2008年12月30日
サッカーの練習方法についてスペイン流の方法を紹介しようと考えた時に「スペイン」という枠で扱いきれないのがゴールキーパー練習です。
これは「違いがない」というよりも日本でもスペインでも、そしてイタリアでも各「ゴールキーパーコーチ」によって練習方法が大きく異なり、そこに「スペインだから」、「日本だから」という違いはあまり見受けられません。
要するに昔ながらのシュート練習中心のコーチもいれば、筋力トレーニングを重視するコーチ、そしてチームの攻撃時にキーパーがスイーパーとして機能できるように「エリア外への積極的な上がり」を訓練するコーチもいます。
前回のブログで触れたGKコーチのミケルもこれについて触れており、練習の内容はクラブによって千差万別というのがスペイン国内の現状で、日本で行われている指導でスペイン以上に素晴らしいものも多いと思います。
ただ私がコーチ学を学んできた中でキーパーの練習法に出会う頻度はかなり少ないです。
なぜでしょうか?
フィールドプレーヤーの練習方法の発展に比べてGKの練習方法が国毎、世界基準で足並みが揃っていないのはそのポジションの特異性にあります。
ゴールキーパーの攻撃参加(パス回し、前線へのフィード)も実戦での必要要素ではありますが、フィールドプレーヤーの攻守のトレーニングバランスに比べれば、キーパーにとって重要なトレーニングの8~9割はいうまでもなくシュートへの対応です。
受身のテクニックであるキャッチングは基本技術こそトレーニングで鍛えられますが、シンプルなトレーニングからの発展練習が難しいテクニックです。 練習自体は工夫し難易度をあげ、いくつかの要素を織り交ぜてバリエーション豊かにはできますが、フィールドプレーヤーへの練習以上に「キーパーにとって実戦に近い状況」を練習で作り出す事は難しい。
なぜならキーパーにとって実戦に近い状況とは、試合と同じ状況、つまり敵味方入り乱れた状況で放たれるシュートに対応することですが、チーム練習は「キーパーのため」に試合形式のトレーニングに時間を割くことは殆どありません。キーパーは紅白戦の限られたシュートチャンスで実戦に一番近いトレーニングがかろうじてできるわけです。
また、練習法の確立が遅れている原因としてコーチの人材の少なさも挙げられます。
スペインで理想といわれているコーチ数は、選手20人に対して2人ですが日本でもスペインでもこの条件を満たす事は簡単ではありません。チーム専属のゴールキーパーコーチとなれば尚更です。
普通のチームであればキーパーコーチはいないか、いてもクラブに一人。週に1-2回、キーパー向けの練習日が設けられていればかなり恵まれている方でしょう。バルセロナ市内のクラブでもごく一部のチームがチーム毎にキーパーコーチを抱えていますが、大半はクラブ全体のキーパーをカバーするコーチが1-2人いれば良い方です。
元からキーパーコーチの活躍の場が限られている状況では、その分野の練習法が国別、世界基準で確立されていない現状は当然の結果といえます。
スペイン監督日記 2008/12/30
posted by hospi |04:23 |
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2008年12月20日
私が在籍しているオスピタレットには、30年在籍している年配のゴールキーパーコーチがいます。
しかし今季からユースAチームの監督を務めているロベルトが最新の練習方法の導入をクラブ首脳陣に求め彼のチーム専属のキーパーコーチとしてミケルという青年が2週間前からチームに合流しています。
先日、コーチ陣用のロッカールームで彼と話をしている際に日本人選手のテクニックの高さについて彼は語っていました。
ミケル
「1ヶ月前に3週間ほど日本のプロチームに呼ばれて自分の指導を披露しに日本に滞在していたんだ。今の時点ではまだ今後の事は分からないけど、彼らがボクを気にいってくれれば来季以降の契約の話ができるかもしれない。
ところで君達日本人のテクニックはすごいレベルだね。Jリーグの試合も見たけど、狭いスペースでの日本人のテクニックはスペイン人とは比べものにならないくらい高いよ。
ただ、戦術面ではスペインで当たり前の仲間をカバーする動きやパス回しでのいくつかの基本が全然徹底されていないから、テクニックの高さと戦術の不徹底さの差にも驚いた。」
このテクニックの高さと戦術の低さについては日本のサッカーを見たスペイン人に共通する感想。
日本では「戦術を教えること」が「個性を尊重すること」に反するという認識が広まりすぎていて、「戦術そのものの定義や教え方」がまだ確立していないのでこういう状態になってしまっているのだと思います。
スペイン監督日記 2008/12/20
posted by hospi |22:42 |
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2008年12月15日
12月、それは監督がクビになる月<上>の続き
スペインのユースの現場では「育成優先」に偏りすぎた議論はあまり起こりません。
各年代で必要な技術・戦術を教える事は確かに重要ですが、それは毎週行われるリーグ戦で結果が反映されてこそなのです。
監督個人の机上の理論で半年、1年と1つの方向性を持ってチームを指導し結果が出ない場合、
「あの監督は手腕がない」
と判断されます。
(極まれに、選手のレベルが低いからしょうがない、と擁護してもらえる場合もありますが。。。)
実際にこのノルマを達成するのは簡単ではないですが、それを遂行できる監督が多く存在することも事実で、監督が交代しチームが立ち直るケースも多々あります。
監督はそういうプレッシャーの下で指導しているので、進退問題に発展する状況では冷静さを欠いた行動をしてしまうこともありそれが余計に自らの立場を悪くする場合もあります。
オスピタレットのAチームの場合は、ゲームを支配するものの決定力を欠き11試合を終えて勝ち点10の降格圏内で監督が解任。 Cチームから昇格した監督で臨んだ今節は多くのポジションの変更が行われ強豪相手にアウェーで久々の勝利を掴みました。この結果がカンフル剤のような一過性のものなのか、継続するのか、それは誰にも分かりません。
私のチームはというと、10試合を終え勝ち点11(12位)。こちらも褒められた成績ではなかったので進退問題に発展する可能性がありましたが、
・2年目に向け強化をより重視しているBチームであること
・強豪がひしめく難しいグループに振り分けられたこと
の2点を考慮されまだなんとか私の首は繋がっています。
そして先週末は私の古巣であるオルタ(現在2位)をホームに迎えての大一番。向こうは15歳のチームでこちらは全員が14歳。身体能力差による厳しい戦いが予想されましたが、歯車がやっと噛み合い始めた結果か、5-3でオルタを下しチームは復調に向けリスタートを切ることが出来ました。
残り18試合。 3部リーグ残留を確定させること、そして少しでも上の順位でリーグを終えることを目指し厳しい戦いは続きます。
・12月、それは監督がクビになる月<上>
・12月、それは監督がクビになる月<下>
スペイン監督日記 2008/12/15
posted by hospi |20:16 |
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2008年12月14日
スペインのサッカーシーズンは9月に始まり6月に終わりますが、開幕から3ヶ月が経った12月は監督達にとって最初の審判が下される月でもあります。
それはプロリーグのリーガ・エスパニョーラからユース世代まで同じです。
バルセロナでは12月に入り、13日のレアル・マドリー戦、いわゆるエル・クラシコでバルサが勝てばシュスター監督は解任されるだろうという憶測が流れ、月始めからシュスターがクビになるまでのカウントダウンが始まっていました。
結果的にレアル・マドリーは前節のセビージャ戦での敗戦でシュスターを解任し、ホアンデ・ラモス監督を招聘しましたが、「12月に監督の首が飛ぶ」習慣はスペインで依然として健在です。
私が受け持っているオスピタレットのユースチームの現場でも状況はあまり変わりません。
U-13では監督がチームオーガナイズの面で評価を落とし第3節(10月)で早くも解任されましたが、U-15の監督兼U-15,U-14の強化部長を務めていた直属の上司も先週、監督の任を解かれました。
彼は素晴らしい監督でチームオーガナイズの面でも問題はなかったのですが、フォワードの決定力不足で勝ち点を伸ばしきれず、1部への昇格争いをしなくてはいけない状況で降格ゾーンまで成績が落ち込んでいたので上層部が第11節の時点で解任を決定しました。
ここで簡単にリーグ戦の仕組みを振り返ります。
カデテのリーグは14-15歳のリーグで1部から4部までピラミッド状になっています。
私が所属しているオスピタレットは15歳のAチームと14歳のBチーム、そしてAチームに入りきれなかった15歳の選手8割とBチームに入れなかった14歳の選手で構成されるCチームの3チームを擁しています。
BとCチームは同じ3部リーグで別グループに振り分けられています(3部はカタルーニャ州全体で10グループ/1グループは16チームで構成)。
Aチームは昨季のチームが1部から降格してしまったので、クラブの目標は1部に返り咲くこと。
他のクラブでは3部にAチームを持ち4部にはBチームというのが一般的ですが、オスピタレットのような少数の強豪チームの場合、各チームが1歳年上の相手と戦う状況にあり、監督に求められるのはそこで結果を出すことです。
12月、それは監督がクビになる月<下>に続く
スペイン監督日記 2008/12/14
posted by hospi |20:55 |
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2008年12月06日
練習の予定を立てる際にスペインと日本では文化的な背景からコンセプトが異なっている部分がありますが、
「選手がどのような姿勢で練習に取り組むか?」
という前提でも両国に大きな差があります。
日本の中にいると気づかないことですが、サッカーの練習でも日本では「日本という社会の規律」を選手が持っている事を前提に練習が組み立てられるので、スペインの状況に比べると
「選手が不真面目な態度を見せる頻度」
がスペインほどには多くないと感じます。
これは日本人が小学校の頃から他国よりも規律を教え込まれていることと関係しており、例えば掃除一つをとっても学校で自分達で掃除する習慣がない欧州の子供達には
「ロッカールームの設備を乱暴に扱わない」
という段階からしつけなくてはいけません。(中高生に対してでもです)
ミーティング中の聞く態度や私語についてもスペインでは子供から大人まで、監督者がその場をオーガナイズしきれなければ即カオス的な状態が生まれます。こういう状態なので練習態度についても言うまでもありません。
こういう環境でチームに集団としてのメンタリティを根付かせるためには、監督にはサッカーの技術的な指導能力以前に集団を統率する力、そして選手達に練習をスムーズに遂行させる能力が求められます。試合の結果とは別にこの部分で上手くチームをまとめられない監督はユース世代といえどすぐにクビになります。
実際にスペインで起こりうる混沌とした状態がどの程度すごいかという事は経験してみないと分からないことなのでここで文章で伝える事は難しいですが、
簡単にいうと
「日本ではありえないことがわんさか起こります」
日本から来たばかりのコーチが仮にスペイン語がペラペラだったとしても、すぐにはスペイン人の集団はまとめられないような規律レベルです。
ユース世代から大人までそれは同じで、監督には、
・その状況をコントロールすること
・技術・戦術面でチームを向上させること
・結果を出すこと
の3点が求められます。
チームのコントロールに関しては、
「監督が選手を支配する」
というちょっと攻撃的な表現が一番当てはまるのでは、と思います。
ただそこは人間の集団を1シーズンまとめるわけなので、強面で通すだけではなく選手&チーム全体のモチベーションのコントロールも高いレベルで求められます。
それは選手との対話の仕方であり、練習の組み立て方であり、試合への準備の仕方であります。
今回書いた事は日本でも理解されている当然の事かも知れませんが、日本から来て1年ほど経つアシスタントのコーチに練習を手伝ってもらっている現状で、彼がスペインで一番苦戦しているのが技術的な事よりも上記のチームコントロールなので、今回はこのテーマに触れてみました。
スペイン監督日記 2008/12/6
posted by hospi |01:32 |
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