阿佐智の「アサスポ・ワールド・ベースボール」

拡大するベースボールのネットワーク―2015年世界プロ野球の国別ロースターから 5.日本:世界野球の中継点

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jpan  野球が盛んに行なわれているのは、政治的経済的にアメリカの影響の強い地域であるのだが、アジアにおいては19世紀末にアメリカによって鎖国を解かれた日本において最も定着していった。この東アジアにおける野球は日本の影響力のもと、その植民地となった朝鮮、台湾に浸透していく。そして、アメリカとの地理的隔絶から独自の発展を遂げていった。  2006年に始まったプロ選手による世界大会、ワールドベースボールクラシック(WBC)において国内プロリーグの選手中心の代表チームでありながら、2度の優勝という成績に象徴されるように、高い競技レベルを誇る日本のプロ野球リーグ(NPB)は、東アジア地域における中心的地位を占め、後発のプロリーグをもつ韓国、台湾からの選手を受け入れている。その一方で、トップ選手のMLB移籍に象徴されるように、北米プロ野球への選手供給地としても機能している。また、「助っ人」として北米プロ野球から選手を受け入れている事実も合わせて考えると、選手の移動フローにおいて、日本は東アジア各国とアメリカとの橋渡し役を果たしていると言える。

 2008年当時、日本にはプロ球団としてNPB12球団とその二軍に加え、2005年に発足した四国アイランドリーグ(現四国アイランドリーグplus)と2007年に発足した北信越ベースボールチャレンジリーグ(現ルートインBCリーグ)が存在し、1146人の選手が登録されていた。この数字は2015年には1203人にまで増えている。  そのうち、NPB所属の881人の9%にあたる79人、独立リーグ所属の322人の13.7%にあたる44人が外国人選手であった。この数字は、2008年当時はそれぞれ、71人(8.5%)、16人(5.2%)だったことを考えると、日本にやってくる外国人選手の数は確実に増えていると言える。ことに独立リーグの数字をみると、積極的に選手の国際化を図っていることがわかる。

NPB  NPBに所属する外国人選手の出身地は、北米、中南米カリブ、東アジアの3つに大別することができる。2008年の調査と比べると、アメリカ人の割合が49.3%から36.7%に激減していることは、近年、NPBの外国人獲得網が多極化していることを示している。2008年には3人いて4.2%を占めていたオーストラリア人が、この年は姿を消しているかわりに、これまで「野球不毛の地」とされたヨーロッパからの選手が2人いることを考えると、この地でも野球の普及が進みつつあることがわかる。実際、この年NPBでプレーしたイタリア人のアレッサンドロ・マエストリ(オリックス)、オランダ人のリック・バンデンハーク(福岡ソフトバンク)は、ともに母国で生まれ育ち、プレーを始めている。  しかし、2008年からの変化で一番大きいのは中南米カリブ地域出身者の急増である。7年前計20人であったこの地域出身者の数は39人と倍増している。とくに2008年にはいなかったキューバ人が8人も移動してきているのは、それまで選手のプロ化を容認してこなかったキューバ政府がその方針を転換したことが大きくかかわっているのだろうが、その方針転換の主要因となったアメリカへ亡命した選手もこのキューバ出身者に含まれている。このことは、キューバがもはや市場経済の波とは無関係ではいることはできず、野球の世界における市場主義にもとづく人材獲得網に事実上包摂されていることを示している。  南北アメリカからの選手の移動は、キューバ政府の仲介による移籍選手を除いて、北米プロリーグからの移動である。彼らは、トップリーグのMLBでは主力になることができなかった者であるが、日本ではチームの主力を期待されて高額の契約を結んだものが多い。そういう意味では、彼らに取って、日本は上昇移動先であると言える。 東アジア地域でプロ野球のある韓国、台湾からは計8人(10.2%)の選手がやってきている。彼らのうち、自国のプロ野球より相対的にプレーレベル、報酬とも高いNPBに移籍する者は上昇移籍選手と言え、その先に世界最高峰のMLBでのプレーを見据えている者もいる。このことは、この年福岡ソフトバンクでプレーした韓国人、李大浩が、2016年にはメジャーリーグに移籍していることからもうかがえる。つまり、NPBは、アジア内においては、その相対的なプレーレベルとそれに伴う報酬の高さから、富と名声を求めるエリートアスリートにとっての「メジャーリーグ」として機能しているが、その一方で、MLBへの選手供給地としても位置付けられるのである。  この東アジアからの選手のうち、台湾出身の陽岱鋼 (当時北海道日本ハム)と郭俊麟(埼玉西武)、韓国出身の李大恩(千葉ロッテ)の3名は、母国のプロ野球を経験せずにNPBの球団に入団した者である。このうち、陽は、日本で中等教育を受け、NPBのドラフトでは外国人扱いされることなしで指名されたものである。彼らは母国のプロ野球ではなく、報酬の高いNPBを視野に入れて早い時期から国際移動を行なっている。グローバル化の進展の中、NPBがアジア地域の中心になることは、日本における独立リーグの外国人選手の内訳からも理解することができる。

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