Moon Ball in the Sun

全米OP生観戦~執念のマレー戦

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全米オープンQFのマレーvs錦織戦は、日本のテニスファンの胸に深く刻まれる名勝負でした。

この会場に自分が居合わせた幸運に感謝するとともに、「今日は大変なことが起きるからアーサーアッシュに行かなくてはならない」という思いに駆られた自分の勘を秘かに称えています。そして勝利を引き寄せたのは錦織の執念です。月並みな言葉ですが執念なのです。錦織が速く巧い選手なのは誰もが知っていますが、今日マレーの予想を超えたものがあるとすれば、それはきっと技術ではなく、執念と我慢です。

想定通りスタッツ上はUEも多く、実際に一発の狙い過ぎによるミスも少なくありませんでした。しかし、その直後に、それを帳消しにするリターンエースが出るわ、かと思えば、マレーとのロングラリーにとことん付き合って我慢比べもするわ、突然とんでもない角度のクロスが入るわ、ありえないタイミングのドロップが決まるわで、今日の錦織がメンタル、フィジカル双方で極めて良い状態で戦えていることが観客にも伝わります。息を飲むストロークエース、創造性豊かなドロップ、ロブに、私の席近くのアメリカ人も「クール」、「スマート」、「ビューティフル」と賞賛の声を送りました。また、ポイントに至る過程で、錦織が先に右に左に質の良いショットを繰り出して相手を振り回し、ラリーを支配していることがわかりました。マレーとしては、これまで何度も機能した「錦織の自滅待ち」戦法が今日はワークしないことを感じ取り、2セット目以降は「かわす」ではく「打ち合う」に転じたように見えました

前の記事で、今の錦織がマレーに勝つとすれば、マレーから見て「今日のお前は何なんだ」的な状態で攻め勝つ展開なのだろうと思っていました。それで互角近くには持っていけても、最後に勝利を手繰り寄せたのは執念でした。第5セット、カウント5-5のブレイクポイントで飛び付いたあのボレー。錦織が執念でラケットに当てたボールがフワッとマレーのコートに落ちた瞬間、屋根に覆われたアーサーアッシュ・スタジアムは熱狂のるつぼと化し、この試合の途中から生まれては消えていた波乱の予感が急に現実として意識されたのでした。

最初に私は「勘」と書きました。それは今回あたりの巡り合わせで錦織が勝つということです。フィジカルや疲労等の不安要素が殆どないタイミングでの対戦、オリンピックで錦織のメンタルの血肉となった数々の経験、(本音ベースでは)錦織に負けるイメージが希薄化したマレー陣営、直前にディミトロフに楽に勝ち過ぎた自信の裏目リスク、前ラウンドのカルロビッチ戦で錦織が掴んたリターンの感触・・・。もちろん錦織の確かな実力がベースにありますが、そのような要素も折り重なり、今日の舞台を用意したのだと感じます。

あと、後付け材料としては、雨天(ほんのにわか雨でしたけどね)による中断と屋根システムの発動、ネット際をひらひら舞った蝶々(蝶々が飛んでいた第4セット後半から第5セット序盤まで錦織のポイント率が妙に高かった)、音響設備の大爆音によるレットなど、神経質そうなマレーにはマイナスだったようですね。マレーの談話では、雨が上がったのになぜ屋根を元に戻さないのか、これでサービスの感触やコートの速さが変わったといいます。確かに観客席にいても、風が止まり、空気がこもった感覚がするので、ボールの運動にも物理的な影響が何かあるのだろうと推察します。

ともにテクニックのある選手なので、真っ向から打ち合いも、球種やコースの選択が多彩で大味な印象が全くありません。技術の粋を尽くし、守るべくは守り、取るべきリスクは取った戦いでした。しかし、錦織のブレークポイント獲得9/13は凄いですね。立ち上がりのゲームで3ポイント逃していますから、その後のブレークポイントはほぼ一発で仕留めた計算です。逆にマレーに対しても多くのブレークを許しましたが、サービスで決まらない試合に相手を引き込めたのは、今日のプレーの質がなせた仕事かもしれません。

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全米OP生観戦~執念のマレー戦

halfwayvolley様

気になっていた点だったのですっきりしました。丁寧に回答していただき嬉しいです。ありがとうございます。

「全米OP生観戦~執念のマレー戦」へのコメント

皆様、励ましのコメントをお寄せいただきありがとうございます。一人の天才日本人選手に夢見る一テニスファンが、全仏のガスケ戦の敗戦の切なさを消化するために始めたブログですが、書きたい時だけ書く感想文のようなものにお付き合いいただき、たいへん感謝しております。


さてfuenfzehn_dreizig様のご質問です。私の座った中段の座席の感覚だと、屋根のあるなしで音の反響が劇的に違う感じはしなかったです。何せテニスコート一面を2万3千人で囲むスタジアムです。東京ドームとは言いませんが、かなりの巨大施設であり、壁に当たって音が跳ね返ってくる感覚はあまりありません。また、平時より空の半分ぐらいが隠れる構造なので、音響がゼロから100に変わるようなものでもありません。ただ、空が完全に見えなくなることで外界と遮断された感覚が一気に高まりますね。


観客の勢力図ですが、昨日のカードだと圧倒的な最大勢力は「浮動票」という名のテニスファンです。コアファンが声援を送る試合序盤はややマレー優勢でしたが、終盤のクライマックスに向かう中で、観客を虜にした錦織が一気に色を染め変えた印象でしたよ。

全米OP生観戦~執念のマレー戦

まるで最盛期のビッグ4同士の死闘を見ているかのような感覚にとらわれました。第5セットの凌ぎ合いなんて凄かったなあ。

2つ質問させてください。

・アーサー・アッシュの屋根を閉じた際の音の反響は観客席でもかなりの大きさで聞こえるんでしょうか?話し声が反響して聞こえるような状態でしょうか?

・今日の試合だとどちらの選手への声援が大きいのでしょうか?(全米の観客は試合の流れで応援もかなり変わる印象があるので一概には言えないのかもしれませんが……)

全米OP生観戦~執念のマレー戦

 なぜここでの締めが、”スラムダンク”!!
思わず、ニンマリしてしまいました。

素敵!!

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