2008年02月28日
【ボンバーヘッド】中澤佑二の凄さとはなにか
東アジア選手権でも、彼が日本最高のセンターバックであることをまざまざと見せ付けた中澤佑二。もはや日本史上最高のセンターバックと言っても過言ではないぐらいの存在だと言う事が出来ると思います(※少なくとも生で見た限りはですよ)。 中澤のDFとしての凄さはどこにあるのか。 ヘッドの強さ・巧さ(≒読みのよさと言い換えてもいいでしょう)、ファウルをしないでボールを奪う技術、フィジカル的な強さ、メンタル的な強さ、というようなことが上げられるでしょうか。 とは言え、上は良いDFとしては備えているべき能力。それらがおしなべて高いと言ってしまってはさすがに芸が無いので、まがりなりにもDF出身の男として、個人的に中澤を見ていて「スゴイな」と思う点について挙げたいと思います。 それは ・足を出せる ・巧くないのにボールを繋げる ・ポジションを下げない の3つです。 ●足を出せる 草サッカーやフットサルでよくある光景。 「一発で行くなよ!!」 って、声が掛かることって、良くありますよね。ディフェンスに慣れていない人などが不用意に相手のボールを奪いに行って足を出したりしてあっさり抜かれてしまうケースです。 もしそういう声が掛かったとき、試みにこう言い返してみたらどうなるでしょうか。 「じゃあ、いつなら行っていいの?」 僕はちゃんと答えられません。サッカーの指導者の方だったら、明確な答えを持っているのかもしれませんが。 「ディフェンスに必要なのは『経験』」とはスラムダンクの牧の言葉ですが、コレはサッカーでも同様です。いつなら、足を出していいのか?ということは多分に経験則に拠ってしまいます。相手も、状況も、毎度毎度違うことが多いので「いつ」とは簡単には言えません。ただ、安易に足を出しているようでは話になりませんが、それでもいつかは足を出さないと相手にボールを持たれたままで、相手のミス待ちという感じになってしまいます。 例えば僕の1対1の対応を成長過程を表してみると STEP1:とりあえず足を出してしまい、簡単に抜かれる ↓ STEP2:足を出さなくなったが、間合いを離しすぎてパスでやられたい放題 ↓ STEP3:間合いが分かってきたが、詰めすぎて自分より速いヤツにやられてしまうことがしばしば ↓ STEP4:ドリブルコースを限定し、相手がそれに乗って仕掛けてきたときに奪えるように という感じ。僕はここまでです。我慢して、相手がコントロールミスしたり、抜こうとしてボールを体から離したときに足を出したり身体を入れたりして奪えるようになりました。 中澤クラスになるともう完全に世界が違います。まず、我慢するところまではそうですが、中澤は仕掛けて来た相手がボールコントロールをミスしなくても、足が届く範囲に来たときには足を出して止めてしまいます。相手がボールを奪われないようにと守りに入った一瞬も奪いやすいタイミングですが、これも見逃すことがありません。 こう文章にしてしまうと簡単ですが、実際にはすごく大変なことです。この間合いを見誤ったときには、完全に抜かれてしまうか、ファウルになってしまうかのどちらか。DFにとっては致命的な結果が待っています。なので、プロレベルでも中澤ほど「足を出せる」DFはなかなかいない。しかし彼はギリギリのところで足を出してきて、かつ成功してしまう。 「安易に足を出さないのは当然だが、それでもどこかで足を出さないといけない」 それがいつなのか、どこなのかを知り尽くしているのが中澤です。だから彼はオフェンスの選手にプレッシャーを与えられる存在になりうると思うのです。 ●上手くないのに繋げる 中澤よりボール扱いが上手いDFはいくらでも居るでしょう。スーパーサッカーでやっていた「バナナキング」を見たときには「バナキンだけならオレのほうが中澤より上手いな」と思ったものです。 もちろん、キックが上手いわけじゃないのでフィードのミスは結構ある選手です。足元が弱いDFの選手は、プレッシャーを掛けられるとあわてて前に蹴ってしまったり、中途半端なパスを出してしまってボールを失ってしまうケースが良くあります。しかし、強いDFにありがちな「ビルドアップに難あり」というような言葉は彼には当てはまりません。 ただ、彼は特別なことをしているわけじゃありません。サンフサポなら分かると思いますが、戸田やカズのように相手に詰められても軽くかわしたり、「そこか」というようなクサビのコースを見つけてズバっと縦パスを通すわけではない。一発で崩してくるようなフィードをしてくるわけでもない。 いたって普通です。ボランチがフリーなら普通に当てるし、詰まっていれば逆サイドに展開するし、寄せられる前にボールを離す。寄せられたらバックパスして凌ぐ。厳しければクリアする。 ただし、不用意にボールを持ちすぎることはありません。詰まる前に何かをしている。つまり、上手くない分判断を正しく、素早くしてプレーしている。 彼のようなDFがポゼッションするサッカーでもしっかり能力を発揮しているのは素晴らしいことだと思います。 ●ポジションを下げない 大型DFはスピード面で不安を抱えていることが多いです。中澤は足が遅いというわけではないですが、特別速いわけではありません。(一瞬は速いと思われます。) そういうDFに見られがちな傾向として、相手がボール保持して攻めてきている時に、自身が余ってディフェンスしたがる傾向があります。裏に蹴られて走りあいになるのを避けたいからです。闘莉王にはこの傾向が顕著に見られますし、松田なども例外ではありません。 それ自体が間違っていることだとは思いませんが、ただそうすることでDFラインにはギャップが出来てしまい、そのままDFライン自体がずるずると下げられてしまうという現象が良くあります。ホンの1、2mのギャップですが、それがチーム全体に影響を及ぼしてしまうことは少なくありません。 中澤はここでポジションを下げない。余りたがらない。要するにビビッてない。こうすることでDFラインが下がりすぎてしまって跳ね返しても波状攻撃を受けてしまって自分たちのリズムをつかめないということが少なくなります。かといって無謀にDFラインを保つようなマネもしておらず、ポジショニングを崩さなければならないときにはしっかりとプレーしている。 ポジショニングという曖昧な表現のものを正しくピッチ上で体現することが出来る。これも素晴らしいことです。 総論として、上で上げたようなことは、彼の「判断力」が正しいことを表していると思います。苦労人である彼は「自分はどうするべきか」ということを常に問い続けてレベルアップして来たのでしょう。自分の能力を正しく判断して、出来ることと出来ないこと、やるべきこととやるべきでないことの判断を正しく行う。そしてそれにブレが無く、常に冷静で安定した状態を保っている。 デビュー当時から強力なヘディングが注目されてきた中澤佑二。しかし彼をナンバーワンDFたらしめているものとは、その「ボンバーヘッド」の外側ではなく、多分に中身の方に拠っているのだと思うのです。
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posted by Lee |12:50 |
選手評 |
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【ボンバーヘッド】中澤佑二の凄さとはなにか
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面白い内容ですね。良い感じでした。
長さもちょうどいいし。文も読みやすい。
posted by ddd | 2008-02-28 13:01
【ボンバーヘッド】中澤佑二の凄さとはなにか
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DFって、結局「受身」にならざるを得ないんですよね。状況を見て、相手の力量を判断して、さあそれから・・・って感じですもんね。ポジションの性質上、それは仕方のないことで。
でもLeeさんの文章を読ませていただいて、「中澤は受身ではない」ということを感じました。
もちろん、100%能動的にいけるわけはありません。でも、それに近い感じで彼はプレー出来てる。主導権が結構中澤にあるかな、と。
それって凄いことですよね。
彼は、見ていてとにかく「安心」出来る。そんなDFです。
posted by カントナ | 2008-02-28 13:15
【ボンバーヘッド】中澤佑二の凄さとはなにか
コメント投稿者ID :
DF経験者の言葉で語られていてとても参考になりました。
しかも中澤はここぞという時に点を取ってくれますよね。
ガンバの安田が初めてA代表としてピッチに立った時に、
同じピッチにいる中澤を見て「俺もA代表になったんだ」と実感したと言っていました。
それくらい今の日本代表の顔となっていると思います。
posted by bbb | 2008-02-28 13:19
【ボンバーヘッド】中澤佑二の凄さとはなにか
コメント投稿者ID :
非常にわかりやすかったです。
中澤はヘッドだけじゃないんだろなーっては
思っていたけど、どこがすごいのか
イマイチ分かってなかったのが
この文章を読んで、理解できました。
posted by DEMIO | 2008-02-28 13:48
【ボンバーヘッド】中澤佑二の凄さとはなにか
コメント投稿者ID :
興味深かったです。
自分は経験者ではないので、このように説明していただくとどこがすごいかわかりますよね。
素人なりには高さとそして一番心を打たれるのは彼の精神力ですね。
アジア杯のオーストラリア戦で先制点を許してチームが萎えてしまいそうなときに「大丈夫だ!!」って感じでチームを鼓舞している姿はマジで感動しました。
posted by NOVA | 2008-02-28 14:16
【ボンバーヘッド】中澤佑二の凄さとはなにか
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いい文章でした
中澤は本当に素晴らしいです
また、松田も僕は凄いと思います
今年のマリノスの守備陣は気合が漲っていますから上位に来ると思いますよ
posted by サッカー | 2008-02-28 15:54
【ボンバーヘッド】中澤佑二の凄さとはなにか
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中澤選手は現在の日本を代表するDFであることは疑いないと思います。私も尊敬してますし、好きです。が、最大の弱点はサイドに押し出されたときの対応でしょうか?細かな揺さぶりからのクロスに関しての反応は足元の弱さから度々ミスを起こします。もちろん、彼以上のことを他の選手ができるとは思っていませんが・・・・。
中央にいてディフェンスしたときの強さはすごいからね~。
posted by ホームラン | 2008-02-28 17:26
【ボンバーヘッド】中澤佑二の凄さとはなにか
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やっぱり中澤、闘莉王クラスのDFは安心できますよね
posted by o | 2008-02-28 18:22
【ボンバーヘッド】中澤佑二の凄さとはなにか
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中澤と闘莉王の代表での共存ってどうなんでしょう? 僕は非常に危険だと思うんですよね。闘莉王が攻め上がりすぎてバランスが悪くなる気がします。中澤は闘莉王に近いタイプの松田と長年コンビを組んでいますが相手はれっきとした各国代表ですからね。オーバーラップばかりのDFが上がった隙を突くというのは常套手段となるでしょう。現に闘莉王はそれでアテネ五輪で失敗している。闘莉王1人の責任出来ないですが自制が効かないというのは明らかでした。中澤を中心にDFラインを構成するのがやはり現状ではベストなんでしょうね。得点力ならば中澤も十分すぎるほどだし。
posted by 2バック・システム | 2008-02-28 18:29
【ボンバーヘッド】中澤佑二の凄さとはなにか
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闘莉王ってアテネ怪我で出てないですよ。
友人がブラジル留学した時、中澤のチームと練習試合したらしいですがかなり足元はヘタクソだったそうです。その代わりヘッドは化け物だといってましたが。
その後練習生から日本代表になって今じゃ代表に欠かせないですよね。
この苦労人たる過程が彼の判断力というかビビらなさにつながってるのかなと思いました。
文章上手いですね。いつもおもろいです。
posted by toriniku | 2008-02-29 08:27
【ボンバーヘッド】中澤佑二の凄さとはなにか
コメント投稿者ID :
>dddさん
ありがとうございます。褒められるといつも言ってますが、コソバユイですな。
>カントナさん
毎回カントナさんのコメントを見ると「俺よりもオレの言いたいことずばり書いてるな」って思うんですよねー。まったくもっておっしゃるとおりです。
>bbbさん
それこそ「中澤ジャパン」の由来であります。
>DEMIOさん
まー、この辺は僕の主観的なところはありますから、もっと違う捉え方も出来るとは思うんで、ご参考までにということでお願いします。
>NOVAさん
中澤って、元々そういうタイプじゃなかったと思うんですよね。でもそうなっていっていることが素晴らしいと思います。「僕が引っ張らなければいけない」みたいなことだけ言っていて、行動が伴わないことは非常に良く見かける例ですが、彼は違いますからね。素晴らしいです。
>サッカーさん
松田も能力的には素晴らしいですよね。でも、中澤と比較してしまうと、ちょっと差がついてしまったなと個人的には感じます。特にファウルせずに止める技術という点で。
>ホームランさん
五輪の頃と比べると、そういう弱さは大分無くなったと僕は思いますね。フィジカルで完全に彼を上回る選手が来た時の対応というのが、あとは最大の敵ではないかと思います。
>2バック・システムさん
闘莉王に関しては攻撃的な姿勢そのものよりも、根本的なディフェンス面での不安のほうが僕はあると思っています。特に数的同数で守らなければならないケースで、どこまで耐えられるか。レッズではそういう経験はほとんどありませんし、今までも無かったと思いますので。
>torinikuさん
闘莉王は、本戦は出場していたと思いますけれども。
中澤のサクセスストーリーは本当に凄いですよね。技術よりも大事なものっていうのがなんなのか、彼は教えてくれていると思います。
posted by Lee | 2008-03-01 01:46
【ボンバーヘッド】中澤佑二の凄さとはなにか
コメント投稿者ID :
遅まきながら。
マリノスファンなのですが、黄金期のマリノスに来た時の中澤の事を良く覚えています。
「日本代表になりたいからマリノスに来た」と。
確か当時の彼は代表候補の当落ライン際。
彼はヴェルディでしっかりスタメンだったと思うし、大昔ほどでないにせよライバルチームへの移籍。
博打にも似た事をしながら、ずっと記憶に残っていたセリフでした。
実際このあとしばらくして代表常連になるわけですが。
posted by ll | 2008-03-01 03:56
【ボンバーヘッド】中澤佑二の凄さとはなにか
コメント投稿者ID :
乗り遅れたー!!
中澤いいっすよねー(笑)
ほんと、前で高いボールはもちろん、平面でも奪いにいけるので、見てて気持ち良くて仕方ないです。
ただ、ちょっと前に出すぎて、逆にギャップを作っているシーンも多い気がするので、もっと完璧に判断して欲しいのは、欲張りすぎでしょうかねw
隼磨が、もうちょいカバーできれば問題無いんですけど、右サイドが二人とも行っちゃうシーンとか多いような・・・。
もうちょい他人を使って、追い込んでから奪うのが多くなればなーとか思ったりw
栗原なんて、それようにはピッタリだし、隼磨も足は止まらないんだから、使えそうなんだけどなー
あと・・・、彼、結構ありえないパスミスしますよ・・・。
ほぼノープレッシャーなのに、相手の中盤に渡したり・・・。
間違いなく代表疲れなんでしょうけど、結構酷かったような・・・。俺なんか、外した方が良いんじゃないかとか思ったし・・・。
うーん、駄目だしばっかだw
俺、好きなんすよ中澤w
でも、まだまだ高みは目指せる。絶対に。
疲れがなければ、特に・・・。
と言う訳で、代表ではもう試す必要ないし、少し呼ばないでも良かったりしないかなーと言う感じですw
ハイ、ただのわがままですw
posted by negro | 2008-03-02 11:27
【ボンバーヘッド】中澤佑二の凄さとはなにか
コメント投稿者ID :
>llさん
あの移籍もモメモメでしたね~。あれは2002年シーズン?でしたっけか。着実にそこからキャリアを上げるわけですから。素晴らしいですよね。
>negroさん
お久しぶりです!復活おめでとうございます。
代表疲れのときは、気の毒な感じでしたけどね。ディフェンス自体も良くないことがありますからね。ただ、やっぱり彼がいないと代表のDFは成り立たないでしょう。正直、闘莉王でも岩政でもクラブチームレベルであんなに1対1にさらされるディフェンスはやってないでしょうから。
posted by Lee | 2008-03-04 22:15
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