阿佐智の「アサスポ・ワールド・ベースボール」

拡大するベースボールのネットワーク―2015年世界プロ野球の国別ロースターから 4.夏季リーグにみる野球選手の国際移動 イタリア

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 イタリアは野球後進地域であるヨーロッパにおいて、オランダと並んでもっとも野球の普及度が高い国である。ナショナルチームレベルでは、ライバルであるオランダの後塵を拝することが多いが、クラブチームレベルにおいては、毎年各国リーグのトップチームが参加するヨーロピアン・カップにおいて、サンマリノを含むイタリアトップリーグのチームが最多の22回の優勝を誇っている。  1948年に発足した国内トップリーグ、セリエAは、主力選手には給与を支払うセミプロリーグにまで発展した。そのため、かつては、キャリアの晩年を迎えたアメリカ人選手が最後の働き場所としてこの地を選ぶことも多かった。また、また、イタリア系外国人に対する国籍付与の容易さも相まって、アメリカ人だけではなく、ラテンアメリカ各国の選手が、「イタリア人」枠でプレーすることも多い。  2010年、国内リーグは本格的なプロ化を目指し、旧セリエAのトップチームによるイタリアン・ベースボールリーグ(IBL)を頂点とする体制に改組され現在に至っている。IBLは、それまで試合が組まれていなかった平日の試合開催、加盟各球団に入場料徴収を義務付けるなど「プロリーグ」の体裁を整えていく方向性を打ち出したが、この方針は挫折したようで、2013年シーズンからは再び方針を転換し、現在では旧セリエAの時代と変わらない状態に後戻りしている。しかし、外国人選手に関しては、これを有給で雇っていることには変わらず、そのため、多くの「傭兵」たちがここでプレーしている。 2015年シーズンのIBLは、隣国のサンマリノの球団を含む8チームで運営され、計188人の選手が在籍していた。IBLは発足時に、各球団に対してそれぞれ二軍を保有することを義務付け、ファームリーグ、IBL2を運営しているが、ここでは、各球団が自前で二軍をもつのではなく、契約を結んだクラブチームを余剰選手の調整の場として機能させている。したがってファームチームの選手のほとんど全員はアマチュアであるので、ここにはカウントしていない。 この188人のうち、イタリア人とサンマリノ人は129人、外国人選手は31.4%にあたる59人だった。サッカーなど他のプロスポーツと同様、EU加盟国の国籍保有者は、労働力移動の自由の原則から、このリーグにおいても「外国人」扱いはできない。このような事情から、数年前までは、欧州各国人の在籍も少なくはなかったが、2015年シーズンに限っては、「外国人選手」は南北アメリカ出身者で占められていた。 その中でも、とくに目立つのはベネズエラ人である。外国人選手の6割がこの国出身者で占められる。IBLにはEUを除く外国籍保有者は各球団3人までという登録制限があるが、先述のように、イタリアにルーツのある外国人に対しては国籍が付与されやすいという事情から、二重国籍者が「イタリア人」として多数プレーしているのだ。とくに歴史的にイタリア系移民を多く抱えたベネズエラからは多くの選手が流入している。1人いるアルゼンチン人も二重国籍者である。 IBLの外国人選手の報酬は、邦貨にして30万円ほどらしい。この報酬は、2A以下のリーグで先の見えた選手や、独立リーグでプレーするレベルの選手の多くにとって魅力的なものと考えられる。アメリカの文化人類学者アラン・クラインは、野球のグローバル化についてその著書 “Growing the Game” において、1990年代半ばに独立リーグが発足したため、キャリアの晩年を迎えたアメリカ人選手たちが、報酬のさほど変わらぬ外国のリーグより自国の新興プロ野球を最後のプレーの場として選ぶようになり、アメリカからイタリアへの移動が減少したと論じているが、カナダを含む11人の存在は、その論が決して的を得ていないことを示している。 2012年シーズンをIBLで過ごした、G.G.佐藤(元埼玉西武・千葉ロッテ)は、イタリアをプレー先として選んだ理由として、1)現役生活を続けたかったこと、2)IBLとコネクションを持つ日本人の紹介があったこと、3)イタリアの文化に興味があったこと、の3点を挙げていた。彼は、前年シーズン限りで西武から自由契約を通告されていたのだが、IBLのボローニャで1シーズンを送ったあと、NPBに復帰し、2014年までの2シーズンをロッテで送って引退している。 低報酬でも、満足がいく中南米カリブ地域の選手が、IBLをプレー先にアラブことは十分に考えられる。しかし、IBLにはクラインの論に従えば、北米の選手がイタリアにプレー先を求める理由はないに等しい。しかし、現実に少なからぬものがI BLにも身を投じているのは、彼らの移動理由に佐藤同様の経済的以外の要因が挙げられることは十分に推察できる。 イタリア

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