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全仏敗退を機に

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スポーツナビにおけるテニスブログの充実は喜ばしい。 錦織選手への熱い応援、独自のデータ分析、ランキング変動に関する精緻な解説、プレイヤーの心理やワンプレーの意図など、いろいろと立場の違いはあれど、皆さんの深い見識や分析作業にいつも深い敬意と感謝の意を抱いて記事を読ませてもらっています。

そして今、全仏の錦織選手の敗退を機に筆を執らせていただきました。 ボルグやマッケンローの時代からのテニスファンとして、そして自らがテニスプレイヤーとして数十年を過ごしてきましたが、一人の日本人選手の試合結果にこれほど切ない思いをするのは久しぶりです。この切なさを消化するためには、錦織選手に対する期待や夢をどのレベルに置くべきか、その調整を自分自身が最も欲してしまったからです。

錦織選手は紛れもない天才です。しかし、体のサイズ、ナチュラルな筋力からみて勝つための消耗が大。従ってコンスタントに勝ち続けてATPランキング1位になるような絵は描き難く、運と勢いが嵌ったGSを1回獲って欲しい、そう願っています。圭が引退するとき、生涯世界ランク最高位3位、GS優勝1回。そういう到達点で私は大満足です。

日本のテニスファンは今、錦織選手という100年に1度の才能のお陰で「異常体験」をしている。 私はそういう感覚を強く持っており、錦織選手には感謝の気持ちしかありません。たまたま仕事の関係で米国に住み、2014年全米オープンR16ラオニッチ戦、決勝チリッチ戦も会場で見ましたが、GS優勝を託せるアメリカ人選手がいない(イズナー?、ソック?)現在、アメリカでテニスを学んだKEIに声援を送るアメリカ人の姿も多数見掛けます。

さて、今回のガスケ戦の敗退、私は戦前から嫌な予感がありました、 4Rの相手がガスケがキリオスとなった時点で、私でさえ「またか・・・」と思いました。天才にとって、フレッシュな気持ちで戦えない試合ほど嫌なものはありません。同じ仕事内容、同じアウトプットがRequirementなので面白くないのです。それでいて、相手側にそれを上回るモチベーションと上限の高さがあれば結果は逆になります。ガスケが来ようが、(肩のケガのない)キリオスが来ようが、ここは確率逆転が起きるポイントだと思いました。今シーズンの数少ないとりこぼしであるサム・クエリー戦も勝った直後の再戦で、フレッシュな気持ちで戦えなかったのが敗因と見ています。2014全米決勝も、勝ち越している同世代チリッチではなく、むしろリスペクトするフェデラーであって欲しかったと思う理由はそこです。

連戦であっても、最近勝てていないジョコビッチやマレー、そしてナダル、ワウリンカ、フェデラーが相手なら錦織は間違いなく天才性を発揮します。だからこそガスケ戦さえ乗り切れば、メンタル的には解放され、優勝まであるのではないかと思っていました。逆説的ではありますが、錦織選手の特質を考えると、ローマでジョコビッチに勝たない方がよいと考えていたのも同じ理由です。ジョコビッチに勝つのは難しいですが、連勝はさらに難しい。ランキング1位を目指す戦略(ジョコビッチ的な世界)とGS1勝を目指す戦略(ワウリンカ的な世界)は異なると思います。

もちろん今回は、フランス最後の砦となったガスケを応援する会場のムード、雨による中断、コートコンディション等々の要因もありました。UEを減らすという恐らくは全く妥当な戦略がベルダスコ戦で多少揺らいだこともあるでしょう。それらについては既に多くの分析がなされている通りです。錦織選手のこれまでのコメントからは、彼がボールの重さや風に人一倍繊細なことがうかがい知れます。これは錦織選手のテニス感性の豊かさの裏返しなので今後も変わらないでしょう。ワウリンカやガスケの片手バックに虚を突かれ、初動がおかしな反応になりやすいのも、体の動きやスイングの軌道に対する感性との相性が絡んでいると思います。

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この記事へのコメントコメント一覧

全仏敗退を機に

Sato軍曹さん

コメントありがとうございます。

錦織戦は負け試合でも面白い。ああ、私の真理を突かれてしまいました。
ジョコビッチ対フエデラー戦。素晴らしいものを観たなあと思いつつ、実は試合中に脈拍が上がったり、のけぞったりすることはありません。

スポーツ観戦の醍醐味は、いかに感情移入できるチームや選手に出会えるか、その選手が良質なプレーをし、他の素晴らしい選手と勝ち負けを繰り広げるメインストリームにいられるかだと思っています。そういう意味ではガスケのような一流選手相手の敗戦を辛いと思えること自体が幸せで、錦織選手に感謝しないといけないですね。

かつて私が似た感覚を抱いたのは総合格闘技プライドのミルコ・クロコップ選手でした。頂点に立てそうな雰囲気がある一方で、時折ちょっとしたミスから「え?」という負け方をする危なっかしさが同居したタイプ。もしかして自分は錦織選手が日本人だからファンなのではなくて、あのプレースタイルや振幅が好きなのではないかと。

日本人アスリート。
仮に大谷翔平選手が少年期に野球ではなくテニスを選んでいたとしたら・・・デルポトロのような選手をイメージしてしまいますが、いま錦織選手に感じているような息苦しさとは違うファン感情で応援していたかもしれません。

全仏敗退を機に

あ様

コメントありがとうございます。

錦織選手はGS優勝未経験者内の最上位ランカーですので、「次」なる新しい戴冠者として期待することは至極当然のことですよね。但し、そういう状況はフェレールにもベルディヒにもあり、世界のテニスファンが彼らのGS戴冠の日をリアリティを持って展望していたかというと「う~ん」という感じはあります。いま日本人以外の錦織観はどうでしょう。

アメリカのTV、テニスチャンネルでは、錦織を「スピードとバランスは素晴らしい」「バックハンドの危険度は世界屈指」とする一方、「パワー不足で上には勝ち切れない」「セカンドサーブが致命的」といったコメントをよく聞きます。乗った時の「切れ味」で上位選手を打ち取る姿を最近見せていないので、外国メディアからは、良い選手なんだけど、どこか危険度が下がった受け止められ方をしているように思います。ある意味、錦織が全勝しているキリオスの方が怖いわけです。

コメントにご記載なさっていますが、不安定さ(=上限の高さ)は確かに彼の持ち味ですよね。感覚のいい時と悪い時の違いはテレビでもすぐ伝わります。こんなところはフェレール、ベルディヒよりもワウリンカ寄りかなという気もします。だからこそ、凄みのある時の圭を見ていると「届く」ポテンシャルを感じてしまいますし、実際にそれはあるのだと思います。ぜひ優等生になりすぎず、ギリギリのやんちゃさで事を成し遂げてほしいです。

願わくば一度GSを獲り、ボーナスステージである「2度目」を気楽に観られるような日々をファンとしては過ごしたいところ。今の「切なさ」の先にある桃源郷のような世界ですが、ひそかに期待していましょう。

全仏敗退を機に

 大いに賛成!!
楽観的なブログが多い中、いいことだと思います。
冷静に見ているつもりではありますが、私と違った視点で書かれている方が多いここのブログは、
どれも面白い。
新しい視点が加わったことに感謝します。

追記:個人的にはMS優勝のほうが、現実的かも。
錦織選手の最近の試合は、負け試合でも面白いと思っている、今日この頃です。

「全仏敗退を機に」へのコメント

錦織の特徴と今のテニス界の現状をしっかり把握されてる内容で素晴らしいと思いました

錦織のプレースタイルと試合内容から
あのエグいストロークがコーナーに決まり続ければほぼ誰にでも勝てるはずです(2014年の覚醒状態のように)
ただ、実際には、いい時ではないとその爆発力は潜み、UE量産マシーンになるのは、もう何試合も出ています
あとは相手のフルパワーショットの応酬に策を講じるスキルも持ち合わせていません

上限値が高いのは事実なのですが、安定感という点では、少なくともUEの数を劇的にでも減らさない限り、一位を取れることはないと思います
なんせ安定感の化け物が一位に君臨していますし

しかし管理人のおっしゃられているように、運がハマればグランドスラム優勝の可能性はあるのも事実だと思います
楽なドローを引き、かつジョコビッチやマレーのドローが辛く重い大会になったときに全力で取りに行けるかですね

私もテニスは10年以上見てきていますが、錦織選手はとんでもない天才です
しかしそれより上に4人+1人がいたというだけですね

難しいと思いますが、報道熱が少しおさまり日本での錦織熱が冷めたくらいにするっと優勝してほしいなと思います
まあ結局ジョコビッチ次第ですよね
彼が万全なら誰にも勝ち目はないですし笑

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