2010年12月13日
フィギュアスケートGPファイナルが中国・北京で行われ、女子フィギュアスケート期待の新星、村上佳菜子選手(16)が合計178.59点の自己ベストをマークし、初出場で日本勢最高の3位に入りました。今シーズンからシニアに転向した村上選手は、2011年3月に東京で行われる世界選手権の日本代表入りに大きく前進。世界選手権大会の最終選考を兼ねる全日本フィギュアスケート選手権大会(12月24日~12月27日)では、今シーズン不振にあえぐ日本のエース・浅田真央選手と10月のNHK杯以来の再戦となります。
さて、日本の地からスタートした『2010/2011グランプリシリーズ(GP)』はカナダ、中国、アメリカ、ロシア、フランスの順に開催され、合計ポイント上位6名(男女シングル)、6組(ペア、アイスダンス)がGPファイナルへ進出しました。GPシリーズには1選手2大会しかエントリーできず、どの選手がどの大会にエントリーするのか、また自分のコンディションをどの大会に合わせるのかも選手・コーチの戦略的見どころの1つでした。
以下は、村上選手が彗星のごとく現れる前の話です。
遠い過去のようですが、バンクーバー冬季五輪で韓国のキム・ヨナ選手と日本の浅田真央選手との同世代対決は、日韓国内ともに連日大きく報道されました。結果はご存知の通り、キム・ヨナ選手がショートプログラム、フリーともに完璧な演技を披露し、歴代最高得点で同種目韓国史上初の金メダル獲得を果たしました。
キム・ヨナ選手と浅田選手。両者を比較するのに、「柔」・「剛」という言葉が良く似合います。妖艶で表現力豊かに女優として演じる「柔」のキム・ヨナ選手に対し、スピード・力強さ・高さがあるスピンやジャンプを武器にアスリートとして演じる「剛」の浅田選手。演技審判の主観的要素が含まれるフィギュアスケートの採点方式において、今回はバンクーバー五輪での2人の「差」に注目したいと思います。
ジャンプやスピンの難易度によって加点は変わりますが、ここではGOE(Grade of Execution)に注目します。
GOEとは演技審判によって0をベースとし-3から+3の7段階で評価された各要素の加点となります。審判7人のうち最高点と最低点を除く、5人の平均得点が加点/減点されます。
上図はキム・ヨナ選手のフリーでの得点です。赤丸で囲んだところがGOEです。すべての項目で加点されており、減点はありません。また4項目で2.00点という高いGOEを記録しています。上図下は浅田選手のフリーでの得点です。GOEで減点があり(ダブルループ失敗)、ほとんどの項目でキム・ヨナ選手より低いGOEです。フリーでの基礎点(赤点線と青点線)が浅田選手より高かったキム・ヨナ選手は、ミスさえしなければGOEで浅田選手を上回れると考えていた戦略が当たり、必然的に金メダルを獲得したのかもしれません。
簡単に2人の得点差を説明しましたが、両者ともにプログラム構成やスケート技術でのポイントが高いのは言うまでもありません。いかに着氷時に転倒しないかというレベルではなく、いかに完璧にかつ美しく着氷できるかが求められる次元に突入しています。今後、浅田選手の演技を観る際には「トリプルアクセルが決まるか」ではなく、「トリプルアクセルが綺麗に決まるか」に注目です。また、キム・ヨナ選手より劣っていると言われる表現力の項目で、20歳になった浅田選手が「大人の演技力」で観客を彼女の世界に引き込むことができるか、さらに今後は16歳の村上選手との対決にも世間の関心が集まるでしょう。
参照:バンクーバー冬季五輪公式HP
執筆担当:水原 健太
【略歴】
水原 健太(みずはら けんた)
1979年生まれ 鹿児島県出身
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2010年05月01日
日本のメディアは、今シーズンからロサンゼルス・エンゼルス(以下、LAA)に移籍し、赤いユニフォームに身を包んだ『ゴジラ』のプレー、発言に大注目している。『ゴジラ』のプレーは毎日のように日本のスポーツニュースで、すぐに放送。LAAと同じく、ロサンゼルスを本拠地とするロサンゼルス・ドジャース(以下、LAD)には、2007年までは日本で“赤いユニフォーム”をまとい、ゴジラと同学年(35歳)の選手がいる。今年でメジャー3年目となる黒田博樹だ。
過去2シーズンは、度重なる故障に苦しんだ黒田。今シーズンは、オープン戦から順調に調整を続け、万全の状態で自身の開幕戦に臨んだ。現地時間4月9日、敵地でのフロリダ・マーリンズ戦で今シーズン初先発し、8回を被安打5、失点1(自責点0)と相手打線を抑え、今シーズン初勝利を挙げた。同15日はアリゾナ・ダイヤモンドバックス戦で先発し、10本の安打を許したが7回を投げ、無四球、7奪三振で失点3(自責点2)と試合をまとめ、先発としての役割を果たした(チームは延長戦の末、サヨナラ勝利)。そして、同21日に行われたシンシナティ・レッズ戦で5回2/3を投げ、被安打7、失点6(自責点3)と、味方のエラーや審判の判定に苦しんだが、味方打線の援護もあり2勝目を挙げた。
「野球」では、投手の成績を表す指標として、「勝利数」、「防御率」、「勝率」、「奪三振数」などが主要な投手評価項目となっている。今回は日本野球界でも浸透しつつあり、識者には当たり前であろう「Baseball」の投手評価項目の1つ、WHIP(Walks plus Hits per Inning Pitched)を取り上げたい。
上が防御率の式、下がWHIPの式である。
結果重視
内容重視
※WHIPでは与死球、エラー、併殺等は考慮されない
以下は、黒田と松坂大輔の過去3年間の成績表である。
※黒田は2008年にドジャースに加入。成績は現地時間4月25日現在
上の図から2008年シーズン、日本メディアの寵児である松坂は18勝を挙げ、レッドソックスの先発柱として活躍。しかし、黒田はメジャー移籍初年度となった同シーズンは9勝に留まり、黒星は2ケタの10敗を記録した。松坂はチームへ貯金15勝を与えたのに対し、黒田は借金1。勝利数だけを考察すれば松坂が、当然、黒田より優れた投手となる。しかし、WHIPで算出した結果は、黒田の方が投手として評価が高いことになる。2008年シーズン、WHIP1.22を記録した黒田は、翌シーズンは1.14、そして今シーズン、登板数3試合だけだが、WHIPは現在1.21である。
日本で報道される松坂と黒田の成績は、Baseballの観点でWHIPを見れば、その評価は逆となる。
昨シーズン、MLBトップのWHIPを記録した投手は、アリゾナ・ダイヤモンドバックスのDan Harenだ(規定投球回数162回以上の選手を対象)。2006年シーズンのJohan Santana以来、WHIP 1.00台を記録したHaren。しかし、勝利数だけを見れば、ナショナル・リーグ12位タイの15勝。逆に敗戦は2ケタの10敗である。
勝利数が多く、敗戦数が少ない投手がBESTな選手であるとは限らない。「外面」だけではなく、「内面」を考察することで、WHIPは投手の評価指標を明示していると言えるのではないだろうか。
LAに大歓迎ムードで上陸を果たした赤い『ゴジラ』に対し、LAでは先輩である同学年の黒田は何を思うのだろうか。日本メディアへの露出が決して多いとは言えない黒田だが、今シーズンは日本メディアが振り向かざるを得ないほどの彼の活躍に期待したい。
3年目の正直。黒田の真価が問われるシーズンになるのは間違いないだろう。
参照:MLB.com Yahoo! com
数字は現地時間4月25日現在
執筆:水原 健太
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水原 健太(みずはら けんた)
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2009年11月24日
現地時間10月25日、今シーズンのNBAが開幕した。
イースタンカンファレンスでは、開幕前の予想通り、クリーブランド・キャバリアーズ、ボストン・セルティックス、オーランド・マジックが上位につけている。
アトランタ・ホークスは昨シーズンの勢いそのままにカンファレンス2位とスタートダッシュに成功した。驚きはミルウォーキー・バックス。得点源であったリチャード・ジェファーソンをサンアントニオ・スパーズへ放出し、攻撃力の低下が懸念されたが、センターのアンドリュー・ボーガット、ルーキーのブランドン・ジェニングスがオフェンスをけん引している。しかし、ボーガットがじん帯を負傷し、約1ヶ月間の戦線離脱。エースのマイケル・レッドは戦列に復帰したが、どこまでバックスの勢いが続くのか気になるところだ。
ウエスタンカンファレンスは、ここまでは大きなサプライズは起きていない。ロサンゼルス・レイカーズ、デンバー・ナゲッツ、フェニックス・サンズ、ダラス・マーベリックスが順当に上位を占めている。昨シーズン、リーグ28位(30チーム)の23勝59敗に終わったオクラホマシティ・サンダーが7勝7敗と健闘しているが、個々の能力は高いだけにそれほどの驚きはない。
さて、みなさんはNBA選手を評価する時、どうやって選手の能力を測るだろうか?
得点、アシスト、リバウンド。
上記3項目の成績が高い選手ほど、能力が高く、良い選手だと推測するだろう。
しかし、30得点を奪った選手がターンオーバー(ミス)を10回も犯していたとしたら、どうだろうか。10回のミスがすべて相手の得点に結びついたと仮定すると、相手は20得点以上(2ポイント×10回とする)を挙げることになる。つまり、30得点を挙げた選手は10得点しかチームに貢献していないことになり、相手に20得点も献上したことになる。
NBA選手の真の実力を測るのに用いられる「Hollinger Game Score」をみなさんはご存じだろうか。現在、ESPNのNBAアナリストであるジョン・ホリンガー氏(John Hollinger)は、統計学や回帰分析を使用した分析「PER(Player Efficiency Rating)」を開発。選手のチームへの貢献度を数値化したことで、マスメディアの注目の的となった。その後、さらに彼は、PERを発展させた「Hollinger Game Score」を発表。より選手の貢献度が分かる分析手段を考案した。
「Hollinger Game Score」の計算式は以下のとおりである。
= (得点×1.0)+(シュート成功数×0.4)+(シュート試投数×-0.7)+((フリースロー成功数-フリースロー試投数)×-0.4)+(オフェンスリバウン×0.7)+(ディフェンスリバウンド×0.3)+(スティール×1.0)+(アシスト×0.7)+(ブロック×0.7)+(ファール×-0.4)+(ターンオーバー×-1.0)
「Hollinger Game Score」(HGS)を用いて、各カンファレンス上位4チームの最多得点者の1試合平均HGSは以下の通りである(現地時間11月23日終了時点)
1試合平均HGS:イースタンカンファレンス(数字はカンファレンス順位)
1試合平均HGS:ウエスタンカンファレンス(数字はカンファレンス順位)
※15.0以上 ⇒ 素晴らしい活躍
※8.0~14.9 ⇒ 平均的なパフォーマンス
※7.9以下 ⇒ 平均以下のパフォーマンス
数値化した結果、両カンファレンスともに1位にいるチームの最多得点者が最もHGSが低いことが分かる。またクリーブランド・キャバリアーズのLeBron Jamesとデンバー・ナゲッツのCarmelo Anthonyが、各カンファレンス上位4チームの中で最も高いHGSを記録している。
サンプルとしての試合数が少ないが、今シーズンが終わった段階(82試合)で各選手の本当の価値・貢献度を数値化してみるのも面白いのではないだろうか。
来年4月までプレーオフ進出を目指し、各チームが激闘を繰り広げるNBA。
今シーズンも様々な話題を提供してくれるだろう。
どんな選手が成長するのか、また期待外れに終わる選手は誰か。
日本人がNBAでプレーする姿を見られないのを寂しく思うのは、日本のバスケットボールファンの共通の思いだろう。
データ元:NBA.com
執筆担当:水原 健太
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水原 健太(みずはら けんた)
1979年生まれ 鹿児島県出身
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2009年11月17日
度重なるルール変更や昨今の不況の煽りを受けた大企業の撤退表明など日本にとっては暗い話題ばかりが続くF1の世界。
その話題は最後にまとめるとして、今シーズンのF1を振り返っていきたい。
F1は来季以降も続くのだから。
今シーズン、年間王者に輝いたのは、何かと日本と縁が深いジェンソン・バトン。「勝てないF1ドライバー」として有名だったバトンだが、2006年に初のGP優勝を経験。その後、紆余曲折を経て、今シーズンはホンダからチームを引き継いだブラウンGPに正ドライバーとして残留した。2009年開幕戦のオーストラリアGPで2006年以来となる自身2度目のGP優勝を飾り、開幕から7戦中6戦で優勝を果たした。その後は表彰台の中央に立つことはなかったが、マシンの性能と自身の運転技術により安定した結果を残し続けた。
以下の表は今シーズンのバトンの結果である。
黄色は優勝、青色は表彰台(2位・3位)、緑色は入賞(4位~8位)、赤色は獲得ポイント0である。表が示す通り、リタイアしたベルギーGP以外、すべてのGPでポイントを獲得している。
またGP序盤は前述した通り開幕から7戦中6戦を制するなど、圧倒的な強さを発揮したが、中盤から終盤にかけては失速し、優勝を果たすことはできなかった。
しかし、終盤5レースでは予選順位から最終順位を上げてフィニッシュしており、その安定した強さを発揮できたことがバトンの年間王者獲得につながったのではないだろうか。
今シーズンのバトンの年間王者獲得は、他チームに先駆けてマシンを改良していたブラウンGPに助けられた部分が大きいだろう(ホンダが開発したマシン)。来シーズン、真の実力を問われるバトン。「勝てないF1ドライバー」の座に落ちることなく、「勝てるドライバー」と自身の才能を証明したいところだ。
今シーズンは、ゼバスチャン・ベッテルの成長も見逃せない。
同じドイツ出身で、F1史上に残る最高のドライバー、ミハエル・シューマッハの後継者との呼び声も高い22歳の神童は、これまで数々のF1最年少記録を更新してきた。今シーズンはレッドブルに移籍し、GP4勝を挙げた。マシンの性能も高まったことで、その才能が一気に開花。シューマッハ以来のドイツ人年間王者誕生は時間の問題だ(ドイツ人の年間王者はシューマッハのみ)。
以下の表は今シーズンのベッテルの結果である。
予選順位1位獲得(ポールポジション)は4回とバトンと同数。しかし、オーストラリアGPとマレーシアGPで下位に沈んだことが、結果的に終盤の猛追が実らなかった要因であろう。加えて、リタイアしたレース数である。リタイアはドライバーの技術とは無縁の要素も絡んでくるが、ベッテルはリタイアしたレースが3回あり、これもベッテルにとっては年間王者を遠のける一因でもあった。
来シーズン以降、ベッテルの注目度はさらに上がるだろう。F1界の頂点に立ち、シューマッハ2世、いやセバスチャン・ベッテルとしてF1を牽引してもらいたい。
バトンとベッテルの総合ドライバーズポイントの推移
最後に冒頭でも記述したが、暗い話題も振り返ろう。
昨シーズンはホンダがF1撤退を表明した。
そして、今シーズンはトヨタがF1完全撤退を電撃発表。さらに、日本が誇るタイヤメーカー、ブリヂストンも来シーズンでの撤退を表明した。
2社ともにサブプライムローン問題から始まった不況が経営面の悪化を招いたことで、F1撤退を表明せざるを得なかったのだろう。
これで2011年以降、日本企業がF1に直接関係してくることはなくなった。
今シーズン、参戦していた2人の日本人ドライバーの行く末も気になるところだ。
中嶋一貴と小林可夢偉。ともにトヨタが育てた若きドライバーだ。
トヨタという大きな後ろ盾を失い、2人の日本人ドライバーの未来は明るいとは言い難い。
しかし、その実力で来季のドライバーズシートを確保してもらいたい。
データ元:The Official Formula 1 Website
執筆担当:水原 健太
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水原 健太(みずはら けんた)
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2009年10月14日
2010年2月12日から28日までの17日間にわたり、カナダの地でバンクーバー冬季五輪が開催される(7競技/86種目)。モントリオール夏季五輪(1976年)、カルガリー冬季五輪(1988年)では地元カナダ選手は金メダルを獲得できなかったが、バンクーバー冬季五輪ではカナダ選手の金メダル獲得が期待されている。カナダで五輪が開催されるのは、前述した通り、モントリオール夏季五輪、カルガリー冬季五輪に続き3回目。前回の2006年トリノ冬季五輪で、カナダは金メダル7個、銀メダル10個、銅メダル7個、計24個のメダルを獲得し、カナダの冬季五輪史上で最多を記録した(2002年ソルトレイクシティ冬季五輪では金メダル7個を獲得したが、メダル合計では17個であった)。着実にウィンタースポーツの力をつけてきているカナダ。本番ではどのような結果に終わるのか今から楽しみだ。
4ヵ月後に迫った2010年バンクーバー冬季五輪。モーグルの上村愛子(代表内定)、フィギュアスケートの浅田真央(代表候補)などが金メダル獲得を期待されている。その他には、スノーボード/ハーフパイプの青野令、スピードスケートの長島圭一郎、加藤条治、及川佑、アルペンスキーの皆川賢太郎、ノルディック複合団体などがメダル獲得の有力候補だ。
下の図は過去冬季五輪の日本のメダル獲得数である。
前回の2006年トリノ冬季五輪では、女子フィギュアスケートの荒川静香が金メダルを獲得。しかし、総メダル獲得数は荒川の金メダルのみ。1992年~1998年はノルディック複合個人、ノルディック複合団体、スキージャンプ、スピードスケート、フィギュアスケート、モーグルで期待通りの活躍をした日本。しかし、最近2大会ではメダル獲得総数2個、1個と危機的状況だ。夏季五輪と比較すると、全世界の注目度も低く、メディアに取り上げられる回数も少ない。
他の国々はどうだろうか。
前回大会、金メダルを最も多く獲得した国はドイツであった。多くの方はスポーツ大国アメリカが1位だと思ったのではないだろうか。
ドイツは3大会連続で総獲得メダル数1位を誇り、また過去5大会で金メダル獲得数1位が3大会もある(東西ドイツ統一後)。バンクーバー冬季五輪はドイツ人選手の活躍に注目してみるのも興味深いだろう。
前回大会は金メダル1個に終わった日本。バンクーバー冬季五輪では日本人選手の奮起が期待される。他国に比べ、ウィンタースポーツに対する環境や施設が十分とは言えない日本だが、代表選手の活躍で、未来の五輪選手への道を大きく広げて欲しい。
データ元:IOC
執筆担当:水原 健太
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2009年10月01日
アレン・アイバーソン。愛称 The Answer。
彼のファンは今、何を思っているのだろう。
大男たちが肉弾戦を繰り広げるNBAの中で、ひときわ小柄で華奢(きゃしゃ)なアイバーソン(公称:身長183cm)は子どものように見える。しかし、そのたぐいまれな身体能力と巧みなドリブルスキルで相手を翻弄(ほんろう)し得点を量産し続ける。得点王を4度受賞。またNBA史上最も背の低い得点王でもある。
11年間、フィラデルフィア・シクサーズに在籍し、NBAファイナルにも進出したが、当時、最強を誇っていたロサンゼルス・レイカーズの前に1勝4敗で敗退。その後、シクサーズを離れ、デンバー・ナゲッツに移籍した。カーメロ・アンソニーとのコンビで得点力アップを期待されたが、チームとしての完成度はNBA制覇までには遠く及ばず、昨シーズン序盤にデトロイト・ピストンズへ放出された。アイバーソンのプレースタイルは、ピストンズではまったくマッチせず、ベンチを温める機会も多くなり、キャリア初の1試合平均得点20点以下を記録してしまった。
下の表はアイバーソンのシーズン別1試合平均得点である。
※赤字は得点王となったシーズン
アイバーソンはプレーだけではなく、そのファッションスタイルやコート外での問題でメディアを騒がせた。カリスマ性を備え、アンタッチャブルな存在であったアイバーソン。
自己主張を貫き、コートの中で有無を言わせない「明確な成績」として証明し続けた。しかし、34歳となった彼はカリスマ性こそいまだ健在だが、チームへの統率力や影響力は低下し、影の薄い存在となっている。
しかし、最近4シーズンはAST/TO率は高くなっている。アイバーソンのポジションはガード。得点も奪える彼は、マークが自分に集中するのを利用して、味方に的確なアシストパスを出す。得点を奪うポジションにいながら、ターンオーバーが少ないというのが最近の彼の傾向だ。最も昨シーズンはプレータイムが少なかったので単純に比較はできないが、ターンオーバーを減らし、自らの得点よりもアシストを優先しているように推測される。アイバーソンのプレースタイルにチームが合わせるのか、それともアイバーソンがチームのプレースタイルに合わせるのかがカギとなりそうだ。
※AST/TO率=アシスト(AST)÷ターンオーバー(TO)
※TO=自ら犯したミス
今シーズン、アイバーソンが新天地として選んだのはメンフィス・グリズリーズ。昨シーズンは24勝58敗(勝率.293)の記録を残し、ウエスタンカンファレンス・サウスウエスト地区最下位。NBA全体でもリーグワースト5位タイ(30チーム中)と散々な結果に終わった。しかし、チームには有望な選手がそろっている。チームの顔となったエースのルディ・ゲイ。昨シーズン、ルーキーながら非凡な才能を発揮したOJ・メイヨ。リバウンド力に優れたマルク・ガソル(レイカーズのパウ・ガソルの弟)。今シーズン、ドラフト2位で入団した身長221cmのハシーム・サビート。実績十分のパワーフォワードのザック・ランドルフも加わった。アイバーソンの加入はチームに大きな刺激を与えるだろう。アイバーソンがグリズリーズを強豪チームへと変ぼうさせるのか、それとも再びチームスタイルにマッチせず悲しい末路となるのか。
アイバーソンの新たな挑戦は幕を開けたばかりだ。
データ元:NBA.com
執筆担当:水原 健太
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2009年09月05日
現地時間8月15日~23日の9日間にわたってドイツの首都ベルリンで開催された世界陸上。地元ドイツ選手が金2個、銀3個、銅4個を獲得し、大いに盛り上がった。
その中で今大会最も注目を浴びた男は、周囲の予想をはるかに超える前人未到の記録を樹立した。
男の名前はウサイン・ボルト。
昨年開催された北京五輪で100m・200mを制し金メダルを獲得した世界最速の男は、ベルリンの地で圧倒的な速さと力強さで躍動した。短距離走では風の抵抗を受ける大柄な選手は成功しないという定説を、自らの力で打ち破るボルト(身長196cm)。その走りはすでに異次元の世界に突入している。
大会2日目最終競技として行われた男子100m決勝。
4コースのボルトはいつもと変わらぬ屈託のない表情、そしておどけたポーズで観客にアピールし、スタートラインに立った。対照的にボルトの最大のライバルであるタイソン・ゲイは、隣の5コースで独り言をつぶやきながら厳しい表情を見せていた。そして号砲がなった瞬間、決勝の舞台に立った8人が一斉に飛び出した。50mを過ぎた地点でボルトはすでにトップ。大柄な褐色の肉体は風の抵抗を受け流すかのように加速し、ゴールラインを過ぎ去った。記録は9秒58。ボルト自身が北京五輪で樹立した9秒69の世界記録を、一気に0秒11更新する驚異的な記録を出した。「進化」という言葉が陳腐に感じるほど、陸上界の常識を覆すボルト。どこまでボルトは記録を伸ばし続けるのか。
下の図は男子100m世界記録の歴史である。
ボルトが打ち立てた9秒58は異常な記録だと言える。上の図からも分かるように、今までの世界新記録は緩やかな右肩上りの線だったが、ボルトの記録は一気に急上昇している。「常識」という物差しで測れないボルトの成長。そして彼には記録を更新し続ける要因がまだある。
下の図は男子100m決勝に出場した8選手の最終順位とスタート反応速度の順位である。
※反応速度とはスタートの号砲がなった瞬間から体が反応するまでの時間
【男子100m決勝の最終順位と記録】
【男子100m決勝の反応速度の順位】
ボルトは8人中6位の反応速度であった。1位の反応速度を記録したリチャード・トンプソンとは0.027秒の差がある。0.1秒を切る反応速度はフライングになるが、ギリギリまで反応速度を上げれば、9秒58の世界記録更新の可能性は大きい。また、ボルトは今回の男子100m決勝で、ゴールの際にタイマー時計を見る余裕もあった。時計を見ず、全力で走り抜けていたら9秒5台前半の世界新記録が樹立していただろう。
大会6日目の男子200m決勝でも19秒19の世界新記録で優勝したボルト。そして先日、ボルトは将来的には走り幅跳びにも挑戦する意向を表明した。今後100m・200mの世界記録の更新も期待されるが、ボルトにとって新たな種目となる走り幅跳びでの世界記録の更新も期待される。ジャマイカが生んだ稀有な才能は、今後も人類の未知なる可能性を披露してくれることだろう。人類最速の男、ウサイン・ボルト。その挑戦に終わりはない。
データ元:
ベルリン世界陸上大会公式HP
http://berlin.iaaf.org/index.html
IAAF公式HP
http://www.iaaf.org/index.html
執筆担当:水原 健太
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2009年08月12日
アメリカのミシガン州南東部にある「デトロイト」は自動車産業で発展し、「自動車の街」として有名だ。スポーツも盛んで、アメリカ4大スポーツの4チームがデトロイトを本拠地にしている。MLBではデトロイト・タイガースが昨シーズンは地区最下位だったものの、今シーズンは8月12日時点で地区首位に立ち、好調をキープしている。NBAではデトロイト・ピストンズが強豪チームとして有名。昨シーズンまで8年連続でプレーオフ進出を果たし、07‐08年シーズンまで6年連続でカンファレンス・ファイナル進出を成し遂げた。またNHLのデトロイト・レッドウィングスは2年連続でスタンレーカップ出場を果たしており、昨シーズンは惜しくも準優勝に終わったが、07-08年シーズンは優勝している。
アメリカで最も人気の高いスポーツは、上記の野球、バスケットボール、アイスホッケーではなく、アメリカンフットボールだ。アメリカ人が最も熱狂し歓喜するスポーツ、それこそアメリカンフットボール。そしてデトロイトに本拠地を置くNFLチームはデトロイト・ライオンズだ。
ライオンズはシーズン16試合制になってからはNFL史上初の16戦全敗を昨シーズンに喫し、不名誉な記録を残した。ちなみに2007年の第10週以降、ライオンズの成績は1勝23敗である。ライオンズはチーム創設以来、一度もスーパーボウルに出場したことがなく、1999年以降プレーオフにすら進出していない。地元ファンは熱狂的で、その声援に応えられていないのが今のライオンズだ。
下の表は過去5シーズンのライオンズの成績。
過去5シーズンの通算成績は21勝59敗(勝率.263)。弱小チームであるライオンズ。どん底からの再建を目指すチームはコーチ陣を一新した。新HCには昨シーズン、テネシー・タイタンズの守備コーディネーターを務めたジム・シュワルツが就任。また守備コーディネーター兼アシスタントコーチにはガンサー・カニンガム、新攻撃コーディネーターには前セントルイス・ラムズHCのスコット・リネハンとそれぞれ契約した。新コーチ陣が選手の能力を引き出し、新HCであるシュワルツの戦術がどこまでチームに浸透できるかがポイントとなりそうだ。
ライオンズはNFC北地区に所属している。そのほかのチームはミネソタ・バイキングス、シカゴ・ベアーズ、グリーンベイ・パッカーズ。過去5年間の各チームとの対戦成績は以下の通り。
3チームとの過去5年間の合計対戦成績は6勝24敗(勝率.200)。まずはライバルチームとの対戦に勝利することがチームに自信を植えつけさせるだろう。
また過去5年間のホームでの成績は13勝27敗(勝率.325)、アウェイでの成績は8勝32敗(勝率.200)であり、アウェイでは現在12連敗中。地区内のライバルチームとの対戦を制し、ホームゲームで良い成績を収めれば、ライオンズにも光が差し込むだろう。
昨シーズン、悪夢のようなシーズンを過ごしたライオンズ。今シーズンにかけるモチベーションは高い。新HCシュワルツと攻守の両参謀がライオンズの厳しい再建に取り組み、ライオンズにとって今シーズンはまさしく「0」からの出発となる。初戦はアウェイでニューオーリンズ・セインツと対戦する。ライオンズの選手たちが待望の勝利を手に入れた瞬間、地元デトロイトの街が歓喜に沸く姿が目に浮かぶ。
データ元:ESPN http://espn.go.com/nfl/
執筆担当:水原 健太
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2009年08月05日
アメリカにおける女子サッカー人気は、日本人が考えているよりもはるかに高い。サッカーは女性のスポーツとしてアメリカ人には認知されており、多くの女性がサッカーを楽しんでいる。
ファンを熱狂させ、数々の偉業を成し遂げた女子サッカー界の伝説的選手、ミア・ハムは15歳でアメリカ代表に選出されると2004年に現役引退をするまで、Aマッチ276試合に出場し、158得点を記録した。アメリカ女子代表は、アトランタ五輪(1996年)で金メダルを獲得すると、シドニー五輪(2000年)では銀メダル、アテネ五輪(2004年)と北京五輪(2008年)では金メダルに輝き、その強さを世界に知らしめた。
アメリカ国内での女子サッカー人気が高まり、2001年に8チームでWUSAが設立された。全世界から有名な女子サッカー選手が集結し、男子サッカーMLSを凌(しの)ぐ人気を獲得。WUSAは不動であるかのように思われた。しかし、その人気とは裏腹にリーグは資金繰りに苦しみ、メインスポンサー2社が撤退。わずか2年足らずでWUSAは休止に追い込まれた。
今年、新たなプロリーグWPS(Women’s Professional Soccer・7チーム)が創設され、アメリカ女子プロサッカーリーグが復活した。昨秋に行われたドラフトでは沢穂希、荒川恵理子、宮間あや、大野忍の4人のなでしこジャパンの選手たちが指名を受けた。大野は日本に残留したが、沢はワシントン・フリーダム、荒川はFCゴールドプライド、宮間はロサンゼルス・ソルにそれぞれ入団した。
2009年3月に開幕したWPS。7チーム中、上位4チームがプレーオフへ進出する。リーグ戦3位と4位の勝者がリーグ戦2位のチームと対戦。その勝者がWPS初代タイトルをかけて、リーグ戦1位のチームと対戦する。プレーオフは現地時間8月15日(土曜日)に始まる。
順位表は以下の通りである(現地時間8月4日時点)。
宮間が所属しているロサンゼルス・ソルは早々とリーグ優勝を決め、逆に荒川が所属しているFCゴールドプライドは最下位に沈み、プレーオフ進出の望みが消えた。日本を代表する女子サッカー選手である沢が所属しているワシントン・フリーダムはプレーオフ進出に向け、残り2戦の勝利が不可欠だ。
なでしこジャパン3選手の成績は以下の通り。
宮間は全試合先発フル出場しており、チームの中心選手として活躍している。宮間のアシスト数はリーグ1位タイ。シュート数はチーム内で2位である。シュート数チーム1位はリーグ得点王(9点)のブラジル代表・マルタ。ここまで宮間はリーグ無得点だが、チームの攻撃の一翼を担っていることは容易に推測できる。沢も全試合先発フル出場を続けており、チームの要となっている。日本での沢の活躍を知っているファンからすると、リーグ戦3ゴールは物足りない数字か。プレーオフ進出に向け、さらなる奮起が求められる。荒川は11試合に先発出場しているが途中交代も多く、チームに貢献しているとは言い難い。チームも最下位に沈んでおり、チームの不調が荒川にも影響しているのだろうか。
新設されたWPSだが、その将来は決して明るいとは言えない。WUSAのようにスポンサーの撤退や資金繰りに苦しむことも十分予想される。しかし、観戦するファンが興奮するような試合を続けることが、今後WPS発展のカギとなることは間違いない。また、多くの日本人が海を渡り、アメリカで活躍するニュースが数多く届けば、日本人サッカーファンにもWPSがなじみ深いものになってくるだろう。
※数字は現地時間8月4日現在
データ元:WPS http://www.womensprosoccer.com/
執筆担当:水原 健太
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水原 健太(みずはら けんた)
1979年生まれ 鹿児島県出身
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サッカー |
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2009年07月14日
今年のウィンブルドン選手権決勝は球史に残る一戦となった。
試合時間4時間を超えた決勝で、栄冠に輝いたのはロジャー・フェデラー。
史上最高の選手との呼び声が高い27歳の「ミスター・パーフェクト」が熱戦を制したのだ。
フェデラーは今年の全仏オープンを初制覇し、キャリアグランドスラムを達成。本大会の優勝で4大大会15勝目を記録し、優勝回数が男子歴代1位となった(2位はピート・サンプラスの14勝)。本大会でフェデラーは様々な記録を樹立。準々決勝でイヴォ・カルロビッチを下し、21大会連続4大大会準決勝以上進出を決めた。準決勝ではトミー・ハースを下し、4大大会での決勝進出回数を20回に伸ばし、歴代最多記録を樹立した(2位は19回のイワン・レンドル)。
今年のウィンブルドン選手権は、まさにフェデラーのための大会だったと言えるだろう。
フェデラーは3回戦で1セットを落としたのみで、準決勝まで6試合中5試合でストレート勝ち(3-0)を収めた。フェデラーはミスの少ない選手として有名だが、以下は準決勝までのフェデラーのスタッツである。
相手よりUnforced Errorが多かったのは3回戦のみであり、それ以外の試合ではすべて相手より少なかった。特に4回戦は8回、準々決勝は7回と最小限のミスに抑えている。コートの隅をついたショットやネットのギリギリを狙ったショットなど、紙一重の攻防が続くテニス。その中で、いかにミスをせず、相手のミスを誘発することができるか、または自らポイントを奪うことができるかが勝負になってくる。フェデラーはミスをせず、自らポイントを奪うことができる数少ない選手だ。
準決勝まで最高のパフォーマンスを披露したフェデラー。決勝の相手は今大会で復活を遂げたアンディ・ロディックであった。戦前ではフェデラーの圧倒的有利が予想されていたが、試合は一進一退の攻防が続いた。ロディックの強打に対し、必死に受けて立つフェデラー。そしてフェデラーの精密機械のようなショットに対し、懸命にリターンを返すロディック。第5セットは大会規定により、2ゲーム差を離して勝利しなければならず、両者の死闘は第30ゲームまでに突入した。そして、最後はロディックのあっけないミスにより、4時間を超える熱闘に終止符が打たれた。以下は決勝での両者のスタッツである。
ミスの少ない正確無比なプレーが特徴のフェデラーが、決勝の舞台でUnforced Errorを38回も犯している。試合が第5セットまでもつれ込んだこともUnforced Errorはじめ、全体的な数字が増えた一因であろうが、対戦相手のロディックより多いというのは驚きだ。逆に強打が売りのロディックに対し、フェデラーはエースを50回も決めている。決勝は戦前に予想されたお互いの特徴が、数字の上では逆になった珍しい展開だった。
今大会はロディックの復活、フェデラーの前人未到の記録樹立とおおいに盛り上がった大会となった。ケガで大会を欠場したラファエル・ナダルが復帰すれば、男子テニス界はさらに盛り上がりをみせるだろう。現在、フェデラーとナダルの2強時代が続いている男子テニス界だが、2強を切り崩す選手は出てくるのだろうか。若い超新星の出現に期待するとともに、ベテラン勢の復活も期待したい。
執筆担当:水原 健太
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水原 健太(みずはら けんた)
1979年生まれ 鹿児島県出身
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2009年07月08日
2009年7月14日、メジャーリーグの祭典・オールスターゲームが行われる。その試合でこの男が最も大きい声援を受けることになるだろう。現役最強打者のアルバート・プホルスだ。プホルスは今年のオールスターゲームが行われるセントルイスに本拠地を構えるカージナルス一筋9年目の一塁手。地元ファンの後押しもあり、両リーグ最多得票を獲得し、7年連続8回目の大舞台に立つ。
プホルスはデビュー以来パワフルかつ堅実な打撃で安定した成績を残しており、「三冠王に最も近い男」と言われている。2001年に21歳の若さでメジャーデビューを果たすと、打率.329、37本塁打、130打点をマークし、ナ・リーグ新人王に輝いた。この年のア・リーグ新人王はマリナーズのイチロー。もしこの2人が同じリーグでプレーしていれば、イチローの新人王はなかったのかもしれない。プホルスは2年目以降も安定した成績を残し、デビューから8年連続で3割30本100打点以上を続けている。しかし意外にもこれまでに打撃3部門でタイトルを獲得したのは2003年の首位打者だけ。本塁打と打点は常にもう一歩のところで後塵を拝している。
現在29歳のプホルスは今年も開幕から驚異的なペースで打ちまくり、手が付けられない状態だ。7月7日(現地日付)終了時点で、打率.336(ナ・リーグ3位)、31本塁打(同1位)、82打点(同1位)とナ・リーグ三冠王が狙える位置に付けている。もし三冠王に輝けば1967年のカール・ヤストレムスキー(レッドソックス)以来、ナ・リーグでは1937年のジョー・メドウィック(カージナルス)以来の快挙となるが、夏場以降もこのペースを維持できるのだろうか。デビューから昨年までの通算成績をオールスター前後で比較してみた(表1)。試合数の関係で本塁打と打点は数字を落としているように見えるが、ペースとしては前半と後半で大きな差はない。現在3位に付けている打率は通算では後半戦の方が高く、42年ぶりの三冠王誕生に期待が膨らむ。
今年に限らずだが、メジャー断トツの敬遠四球数(表2)から、相手チームがいかにプホルスを恐れているかが分かる。敬遠の多さも手伝って、今季ここまでの出塁率は自己ベストの.462。さらに相手チームのマークが厳しい中で、自己ベストの長打率.735をマークしていることは特筆すべきだろう。2006年の.671がこれまでの自己記録だが、この数字を上回るのは間違いない。
ルーキーイヤーから素晴らしい成績を残し、さらに進化し続けるプホルスだが、スター選手が集う真夏の祭典ではいまだに本塁打が出ていない(表3)。プホルスにとって最初で最後になるであろうセントルイスでのオールスターゲームで、地元ファンにその華麗なアーチを披露することができるのか。1週間後に迫ったその試合で、地元ファンのスタンディングオベーションに手を振って応えるプホルスの姿が想像できる。
執筆担当: 山添 智之
【略歴】
山添 智之(やまぞえ ともゆき)
1976年生まれ 和歌山県出身
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2009年06月15日
現在、サッカー界の中心の話題は間違いなくレアル・マドリーだろう。ACミランからカカーを獲得し、続いてマンチェスター・ユナイテッドからクリスチアーノ・ロナウドを史上最高額の移籍金(8000万ポンド:約129億円)で獲得した。その甘いマスクと華麗なテクニックで世界中のファンを魅了する両選手。カカーは2007年にバロンドール賞(欧州年間最優秀選手賞)を受賞したブラジルが生んだファンタジスタであり、クリスチアーノ・ロナウドも2008年のバロンドール賞を受賞した。
今回はジダンの後継者として期待が高いカカーを取り上げたい。
今年1月、マンチェスター・シティから届いた破格の移籍金(推定140億円)を拒否し、ACミラン残留を決断したカカー。チームへの忠誠心を誓い、チーム愛を貫いた英断であった。しかし今月、カカーの移籍が突然決まった。移籍先はレアル・マドリー。会長職にフロレンティーノ・ペレスが復帰し、かつての「銀河系集団」を形成した張本人が、第1弾の目玉選手としてとしてカカーを獲得したのだ。移籍金は6800万ユーロ(約92億円)。クリスチアーノ・ロナウド、ジダンに次ぎ、史上歴代3位となる高額移籍金となった。カカーの移籍には様々な憶測が飛び交っている。「カカー本人がレアル・マドリーへの移籍を希望した」、「ACミランの財務状態悪化のため、カカーは金の犠牲者となった」、「カカーはただ金に目が眩(くら)んだだけ」など様々な噂がある。移籍の真相は闇の中だが、果たしてカカーはレアル・マドリー再建の起爆剤となるのか、それともただの道化師となってしまうのか、データからカカーの来シーズンを占ってみたい。
08/09シーズンのカカーの成績は以下の通りである。
ゴール数はACミラン移籍後、最多となる16ゴールを挙げ、シュート数110本とともにチーム1位の成績だ。ファール数はチーム4位で、被ファール数はチーム1位である。チームの中心選手として相手の厳しいマークにあうことが予想されるカカーが被ファール数でチーム1位であるのは至極当然だが、チーム内ファール数4位というのは驚いた方が多いのではないだろうか。しかし、ファール数は多いがシーズンを通してイエローカードは4枚しか受けておらず(レッドカードは0枚)、加えて第13節以降はイエローカードを1枚も受けていない。シーズン終盤の優勝がかかった時期に累積警告などで出場停止になる選手が多い中、カカーはファールを犯すが、イエローカードを受けずに終盤の大事な時期を乗り切ったことが分かる。
今シーズンのレアル・マドリーはリーグ2位、チャンピオンズリーグ(CL)ではベスト16で敗退と『20世紀最高のクラブ』としては、不名誉な結果に終わった。バルセロナがスペイン勢初の3冠(リーグ優勝、国王杯優勝、CL優勝)を達成したことが、より一層レアル・マドリーの印象を悪くしている。バルセロナがかつてファン・ハール監督の元でオランダ化政策を進めたのと同様に、現在のレアル・マドリーにも6人のオランダ人が在籍している。ファン・ニステルローイ、フンテラール、ロッベン、スナイデル、ファン・デル・ファールト、ドレンテと正にオランダ代表軍団である。特に、2008年開幕前に、ドイツのハンブルガーSVから加入したファン・デル・ファールトはクラブの期待を一心に受けていた。攻撃スタイルはカカーと似ており、自ら得点することもでき、また味方を活(い)かすこともできる選手だ。ファン・デル・ファールトはなぜスペインで成功できなかったのか。それはリーグ間の違いが大きく影響しているからだろう。
下の表は、プレミア・リーガ・リーグアン・ブンデスリーガ(上位6クラブのみを対象)での1選手平均ボール保持時間である。
カカーが在籍していたセリエAのデータはないが、4大リーグの中でブンデスリーガが最もボール保有の時間が長い。ボールを長く保有し、ルックアップし、周りの状況を把握できるブンデスリーガと比べて、プレミアリーグとリーガは1.1秒とボールを持つ時間が短い。これは相手のプレッシャーが強く、ワンタッチもしくはツータッチ以内でボールを移動させないといけないことが分かる。ファン・デル・ファールトがリーガの早いリズムに慣れず、加えて自ら長くボールを持ってチームをコントロールするタイプの彼にとって、リーガの素早いテンポに慣れず、1シーズンを無駄に費やしてしまったのだ。
セリエAを戦場としてきたカカー。セリエAの1選手平均ボール保持時間のデータはないが、トップクラブになるとブンデスリーガよりは短いことが推測される。セリエAは結果至上主義であり、ガチガチの戦術論が展開される。その舞台からリーガへと活躍の場を移すカカー。
筆者としては『走れる』選手であり、ボールを長く持つタイプではないカカーは、若干の微調整は必要だろうが、問題なくリーガの素早い展開に慣れると考える。
下の表は、プレミア・リーガ・リーグアン・ブンデスリーガ上位6クラブのみを対象)での1試合当たりの1選手平均走行距離である。
上の表の通り、リーガが1試合平均走行距離(1選手)が少ないリーグである。球離れが良く、走れる選手であるカカーが加入することで、レアル・マドリーにとっては望んでいた「ビッグ・ワンピース」となる可能性が大きい。あと1~2人のメガクラッキを獲得すれば、カカーがリーガで成功する可能性は飛躍的に伸びるだろう。
クリスチアーノ・ロナウドはサイドで起用される可能性が高いが、果たしてカカーのポジションはどこになるのか。レアル・マドリーにおけるカカーの適正ポジションにも注目したい。
※2009年6月14日現在
執筆担当:水原 健太
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水原 健太(みずはら けんた)
1979年生まれ 鹿児島県出身
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