Moon Ball in the Sun

準優勝を巡る幾つかの考察(再)

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(注)執筆開始から1週間近く中断した後の記事のため、再投稿させていただきました。7月13日付投稿となっていた版は削除させていただきました。

ウィンブルドン男子決勝から1週間が経ちました。この間、多くの方がスタッツを丁寧に分析し的確に解説してくださったので、試合展開等について多くは触れません。ここではスタッツに表れない自分なりの感想と今後の展開を書かせていただきます。
BIG4の次の時代を担う主役候補として、ラオニッチが名乗りを上げたと受け止めた方も多いと思いますが、個人的にはそこまで強いビューは持てません。BIG4の下の世代から、グランドスラム10勝を積み重ねるような覇権を築く選手は暫く生まれない。フェデラー、ナダルは年齢とケガで先行きのアップサイドは厳しいが、ジョコビッチとマレーはまだまだ良い状態。そのツートップでグランドスラムの半分超は支配され、その他の選手が入れ替わりに戴冠のチャンスをうかがう。そして時には優勝する。ラオニッチはその中の一人というイメージです。錦織には錦織の限界(サイズやパワー)があるように、ラオニッチにはラオニッチの限界(柔軟性や球感)があるように思います。


ラオニッチについて。

決勝戦はマレーを応援しつつ、予想屋としての読みはラオニッチでした。マレーの安定感や老獪さは十分理解していたつもりですが、今回はラオニッチの勢いや成長曲線がそれを上回る、言い換えれば、マレーの脳内にあるラオニッチのプレーレベルと現実のギャップがあり、それがラオニッチ優位に働くと考えていました。それともう一つ、マレーはその実力に反し、それまでグランドスラム2勝という巡り合わせの悪さです。そういうシルバーコレクターの星の下にマレーは生まれているという、非科学的な先入観もありました。
しかし、見事に外しましたね~。改めて、マレーのテニスの奥深さを思い知らされました。ラオニッチのサービスを苦しいなりに返してしまうシーンには何度もしびれました。これを可能にしたのは、読みの良さ・リーチ・柔軟性。そして打ち合いに入ったあと、積極的にネットに出る新生ラオニッチの圧力をかわしたのは、体幹の強さとラケット面コントロール力の素晴らしさです。
ラオニッチという選手は、体のサイズやパワーには恵まれつつも、ボールタッチの感覚や柔軟性に優れたタイプではなく、スイング時の身のこなしを見る限り、反復練習によってショットの安定性や再現性を高めた努力型の選手という印象です。自らが完全な支配権を握るサービスでの得点力の凄まじさは言うまでもありませんが、一方で、ストロークやボレーに関しては、自分の描いた軌道イメージ、ヒッティングポイントを外された場合に固さが出て、エラー率が少し高いように思います。
マレーのテニスのしぶとさが発揮されたのは、正にこのポイントの突き方です。普通の選手はラオニッチのネットダッシュの圧力に我慢し切れず、厳しいパッシングを狙ってアウトするか、そこまでコントロールできずにイージーボールを返してしまうケースが多くなります。しかし、マレーは安全策とギャンブルの間、すなわち、ラオニッチのラケットに当てさせても決めさせない「沈めた球」を多用しました。ラオニッチもそれなりに厳しいアプローチショットを打ってくるわけですから、相手は本当に厳しいです。一発でパスを決めないと自分がコートに戻れない、つまり、ひと思いに結果を決めてしまいたギャンブル的パッシングに行く心情はよく理解できます。ところがマレーは違いました。ラオニッチのラケットが届く範囲でも、あと30㎝厳しく打ち込んで、それが返されても、走って戻って拾う覚悟が見えました。精神的にも肉体的にも本当にタフな選手です。
この、ほんの30㎝でも厳しく打つだけでラオニッチの選択肢は狭まりました。ボレーが浮けば逆にチャンスボール提供とのプレッシャーもあり、もともと得意ではない低いボレーのミスが誘発されました。これが好調時のフェデラーだったら見事なローボレーの餌食になるので、マレーも少しギャンブル寄りのパスを打ったでしょう。しかし相手はフェデラーではない。相手の力量なり特性なりを考慮したマレーの冷静さ、そしてそれを執行できる技術力の成せる戦いでした。

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