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拡大するベースボールのネットワーク―2015年世界プロ野球の国別ロースターから 5.夏季リーグにみる野球選手の国際移動:東アジア

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東アジア諸国:日米への労働力貯水池

 東アジアには日本以外に、韓国(KBO)、台湾(CPBL)、中国(CBL)にプロリーグが存在している。韓国では1982年、台湾では1990年にプロリーグが発足したが、それ以前は両国のトップ選手の多くが日本の野球界に渡っていた。プロリーグ発足後、そのような選手の多くは母国へ帰り、草創期のプロリーグを支えている。これと同時に、プロにふさわしいプレーレベルを保つため、日本のプロ野球からも多くの選手が両国に渡った。  その後、両国のプロ野球が発展を遂げ、プレーレベルも向上していくと、トップ選手がNPBへ上昇移動を行うようになった。1996年にはKBOから「無等山爆撃機」と称されたソン・ドンヨル投手が、2000年には台湾大聯盟(TML)からシュ・ミンチェ投手がNPBに移動している。その後もこの動きは続き、両リーグはNPBへの選手供給源のごとき存在になり現在に至っているが、そのことはNPBに4人ずつ両国出身者が在籍していることから理解できる。  両リーグの外国人選手の在籍状況をみてみよう。

KBO

CPBL

両リーグには日本のNPBのそれより厳しい外国人選手枠が設けられているため、その数は決して多くはない。KBOの2.8%(30/1052)、CPBLの6.4%(12/198)というファーム選手を含む全選手中の外国人選手の割合は、2008年時点(KBO3.0%、CPBL6.9%)と大きくは変わっていない。この数字は、グローバル化が進展し、アスリートの国際移動が増加する中、両国のプロ野球がいまだその閉鎖性を維持していると考えることができる。  その内訳に目を向けると、前回調査においてもともに外国人選手中の北米からの選手の移動の割合が半数以上と高かったが、その傾向は今回調査においてともに8割以上とより顕著になっていた。このことは、メジャー未満の北米人選手にとって、両リーグがNPBに次ぐ「稼ぎ場」になっていることを示す一方、前回調査から数字を落としたラテンアメリカの選手にとって以前ほどの魅力がこの両国にはなくなったことを示唆させるものでもある。近年中南米のウィンターリーグでは、経済力のあるメキシコ、ベネズエラへの選手移動欲が高まっていることを多くの選手が述べていることを裏づけるように、ここ10年のカリビアンシリーズでは、従来その強さを見せつけていたドミニカの優勝が減り、メキシコの優勝回数が増えている。従来、ラテンアメリカの選手の国際移動は、メキシコ→台湾→韓国→日本→メジャーというパターンを示していたが、そのパターンにも若干の変化がみられるようだ。  サンプル数が少なく、決定的なことは言えないが、今回の調査からは、メキシコの夏季リーグ、メキシカンリーグの選手報酬が上がったため、韓国、台湾にかわり、メキシコが目的地となってきている可能性が浮かんでくる。但し、KBOについて言うとこの2015年シーズンにサムソン・ライオンズで48本塁打を記録したヤマイコ・ナバーロが、翌シーズンにはNPBの千葉ロッテに、調査前の2014年にはやはりサムソンで13勝4敗と獅子奮迅の活躍をしたオランダ人投手、リック・バンデンハークが翌年には福岡ソフトバンクに、それぞれ移籍したように、いまだKBOからNPBへの引き抜きが行われていることから、両リーグの垂直な関係は維持されてはいるものの、近年は、外国人選手の報酬に関しては両リーグの間に大差はなくなっているとも聞く。それを考えると、KBOの移動先としての魅力は依然として減じられることはなく、この年のラテンアメリカ諸国からKBOへの移動の少なさは偶発的なものであったと考えることも可能である。  中国に目を向けてみよう。この国の「プロリーグ」、CBLだが、2008年に自国開催された北京五輪に向けて2002年に国内リーグの強豪を「プロ化」したとされていたが、その実際は、選手の待遇自体は、そもそも社会主義国家とあって、中国における各競技の各省レベルのトップアスリートは、「公務員」として競技に対して給与を得ており、CBLの選手もその点は「プロ化」前後で基本的には変わっておらず、CBL自体も五輪後、リーグ戦の縮小・休止などを経験し、現在においては、自らのリーグを「プロ未満」として「プロリーグ」を名乗ることを半ばやめている。そのためか、2015年シーズンはリーグのホームページも閉鎖されており、選手のロースターを調査することはできなかった。このリーグは発足後数年間はプレーレベル向上のため、外国人選手を数名採用していたが、前回調査時の2008年には外国人選手はいなかった。低報酬と短い開催期間もあり、スポーツ労働移動の観点からも、中国は野球選手にとって決して魅力的な移動先ではなく、そのことも考えると、このシーズンもCBLには外国人選手はいなかったと考えられる。  世界規模のパワーハウスである北米のMLBと日本のNPBともに北京五輪前は、中国を将来的な選手貯水池として可能性を見出していたが,それも今は下火になっている。現在は、NPBについては、2010年までは、無錫を本拠とする江蘇ホープスターズ(現ペガサス)に千葉ロッテ球団が指導者を派遣するなどしていたが、それも中断し、現在は、中国との関係を発展させようという動きはない。逆にMLBは、その無錫に2009年に開設された育成センターでの選手発掘を継続し、今回の調査を行った2015年には、MLBアカデミー出身のシュ・グイユエンがボルチモア・オリオールズとマイナー契約を結ぶなど、中国の選手供給地としての可能性を模索し続けている。

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