Moon Ball in the Sun

「アメリカ男子テニス界を嘆く声」の考察

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2017年7月22日、米国TVのテニスチャンネルでは、国際テニス殿堂(International Tennis Hall of Fame)のメンバーとして、ロディック、クライシュテルスらを正式に迎えたことが伝えられました。去年はサフィンやエナンが殿堂入りしています。ロードアイランド州ニューポートにあるテニス博物館には、テニスの歴史を語り継ぐ数々の展示品とともに、ロディック達の写真も加わっています。

アメリカのテレビ番組でロディックの話題になると、必ずと言ってよいぐらい採り上げられるのが、「2003年全米オープン以来、アメリカ男子選手はグランドスラムに優勝していない」という事実です。そして、ファンの忸怩たる思い。あとはフェデラーとの関係でしょうか。フェデラーより1つ年下のロディックにとって、自身のピークがフェデラーの絶頂期に重なった悲劇、対フェデラー直接対決が3勝21敗、グランドスラム決勝で4敗、準決勝で3敗という数字は「フェデラー全盛期最大の被害者」の地位をがっちり守る(?)証拠になっています。

まあ見方を変えれば、マレーも相当な被害者なんです。グランドスラム決勝の3勝8敗の内、負け試合の内訳がフェデラー3敗、ジョコビッチ5敗ですから、二人の覇権リレーにしっかり付き合ったことになります。他のBIG4のグランドスラム決勝での通算戦績はそれぞれ、フェデラー19勝10敗、ナダル15勝7敗、ジョコビッチ12勝9敗ですから、お互いに「時代の宿命」でつぶし合ったとはいえ、決勝まで行った試合では、勝ちが負けを上回っています。

さて、番組では解説のギメルストブが、現役時のロディック映像を振り返りながら、「ナチュラルな才能ではなかったが、ビッグサーブで偉大な功績」「現役時代のポジションは居心地のよいものではなかった」と評していました。ギメルストブは、小気味よく言い放つタイプの解説者で、アメリカ男子が弱くなった現状についても過去何度かコメントをしています。私が言うまでもなく、このテーマは米国内で活発に議論されていて、大メディアから一般ファンのブログまで、色んな分析や意見が飛び交っている状況です。

もはや語り尽された感もあるテーマですが、私も現在、仕事の縁でアメリカに渡り、アメリカ人の解説でテニスの試合を観戦し、時には他のアメリカン・スポーツの盛り上がりを横目に見る環境にいるので、一度ぐらいこのテーマを考えてみようと思います。

まあ個人的には・・・週末の草テニスでアメリカ人とテニスをする機会もたまにあり、バコバコと打ち込んでくる彼らのスタイルや、自分達を鼓舞するポジティブな掛け声に「こういう世界もあるんだな」と感じることがありますが、所詮は素人テニスの話、この場でこれ以上は止めておきましょう。

<まず、「アメリカ男子が弱くなった」とは何を指すか?>

① 上位選手(トップ100内)が減ったこと?
② 長らくグランドスラム優勝者が出ていないこと?
③ グランドスラム2週目に安定的に残るような選手がいないこと?

各議論の場で、これら3つは時には混在し、時には分離されて語られているようです。①は、国内の競技環境やジュニア育成システムをある程度は物語る一方、②は殆ど「個」の要素と言えそうです。メディアの言葉を借りれば“Boy Meets Tennis?”。「世界の頂点に立てる才能はテニスという競技に出会えるのか?」そして、出会ったとしても次のシビアな現実として、「数ある選択肢の中、競技を続けられるのか?」。

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この記事へのコメントコメント一覧

「「アメリカ男子テニス界を嘆く声」の考察」へのコメント

kesunkejpさん

はじめまして。

往年のアメリカ選手のプレースタイルに関するくだりは雑誌記事からの引用だったのですが、その記事はチャンやクーリエに言及しておらず、若干、自説を有利に展開する調整が施された感はありました。

私も「エイヤっ」のノリでそのまま使いましたが、サンプラスやアガシの評価も含め、やはり当時を知るテニスファンからすると、ちょっと引っ掛かりましたかね。

このたびは、しっかりした観察に基づくご意見を頂戴できて嬉しいです。記事本文に挙げましたように、私の考えるアメリカの問題は、ご指摘いただいたプレースタイル問題に加え、ハイスペック人材の他競技流出問題、これらの合わせ技です。

タッチが良くてシブとい、球技センスと戦術眼を感じさせる選手が、今のアメリカには少ないですよね。

私自身、必ずしもアメリカ復権を熱望しているわけではなく、微妙な温度感の記事になりましたが、皆様のご意見を聴き、これはなかなか深い題材と再認識しました。

コメントありがとうございました。

「「アメリカ男子テニス界を嘆く声」の考察」へのコメント

lovely_crossさん

コメントありがとうございました。

このテーマに関心のある方から意見をいただき嬉しい限りです。

そうですね。デ杯もたいへん重厚な歴史のある大会で、その年の支配力を物語りますね。

戦後長く続いた米豪の支配体制が崩れ、ここ数年は、スペイン、セルビア、チェコ、スイス、イギリス、アルゼンチンとなっていますが、頭数だけではダメで、やはり軸になる絶対エースの顔がしっかり浮かびます。

あと確かに、一国のテニスの弱体化を語る際は、他競技の競争力も見ると、より深い洞察も出来そうです。

昨夏、リオ五輪の時期をアメリカで過ごした感じだと、国を揚げての盛り上がりもあまり感じられず、やはりこの国は、五輪種目よりプロリーグの国なのかなと改めて思ったりしました。五輪競技の強さの後退は、その辺りも原因かなあと思う一方、かといって、プロ野球が圧倒的に強くなっているかといえば、そうも言い切れない。

アメリカの社会、教育、文化といった自国要因で弱くなったのか。或いは、他国側の強化に、相対的な力関係の変化の原因を求めるべきか? 興味は尽きませんね。



「「アメリカ男子テニス界を嘆く声」の考察」へのコメント

ukk_chu_renさん、今回もコメントありがとうございます。

男子テニス界のプレースタイル変更はだいぶ前に始まった中長期トレンド、一方の錦織の不振はごく最近の事象です。あくまで個人的意見ですが、時間軸の観点からも、足元の成績低迷は、スタイルの優位性低下ではなく、心身のスランプの方で見ています。

スタイルというのは、理屈で有利とわかっても遂行が難しく、そして、現代ストローク戦の執行力の天性に恵まれたのが、錦織選手なのだと私は見ています。(フェデラーなんかは、道具や時代を選ばない可能性もありますが。。。)

松岡修造と錦織圭の生まれた時代が逆だったらと考えると、ちょっと怖いものがあります。

この答え。3年後にはきっちり出ているかもしれません。

「アメリカ男子テニス界を嘆く声」の考察

はじめまして。拝読いたしました。
私が考えるアメリカ男子の衰退理由はプレースタイルです。
ロディック以降のアメリカ男子のプレースタイルはビッグサーブ偏重の選手ばかりです。
サンプラスはビッグサーブが注目されがちですがネットもストロークも中々のものがあり、
アガシは完全にストローク+無難なサーブ、チャンやクーリエもストローク力がそれなりにありました。
今のアメリカはサーブだけ世界TOPレベルって選手が多いです。他国の上位ランカーでは
錦織含めてストローク力で勝負できる選手が圧倒的に多いです。サーブが返されるとストロークで
勝負にならなければ勝てないので安定して上位進出が難しいのだと思います。
たまにサーブが爆発しても全試合爆発は難しいです。リターン力がある選手が他国に多いので。
もっとストローク力またはネットプレーをビッグサーブ+αで武器に出来ないと今後も衰退すると思います。

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