2006年07月11日

スポーツエージェントの現状について。 ~MLBとNPBの違い~

 前回、団氏のお話を基に「日本とアメリカのエージェントに仕事の違い」についてお話した。

 今回は、「MLBとNPBの違い」についてお話したい。

 「MLB」と「NPB」という組織の違いだ。まず、年俸のところでの違いがあるが、メジャーの野球協約では必然的に給料は上がるようなシステムになっている。メジャー在籍0~3年の選手は球団に年俸の決定権があり、メジャー2~3年の選手の成績などが優秀な選手の17%とメジャー3年の経験者は年俸に不満があれば、年俸調停を行うことができる。この際、当事者である選手と代理人、オーナーの間に第三者が加えられ年俸調停が行われる。この第三者は選手やオーナーなどと全く関係なく、なおかつ「MLB」という組織にも関係が無い人物だ。
 しかし、日本では一つの問題点から年俸の上昇は難しい傾向がある。それは球団の持っている「保有権」だ。保有権がある事で実質的には、登録されている球団以外は契約することができない。そのため、年俸が上がることもなければ、交渉期限ギリギリまで、なおかつ自費キャンプを行っても年俸は上がらない。選手は契約できないことを恐れて、ある程度の額で契約してしまうからである。

 また、「選手会」の違いもある。

 「選手会」。2005年の日本プロ野球ストライキが行われたときに、引っ切り無しにでてきたフレーズである。選手会については、HPを見ていただきたい。[http://jpbpa.net/]

 さて、日本とメジャーの選手会の違いだが、第一に選手会の会長が第三者であるという所が挙げられる。日本の場合、ほとんどは前任のプロ野球選手が自分の後任をプロ野球選手のなかから選ぶ。
 しかし、メジャーでは全く関係の無い第三者が選手会長についている。それはなぜなのか?
 一つは、選手のプレーに集中したいと言う心からも読み取ることができるが、もう一つの理由は選手会のトップに「交渉のプロ」を置きたいというところにある。現在のメジャーの選手会長は弁護士のダン・フィアー氏が務めている。弁護士と言うこととで交渉のプロであり、選手も余計なことを考えずに安心してプレーできる。
 日本の場合、一介のプロ野球選手が務めることになり、とても交渉のプロとは言えない。さらに2005年のストライキ時には選手会長である古田氏は弁護士・選手・オーナーと3つのことと対峙しなければならなかった。これでは一選手としてプレーにも支障は出てくるだろうし、弁護士と相談することになるのであれば、最初から交渉のプロが選手会長を務めていれば早期に決着がつくかもしれない。その点、古田選手は選手としても選手会長としても素晴らしい成果を挙げるができたと思う。

 ストライキの話が出てきたが、なぜストライキが必要なのか?

 メジャーの歴史から見てみると、選手会はストライキを起こすことで様々な権利を勝ち取ってきたことが分かる。
 まずは、年金の獲得。メジャーの年金は10年満期のもので、45歳で1000万円,55歳で1500万円,65歳で2000万円を年間で受け取ることができ、1日でもメジャー登録を受けていれば日数計算ができるほか、故障者リストに入っていてもメジャー登録ならば日数計算ができる。また、オールスター戦での収益が分配され、各選手の年金に当てられる。日本の場合、プロ野球の年金は銀行などに預けているよりも少しいいくらいで、ほとんどの選手が厚生年金に加入しているのが現状であるし、1軍に10年以上出場選手でなければ年金を受け取ることができない。
 次に保険制度。選手負担の保険だが、メジャーの場合、選手を辞めても加入を続けることができる。しかも、100%完璧な保険にである。日本の現状では考えられないものだ。
 最後ににFA制度。日本の場合、最低9年間1軍で一定数の試合に出場選手でなければ行使できない制度である。FAの資格を取得できれば、各球団を自由に移籍するとができ、見方によってはいいものであるが、年俸は現状維持のままで、複数年契約をするようであれば、その間の年俸は上がることがない。対して、メジャーでのFA制度はメジャー在籍6年で球団間を自由に行き来できるものになっている。FAの先駆けとしては、往年の名投手「キャット・フィッシュ」こと「ジム・ハンター」投手がアスレチックスからヤンキースへと移籍したのが最初と言われている。先ほど述べた通り、日本では1軍に一定数の試合で出場していなければ獲得できないこの制度も、メジャーではメジャー登録された選手であれば、誰でも日数を獲得することができる。このいい例がタンパベイの「森慎二」投手で、彼は怪我でシーズンの働きはほとんどしていないが、FAも年金もしっかりと着いている。
 
 これらのすべての制度をメジャーはストライキを起こすことで獲得してきた。日本は「12球団存続」という目標のみに絞った3日間のストライキしか起こさなかった。日本プロ野球初のストライキとしては、12球団の確保と言う大命は成しえる事ができたと思うが、さらに望むべきことがあったのではないかと思う。

 選手会のあり方もそうだ。

 メジャーの場合、各選手の肖像権については選手会が受け持っているが、個人の場合以外はロイヤルティは各選手には入らないようになっている。その代わり、集団でのロイヤルティ(ベースボールカードなど)は年に400~500万ドル入るようになっているし、その一部は各球団に入るようになっていて、選手会と球団が仲をしっかり取り持つようになっている。日本の選手会はまだまだ勉強が必要なのだ!!




 今回、セミナーに参加したことで日本とアメリカのスポーツエージェントの差をはっきりと感じることができた。

 また、様々な意見が飛び出し、一般のセミナーよりも多くのことを感じ取れるものになったと思う。



 最後に、団野村氏が日本のプロ野球界に対して2つの提言をしてくれた。
 1つ目は、選手の拡大。日本は、2軍制度以外持っていないが、メジャーは2軍を各能力に合わせて整備している。バレンタインが提唱したような、「能力向上の2軍」と「調整段階の2軍」の必要性も充分出てきたのではないかと思われる。
 2つ目に、外国人枠の撤廃。日本は、各球団とも現状は投手・野手の5人と決められている。しかし、メジャーでは外国人枠などというものはない。マーケティングから見ても、全選手が日本国籍以外の選手でもおもしろいのではないか?

 上記2つのような提言を受け、団氏はやはりエージェントの先駆者なのだと改めて思った。



 これで、セミナーの報告は終わりになるが、ブログを読んで下さった人の様々な意見を聞いてみたいと思っている。
 また、今回のセミナーに参加できたことを本当に嬉しく思っている。





団野村:株式会社KDNエージェンシー代表取締役社長。1957年生まれ。
 1978年から4年間ヤクルトスワローズでプロ選手生活を送り、渡米。1993年、マック鈴木選手と最初の代理人契約を結び、エージェントとして活動を始める。野茂選手をはじめ、伊良部・吉井・中村紀洋選手などの多くの日本人選手のメジャー挑戦をサポート。近年はドミニカ・ベネズエラなどの中南米諸国や、韓国・台湾などのアジア諸国にもクライアントを抱える。2006年、日本にKDNエージェンシーを設立し、日本での活動を強化すると共に、競技を超えたスポーツビジネスを展開している。

posted by hiro34 |23:12 | スポーツ・ビジネス | コメント(1) | トラックバック(0)
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スポーツエージェントの現状について。 ~MLBとNPBの違い~

大きな契約が取れればそのうちの何%というフィーを受け取ったり年間顧問料とか選手から受け取るのでしょうが、そこまでに至らない期間、まだ年俸が少ない選手のサポート期間のエージェントの収入はどうなっているのでしょうか?

posted by あかね | 2008-07-26 00:31

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