点については、サッカーではありがちではあるが、偶然性の高い事故のようなものだ。神戸の選手たちを練習場に連れてきて練習すれば、それは効果的なトレーニングになるが、もちろん不可能なこと。
セットプレーで点を取ると『私たちはよく(セットプレーの)練習をしてきた』とおっしゃる方もいるが、そういうチームがその後セットプレーで点を取れなかった時に『なぜですか?』と聞いてみてほしい。セットプレーは、トレーニングどうこうではなく偶然性が高いもの。ルール改正でセットプレーのボールをペナルティエリアの中に蹴ってはいけないということにでもなれば楽しみだな、と私自身は思う」


http://www.jsgoal.jp/news/jsgoal/00098124.html


●三浦俊也監督(神戸):

Q:セットプレーからの失点シーンの反省点は。

「簡単に言うと相手が6枚入ってきたのに、ウチは5人しかマークしていなかった。あれだけセットプレーのトレーニングをしているのにも関わらず、そういうことが起きたことは問題。1対1の強い選手に負けてしまったのなら仕方ないが、ああいうオーガナイズでのミスは許されないこと」

Q:神戸にもセットプレーのチャンスがありながら、なかなかゴールできなかった。

「セットプレーのチャンスは多かった。ただ広島はああしてガッチリ守ってくるし、GKも優秀なので、いいボールが入るかどうかが問題だった。いいボールが入り、なおかつ得点できる力のある選手がいるか。それはどのチームも永遠のテーマだと思う。
がっちり引いた相手をどう崩すのか。メディアではそこをよく書かれる。ただ、簡単に言われるが実際は難しい。みなさんも見ての通り、全くスペースがなかった。あの中からスペースを見つけることは容易ではないし、世界のトップクラスでも難しい状況であること。
それでも、そこをどのような形で崩すのか、トライしなければいけない。セットプレーも1つのポイント。広島もセットプレーで失点を重ねているわけで、失点しているポイントも大体同じ。そこを突くように、トレーニングでやってきたのだが」

http://www.jsgoal.jp/news/jsgoal/00098125.html


相当な部分で選手任せで、相手に合わせた対策をほとんどしないのがミシャであり、きっちりしたスカウティングと、いかにも戦術家らしいチーム作りを柱とする三浦監督。

いいとか悪いとかは別として、両監督のポリシーがものすごくダイレクトに出たコメントだと思う。


実際にこの試合でも、神戸はすごく「キッチリした」感じをずっと見せていた。

ということで簡単に試合の総括を。


■はまらなかった神戸の狙い


この試合の神戸の狙いとしては、

・広島にボールを回されると厄介なので、ある程度のラインからゾーンを引いてDFラインからのくさびを封じて、アバウトなロングパスを蹴らせ、セカンドボールを拾う。

というようなものだったと思う。


実際に前半は3バック+カズの変則4バックに関して2トップ+サイドMFを付けて、門を閉じていた。なので中島に縦パスが入ることはほとんど無かったし、前の3枚が下がってくさびをもらう動きをしたときは、エジミウソンと松岡でかなりつぶしに来ていたので、小気味の良いパスワークを見せることはできなかった。

しかし、問題だったのはやっぱりストヤノフのキック。普通の選手だったら、あの位置からワンステップであんな精度のいいボールは蹴れない。しかも両足から。ちょっとでもスペースがあるとミドルからロングレンジのパスがバンバン入ってくるのだから、ここが誤算。


ある程度そこでチャンスを作られている時点で、前の選手がもっとプレスをかけないとヤバい、とならなければいけないところだと思うけれど、準備しているチームのやり方に縛られているのか、前半はずーっとそういう展開だった。


■光るストヤノフの判断


ハーフタイムで怒られた神戸の選手が前掛かりに来るようになる。そうするとストヤノフが逆に持ち上がって攻めるようになる。相手のプレスにハマらないよう、起点を前にするわけだ。広島がボールを回したいゾーンは中盤に持ってこられるが、すでにそこには選手がいない状態になっているので、割合フリーで持ち上がることが可能になる。前でつぶしたがっている選手と、裏へのパスを警戒するDFラインの間にはスペースが生まれて、広島のカウンターがハマる、というわけだ。

別に監督から指示があったわけでもないが、相手を見てやり方を変えてくるのがストヤノフのすごさでもある。ACLから含めて、改めてストヤノフのすごさを知ると共に、あまりに依存しすぎている今の状況はどうかな、と思わなくもない。


■あえて動かなかった中島


で、問題の1点目である。

神戸はセットプレイの守備を組織だって練習しているのは確かにわかる。長いエリアからなら、PAぐらいにラインを敷いてGKにスペースを与えるとか。どんなところからでもPA内に人が居すぎてごちゃごちゃしている広島とはえらい違いである。

失点シーンでも、ゴールエリアのニアポスト側に二人立たせたりしている。これはチームの決めごと通りにやっている。サイドエリアからFKがある場合にはこういうやり方でやろう、みたいな形があるんだと思う。


が、しかしである。


三浦監督ご指摘の通り、広島の6人に対してマーカーが5人しかいない。こうなったら如何に緻密な練習をしていようが、まったく意味を成さない。相手の人数が多かったら誰かを下げさせて対応するのが普通だと思うのだが、結局トレーニングでやった形を優先して、一番大事なところをミスしている。

一方、自分にマークが居ないことを確認した中島は、あえて動かないことを選択した。

高さがない広島のセットプレイでは、大体、槙野、森脇、中島がターゲットになって、3人で話してランニングコースを決めてるっぽい感じ。ああいう形は当初から想定していないだろう。なので、中島はとっさの判断で止まることを選んだのだと思う。

結果、フリーになった中島はヘディングシュートを決める。マーカーが居ないという致命的なミスをしっかりついたという意味で、ベテランの中島らしいプレーということができるだろう。




どっちにしても、練習してきている形を大事にしすぎていて臨機応変さを欠いたのが神戸、そこを自分で考えてプレーする選手が崩したのが広島、ということができると思う。

正直、ミシャの対策のしなさは監督としてどうなのよ、と思う部分は多いのだが、神戸の状態を見ると、これはこれで問題があるなと感じる。要するに戦術部分が勝ちすぎていて、選手がそれに縛られすぎている、という状態。どっかの代表に似ている。


結局はバランス感覚や臨機応変さが監督にも求められるということなんだけれど、結局その「いい塩梅」というところを探すのは本当に大変なことだろう。特に守備の組織化を得意とする戦術家の監督にとっては、自分のセールスポイントをある意味台無しにする危険を内包しているわけだから、なおさら難しいところだろう。岡ちゃんなんかはそれでマリノスで大失敗して、今の変に柔軟性がない形になってしまっているわけなので。


ま、とにもかくにも初勝利はめでたいところ。ようやく良いプレーを見せてくれた洋次郎の離脱は大変困ったものだが、それはそれであきらめて、寿人+山崎のカウンターに掛けるというのもアリ。ウェズレイは居なくてもストヤノフがいる。ストヤノフが居なくなったらホントに辛いけど。




とりあえず、我慢の時はまだまだ続きそうだ。

posted by Lee |15:09 | サンフレッチェ | コメント(0) | トラックバック(0)
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