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浅田真央とISUジャッジングシステムの歩み

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 浅田真央の引退発表から1週間が経とうとしています。記者会見に特番に振り返り再放送、世界中の選手たちからのメッセージ。フィギュアスケート界でどれほど大きい存在だったのか、あらためて感じます。  選手としてのキャリアを見直して気づいたのは、ジュニアに上がって本格的に国際大会デビューした2004/2005シーズンが、ISUが6.0点方式に変わって新システム(ISUジャッジングシステム)を本格導入した年だったこと。つまり、浅田真央選手のキャリアは、いろいろ批判を浴びつつ試行錯誤を続けてきた採点システムの歩みと共にあったんですね。

 ライバルのキム・ヨナ選手がいち早くこのシステムを味方につけたのに対して、浅田真央選手(を含めた日本の女子選手たち)は対応に苦労する部分がありました。  2006/2007シーズンから、回転不足が厳しく判定されて、回転が足りないジャンプは1回転少ないとするダウングレード(GOEもマイナス)。決まったと思ったジャンプが大きく減点されるたびに、選手も観客もため息でしたね。  さらに2008/2009シーズン、ルッツとフリップの踏み切りエッジ判定が厳格になり、eマークがつくとGOEで減点。これも矯正に時間がかかり、試合では気をつかって跳ぶために確率が下がったりしていました。  一方で、ジャンプ基礎点とGOE加点は、浅田選手にそれほど有利ではなかったんです。2008/2009シーズンから上がったけれど、それでもトリプルアクセルの基礎点は8.2、GOE+1=1点、-1=-1.4点。対してダブルアクセルは3.5点、GOE+1=1点、-1=-0.8点。つまり、トリプルアクセルで少しミスが出れば6点か5点しかもらえなくて、ダブルアクセルで完璧に跳べば5点や6点もらえるということでした。  当時はダブルアクセル以上のジャンプは全部、GOE加点が+1=1点だったので、「難度が高くないジャンプを完璧に跳んだほうが効率がよい」のは明らかでした。  しかし浅田選手はコンビネーションのセカンドに3回転トウループを跳ぶのが苦手だったこともあり、代名詞となったトリプルアクセルを中心にプログラムを作り、バンクーバー五輪で3回成功させます。  完全に回り切って下りたジャンプに、もっと加点がつかないものか?と当時は思っていましたが、、、今考えると、浅田選手のジャンプは全体に「ふわっと上に上がる」ジャンプなんですね。下りてからぐ~んと流れるというタイプではない。反対にキム・ヨナ選手のジャンプはスピードに乗って大きく幅を取るタイプで、流れが大きい。それで加点がつきやすかったのかな?  「正確で高い完成度の要素を評価する」というISUの方針は今も同じだと思いますが、当時は完成度に高い評価を与えすぎ、ミスに厳しすぎた感がありますね。

 2010/2011シーズン、ジャンプの基礎点に大幅な改定がありました。男子の4回転論争もあり、より難しい要素に高得点という流れができました。  トリプルアクセルは8.5点に、ダブルアクセルは3.3点に。GOE加点はアクセル以外の3回転で+1=0.7、ダブルアクセルで+1=0.5に。つまりダブルアクセルの満点は6.5から4.8に下がり、トリプルアクセルは-3でも5.5点は確保できることになりました。  回転不足についても、4分の1以上2分の1以内の不足はアンダーローテーションとして70%がもらえることに。これは浅田真央選手にとってかなり有利になるはず!だったんですが、スケーティングの基礎からジャンプまで見直していて、すぐ結果につながりませんでしたね。それでもダブルアクセル+3回転トウループを加えるなど対応を進めていき、2013/2014シーズンのGPシリーズ及びファイナルを制するまでに。  ソチ五輪については、皆さんご存知ですからここで語るまでもないですが、フリーで女子が挑戦した8トリプルの素晴らしさ、怒涛のステップは忘れることができませんね・・・  「ハーフハーフ」と言って休養している間に、また改定がありました。  ルッツとフリップの踏み切りエッジエラーで、基礎点が70%に。GOEから引かれるだけではないので、最後の2シーズンでもっとも苦労したのではないかと思います。気を使いながら跳ぶので確率が下がってしまっていました。腰や膝の痛みに加えて、以前のレベルまで持っていくことが難しくなった部分かもしれません。

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この記事へのコメントコメント一覧

浅田真央とISUジャッジングシステムの歩み

虹風 憂璃さん、コメントありがとうございます。
テレビや報道ではトリプルアクセルの成否ばかりが取り上げられがちでしたが、総合的に優れた部分をもっと伝えてほしかったですね。弱点の部分を克服していった過程も含めて。
ISUジャッジングシステム導入以前に、ひととおり技術を習得してしまったために、新システムが要求する基準になかなか合わせられなかったところがあるかな、と思います。
スピンやステップ、スケーティング技術がもっとわかりやすく得点につながると、ジャンプばかり注目される状況が変わるのかな?
浅田選手のスピンのポジション、ステップで両方向に同じ速さで回転するところ、好きでした。

浅田真央とISUジャッジングシステムの歩み

ビーフボールさん、コメントありがとうございます。
コーチが何人も変わらざるを得なかったのは、たしかに不運でしたよね。
アルトゥニアン氏、タラソワ氏、素晴らしいコーチだけど、拠点を移して常時指導を受け続けることができなかったので・・・
子ども時代に基礎を習うコーチ、ジュニア時代に体力をつけながら経験を積ませるコーチ、シニアに上がって技術を安定させながら精神面を成長させるコーチ、うまく連携していけたら理想的ですが。
そして勝つための戦略を考え、選手に納得させて練習させられるコーチ、ブライアン・オーサー氏はその典型でしょうか。
でも浅田選手は勝つことが一番の目的じゃなかったんでしょうね。佐藤信夫コーチのもとで美しいスケートを完成させられたのは良かったと思います。

浅田真央とISUジャッジングシステムの歩み

こんにちは、お久しぶりです。

トリプルアクセルがあるので誤解されがちですが、荒川さんがずっと「浅田真央はスケーティング他、総合的に優れている選手、金妍児の方がジャンプ派」と言っていて、当時は???と思っていたのですが、ここ2シーズンで本当にその意味を実感しました。
確かにスピンのポジションやスパイラルの足の位置なんかも、金妍児はイマイチでしたからね。
(謎の加点祭りでしたが。)
浅田真央はトリプルアクセルばかりが目立っていますが、実はルッツのエッジやセカンドに3Tがないなど、ジャンプに弱点が多い選手でもありました。
一方、バンクーバー後のジャンプ大改造期も、スピン・ステップでは確実に点を伸ばしていましたね。

コーチですが、国別で各国から寄せられた真央ちゃんへの寄せ書きにアルトゥニアンコーチが書いていたことで、あの時アルトゥニアンの下で指導を受け続けていれば……とコメントしている方が多かったです。

浅田真央とISUジャッジングシステムの歩み

浅田選手をシニアデビューからずーっと応援してきましたが、今思えば浅田選手の最高のパフォーマンスを引き出すための戦略面に長けたコーチとの出会いに恵まれなかったのかもしれないと感じています。他の追随を許さない素晴らしい振り付けや衣装、美しいスケーティングなどを身につけてスケーターとして最強の魅力を確立してきた一方で、精神面や勝負強さという点で苦しんだのが本当に惜しまれます。ではどのコーチだったら良かったのか?と言われてもすぐには挙げられないのですが。。。

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ここ数年の間にジャッジスコアをじっくり見るようになってから、フィギュアスケートが面白くなりました。
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