2008年09月30日

「監督」と「コーチ」の違いって?

スペインにいながらインターネットや雑誌で日本の情報に触れていますが、少なくてもサッカーの「監督を指す言葉」では、日本での用途が外来語の使い方という面で和製化している印象を受けます。

日本のサッカー界で「コーチ」というと、サッカーに関わりがある人や好きな人は「あ、監督をサポートしている人か!」と思う人が大半で実際にチームの中でもそういう区別がされていると思います。しかし一般の人にとっては必ずしもそうではなく、「コーチ=監督」と思っている人と「コーチ=監督のアシスタント」と思っている人の2通りがあるのではないでしょうか?

実際には英国など欧州の英語圏ではプレミアシップの試合を観ていても分かるように監督を「コーチ」と表記しています。
私が住んだ経験があるのはイタリアとスペインですが、両国ともコーチの直訳に監督を指すAllenatore(アッレナトーレ)、 Entrenador(エントレナドール)が使われます。第2監督はこの言葉の頭に「第2~」と付けますし、その他はキーパー監督、フィジカルトレーナー、アシスタントという感じになります。

なぜこういうことが気になったかというと、スペイン人に現地にいる、もしくは日本から来たばかりの日本人コーチの経歴を説明する機会が多々あり、その時にスペイン人側と日本人側の両方に補足を毎回しなくてはいけないから。

「日本人コーチ」がスペイン人にコーチの直訳である「エントレナドール」を使って「エントレナドールをしてました」と伝えるとスペイン人は「ああ、この人は監督の経験があるのか」と思います。でも実際に見てみると言葉の問題を抜きにしても出来る範囲は「監督」ではなくこちらでいうアシスタントで、そうなると「監督をしてたんじゃないのか?」とスペイン人は疑問に思うわけです。そこで「いや、彼がしていたのはアシスタント」という説明が必要になるんです。

スペインでいう「第2監督」は監督と練習方針を共有し、練習や試合では監督の考えに意見し共にチーム管理に関わる役割を担っています。 練習のサポートや研修を兼ねて手伝いをしている人はアシスタント(Ayudante)、お手伝い(Utiliero)と言い分けています。
例えばセミプロのチームであれば、「うちは第1監督、第2監督、フィジカルコーチ、キーパーコーチ、それに2人のアシスタントがいます」という感じになります。

日本ではコーチという言葉が「第2監督」と「アシスタント」を包括してしまっているので、スペインのあるチームでアシスタントや研修をしていた人が「~というチームのコーチをしていた」というのは、日本語では半分あたっていますが、スペイン人に対しては現地の役割分担に照らすと間違った経歴説明になります。


アメリカのスポーツでは監督にあたるポストの人のことを「ヘッドコーチ」、その他のトレーニングスタッフの事を「コーチ」と呼ぶことがあると思いますが、日本での「コーチ」という言葉の使い方はアメリカの影響が大きいのかもしれません。



スペイン監督日記 2008/9/30

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2008年09月29日

リーグ開幕戦です

私がバルセロナで指導しているオスピタレットのカデテB(14歳)のリーグ初戦が9月27日(土)にありました。

スペインのユース世代の仕組みは過去の日記
スペインのユース世代のリーグ戦を参照してください。

私のチームはカデテの上から3つ目のPrimera Division で対戦相手のほとんどが1歳年上、もしくはオスピタレットと同じ強豪クラブの14歳チームなので楽な戦いは殆どありません。

第1節はオスピタレットのホームでバルスィーノ(Barcino)というクラブとの対戦でした。
試合は前半2分にオスピタレットがカウンターから先制ゴールを奪い、7分にも追加点を決め早々に試合の主導権を握る展開。

実はオスピタレットのグランドは、いろいろな大きさのグランドが存在するバルセロナ市内のグランドの中でも特に広いグランドで、多くのアウエーチームが試合の序盤はその大きさに慣れるのに苦労するのです。FCバルセロナのカンプノウと同じくらいかもしれません。

実際、ホームチームの我々ですらプレシーズンでホームでは1試合しか練習試合をしていない状態で練習でも全面を使えるということはないのでまだピッチの大きさに慣れていないのが実情です。

それでも相手のバルスィーノはバルセロナ市内屈指の小さなグランドがホームのチームなのでその違いが序盤の結果に出たといえます。それに加えてオスピタレットはスタンドも立派なので普通の地域のクラブはこの独特の雰囲気に慣れるのに時間がかかります。

試合は前半終了間際にセンターバックの選手が直接35mのフリーキックを決め3-0で終了。


後半は相手のオフサイドトラップにてこずりオスピタレットは追加点をあげることは出来ず内容的にもひどいプレーに終始しましたが、劣勢が予想されるシーズンを踏まえ5週間のプレシーズンは体力のベース作りと守備組織の構築、セットプレーのスタイルを確立するトレーニングで終わってしまい攻撃はこれからなので、3-0という結果は許容できる結果だと言えます。

スペインのユースの練習スタイル、時間配分などは次回のブログで。。。

スペイン監督日記 2008/9/29

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2008年09月26日

リーグ開幕前、最後の親善試合

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9月21日、リーグ開幕前の最後の親善試合を戦ってきました。 (写真はHortaの競技場) この週は土曜日のVista Alegre戦に続き2日連続の試合。 対戦相手のHorta(オルタ)は昨季まで私が5年間在籍したクラブ。 この日の相手は同じ14歳で同じPrimera Division(実質3部)を戦うCadete Bですがリーグ戦では別グループなので対戦しないチーム。 相手チームの監督はHorta時代に一番の親友だったジョアン・ロマ。 試合前に少し会話をしたのちスタンバイへ。 この日のテーマは前日のVista Alegre戦で持続しなかった守備の確認と、コーナーキック、フリーキックでのトリックプレーの実践。 そしてサイドでボールを回し過ぎない点に重点を置いた試合でした。 試合は立ち上がりは交互に攻め合う展開となり、前半25分に相手コーナーキックでニアの敵選手がバックヘッドでボールを流したところを突かれホームのオルタが先制。1-0。 続く35分、今度は私のチーム(オスピタレット)がゴール正面30mのフリーキックを、セットプレー担当の左サイドバックのイバンが直接蹴り込み同点。1-1。 前半はこのまま終了。 ハーフタイムには選手間の声かけが足りない点、プレーの緩急をもっとつける点、そしてコーナーキックで事前に決めている動きが不足している点を確認しました。最後に、オスピタレットのユニフォームに恥じないプレーをしろと選手を鼓舞し後半へ。 後半5分、コーナーキックのチャンスに、ハーフタイムに再確認した動きが決まりトリックプレーからエースのクリスティアンが押し込み逆転。1-2。 その後はメンバーを代えた相手の中盤に対しこちらの中盤が優勢を保ち2点を追加。 ここで前日と同じく中盤で運動量が落ちていたMFを下げ前日の試合と同じ配置に。 しかしポジションが落ち着く前に隙を突かれ後半30分に失点。2-4。 ただ、中盤は再び競争力を取り戻したので再び試合を支配し後半34分に左MFが30mのロングシュートを決めて試合を終わらせました。 総括としては、 ・体格で上回る相手を敵に回しても十分主導権を持てる ・テスト中のコーナーキック、フリーキックから結果が出せた という収穫がありました。 スペイン監督日記 2008/9/26


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2008年09月26日

第4週の1日目の親善試合

8月25日から始動した私のチーム、オスピタレット・カデテBは第1週から練習試合を行い今回が第4週目。リーガ前の最後の週末は土・日の2日にかけて2試合を戦いました。

ロナウジーニョが住んでいたCastelldefells(カステイルデフェルス)というバルセロナの南西にある港街への遠征です。


Castelldefels
第2週にもこの街には来ているのですがその時はCastelldefelsの同年代のチームを相手にアウェーで1-3で勝ちました。 今回は前回の海上のすぐ近くのビスタ・アレグレ地区での試合。 ビスタ・アレグレ、直訳して「幸せな景観」。 ビスタ・アレグレ戦は、アウェーながらこちらのゾーンディフェンスが序盤から機能し先制点をあげ、試合の主導権をとる展開。 1点リードで迎えた後半、あまりに余裕がありすぎたせいか、数人の選手が徐々にゾーンディフェンスの決まり事を中途半端にこなすようになり、守備が緩んだところを突かれて同点にされてしまいました。 その後、サイドでのボール回しでも優先事項がはっきりしないプレーをしミスを突かれてあれよあれよという間に2失点。 ここでスタメンの選手ながら負傷明けでスタミナが落ちていた中盤の選手を代え、彼が機能しなくなった場合の対応策として準備していた選手起用を試しました。 練習ではまだ試していなかった配置でしたが、これが機能して残り5分で2点を返し3-3で終了。 先週までは未完成だった守備組織が完成しつつあるのが収穫でしたが、同時に1試合(40分×2)を通しての持続力がこれからのテーマです。 スペイン監督日記 2008/9/26


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2008年09月26日

サッカーの監督になると週末がなくなります

先週末は

「さて待望の週末到来!」

と思ったのもつかの間、土日の2日間は私が監督を務めているチームの練習試合と相手チームの偵察でほぼ埋まっていました。や、休めない、、、。 

チームはオスピタレットというバルセロナでは強豪のクラブのひとつですが、今季からその14歳チームを受け持つことになりました。彼らはいわゆるエリートに近い部類の選手なので、カデテ(14-15歳)のカテゴリーで普通の14才チームがいる4部ではなく、15歳の敵が大半の3部で1歳年上の相手と試合をしなくてはいけません。(だから偵察も必須~) 

カデテ1年生(14歳)なので私のチームはカデテBと呼ばれ、この上にカデテA(15歳)があり彼らは2部から1部への復帰が目標。 

オスピタレットの場合はカデテCという14-15歳混成チームもあり、このチームは7割がAに入れなかった選手で残りがBに入れなかった選手で構成されています。Cチームは私と同じ3部ですが別グループ。 

写真はホームグランド。実は2階席は外周の3分の1にしかついてません。

中学生のチームですがクラブの規模が大きくなるのでここの監督になるのは結構大変。スペイン6年目でなんとか辿り着きました。


L'Hospitaletの競技場
スペイン監督日記 2008/9/26


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2008年09月25日

バルサにDesdoblamientoはない?

<以下>バルサvsベティス戦(9/25)の内容に触れた記述があります。 







アウェーのヒホン戦で大量6ゴールを奪ったバルサ。 
結果だけ見ると「これでチームは復調!」と地元紙も期待していたベティス戦ですが、勝ち点3を得た以外は後味の悪い内容でした。 

ヒホン戦でのポイントはいつも以上にチャビが右サイド深くに上がりセンタリングやフォワードとのパス交換を行っていた点。 

「これでメッシーが有効利用していない右サイドのバランスが取れて攻撃が安定するか?」 

という声もありましたが今日の試合でもチャビの動きは同じで、右サイドのアウベスのオーバーラップも加わり前半は厚い攻撃を見せた結果、2点のリードで終えることができました。しかし後半は単調な試合運びが災いしベティスの反撃を浴び一時は2-2の同点に。 主審がベティスのPKを見逃したこと、そしてベティスの守備のミスに助けられてバルサはなんとか決勝点を奪い勝ち点3を得ることができました。 


バルサにとって一番重要なのはチームの基本スタイルがリーガの重要な試合やチャンピオンズリーグでの強敵相手に通用するか?ということ。 リーガで中堅以下の相手に勝つことは当然のことで、それ以上に今注目されているのはチームの機能性です。 まだ調整が足りない部分があっても良い。 大事なのはシステムの大枠がしっかりと方向付けされていること。 

そういう意味で今回のベティス戦はヒホン戦の気休めの後に冷水を浴びせられたような試合。 
結果こそ3-2でバルサが勝ちましたが、内容や相手のレベルを考慮すると「危ない」のひとこと。 


分析を始める前に、バルサが6ゴールを挙げ週末に破ったヒホンは今節はレアル・マドリーに7点を献上しています。 
そして今回の対戦相手のベティスは4試合を終えて勝ち点2。 4試合だけ消化した時点で実力を判断するのは時期尚早ですが、ベティスは攻撃時の2-3選手のコンビネーション以外はセグンダA(2部)のレベルで、守備でもボール保持者にプレッシャーをかけない(ありえない)ラインディフェンスで窮地に陥り、グジョンセンの決勝ゴールの際にはバルサの3選手に対して2人しか守備陣がいないところを突かれました。ヒホンと共にバルサの攻撃の質を計るには役不足だった感が否めません。 

さて、早速分析ですが、バルサの攻撃を見ていて一番最初に感じたのが、試合を通して後方からの上がりに対してのポジションカバーがあまりされていないということ。 

スペインでは戦術用語でDesdoblamiento(デス・ドブラミエント)といい、要は「ポジションを離れた仲間のポジションを他の選手が埋めてピッチ上の選手配置バランスを保つ」というもの。これ自体は特別なことじゃないですよね。万国共通です。 

具体的に言うと、そもそもオーバーラップというのはチームが採用しているシステムで均衡が破れない時に、後方から「一時的に(!)」選手が加勢し数的優位を作るというもの。 
オーバーラップで生じた「1人多い状態」は短時間で終わらせることが大事になってきます。 

その理由は、 

・時間が長くなるとフリーの選手にマーカーが追いつき数的優位ではなくなる 
・前線の人数が多くなるとオープンスペースが埋まってしまい攻撃の選択肢が減る 

そしてサッカーでは、 

ボールを奪う→ボールを失う→ボールを奪う 

というサイクルで試合が回っているため、攻撃に人数をかけ過ぎると守備時に人数不足になる、 
という理由があります。 


ではどういった形でポジションをフォローしあうか? 

これも簡単な話で、4-4-2や4-3-3システムの右サイドバックのケースでは主に次のパターンがあります。 


・中盤右の選手が、上がったサイドバックの後方をフォローする形でポジション入る 
・センターバックが右のスペースを埋め中盤中央の選手がディフェンスラインに後退する 
(もしくは3バックの形で右サイドバックの帰陣を待つ) 



このことは基本的であると同時に、これをちゃんとしないと拮抗した戦いで相手に隙を見せることになります。 


ではバルサはどうか? 
ベティス戦のバルサ
図のようにメッシーにはインサイドに切り込む自由を与え他の2人のフォワードも前線にいる状態でチャビがメッシーの右をカバーし、そこに後方からアウベスが上がってくると、一時的にフォワードのラインに5選手が密集している状態になります。ヒホンやベティスのようにこれを防げない敵相手であれば良いですが、防がれてしまった時、後方は3人のディフェンダーと2人の中盤の選手だけになります。加えてこの2選手は前線の選手のパス交換のフォローにも回っているので、ボールを失った状態で実質守備につけるのは最終ラインの3選手+1~2選手のみ。 この危険な状態を作らないにはどうしたら良いか?
通常のポジションのフォロー
<システムを変えずメッシーも起用し続ける場合> まず右サイドに2選手が上がってくるのはリスクがありすぎるので「上がるのは1人だけ」という制限を設ける。 (チャビ、もしくはアウベスが図のAlvesのポジションに入る) 加えて ・中盤のバランスを保ちたい場合 メッシーがボールを持った時点でエトーが中盤寄りに下がったポジション(図のA)を取る。エトーはこれでメッシーとパス交換をするチャンスができる。仮に敵がこのパスコースを塞ぎに来たら逆にメッシーのシュートコースが空く。加えてボールを失った際にエトーが中盤を助けることで数的不利を防げる。 ・中盤の数的不利を許容する場合 エトーがメッシーとスライドし(図のB)、メッシーにシュートとラストパスの選択肢を与える <メッシー抜きでシステムを維持する場合> 右利きの選手を右サイドに起用すれば上記のような面倒な動きをしなくても攻撃は大分シンプルになります。 <システム変更をしメッシーの中央突破を活用したい場合> システムを4-4-2に変えメッシーを右のフォワードに起用する ※サイドハーフの最低一人はサイドに合った利き足であること(右サイドなら右利き) 現在のバルサの攻撃時の不自然さを解消しようとすると上記のような長ーい説明になってしまいますが、チームを縛っている、 ・4-3-3システム ・メッシーの起用 のどちらかを放棄すれば最後に述べたように解決策は驚くほどシンプルなものになります。 ただ問題は、 ・メッシーがチームのシンボルであるためベンチに置けない ・バルサは上記の4-4-2を全く考慮していないので選手が足りない ということで最後のこの2つの解決策はあっさりボツ。 それでグアルディオラは悩んでいるわけです。 (元からベップの頭に4-4-2はないと思いますが、、、) 現実的な落とし所としては、(メッシーの負傷を除けば)メッシーを90分使わずに他選手と併用する選択がありえるのでは?と思っています。 さて、どういう形で解決するのか今後の展開に注目することにします。 スペイン監督日記 2008/9/25


posted by hospi |10:50 | リーガ | トラックバック(0)
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2008年09月24日

ベップの改革とバルサのシガラミ

スペインのコーチライセンス・レベル3(日本のS級に相当)を受講していた2006年の3月、当時、現役を引退して充電期間だったベップ・グアルディオラが私達にクライフ政権下の3-4-3システムの万能性を説く授業がありました。 

その時は地元のユース選手を使ってピッチで各状況における対応の仕方を説明していたのですが、バルサの監督になった現在はチームが慣れ親しんだシステムと在籍する中心選手の兼ね合いで4-3-3を採用しています。 

プレースタイル自体はセンターバックと中盤中央の選手を中継してショートパスとロングパスを併用するリズムの良いサッカーでグアルディオラのイメージしているスタイルだと言えます。 

ただ前線に関しては事情が違ってきます。 

ベップ・グアルディオラのバルサはピッチを大きく使いながら長短織り混ぜたパスで相手のディフェンスを拡散させそこに生じるオープンスペースをフォワードが突く、という基本コンセプトを持っている。 

ただ、そのコンセプトがうまく機能しているのは守備ラインと中盤までの話で、前線はそのコンセプトと真逆に機能してる。 

バルサは中盤からのパスの展開で相手守備陣を散らせた後、両サイドのアンリとメッシーはそこからドリブルで中央に切り込むため二つの不具合が生じる。 


・ひとつは、ドリブルをすることで敵に帰陣の時間を与えていること。 

・もうひとつは敵が最優先に守備を固めるゴール正面の突破を図るために攻撃が阻止される割合が高くなり、チームのボールの支配率の高さに対して決定機が少なくなること。 

(図を参照:赤いエリアが各選手のプレーゾーン。黒点が敵の4バック) 
97-98シーズンのバルサ
ここからの説明は戦術の話で選手個人のパフォーマンスは一旦、脇に置きます。 リーガ2連覇をした当時の3トップはロナウジーニョ、エトー、ジュリーが構成しており、ロナウジーニョは外からインに入るプレーを、ジュリーは敵陣深く切り込むプレーで左右のウイングが異なる機能を果たしていました。 敵守備陣からすればロナウジーニョを止めるためにはラインディフェンスを敷きマーカーの後ろにもう一人フォローに入るのが定石です。しかしここでボールを逆に振られるとジュリーがサイド深くえぐり正確なセンタリングをあげてくる。
94-95シーズンのバルサ
クロスが精度に欠け中央のフォワードも決定力が欠けるならば守備陣はゾーンを保ったままゴール正面に配置していれば良いのですが、当時のバルサはクロスの精度も中央での決定力も優れていたのでサイドバックがクロスを防ぐために引きずり出されラインディフェンスは横に伸びラインディフェンスはその効力を失います。そこに詰めるのがエトーであり、こぼれ球を決めるのがロナウジーニョ、デコといった選手でした。 ここで一般的な3トップの基本に戻りますが、通常は両サイドのフォワードは右は右利きの選手、左は左利きの選手が担います。 両サイドを広く活用できる3トップの定石はサイドからの崩しであり、相手サイドバックの後方のオープンスペースを突きそこからセンタリングを中央に送る。 しかし短所もあり、両サイドのフォワードが中央に切り込んだ場合に利き足で打てるシュートはコースが絞られ限られます。 ロナウジーニョとジュリーの時代のバルサは、右サイドはオーソドックスな従来の右ウイングの役割を演じ、右利きのロナウジーニョが担当した左サイドはセンタリングを送ることではなくインに入ってゴールを奪う役目を担っていました。右利きの選手が左サイドから中央に侵入すると、逆サイドでの同じ状況に比べてシュートコースが多くなります。 翻って現在のバルサは、右利きのアンリを左サイドに置き、左利きのメッシーを右サイドに配置しています。そして両選手ともにサイドから中央に入るプレーが得意な選手。 この結果バルサの攻撃は中央に集中してしまい攻撃に深さを欠くことになります。もちろん彼らは世界的な点取り屋なので個人技で相手守備陣を崩すこともありますが毎回それがうまくいくわけではなく、また、そのスタイルだと 「前線に辿り着くまでにピッチを広く活用したのはなぜだったのか?」 という攻撃のプロセスとの矛盾が生じます。 サイドを活用しようにも、このスタイルだとスピードに乗った状態で敵陣深くからゴール正面への正確なダイレクトパスは期待できず、メッシーもアンリも一旦止まってからボールを利き足に持ち代えるため守備陣が戻りきってしまい、敵守備陣にとって一番怖い状態、すなわち味方のゴールを向いて戻っている状態でラインとキーパーの間を突くクロスをあげることができません。  今のバルサは自分たちでお膳立てした前線深くのスペースをフィニッシュの段階で有効利用しきれていないのです。右サイドではサイドバックのアルベスがオーバーラップをしていますが、ディフェンダーの攻撃参加はベースの攻撃に加えるプラスアルファであり常に使えるわけではない。 ロナウジーニョ時代の3トップでさえ縦の突破は右翼のみに頼ったもので従来の3トップの変形でしたが、現在のように両翼が中央に閉じてしまうと相手にとって守り易く3トップの長所を生かしているとは言えなくなる。 逆に伝統の4-3-3を捨てて縦の突破に優れたサイドハーフを起用した4-4-2の方が展開力が上がる可能性すらある。 結論はエトー、アンリ、メッシーの3選手を同時に起用して各選手の長所を最大限に引き出すのは難しいのではないか? ということです。 グアルディオラ監督はチームに自身の哲学を注入することに成功しつつある反面、前線では ・スタメン級の選手の起用 ・バルサ伝統である3トップ という二つの条件を満たしながら戦わなければいけない状態でまだ最良の答えを見つけられずにいるともいえます。 私は、バルサが結果的にアンリやメッシーの個人技で得点を奪うスタイルでも構わないと思っています。ただ、その状況をお膳立てするためには敵の守備を一点に集中させないために今以上に前線でピッチを大きく深く使うことが必要なのではないか?と考えています。 かつてバレンシアに所属していたルフェーテ(現エスパニョール)はコーチングコースでのクラスメイトですが、彼が興味深いことを言っています。 ルフェーテ 「当時の監督がバレンシアでいくつもの攻撃パターンをチームに叩き込んだが、バレンシアがゴールを決めるのは中盤のバラッハからのロングフィードからの崩しが一番多かった。それはデータも証明している。でも監督が準備したその他の攻撃パターンは、バラッハのフィードがゴールに結びつく状態を作るために、敵の守備を乱れさせるために有効だったのも確かなんだ。」 スペイン監督日記 2008/9/24


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2008年09月23日

スペインのユース世代のリーグ戦

まずは第1回の日記なので、私、吉田和史が現在バルセロナで指導についているユース世代のリーグ戦の仕組みからお伝えします。


スペインのユース世代のリーグ戦は州毎に2歳ごとに区切った 
カテゴリーがあり(フベニールは3歳)、 

・フベニール(16-18才) 
・カデテ(14-15才) 
・インファンティル(12-13才) 
・アレビン(10-11才) 
・ベンハミン(8-9才) 
・プレベンハミン(6-7才) 

さらに各カテゴリーはピラミッド上に4層から構成されています。 

・Division de Honor(1グループ/名誉あるリーグ) 
・Division de Preferente(2グループ/優等リーグ) 
・Primera division(14グループ/1部リーグ) 
・Segunda division(34グループ/2部リーグ) 

直訳なのでリーグの名前が少し変ですが、3部と4部を 
「1~2部」という呼称で呼んでいるところが 
下のリーグでプレーしている選手への配慮が伺えます。 

同クラブのチームが同じリーグにいる場合は別々のグループに振り分けられます。 
ただ一番上のリーグに関してはAチームがDivision de HonorにいるクラブのBチームがPreferenteで優勝してもDivision de Honorは1グループのみなのでBチームは昇格できません。 

ユース(16-18才)は3歳の幅の枠がありdivision de Honor 
とPreferenteの間にLiga Nacional(1グループ)が加えられています。 

一般にまずまずの運動神経の子は2年目(15歳)でSegunda Divisionの上位チームかPrimera Divisionでプレーしており、Preferente以上は 
エリート化しています。 

逆に有力チームはPrimera DivisionやPreferenteにこのカテゴリーの1年生を投入してきます。目標は2年目にPreferenteやDivision de Honorで戦えるチームを作ること。 


もちろん各リーグ間で昇格・降格があり、 

・2部から1部へは各グループ1位と最優秀2位チーム、 
・1部からPreferenteには1位同士のプレーオフ 
・PreferenteからDivision de Honorへは自動昇格+プレーオフ 

となっています 
※年代やシーズン毎で多少の違いあり。 


私が受け持つL'Hospitalet(オスピタレット)のCadete(カデテ)Bは 
14歳のチームでこのカテゴリーの1年生にあたります。 

昨季のCadete Bが1部リーグ(実質3部)でシーズンを終えたので、下のカテゴリーから上がってきた今季のチームも1部でのプレーとなります。 

このチームは下のカテゴリー(Infantil/インファンティル)でDivision de Honorを戦った選手たちですが、最終的に昨季はチームを降格させているのでPreferenteレベルと見るのが妥当だと思います。 

このチームの母体から約半数が他チームに移籍し、同じく他チームから 
半数が加わって今季のチームとなりました。 

他チームから加わった選手の大半は前の所属クラブでもDivision de Honor、もしくはPrefereteで戦った選手達なので、監督としてはまずまずの戦力を擁していると言えます。 

ただ、1部リーグは大半のチームがCadete A(1歳年上)で、同い年の敵もオスピタレット同様、強豪クラブの14歳(Cadete B)なので熾烈な戦いが予想されます。 

9月27日よりホーム&アウェーの戦いが9ヶ月続くことになります。 

※オスピタレットのカデテAはPreferenteでDivision de Honorへの復帰を目指していますが、このチームの成績次第で現在カデテBの選手たちが来季プレーするリーグが決まります。 



スペイン監督日記 2008/9/23

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