Moon Ball in the Sun

それでもキリオスは特別な選手なのか?

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シンシナティのマスターズはディミトロフが初優勝。BIG4多数+ワウリンカ、フェレール、ツォンガ、ベルディヒ、チリッチ各1回だったマスターズ制覇者の顔触れに、今年はいきなり20歳のA.ズべレフが2回名を連ね、そして今回、26歳のディミトロフが初名乗りを上げました。

ディミトロフのバックハンド・スライスが試合を通じて極めて有効に機能しました。キリオスはスライスの切れ味のプレッシャーに耐えられず、バックハンドのダウンザラインで自ら勝負に出る局面は、滑る球に振り遅れてサイドラインを割るイメージしかありませんでした。スコア以上のディミトロフ完勝で、キリオスは上手く封じ込められました。

ディミトロフ選手、おめでとうございます。スランプを抜け出した後、我慢する局面はきっちり我慢できる、そして勝つための戦術を着実に遂行できる、一段階上の選手になりました。

さて、いくぶん想像力を働かせ、メディア目線でトーナメント全体を振り返ります。すると、報道側から見た記事バリューは、ディミトロフ制覇のケースとキリオス制覇のケースで結構違ったのではないかと推察します。

(1) 年齢

キリオスは22歳です。先にマスターズを戴冠した20歳のズベレフとのアンサンブルで、“ズべキリ時代幕開けか?“のような扱い方を狙っていたメディアもきっとあったろうと思います。

(2) 今大会の勝ち上がり過程

優勝したディミトロフの決勝までの勝ち上がりは、フェリシアーノ=ロペス、デルポトロ、杉田、イズナー。一方のキリオスは、ゴファン、ドルゴポロフ、カルロビッチ、ナダル、フェレール。ディミトロフの対戦相手の最上位ランカーは19位のイズナーです。最大の大物はデルポトロですが、彼の今年の成績を勘案すると、マスターズの優勝ロードとしては正直物足りなさが否めません。かたやキリオスは、何と言ってもナダル撃破が大きいですね。この点も、キリオス優勝ケースの報道価値を引き上げる一要素であったことでしょう。

決勝では、ディミトロフのテニスがキリオスを完全に上回ったこと、そして、ドロー運も味方につけ好機をきっちりモノにするのがトップ選手の資質であることを考えると、ディミトロフが十分に賞賛に値することは疑いありません。この論点は、あくまでメディアの盛り上げやすさ、騒ぎやすさを尺度とした話です。

(3) キャラクター

イケメン選手ディミトロフも、かつてシャラポワとの熱愛がメディアを騒がせた時期がありましたが、総じて、彼の内面性に関する報道機会は多くなかったように思います。かたやキリオスの言動を巡る毀誉褒貶は既に大変なボリュームであり、良きにつけ悪しきにつけ、メディアとして目の離せない選手になっています。

ラケット破壊や審判の罵倒は日常茶飯として、2015年カナダMS、ワウリンカ戦コートチェンジ時の中傷行為、2016年上海MS、スべレフ(兄)戦での無気力試合など、少なからぬ悪行を履歴に残してきた一方で、日本国内に伝わる錦織、西岡への愛情深い発言、バルセロナ・テロ事件への慈悲深いメッセージなど、その内面性の温かさを伝える談話もあります。また、カラーやカットが過激なヘアスタイルも一役買っていますが、見た目の野獣感は、貴公子然としたズべレフ(弟)の風貌と対照的でお互いを際立たせます。

(4) 戦績

キリオス対トップ選手の戦績は、彼自身のランキングに比して、かなり異常な拮抗状態ではないでしょうか。対マレーこそ0-5で勝利経験がありませんが、対フェデラー1-1、ナダル2-2、ジョコビッチには2-0です。その他、対ワウリンカ2-2、チリッチ1-1、ラオニッチ3-3、ゴファン3-0など、世界ランク5位の選手といっても過言ではない戦績です。ちなみにGS優勝経験者との対戦成績は、ディミトロフの11勝38敗に対し、キリオスは8勝11敗です。キリオスの場合、対錦織0-3、ディミトロフ0-2、ティエム0-1が逆に目立ってしまうぐらいですね。

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この記事へのコメントコメント一覧

「それでもキリオスは特別な選手なのか?」へのコメント

blue626さん、コメントありがとうございます。

キリオス選手への包容力溢れるお言葉で、ファンからこんなにも温かく見守られているということは、実は彼、バッシングの多さとは裏腹に、大変な「人たらし」(愛されキャラ)なのではないかと改めて感じてしまいました。

30歳ぐらいになった時、成績も含め、彼がどんな味を出す選手になっているか、未来予想図も振れ幅が大きそうで逆に楽しみですね。

「それでもキリオスは特別な選手なのか?」へのコメント

こんにちは。そちらではこんばんばですか。
いつも楽しみに読ませていただいています。
私は今一番応援している選手はキリオス選手です。
彼は精神的な幼さがあり目を疑うようなこともしたりもしますが、本当に優しい子だと思います。
人種差別の厳しい国で育ったのも少なからず影響しているかもですね。
彼を悪いイメージで捉え悪く言う人は少なくありませんが、とても愛情が篭っている記事を読ませていただき嬉しい気持ちで一杯です。
ズベレフの王道、キリオスの覇道、とても良い表現だと思います。
キリオスには今後もおいたをしつつ成長していってくれたらって思います。

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