2008年07月16日

レフリー・その権限と信頼

サッカーシーズン幕開けのしょっぱな、ゼロックススーパーカップで不安定なレフリングで処分を下された家本主審がJ1のレフリーとして先ごろ復帰した。
あの試合、TV観戦をしていたが、そのレフリングはなんともひどかった。みていたほうが不可解なジャッジの連続でハラハラしたくらいだから、当該者たる選手、監督の戸惑いは想像に余りある。

「サッカー規則」はたったの17条しかないがそのうち1条から4条まではフィールド、使用するボール、競技者の数、競技者が使用する用具に関するもので、事実上のゲーム進行の規則・取り決めは13条と更に少ない。
そして第5条でレフリー(以下主審をレフリーと呼ぶ)に関するものが最初に規定されている。レフリーの役割がゲーム進行の重要な役割をまかされていることが規則の構成から読み取れる。
「サッカー規則」第5条の「主審の権限」には簡単にこう定めてある。
「それぞれの試合は主審によってコントロールされる。主審は任命された試合に関して、競技規則を施行する一切の権限を持つ」

「サッカー規則」の特徴的なことは条文の根底にある反スポーツ・反紳士的行為をかたく戒めていることだ。第12条「ファウルと不正行為」にそのことが凝縮されている。シュミレーション、遅延行為、執拗な抗議、暴言、一切の挑発的行為は何もサッカーにおいて特徴的な現象ではなく、社会一般で忌み嫌われる行為である。
つまりサッカーというゲームはそれにかかわるサポーターを含むすべての人の「コモンセンス」を拠り所としているといえよう。

レフリーはゲームにかかわるすべての人からその権限を付託させられている。全権を委任されているともいえる。広いピッチで副審と第四の審判のサポートを受けつつも、90分間、次々と起こる出来事にレフリーは瞬時の的確な判断が要求される。
ピッチ上の22人がどこで何をしているか、すべてを把握することは物理的に不可能である。当然人間である以上、見逃しや誤審は付きものである。選手にとってはレフリーの判定一つでサッカー人生を狂わされることもある。しかし基本的には選手も人間のやることにミスは付きものと「コモンセンス」で割り切っている箇所は多い。

「サッカー規則」は憲法のようなもので、法律や条令、施行規則のように詳細が明文化された規定がない。レフリーの解釈と判断にゆだねられる部分が多い。したがってレフリーに求められる役割は多岐にわたり、しかも重い。

レフリーに求められる資質は三つある。
一つは技術・体力に優れていること。
どの場面でどこにポジションを取るべきか、といった技術・経験の領域と90分走りきる肉体的領域の資質である。
二つ目はゲームを鳥の目のように俯瞰的に眺められる冷静さと客観性を備えていること。
レフリーは選手と同一平面上を走り回っているが、頭と心はゲームのテンポ、流れ、展開を高見の視点で眺められるかどうかが求められる重要な資質である。
三番目はレフリーには試合をコントロールする権限を与えられているが、同時に自分をコントロールできる資質が求められる。

「コモンセンス」を拠りどころとするサッカーが近年、重要視されてきたことはゲームの流れである。ゲームを淀みなく(遅延行為を重く見る)水の流れのようにとだえることなく、スピードとテンポを重視するのは、背景に現代社会のスピード化があるように思う。プロ野球界がゲーム時間の短縮に取り組んでいることにもそれは見て取れる。サッカーは90分の時間的制約があるものの、攻守ところを変えた、めまぐるしいスピードサッカーが求められるのも現代の「コモンセンス」であろうか。

家本レフリーに限らず、ゲームの流れを止めるようなジャッジにしばしばブーイングが集中するが、ゼロックススーパーカップはその見本のようなゲームだった。あのゲームに関する家本レフリーはレフリーが求められる資質の三番目、セルフコントロールを失ったように見受けられた。イエローカードの乱発は家本レフリーの明快さを欠いた判定基準に選手が抗議したことに動揺し、自分でも収拾がつかなくなったのだろう。

レフリーはゲームコントロールの権限を全面的に与えられているが、ゲームの主役であってはならない。委嘱された権限の中で、ゲームの黒子に徹し、試合を無難にさばいていくことが望ましい。選手がレフリーを信頼していれば、きっと相手の悪質なファールを見逃さないだろう、選手がそんな安心感と信頼感をレフリーに持つようになれば理想だ。選手はあやふやなレフリーの判定に煩わされず、プレーに没頭できる。あのレフリーの目はごまかせないと思えば、おのずとプレーはフェアになっていくだろう。
両チームが気持ちよい戦いが出来たと思わせることが最良のレフリングである。

posted by futbolwold |13:47 | Jリーグ | コメント(0) | トラックバック(0)
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