Moon Ball in the Sun

全米OP生観戦~ワウリンカ戦と心身のタフネス

このエントリーをはてなブックマークに追加

全米オープン男子準決勝第2試合で錦織選手が敗れ、アーサーアッシュスタジアムを後にする群衆の中に私もいました。

錦織選手、あなたは大変なものを背負っているのですね。

家路に向かう人の流れに逆らうように、日本のテレビ局のカメラが、インタビューできそうな日本人ファンを探しています。2日前のマレー戦の後も何組かの報道陣を見ましたが、今日は一気に増えていました。この大会を報道する価値が、ここ数日で加速度的に上昇しているということでしょう。「テレビカメラ、来るなら来い」。私も圭に一言かけましょうか。そう考えていましたが、テレビの絵的に私は採用対象ではなかったようです。

金曜夜に行われた試合、中には仕事帰りの日本人ビジネスマンのグループもいました。仕事でつながった彼らは、こんな失意の中でも、互いの悔しさを紛らわす言葉が最低限出てきます。しかし一方で、多くの夫婦連れ、友人グループは唇をかみしめ、言葉少なに出口に向かっているように見えました。大きな夢が実現しそうになり、それが無くなった喪失感をうまく消化できない。私もその一人です。ファンに夢を与え、歓喜させ、時にはつまづいて落ち込ませ、本当に大変なものを背負った巨大なアスリートになりました。

グランドスラムのベスト4、マレーの撃破。今大会こんな素晴らしいパフォーマンスを収めた錦織選手なのに、私たちのこの喪失感は何なのでしょう。それは「日本人のGS初制覇を見たかった」というファンのエゴとは少し違うと思っています。錦織圭がこの場に立つまでの苦難の歴史、マレー戦で見せた胸に突き刺さる執念を見てきたからこそ、「今回、この場で、この選手にはグランドスラムを獲らせてあげたい」、その思いが叶わなかったことの無念です。チャンスはこれからもあると思うが、そう多くもないかもしれない。でも本当にあともう一歩ですよ。

日本人のGS優勝。少し前なら漫画でさえ題材にしづらかった世界かもしれませんが、才能豊かで勝負度胸も兼ね備えた一人の青年の出現で、私たちはそれをリアルな夢として見るようになりました。プレーする錦織選手がそれをどう感じているかはわかりません。ただデ杯や五輪を特別なものとして立ち向かう姿勢を見るに、日本のファンの期待に応えることは、自分の夢の実現としっかり折り合い、相乗効果も発揮しているのではないかと思います。いえ、そうあって欲しいと願っています。

かたやワウリンカ。スイスには偉大なるフェデラーがおり、「スイス国民の悲願を背負って」のような重圧は殆どないでしょう。自身も既にGSを2度獲っており、今回の3度目は文字通り「3度目」でしかないのかもしれません。そして明日、もしジョコビッチに勝ってしまえば、来年の全英で生涯グランドスラムが掛かることになり、無駄なカードが1枚もないロイヤルストレートフラッシュのような最高効率の達成になります。まあそれは気の早い話。芝のワウリンカ・・・彼には一番難しいカードが残りますね。

実を言うと、私はワウリンカのプレーが大好きです。将棋の飛車が成った「竜王」のような状態になると、BIG4までも粉砕する爽快なものです。また禍々しいまでの片手バックは、テニスの一般技術の枠外にある一種の破格。それがATP屈指の不安定性と相俟って、やってみるまでわからない、やっていてもいつ変身するかわからない特別な選手になっています。その特質を自分もよく知っているからか、ワウリンカの悩みなき(ように見える)シンプルかつ豪快な戦いは、勝っても負けても切なさを感じさせません。本当にあなたという人は何なのでしょう。あれだけ実力があるのに、あまり大きな物を背負っていないのですか?

少し余談が過ぎました。

3ページ中1ページ目を表示中

記事カテゴリ:
タグ:

【お知らせ】
Yahoo! JAPAN IDで記事にコメントできるようになりました

このブログの最近の記事記事一覧

この記事へのコメントコメント一覧

全米OP生観戦~ワウリンカ戦と心身のタフネス

ukk_chu_renさん

コメントどうもありがとうございます。いつもブログ拝読していますよ。ブログタイトルでお使いの「感覚」という言葉、自分の感性を信じて、気付きや解釈を発信していくご姿勢と拝察していました。

GS生観戦、私も全米だけで他の経験がなく比較は出来ませんが、多くの選手が「お祭りのような雰囲気が好き」と言っています。会場全体もそうですが、試合中のスタジアムは、それ自体が巨大なパフォーマーのようで、最初に来た時は驚きました。全米オープン中毒の私が言うと全く客観性がありませんが、絶対にお勧めです。

ご旅行で来られると、試合前日の夕方までプログラムが決まらない辛さはありますが、そこからでも手に入るのが現地のチケット事情です。「GSに出るクラスの選手なら大体知っています」というハイレベル観戦者であれば、R16前のラウンドも至福の時間だと思いますよ。

「全米OP生観戦~ワウリンカ戦と心身のタフネス」へのコメント

halfwayvolley さん

今大会中、ずっと読ませていただきました。現場の雰囲気、臨場感、観客席などの様子も含め、私たちには分からない事を感じる事ができました。
有難うございました。
また、文章が素晴らしく、仕事でライターをされているのかな?と思うほどでした。
私としては羨ましい限りです、以前はGSと言えば、先ずはウィンブルドンへ行ってみたいと思いましたが、今は、錦織選手が活躍しているうちにフラッシングメドウへ行って見てみたいと思います。

また、記事を楽しみにしています。

こんな記事も読みたい

錦織圭ベスト4敗退は残念だが【スポーツ えっせい】

硬式庭球部・関東大学テニスリーグ第5戦対明大【「中大スポーツ」新聞部ブログ  ~劇闘中大!中大から大学スポーツを熱くする~】

準決勝 そしてとても楽しみな決勝カード【無題】

ブロガープロフィール

profile-iconhalfwayvolley

  • 昨日のページビュー:55
  • 累計のページビュー:1386728

(11月05日現在)

ブログトップへ

このブログの記事ランキング

  1. マレーの1位奪取、錦織の今後とテニススタッツへの雑感
  2. 2年ぶり錦織の生観戦~全米ベスト16出揃う
  3. 全豪決勝~テニスの神の配合がもたらしたもの
  4. 「アメリカ男子テニス界を嘆く声」の考察
  5. 勝ちに不思議な「価値」あり~錦織vsベルダスコ戦。
  6. 全米OP生観戦第2弾~そして運命のQFへ
  7. 少し怖い、けど楽しみな錦織のマドリードOP復帰
  8. 全米OP生観戦~執念のマレー戦
  9. ワシントン観戦記〜錦織とサーシャ
  10. ジョコビッチ敗れる~チャレンジ制度の意義

月別アーカイブ

2017
09
08
07
06
05
04
03
02
01
2016
11
09
08
07
06
05
カテゴリー

このブログを検索

スポーツナビ+

アクセスランキング2017年11月05日更新

アクセスランキング一覧を見る

お知らせ

rss