阿佐智の「アサスポ・ワールド・ベースボール」

拡大するベースボールのネットワーク―2015年世界プロ野球の国別ロースターから8.冬季リーグにみる野球選手の国際移動:プエルトリコ・メキシコ編

このエントリーをはてなブックマークに追加

プエルトリコ

PR

2013年WBCで準優勝に輝いた米国自治領のこの島の住民は米国籍を持っている。したがって、この島生まれの選手はMLBのドラフト対象、つまり米国プロ野球では「国内選手」扱いである。2015-16年シーズンにこの島のプロリーグに在籍した全選手257人のうち、プエルトリコ以外の出身者の40.9%(105人)という高い割合は、そのうちの実に8割強(81人)を占める米国人の多さゆえである。また、中南米カリブ地域からの参加者の多さ、欧州からの参加者の存在は、ドミニカ、ベネズエラ同様のこのリーグのMLBのファーム的性格を示している。  この島同様に冬季リーグのあるドミニカ、ベネズエラからの移動の存在は、冬季リーグ間においても上昇下降移動の連関関係が形成されていることがわかる。つまり、プレーレベル、報酬ともより高い両国の冬季リーグでの契約にこぎつくことのできなかった選手が、自国リーグではなく、プエルトリコに移動する流れができているのだ。そのことは3A以上でプレーする選手が全体の23.7%と両国に比して低いこと、このシーズン以前10シーズンでのカリビアン・シリーズでの優勝回数ゼロというプエルトリコの弱体化から十分に推測することができる。  また、米国領であることによるドミニカ、ベネズエラに比しての治安の良さ、経済の安定度は、NPBにとって若手選手育成の場としてのこのリーグの魅力を高めている。このリーグには、2010-11年シーズンから複数のNPB球団が選手を派遣しているが、このシーズンも、ソフトバンク球団が3人の選手を派遣していた(同球団は実際にはこのシーズン5人をプエルトリコ・リーグに派遣していたが、調査時点ではロースターには3人しか入っていなかった)。

メキシコ メキシコ冬

 メキシコでは、この冬季シーズン、確認できるだけで4リーグが実施されていた。垣のトップリーグ、メキシカンリーグ(LMB)が運営するアカデミーで実施されるルーキーリーグ(9月中旬~12月)、メキシカンリーグ傘下の若手選手を預かる球団によって行われるリガ・ノロエステ(10月中旬~1月)、LMBとは別組織により運営されるメキシカンパシフィックリーグ(LMP)、ベラクルス冬季リーグ(リガ・インビエナル・ベラクルサナ, LIV)(ともに10月中旬~1月)である。このうち、ロースターから出身国の確認がとれたのは、ルーキー級(おそらくはこのリーグ所属の選手は全員メキシコ人だと思われる)以外の3リーグである。このうち、アメリカのマイナーリーグと同じく、「メジャー」たるメキシカンリーグ球団とアフィリエート契約を結んだ(ただしメキシコのマイナーリーグ場合、マイナー球団はアフィリエート契約を複数のメキシカンリーグ球団と結ぶことができる)6球団からなるリガ・ノロエステにはメキシコ人以外の選手は在籍していなかったが、他の2リーグでは多くの外国人選手が見られた。  この国に数ある冬季リーグの中でも、最高峰と言われているのが冬季リーグの雄を決めるカリビアン・シリーズに優勝チームを送るLMPであるが、北米の3A以上でプレーする選手の割合は13.9%(43人)とすでに挙げた3国・地域と比べて著しく低い。これは、自国にサマーリーグが存在するためで、LMPに参加している64%にあたる64人が、夏期はオーガナイズド・ベースボールでは3Aにランキングされるメキシカンリーグでプレーしていた。  しかしながら、外国人選手の割合は28.9%(89人)と4リーグの中では最高で、これは、リーグのレベル維持のため大量のアメリカ人を迎えていること、あるいは、プエルトリコ同様、ドミニカ、ベネズエラに比して治安状況、経済が格段に安定しているため、米国人に代表される外国人選手にとって、移動しやすいプレー先であることによるものだろう。そのことは、同じように冬季リーグをもつドミニカから7人もが「出稼ぎ」に来ていることに端的に表れている。実際、ドミニカリーグ(LIDOM)、LMPの双方でプレーした経験をもつ選手は、近年、LMPの選手報酬が上昇し、他国よりもメキシコでプレーした方が待遇がいいとしている。  日本の独立リーグ、ルートインBCリーグに在籍していたふたりの選手、ドミニカ人の  サンディー・マデラと、2013年にはNPBオリックス・バファローズに「昇格」したスティーブ・ハモンドはともに、4大冬季リーグでプレーした経験を持つ。  北米でプロキャリアを始めたのち、2006-07年シーズンに母国の冬季リーグデビューを飾ったマデラは冬の3シーズンをドミニカで送ったが、2009-10年シーズン以降はLMPに移籍、その後は母国のリーグに帰ることなく、2011年シーズン以降は夏のシーズンもその最初のシーズンの一部を米国独立リーグの最高峰と言われるアトランティック・リーグで過ごしたのと、NPB球団との契約を目論んで2012年シーズンをBCリーグでプレーした以外はメキシカンリーグでプレーしている。メキシコでは夏冬問わずタイトル争いを演じるなど、彼はメキシコ球界になくてはならない存在となったが、本来「里帰り」するはずの冬のシーズンを母国でなくメキシコで過ごす理由を、「その方がギャラが高いため」だとしていた。  一方のハモンドも、2008-09年シーズンをドミニカとLMPで送ったのち、2010-11年シーズンをプエルトリコ、オリックスを解雇された後の2013-14年シーズンを再度LMPで送ったあと、翌冬のシーズンをベネズエラで送り、2015年シーズンにBCリーグに舞い戻っている。この際、彼にドミニカでなく、ベネズエラ、LMPを選んだわけを尋ねると、その方が報酬が高かったからという答えが返ってきた。  MLBによってルーキー級ドミニカン・サマーリーグが開始された1985年以降の28大会で15回の優勝と、2012年のカリビアンシリーズまで圧倒的な強さを見せつけてきたドミニカだったが、それ以降の5大会は優勝から遠ざかっている。2013年以降、メキシコが3度の優勝していることは、2回総当たりのラウンドロビン(リーグ戦)から1回総当たりの後、上位4チームによる(2013年大会以降キューバがこの大会に復帰している)トーナメントという大会形式の変化もその要因として挙げることもできるだろうが、富裕で安全なメキシコへの選手の国際移動フローを考えると、これもまたある意味必然であると言えるだろう。  この国には、さらにもうひとつ、大西洋岸ベラクルス州周辺にLIVが展開されていた。8球団に所属する214人の選手のうち、外国人選手は35人であった。14.5%というLMPに比して半分の「傭兵」の割合は、このリーグでの報酬が、「出稼ぎ」に値しないと考える選手が多いことを暗示している(このリーグに参加した選手の夏シーズンの所属は確認ができなかった)。このリーグの優勝チームが参加する国際シリーズ、ラテンアメリカ・シリーズには、そのプレーレベルの低さからカリビアンシリーズ加入を断られたコロンビア、ニカラグア、パナマの冬季リーグが参加することからも、このリーグがLMPの事実上の下位リーグにあたり、そのプレーレベルに比例して報酬も少ないことがうかがえる。野球後進国と言える隣国、グアテマラからの選手移動はそのプレーレベルの低さゆえのことであろう。

2ページ中1ページ目を表示中

記事カテゴリ:
ラテンアメリカ
タグ:
http://www.plus-blog.sportsnavi.com/gr009041/article/500
http://www.plus-blog.sportsnavi.com/gr009041/article/478
http://www.plus-blog.sportsnavi.com/gr009041/article/416
http://www.plus-blog.sportsnavi.com/gr009041/article/477
http://www.plus-blog.sportsnavi.com/gr009041/article/396
http://www.plus-blog.sportsnavi.com/gr009041/article/395
http://www.plus-blog.sportsnavi.com/gr009041/article/387

このブログの最近の記事記事一覧

この記事へのコメントコメント一覧

この記事にはまだコメントがありません

こんな記事も読みたい

おはようソフトバンクホークス、待ってたよ!【北のホークスファンの戯言】

【硬式野球部】首都大学秋季リーグ戦 最終週 日体大 2回戦【東海スポーツ】

オーストラリア野球リーグ、初の女性コーチ誕生へ【阿佐智の「アサスポ・ワールド・ベースボール」】

【お知らせ】トライアウト支援の実施他について【欧州野球狂の詩(Ver.スポーツナビ)】

クライマックスシリーズを語る・・・(ホークス頑張れ)【ホークスこよなく愛する部屋】

2017ドラフト指名予想~福岡ソフトバンクホークス編~【プロ野球ドラフト会議】【ドラフトさん】

リーグ優勝決めてから・・・【のほほ〜んと、気の向くまま、おもむくままなblog】

CS、そして戦力外、引退の季節【ホークスを見つつ、他のも見つつ…】

ブロガープロフィール

profile-icongr009041

さまざまな世界の野球、野球界の「すきま」を紹介します。
  • 昨日のページビュー:460
  • 累計のページビュー:1917715

(01月16日現在)

ブログトップへ

このブログの記事ランキング

  1. GG佐藤退団の真相からみる日伊野球の違い
  2. プレミア12 この体たらく
  3. 矢野耀大が語る捕手論2ー城島健司がメジャーで大成できなかった原因-
  4. イタリアリーグ・プレーオフ、ボローニャ対サンマリノ、GG佐藤登場(8月3日)
  5. プレミア12 アメリカ代表チームを分析する
  6. 古木克明が現役復帰へ
  7. オコエ瑠偉の現在地:「3軍」からの復活を目指す2年目の春
  8. アジアシリーズ2012・プサンの悪夢
  9. イタリア野球情報~イタリア野球経験者にインタビュー①(前田勝宏氏:フォルティトゥード・ボローニャ/2003年)
  10. アジアシリーズ2012・日韓「巨人」対決

月別アーカイブ

2018
01
2017
12
11
10
09
08
07
06
05
04
03
02
01
2016
12
11
10
09
08
07
06
05
04
03
02
01
2015
12
11
10
09
08
07
06
05
04
03
02
01
2014
12
11
10
09
08
07
06
05
04
03
02
01
2013
12
11
10
09
08
07
06
05
04
03
02
01
2012
12
11
10
09
08
07
06
05
04
03
02

このブログを検索

スポーツナビ+

アクセスランキング2018年01月16日更新

アクセスランキング一覧を見る

お知らせ

rss