2008年03月25日
(行者偶感)思い出プロレス・狂気の作り方。正気のタイガージェット・シン
■悪役レスラーのイメージとは? 平成のプロレスファン、格闘技ファン諸君は、タイガージェット・シンというレスラーにどのような印象を持っているだろうか。現在は、自身のパロディを演じるシンを『かつての有名悪役レスラー』といった程度に認識されているのかもしれない。 悪役レスラー、フレッド・ブラッシーやザ・シーク、アブドーラ・ザ・ブッチャーら往年の名優たちは、噛み付きや凶器などによる反則攻撃を専らとし、レスリングとなるとからっきしダメというキャラクターで、怖ろしくもある面で愛嬌のある存在としてお茶の間の『人気者』でもあった。悪事を働いた後に、正統派レスラーから制裁を受けて逃げ惑い、コーナーポストを背にして「ノーノー」と哀訴するその姿は、会場やお茶の間に笑い声を誘った。 ところが、日本デビュー当時、まだ無名の悪役だったシンは、ブラッシーやシーク、ブッチャーらとは異質な、本当の怖さによって、圧倒的な印象を我々に与えることに成功し、日本での地位を確立した。いや、日本における悪役レスラーの代名詞となったのだ。果たしてシンの恐怖とは、どのようなものだったのか。
シンといえば、『猪木夫妻襲撃事件』という人口に膾炙した逸話を思い出されるオールドファンもおられることと思う。確かに、この一件はシンの怖さ、狂気を語るにふさわしい事件ではあるが、シンの怖さの真実味は、ただサーベルを振り回しての狂態だけに由来するものではなかったように思う。 思い出してみれば、シンの狂気には、それをより効果的に伝える細かい演出がなされていたように考えられるのだ。 ■『狂気』の影に馬之助とレスリングあり 昭和のシンを語る場合、上田馬之助というパートナー、名脇役の存在を忘れてはならない。70年代の新日では、常に二人は肩を組み寄り添い合っていた。その頃の馬之助の出で立ちというものは、竹刀を片手に口に髭、そして当時わが国にはほぼ皆無であった金髪ヘアー。さらに、その体型は、下っ腹が張ったいわゆるビール腹で、プロレスラーというよりは、ヤクザ風の強面の中年といったものであった。一言で言えば、見た目が本当に怖かったのである。 その怖い馬之助が、なんとも難儀な表情で、サーベルをくわえたシンを必死に制しながら入場するシーンは、圧巻であった。あたかも、錯乱状態にある犯罪者か、薬物中毒者を警察が手荒に移送するシーンを連想させる二人の姿、やりとり。もし、シンが一人で大暴れして入場してきたとするならば、どのように映っただろうか。 強面のワル中年が懸命に制するその姿は、狂気というよりは正気そのもの。怖そうなオッサンの必死さが、シンの狂気をよりシリアスなものに仕立て上げていたのではなかろうか。その上「シンを抑えているのだから、馬之助は未だいい人なんだ」と思いきや、馬之助は馬之助で、竹刀で客を恫喝するし、、、もう救いがないのである。 そんなシン・馬之助は、一度リングに入ってもやりたい放題の大騒ぎ。勝ち負けを度外視した反則のオンパレード、まさに大出血サービス?である。ところが、タイトルマッチになるとシンは一転してグラウンドでの地味なレスリングを展開し、NWF世界ヘビー級チャンピオンのA・猪木を徹底的に苦しめる。 その粘っこさと言えば、からみついた大蛇を連想させるようなシロモノで、会場とお茶の間は、何度「イノキ危うし!」というシーンを見せられたことか。そして、いつも見せる奇行とは違ったシンの冷静さに、会場とお茶の間は、シンという悪役の不気味さ、奥深さを感じずにはいられないのであった。 『羊たちの沈黙』を先駆けること十余年。かのレクター教授のような狂気と正気が織り交ざったような複雑な人格を見事に演じた稀代の悪役が、タイガージェット・シンなのである。 シンの狂気に振り回されていた70年代中葉の新日本プロレス。時にはリングに客が乱入し、あろうことかシンに制裁を加えようとする自暴自棄の振る舞いもあった。会場、お茶の間のシンへの恐怖感がリミッターを超えるほどのものであったという、一つの証しであろう。 ■誰が『狂気』を作ったのか 果たして、この巧みに作られたシンの『狂気』は、誰が演出したものだったのだろうか。もちろんシン自身の努力も並々ならぬものだったろうと想像されるが、馬之助とのコンビ結成からしても、新日フロント陣の関与は想像に難くないだろう。この見事すぎる演出の裏には、あの偉大なる山師が黒幕にいたのでは?と、昭和の思い出に浸りながら、あれこれと推測をめぐらすのである。シンと馬之助、ホンマに怖かったよ。 *本稿を書き上げた後に、ネットでシンに関する記述を探ってみるとやはり、『インドの狂虎』は日本で作られたもののようでした。日ごろのシンさんはとても知的で礼儀正しい方だそうです。ハードワーカーのシンにリスペクト! ~人気blogランキング登録中です。→Click here プロレス記事多数。行者の雑念ブログ、【行者のログ道★迷い筆】はこちらから→Click here }}
posted by gyoja_busyo |14:41 |
格闘技・プロレス |
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