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全豪決勝~テニスの神の配合がもたらしたもの

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2017年全豪オープン、フェデラーとナダルの決勝。

一人のテニスファンとして、予想もしていなかったし、願ってもいなかった組み合わせ・・・錦織が敗れるまではそうでした。でも、錦織がフェデラーに敗れた瞬間からは、(不純な動機から)決勝がこの組み合わせになることを望み、レジェンド二人の戦いを見守り続けました。しかし、実際に二人のプレーを見て、胸を打たれ続けているうちに、私の内なる不純物が徐々に洗い流されたように思います。そして今、今年の全豪オープンは、いろんな条件の神懸かり的な配合により、まさに歴史上稀有な、かつ、歴史的意義の極めて重い大会になったと確信しています。

不純な動機・・・錦織ファンならすぐにお分かりになるでしょう。そう、ラオニッチに先を越されたくない。ディミトロフではもっとやるせない、というスケールの小さな感情です。この3人は、そもそも2014年当時に“ヤングガン”と称された3人です。しかし、その後の歩みは少し違う。錦織とラオニッチは、相手に研究され、自身の怪我も抱え、若干の停滞感を漂わせながら2015年を戦い抜き、そして弱点に手を打って2016年に這い上がってきました。グランドスラムやマスターズでは、ジョコビッチやマレーの壁に跳ね返され続けたわけですが、ディミトロフは、この2年の過ごし方があまりにも違いすぎます。2014年全英ベスト4以降、むしろ退化したのではないかとも思えたディミトロフに、今回のワンチャンスを一発で持っていかれるのはあまりに切ない。そりゃあ、2016年までのディミトロフと別人なのは認めます。前哨戦のブリスベンでも、革新的進化の兆しはありましたし、その兆しが時を置かずして本格化したことも認めざるをえません。

このあと、話が迷走しそうなので、小見出しを付けて頭を整理して書くことにします。

(1)錦織とディミトロフのこと

錦織選手がブリスベン決勝でディミトロフに敗れた際、相手のことを「ミスしなくなった」と評していました。そうです。テニスプレイヤーは、その性質として、相手のタイプや力量、その日のコンディションによって、自身のエネルギーの出力レベルやリスクの取り方を変えるものです。錦織選手のこの発言には、その性質がよく滲み出ています。

プロテニス選手は、すべてのポイントに全力投球するのではなく、相手がポイントを献上してくれる流れなら、やや受けに回ってそれを利用するものだと思います。逆に、真の実力者が相手で劣勢が明らかな流れでは、セカンドサービスやつなぐ目的のストロークでもリスクをとることになります。そこは勝負するしかありません。こういった駆け引きで気力・体力をマネージメントするのが、長丁場のトーナメント、そして、3~5時間にも及ぶ足元の1試合を乗り切るスキルなのだと思います。このようなテニス観が私の根本にあり、スタッツで確認できるエラー数に関しては、その日の相手に対するリスクテイク姿勢と自分の調子のバランスの「結果」として受け入れるべきものとして、かなり寛容な姿勢をとっています。

しかし、錦織選手にフォーカスして言えば、リードした局面で少しプレーを落とすのはよいとして、相手がそこに付け入って逆襲してからの再修正がうまく行かない試合が多いように思います。結果、スコアが苦しくなってから、もう一段、心身を追い込んでやっと勝つ展開です。プレーレベルのコントロール、それは、強力なサービスを有しないプロテニス選手として、自分の体を守るサバイバル術なのだと思います。しかし、もともと3球攻撃で圧倒するタイプの選手ではないので、相手に数を打たせてしまうと、不必要に調子を戻させてしまうリスクがあります。この辺りが、ビッグ4と比べた場合の「トーナメント勝ち上がり力」の課題なのだと思います。第1セット奪取時の勝率の高さとファイナルセット勝率の高さが同居している理由は、「精神力の強さ」というより、錦織という選手が本質的に抱える「試合の流れ」のせいだと捉えています。そして、その影響は、トーナメントの後半で出やすい。

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この記事へのコメントコメント一覧

「全豪決勝~テニスの神の配合がもたらしたもの」へのコメント

halfwayvolleyさん
コメントを頂きありがとうございました。
コメントの文面も又絶妙でした!
嬉しいやら、見透かされているやら、、
心強く感じました。
趣味ですが、だからこそ自分らしく続けたいなと思っています。
コメントのやりとりの難しさ等もう少し書きたいところですが、今回は止めておきます。
今後も宜しくお願いします。

「全豪決勝~テニスの神の配合がもたらしたもの」へのコメント

りゅう様

私の記事の「時計が巻き戻る」、「時計が進む」といった表現の曖昧さもあって、たいへん重要なテーマをご指摘いただきました。

確かに「フェデラーやナダルが勝てなくなる」と「男子プロテニス界が進化する」は別のテーマですね。私の記事は、後者の視点ではなく、ランキング上位やグランドスラマーの顔触れ変化をイメージした話でしたので、遅かれ早かれ必ず起きることです。対して後者は、世代間比較を伴う、ちょっとつらい現実的テーマですね。

フェデラー、ナダル、ジョコビッチなど、20代前半に当たり前のように頂点を立って長く君臨するグループと、20代後半になってようやく頂点に辿り着くグループでは、一枚か二枚役者が違い、時代が移り変わったときに、テニス界全体として、レベルダウン議論が繰り広げられるかもしれませんね。

陸上や競泳と違って、テニスの強さは相対的な形でしか表現できず、逆にそれが、世代間比較の面白さにもなりますが、その観点で言えば、今回の全豪は、錦織、ラオニッチ、ディミトロフ世代のレベルの歴史的証拠を残してしまった大会かもしれません。

コメントありがとうございました。

全豪決勝~テニスの神の配合がもたらしたもの

うん様

コメントありがとうございます。

決勝後の両雄の表情ですが、フェデラーには大きな達成感、ナダルにはやり残し感ばかり感じました。「レジェンド対決」「グランドスラム決勝ではもう見られない顔合わせかも」といったファンの感傷とは別のところに選手はいるのだな、と改めて思いました。


「時計の針が~」のところのご指摘もありがとうございます。記事としては、足元の大会のプレビューやレビューというよりは、2017年末時点のテニス界をイメージしたやや時間軸の長い話なので、多分に印象論的、空想的なものを含んでいます。全豪のような成績をフェデラーとナダルがおさめ続け、ジョコビッチとマレーが本来の力を発揮することで、ビッグ4寡占の1年になるのか、それとも、ビッグ4+GS経験者(ワウリンカ、デルポトロ、チリッチ)以外の新顔が1名でも2名でも出てきて、ランキングの2位なり3位にしっかり座るのか。今回フェデラーやナダルに敗れた選手の「負けっぷり」も含めて、先行きを想像してみるのもファンとして意味があることかと思いまして、書かせていただきました。

うん様のような受け止め方をなさっているファンが大勢であろうことも承知しております。ただ、時々しか記事を更新できていない、勤勉さの足らぬブログ主ゆえ、せめて、他の皆様があまりお書きにならない切り口で自分が真面目に感じていることや、米国滞在の今の自分に特にできそうなこと(全米オープンの生観戦とか)が、内容として多くなっています。

どうもありがとうございました。

全豪決勝~テニスの神の配合がもたらしたもの

時計の針は巻き戻るのでしょう。今のままでは。ナダルフェデラーがもう一度頂点に立つとは言わないですが。もちろん今でも両者は素晴らしい選手ですがけれどかつての両者ではない。ジョコビッチ、マレーもいつ衰えてもおかしくない年齢に入ってきた。そして錦織の世代は明らかに年齢的に全盛期に入ってなくてはならないのに未だフェデラーナダルの4大大会決勝を許してしまう。新しい世代の台頭を望みます。今のままBIG4が衰えたらあとに前世代の影も踏めなかった者たちだけしかいない焼け野原になってしまう。
もちろんフェデラー、ナダル、ジョコビッチが1位を争った時代の凄まじさはわかっていますが、寂しいです。

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