2008年10月27日
スペイン人が見た日本のサッカー (9)<素材は持っているのに> のつづき
「技術がある日本人が戦術をうまく実践できないのはおかしい。そういう練習をしていないのが原因ではないか?」
というのが前回までの内容。
その証拠に日本人の技術は個人技では平均して高いですが、試合の状況でのコンビネーションプレー、すなわち壁パスやダイレクトパスではそれを十分にこなせる割合が激減するように思えます。
それは日常からそういう状況で実践していないからです。元の技術力はあるのですから、普段から戦術の中で必要なプレーの反復練習をしていれば日本人に出来ないはずはないのです。
ただ、ここで必要となるのは監督がちゃんとチームの攻撃の道筋を示し、実戦に応用できる練習を難易度を変えながらチームに施すこと。
しかし監督がその手腕を身につけるには、監督自身も練習と実戦が常にある状況の中で経験を積むことが必要です。これは、もう鶏が先か?卵が先か?ということになります。
リーグ戦を戦う機会が少ない事で戦術の錬度を上げられないのは止む終えないことですが、それ以前に戦術のベースを各年代で指導しないのは指導者側に責任があると私は考えます。
将棋を指すためには各駒の動きといくつかの攻略パターンを知らなければいけないのと同じで、スペインでは10才から徐々に戦術を教えています。
戦術とは各選手の動きを制限するものではなく、「チームとして試合に勝つため」に各ポジションの選手がどのような役割を担っているかという事を選手に教えて鍛えることです。
「戦術=個の否定」ではありません。
実戦が不足している中でこの問題を解決するのは簡単ではないですが、ユース世代の指導に関わる監督は「攻撃戦術の練習」を欠かしてはいけないと私は考えます。
なぜなら 「サッカーは11対11人のスポーツだから」。
年齢別に指導方法が変わるのは当然ですが、そこで「チームプレー」という大前提が忘れられてはならないのです。
「チームプレー」
とは
「プレーの共通認識をもつこと」
であり、それは
「戦術」
といえます。
チームの攻撃に戦術が浸透した時、各プレー毎に状況判断が加わり、攻撃の中に「静」と「動」が共存するバランスが生まれます。
それが今回のテーマを通して取り上げている
「プレーの緩急」
なのです。
<おわり>
スペイン人が見た日本のサッカー (1)<はじめに>
スペイン人が見た日本のサッカー (2)<プレーの緩急 その1>
スペイン人が見た日本のサッカー (3)<プレーの緩急 その2>
スペイン人が見た日本のサッカー (4)<接触プレー>
スペイン人が見た日本のサッカー (5)<早すぎる日本のスピード>
スペイン人が見た日本のサッカー (6)<土台の再確認を>
スペイン人が見た日本のサッカー (7)<育成の要>
スペイン人が見た日本のサッカー (8)<日々、実証>
スペイン人が見た日本のサッカー (9)<素材は持っているのに>
スペイン人が見た日本のサッカー (10)<練習してこそ戦術は使える>
スペイン監督日記 2008/10/27
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2008年10月26日
スペイン人が見た日本のサッカー (8)<日々、実証> のつづき
サッカーのグラウンドが不足していたり指導環境や大会運営の整備が間に合わないのはしょうがないことですが、今回、数回にわたって触れている
「プレーの緩急が不足している」
という問題の原因は「選手の実戦不足」よりも、実際には指導者側のアプローチの方法に問題があるのではないか?と思うのです。
本来であれば毎週リーグ戦を戦う中でチーム毎の目標を順次消化して行くところですが、実戦が少ない環境の中で次のような状況が起きている可能性があります。
・指導方針の設定ミス
・指導項目の優先順位付けの混乱
・各目的に使う時間配分ミス
・理論を反映させ易い守備戦術への偏向
上記のようなことが起きていないのであれば、日本の多くのチームに見られる「技術と守備戦術はレベルが高いのに攻撃は数段レベルが落ちる」という状況を説明するのが難しくなります。
その国の選手のプレースタイルには確かに国民性が反映されるのでこれをもって「日本人はシュートが下手だ、決断力が欠ける」という意見もありますが、一方で技術がしっかりしていればサッカーにおける攻撃の可能性が大きく広がるのも事実です。そして、日本の選手の技術は世界的に見ても高い。
戦術の根幹を成すのは、ボールを持っていない時の動きと、そして一番重要なのは「ボールを狙った場所に運ぶ」技術です。
「技術」がある日本人選手が「戦術」を使いこなせないという事は、選手の質に問題があるのではなくて「戦術を使いこなす練習が施されていないから」と言えるのではないでしょうか?
スペイン人が見た日本のサッカー (10)<練習してこそ戦術は使える> につづく
スペイン人が見た日本のサッカー (1)<はじめに>
スペイン人が見た日本のサッカー (2)<プレーの緩急 その1>
スペイン人が見た日本のサッカー (3)<プレーの緩急 その2>
スペイン人が見た日本のサッカー (4)<接触プレー>
スペイン人が見た日本のサッカー (5)<早すぎる日本のスピード>
スペイン人が見た日本のサッカー (6)<土台の再確認を>
スペイン人が見た日本のサッカー (7)<育成の要>
スペイン人が見た日本のサッカー (8)<日々、実証>
スペイン人が見た日本のサッカー (9)<素材は持っているのに>
スペイン人が見た日本のサッカー (10)<練習してこそ戦術は使える>
スペイン監督日記 2008/10/26
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2008年10月25日
スペイン人が見た日本のサッカー (7)<育成の要> の続き
リーグ戦を開催する事の最終目的が「選手のレベル向上」である事は間違いありませんが、リーグ戦を通して鍛えられるのは選手だけではありません。彼らを率いる「監督」も実戦を通して成長します。
20-30人の選手の指導を行う「監督」のクオリティが選手達に与える影響が大きいのは言うまでもありませんが、彼らの指導方針が、経験した実戦の数によって大きく異なる点はあまり言及されません。
監督をする人間は日々、チーム戦術、練習方法、選手の管理に考えを巡らせています。
しかし実際にチームに採用している戦術や指導方針が正しいかどうかは、レベル別に分けられた厳しいリーグ戦で1シーズンを戦い抜かないと修正点が浮かびづらく、また指導手腕も洗練されません。
最新の指導理論や細部の技術指導を行うことも大事ですが、
「1年を通して各レベル毎に厳しい実戦を多く経験すること」
が強化において最も重要であることは疑いの余地がありません。
それは選手にとってはもちろん、指導者にとってもです。
監督の指導方針はチームの要です。
しかしもし監督が、「シーズンを通したレベル分けされたリーグ戦」で実証できていない誤った方針や方法をチームに施したらどうでしょうか?
選手達は課題を消化不良のまま1シーズンを終えることになり育成年代での貴重な時間を失ってしまいます。
スペイン人が見た日本のサッカー (9)<素材は持っているのに> に続く
スペイン人が見た日本のサッカー (1)<はじめに>
スペイン人が見た日本のサッカー (2)<プレーの緩急 その1>
スペイン人が見た日本のサッカー (3)<プレーの緩急 その2>
スペイン人が見た日本のサッカー (4)<接触プレー>
スペイン人が見た日本のサッカー (5)<早すぎる日本のスピード>
スペイン人が見た日本のサッカー (6)<土台の再確認を>
スペイン人が見た日本のサッカー (7)<育成の要>
スペイン人が見た日本のサッカー (8)<日々、実証>
スペイン人が見た日本のサッカー (9)<素材は持っているのに>
スペイン人が見た日本のサッカー (10)<練習してこそ戦術は使える>
スペイン監督日記 2008/10/25
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2008年10月24日
スペイン人が見た日本のサッカー (6)<土台の再確認を> の続き
日本でもサッカーのレベルを上げるために定期的なリーグ戦の開催が提唱され続けています。
その結果、1年を通して1つのチームが戦う試合数は以前よりも確実に増えており、トップレベルのチームはプリンスリーグのようなリーグ戦を戦えるまでになりました。
しかし底辺の部分ではまだまだリーグ戦が定着しないのが現状です。
それは以前にも触れた通り学校体育中心の体制や試合を行うグラウンドの確保が難しいという状況に起因しています。
そういった体制や整備の面の問題は短期間では解決しません。しょうがないことです。
実際、スペインで1シーズンを通して8~18才までの選手が毎週リーグ戦を戦えるのは、80~100年前からグラウンドが街中に作られ、加えてサッカーが元から学校体育ではなくクラブスポーツだったからです。そういう「箱」が以前からある国とない国では強化の方法論が根底から変わるのは当然です。
しかし「リーグ戦を開催する」というテーマについて議論する時に、その焦点は主に「選手達の強化」にのみ向けられていないでしょうか?
選手が育つことと同じくらいリーグ戦を戦う中で強化される重要な点があります。
それは、、、
「実戦の中で監督も鍛えられるということ」
スペイン人が見た日本のサッカー (8)<日々、実証>
につづく
スペイン人が見た日本のサッカー (1)<はじめに>
スペイン人が見た日本のサッカー (2)<プレーの緩急 その1>
スペイン人が見た日本のサッカー (3)<プレーの緩急 その2>
スペイン人が見た日本のサッカー (4)<接触プレー>
スペイン人が見た日本のサッカー (5)<早すぎる日本のスピード>
スペイン人が見た日本のサッカー (6)<土台の再確認を>
スペイン人が見た日本のサッカー (7)<育成の要>
スペイン人が見た日本のサッカー (8)<日々、実証>
スペイン人が見た日本のサッカー (9)<素材は持っているのに>
スペイン人が見た日本のサッカー (10)<練習してこそ戦術は使える>
スペイン監督日記 2008/10/24
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2008年10月23日
スペイン人が見た日本のサッカー (5)<早すぎる日本のスピード> の続き
もし日本が今のままの道を進むので良しとするならそれも一つの選択ですが、「中盤での組織プレー」を前面に押し出したサッカーを追求するのであればこの「プレーの緩急」の習得は不可欠となります。
日本の高校やユースチームを欧州遠征中に指導したり実際に試合を見た経験があるスペイン人、イタリア人コーチの感想はその多くが以下の点で共通しています。
「日本のチームはテクニックがあり、守備も良く組織されている。しかし攻撃では戦術に欠けボールを失うリスクが高い。安定している守備に比べて、ボールを持っている時(攻撃時)の方がチームにとって危険な状態というのは問題だ。本来はボールを持っている時こそが安全な時間帯なのだから」
ここでいう「戦術」とは、チームが共有する攻撃のプロセスはもちろん、各状況でどういう優先順位でプレーをするか?という項目まで含みます。例えば主導権を握れない試合では、どういう形で攻守をおこなうか?といった点。
プレースタイルが違うといわれるスペインとイタリア。しかしこの両国のコーチが日本のサッカーを見た時に感じる問題点が共通しているということは、それは日本サッカーの問題がプレースタイル以前の段階、すなわち土台の部分で数箇所、改善すべき点があるという事を示唆しているのではないか?
このテーマの最初に触れた点に戻りますが、選手個々の技術レベル、運動能力が高い日本の場合、今のスタイルのままでも強豪相手に勝利したり善戦する事は十分に可能です。それはこれまでの国際大会での成績が証明しています。
ここで言及しているのはあくまでも「長期展望で見た際の日本がとるべき方向性」についてであり、それは例えば
「ワールドカップで決勝トーナメント進出後にさらに勝てるチームを作る」
というレベルでの話しです。
続く
スペイン人が見た日本のサッカー (1)<はじめに>
スペイン人が見た日本のサッカー (2)<プレーの緩急 その1>
スペイン人が見た日本のサッカー (3)<プレーの緩急 その2>
スペイン人が見た日本のサッカー (4)<接触プレー>
スペイン人が見た日本のサッカー (5)<早すぎる日本のスピード>
スペイン人が見た日本のサッカー (6)<土台の再確認を>
スペイン人が見た日本のサッカー (7)<育成の要>
スペイン人が見た日本のサッカー (8)<日々、実証>
スペイン人が見た日本のサッカー (9)<素材は持っているのに>
スペイン人が見た日本のサッカー (10)<練習してこそ戦術は使える>
スペイン監督日記 2008/10/23
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2008年10月22日
スペイン人が見た日本のサッカー (4)<接触プレー> のつづき
数年前にRCDエスパニョールのスクールで指導していた時にJリーグのユースチームのコーチをしている方が練習見学に来ており何度かお話をさせてもらった事があります。
そのコーチは、じーっと試合をみて感慨深そうにつぶやいてました。
コーチ「スペインの子達はゆったりとプレーをしているね」
私「日本では違いますか?」
コーチ「日本では速くプレーをしなきゃいけない、という焦燥感に駆られてプレーしている。ボールを前に前に、とね」
実際に、日本のサッカーのプレースピードは速い。リーガ・エスパニョーラなどを見ているともっと速く見えますが、それは緩急を織り交ぜているためゲームの中にメリハリが出来てそう感じる部分もあります。
逆に日本の場合は選手の戦術判断がプレースピードについていかず、行き当たりばったりのプレーになったり、不用意にボールを失ってしまうケースも多い。そういう部分でのリズムがうまく調和されていないと、各プレーのスピードが速くても、全体としてそのスピードが生きず、見ている方も消化不良になるのはもちろん、試合でも有効なプレーが実現しません。
スペインのユース世代のサッカーもスピードはもちろんあるのですが、そこを発展させる前に、
・状況判断を伴ったプレーの選択
という工程を挟むので、そこから発展してプレースピードが上がった際のスタイルは日本のそれとは違ったものになります。
スペイン人が見た日本のサッカー (6)<土台の再確認を> につづく
スペイン人が見た日本のサッカー (1)<はじめに>
スペイン人が見た日本のサッカー (2)<プレーの緩急 その1>
スペイン人が見た日本のサッカー (3)<プレーの緩急 その2>
スペイン人が見た日本のサッカー (4)<接触プレー>
スペイン人が見た日本のサッカー (5)<早すぎる日本のスピード>
スペイン人が見た日本のサッカー (6)<土台の再確認を>
スペイン人が見た日本のサッカー (7)<育成の要>
スペイン人が見た日本のサッカー (8)<日々、実証>
スペイン人が見た日本のサッカー (9)<素材は持っているのに>
スペイン人が見た日本のサッカー (10)<練習してこそ戦術は使える>
スペイン監督日記 2008/10/22
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2008年10月21日
スペイン人が見た日本のサッカー (3)<プレーの緩急 その2> のつづき
<接触プレー>
レイソル対ガンバ大阪の試合を観ていたくだんのスペイン人監督は私に確認を求めるように聞いてきた。
彼 「彼らは18才でこれは日本で一番レベルが高い全国大会の準決勝なのか?」
私 「そうだよ」
彼 「ありえない」
私 「なにが?」
彼 「激しいボディーコンタクトが全然ないじゃないか。 スペインであれば自陣で相手にこんなに自由にプレーさせるなんてありえない。プレシーズンならともかくシーズン終盤の全国大会なら4-5プレー毎にファウルが起きても不思議じゃない」
私 「あああ、、、欧州と比べるとそれは大きな違いだね。でもそれにはいくつか理由があるんだ。日本では元々スポーツで欧米人ほどガツガツやり合わないんだ。スペインでは友人同士のサッカーでもイーブンボールには接触プレーを恐れずに激しくぶつかるだろ? 日本ではそういうメンタリティがあまりない。 そのベースに加えて、欧米よりもサッカー協会が主審にルールブックに忠実に笛を吹くように指導している。セットプレーで当たり前のユニフォームのつかみ合い、ボディーコンタクト、抗議、そういったもの全般に対するルールの適用がどの国よりも厳しい。もしファウルが後方からあったら、多分、その度合いに関わらずすぐにイエローカードが出るだろう。それは「後方からのファウルだから」という理由で」
そしてすぐ目の前でそういうプレーが起きた。
彼「そう! このくらいの当たりがたまにではなくもっと頻繁にあるべきなんだ。じゃないとこのレベルだと皆がテクニックがあるからすぐにピンチに結びつくプレーをされてしまう」
私「出るよ」
審判がイエローカードを提示。
彼「? おいおい、なんで今のがイエローカードなんだ? 確かに後方からの接触だったが足を刈ったわけじゃない。」
私「でもこれがここでは標準的なジャッジなんだ。」
彼「。。。。。」
私「でも黄色いユニフォームのチーム(レイソル)はMICで準優勝してるんだよ」
※MICについては日本のユースチームがスペイン遠征で考慮する点 を参照
彼「確かに技術と守備はレベルが高い。でもMICは実戦じゃない。スペインのユース1部リーグでこういう戦い方をしたら90分間ボディーコンタクトに堪えれないんじゃないかな」
スペイン人が見た日本のサッカー (5)<早すぎる日本のスピード> に続く
スペイン人が見た日本のサッカー (1)<はじめに>
スペイン人が見た日本のサッカー (2)<プレーの緩急 その1>
スペイン人が見た日本のサッカー (3)<プレーの緩急 その2>
スペイン人が見た日本のサッカー (4)<接触プレー>
スペイン人が見た日本のサッカー (5)<早すぎる日本のスピード>
スペイン人が見た日本のサッカー (6)<土台の再確認を>
スペイン人が見た日本のサッカー (7)<育成の要>
スペイン人が見た日本のサッカー (8)<日々、実証>
スペイン人が見た日本のサッカー (9)<素材は持っているのに>
スペイン人が見た日本のサッカー (10)<練習してこそ戦術は使える>
スペイン監督日記 2008/10/21
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2008年10月20日
スペイン人が見た日本のサッカー (2)<プレーの緩急 その1>からの続き
ここでいう「プレーの緩急」には2つの要素があり、一つは
・選手の動きの面でのスピードの変化(プレースピード、走るスピード)
そしてもう一つは
・ボールが移動するスピードと距離の変化
(パスの強さと一つのパスでボールが移動する距離)
プレーの緩急とは、
「敵はこちらのプレー次第で守備の対応をするので、相手を一定のリズムに慣れさせてから意表を突く形でリズムを変えて(早いプレースピード、早いショートパス、ロングパスを使い)敵の守備組織を崩す」
簡潔に説明するとこうなります。
さらにここに「チームの攻撃の方向を変えたり」、「チーム内で事前に打ち合わせしている状況を作るまで単調にプレーをし、その状況が作れた時にチーム全員がスピードを上げて一気に動き出す」などやり方はいろいろありますが、この土台には上記の考えがあります。
例をあげると、傍からみると最終ラインから前線にロングボールをただ放り込んでいるようなプレーでも、そのプレーの中にはチームとして「プレーの緩急」が共通認識として徹底されている事があるのです。
あるチームが最終ラインと中盤の間でボール回しを繰り返し、敵守備陣がそれに対応するためにポジションの修正を繰り返す中で生まれるスペースの綻び。 それが出た時、攻撃側のミッドフィルダーはボールをセンターバックに戻しセンターバックから相手守備陣の後方にロングボールが送り込まれる。
またこの際、ミッドフィルダーは相手のゴールを背にした状態でパスを受ける場合、マークに付かれているかどうか確認する時間がない時はトラップをせずにダイレクトでマークに付かれていない味方のディフェンダーにボールを返します。
ここでは3箇所に「プレーの緩急」が使われている。
・最終ラインと中盤のパス回しで2~3タッチのリズムのパスとダイレクトパスが併用されているため、このスピードのアップダウンが敵守備陣のマークのズレを誘発させる。
・ショートパスを多用したプレーで敵に「対ショートパスの陣形」を敷かせるように仕向け、それが整った段階でその陣形の弱点である後方へのロングパスで相手の裏を取っている。ここではボールの移動距離に「プレーの緩急」が使われている。
・ポジションを保っている敵の最終ラインに対し、フォワードの動きが
「ゆっくりした動き」から「裏に出されたパスに走りこむ全速力の動き」に急に変わるため守備陣の対応が遅れる。
ここで重要なのが2つの攻撃の方針(仮にAとBとする)を使い分けている事で、敵がこちらの攻撃(A)に有効な守備陣形を敷いた際に、適切なタイミングでそれを(B)に切り替える事で守備組織が持っていた長所を無効にするのが目的である。
この場合は、「ショートパスの交換による攻撃のビルドアップ(攻撃A)」を防ぐために敵は守備ラインを高い位置に設定し中盤のスペースを消す必要がある。いわゆるゾーンディフェンスである。
そしてゾーンディフェンスを崩すのが「敵陣深くへのロングパス(攻撃B)」。
特に日本のチームの攻撃で目立つのが、最初の「敵を誘導する行程」を飛ばして攻撃を仕掛けるので、相手の陣形が整っている所に突撃する形になり、数的不利となったボール保持者のパスミスでボールを失うケースがとても多いという事。
スペイン人が見た日本のサッカー (4)<接触プレー> につづく
スペイン人が見た日本のサッカー (1)<はじめに>
スペイン人が見た日本のサッカー (2)<プレーの緩急 その1>
スペイン人が見た日本のサッカー (3)<プレーの緩急 その2>
スペイン人が見た日本のサッカー (4)<接触プレー>
スペイン人が見た日本のサッカー (5)<早すぎる日本のスピード>
スペイン人が見た日本のサッカー (6)<土台の再確認を>
スペイン人が見た日本のサッカー (7)<育成の要>
スペイン人が見た日本のサッカー (8)<日々、実証>
スペイン人が見た日本のサッカー (9)<素材は持っているのに>
スペイン人が見た日本のサッカー (10)<練習してこそ戦術は使える>
スペイン監督日記 2008/10/20
posted by hospi |01:23 |
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2008年10月19日
スペイン人が見た日本のサッカー (1)<はじめに>からの続き
<プレーの緩急>
三ツ沢で見たのは全国クラブユース選手権の準決勝の2試合、FC東京vsヴェルディと柏レイソルvsガンバ大阪。
くだんのスペイン人監督はレイソル戦から観戦。
彼はFCバルセロナのサッカースクールのコーチで、日本で行ったサッカー教室のために来日。
この日は空き時間で三ツ沢までやってきていました。
試合をしばらく見て、彼が私に聞いてきました。
彼 「どう思う?」
私 「ここ数年は日本のユースの試合を見てないから日本の他チームとの比較はできない。君はどう思う?」
彼 「スタミナとスピードがあって技術も高い。守備組織もかなりのレベルだ。」
私 「試合結果だけで言ったら、スペインの同世代の強豪チームとやっても勝てると思う。リーグ戦期間中のバルサやエスパニョールには敵わない思うけども」
彼 「そうだな。でもスペインの基準で見ると一つ決定的に欠けているものがある。君は感じないか?」
私 「カンビオ・デ・リズモ(プレーリズムの変化)...」
彼 「そう、、、。プレーに緩急がない」
彼 「どのチームにも欠点はある。でも、そういうのは二の次だ。トレーニングの中で改善したり他の長所を伸ばして補ったりできる。でも今回、日本でサッカー教室を開催して日本人選手の共通の特徴に気がついたんだ。日本のサッカーにはプレーに緩急がないんだ。バルセロナのスクールでも留学してきた日本人選手を受け入れて指導した事があるんだが同じだった。そういう面で日本の選手がスペインに来てプレーする場合、生活面の困難とは別にこの部分で苦労すると思う」
スペイン人が見た日本のサッカー (3)<プレーの緩急 その2>へ続く
スペイン人が見た日本のサッカー (1)<はじめに>
スペイン人が見た日本のサッカー (2)<プレーの緩急 その1>
スペイン人が見た日本のサッカー (3)<プレーの緩急 その2>
スペイン人が見た日本のサッカー (4)<接触プレー>
スペイン人が見た日本のサッカー (5)<早すぎる日本のスピード>
スペイン人が見た日本のサッカー (6)<土台の再確認を>
スペイン人が見た日本のサッカー (7)<育成の要>
スペイン人が見た日本のサッカー (8)<日々、実証>
スペイン人が見た日本のサッカー (9)<素材は持っているのに>
スペイン人が見た日本のサッカー (10)<練習してこそ戦術は使える>
スペイン監督日記 2008/10/19
posted by hospi |21:08 |
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2008年10月18日
7月から8月にかけて日本滞在中にJリーグとユース世代の試合を見る機会がありました。
今回は三ツ沢競技場で出会ったスペイン人監督とのやり取りを中心に書きますが、その前に誤解がないように以下の点について断っておきたいと思います。
・国によってサッカーのスタイルが異なる
・スタイルの違い=優劣ではない
・1試合の結果≠サッカーの質
ここ20年でサッカーの指導方法や戦術が世界的に普及し、運動量が豊富なスタイルに変化した結果、サッカー先進国とそうでない国のチームが対戦しても内容程に得点差は出ず、逆に強豪国にとってはどんな小国が相手でも足元をすくわれる可能性が大きい現状となっています。
実際に日本のユース世代が国際大会で北朝鮮に敗れたり、W杯予選で中東のチームに敗戦を喫する事もあります。しかし、それがイコール、「日本のしているサッカーよりも相手の方が上だ」という事にはなりませんし、同時に日本が欧州や南米の強豪を倒したからといって、「日本のサッカーの方が上だ、日本ももうすぐ強豪国に追いつく」とはならないと思うのです。
大事なのは方針をちゃんと定めて、
・長期でそのサッカー(スタイル)が進歩しているか?
・継続的に結果を出しているか?
ということです。
そして今回、スペイン人の視点から見た日本のサッカーの状態をご紹介するのは、「スペインが日本よりも強い」からではなく、中盤での組み立てを重要視する日本のスタイルにとって参考にできる事がスペインのサッカーの中にあると思うからです。
強さだけでいうなら、例えば私が生活していたことがあるワールドカップ優勝国イタリアの例を出すことも出来るのです。それをしないのはスタイルで参考になるのはイタリアよりもスペインのはず、という考えによります。
スペイン人が見た日本のサッカー (2) へ続く
スペイン人が見た日本のサッカー (1)<はじめに>
スペイン人が見た日本のサッカー (2)<プレーの緩急 その1>
スペイン人が見た日本のサッカー (3)<プレーの緩急 その2>
スペイン人が見た日本のサッカー (4)<接触プレー>
スペイン人が見た日本のサッカー (5)<早すぎる日本のスピード>
スペイン人が見た日本のサッカー (6)<土台の再確認を>
スペイン人が見た日本のサッカー (7)<育成の要>
スペイン人が見た日本のサッカー (8)<日々、実証>
スペイン人が見た日本のサッカー (9)<素材は持っているのに>
スペイン人が見た日本のサッカー (10)<練習してこそ戦術は使える>
スペイン監督日記 2008/10/18
posted by hospi |17:14 |
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