2009年01月12日

中田英寿の行動原理

2006年6月22日、中田英寿はドイツワールドカップ予選、最後のゲーム、ブラジル戦直後にピッチの上で長々と体を投げ出し、10分近くもさまざまの思いを反芻するように、一人感慨に浸っていた。

中田はこのときから遡ること6ヶ月前にすでに引退を決めていた。
TV画面を見ていた限り、中田の行為にはなんとなく不自然な「くささ」を感じ取ってしまった。中田らしくない行為だったからこそ、私は中田のあのときの行動になんの感動も感慨も共有することはできなかった。

それまでの中田なら、何事もなかったように一人でさっさと、ピッチを後にしただろう。
それだけに、中田の行為は私の目にはきわめて奇異に映ったし、中田らしくないと感じた。直感として次のステップに向けた布石を打っているようにすら感じた。

結果として布石はちゃんと活かされて、衝撃の引退と世界放浪の旅宣言へとつながっていった。
ワールドカップから2週間もたたない2006年7月3日には“人生とは旅であり、旅とは人生である”という中田にしてはあまりにも凡庸なタイトルをつけて、自分のオフィシャルページ「Hides Mail」に掲載している。

ピッチに倒れこむほどのショックを受けたように見えた割には、立ち直りと切り替えのスピードは超高速キラーパスのようにあまりにも速かった。

中田はカリスマのような存在として同年代から多くの支持を受けている。

中田にとってサッカーが自己表現のone of them程度くらい、サッカー以外の多くの才能に恵まれている。語学、金儲け、事業欲、そのいずれもが卓越している。かつて、同世代から好感を持たれていた、江川や桑田とは比較にならないほど、多面的な才能をもち、かつその才能のレベルは一流である。

自らが発案・企画したCharity Matchに63,143人もの人を横浜に集めたのはその才能の一端を現している。中田の企画力、行動力、実行力が遺憾なく発揮された成功例だろう。
しかも一サッカー選手が周りから担ぎ上げられたのではなく、自らがリスクを抱え込みながら、これだけ大きなイベントを行ったことに意義がある。

中田は一人のサッカーのスター選手である。

サッカーでどのくらいお金を儲けようと、そのお金を資金にして、さらに金儲けをしてもなんら問題はない。ファンはあくまで中田のアスリートとしての価値に関心を持ち、そのプレーに興味を持つだけで、彼の懐具合を詮索したいと思っているわけではない。

少なくとも私は中田には日本サッカーの牽引者的役割を期待していた。平たく言えば日本代表のリーダーとしての役割を担うよう願っていた。しかし、やはり中田はサッカーにおいては最後まで孤高の人であった。

「残念だったのは、自分たちの実力を100%出す術を知らなかったこと。それにどうにか気づいてもらおうと俺なりに4年間やってきた。時には励まし、時には怒鳴り、時には相手を怒らせてしまったこともあった。だが、メンバーには最後まで上手に伝えることは出来なかった」

これは「Hides Mail」の第1回の中田の言葉である。

そう、中田はサッカーにおいてはリーダー足り得なかったのだ。
あれだけの実績、あれだけのサッカーへの取り組み姿勢、そしてドイツWCは中田にとって3回目のWC出場という経験も周りの選手たちにうまく伝えることができなかったのである。

サッカーというゲームがチームとして有機的に機能しなければならないスポーツであるのに、中田は結果論だが孤高のプレーを自分のためにだけ、繰り返していたことになる。
垂範率先していれば、周りがいつか気づき、理解してくれるだろうという思は通じなかった。

中田がこの世に生まれたのが早すぎたのか、周りが中田の非凡さについていくことができなかったのか、いずれにしても双方不幸な結果を背負い込んでいたことになる。

中田は相当なブランド好きである。

有名人、著名人も中田にとっては服やサングラス同様、身に着けるブランドにすぎない。中田の有名人好きをあらわしているひとつのエピソードである。

これはかなり以前、TVでスマップの香取慎吾自身が証言していた話である。

香取が欧州で親しい友人数人と休暇を楽しんでいるとき、中田が偶然ホテルのロビーで、香取たち一行に出くわした。会ったその場で中田は香取を食事に誘った。そのとき香取はあいまいな返事をして場を繕ったが、中田はその日の夕方、ホテルの部屋にいた香取に電話をしてきて、再度夕食の誘いをしてきた。

その口調は以前から二人が親しかったような口調だったという。結局、香取は友人をほっておいて自分ひとりで出かけてしまうことを嫌い、電話口で丁重に断ったという。
香取と中田はそれまで一面識もない間柄だっただけに、香取が友人を気遣い、中田の誘いを断ったのはきわめて常識的な判断である。

中田の時流を読む力は目ざとい。

世界の中の貧困、地球環境問題、地域紛争などその時々の時事問題について、常に積極的に取り上げ、かかわろうとする自らの姿勢をアピールする。

「まあ、これがみんなが1番ビックリしているところかもね。何で急にそんなことを思ったか……と言うとそれは俺もよく分からない(笑)。気が付いたら、日本の農業が気になっていた(苦笑)」

中田の時流を読むパターンはついに、こともあろうか日本、それも日本の農業問題にまで、手を広げるにおよび、さすがに本人も気恥ずかしかったのだろう、(笑)と(苦笑)を繰り返していた。

大多数の日本人の情緒とはほとんど対極的な情緒の持ち主と思われる中田が、世界を旅して日本を考えなおすという動機は理解できるが、それが農業であるというのは、あまりに受け狙いのような気がする。いまや猫も杓子も農業を持ち出し、農業に結びつけようとしているが、世論そのものが表層的過ぎる。その軽薄な世論を持ち出す中田も随分・・・という感じだ。

中田が何を思い、どう行動するかがなんとなく見えてきたような気がする。

彼がサッカーを中心軸に据えて、同心円的に中田ブランドをビジネス展開するパターンが固まってきている。農業のように多分にピントをはずすようなエラーをしながらも、時流先取り発信ビジネスを今後とも展開していくのだろう。

しかし、いつまでこの手法が新鮮さを保つのか、鮮度勝負のビジネスはそのサイクルの早さと安定性において誰が手がけても難しい。
同心円を大きく広げすぎると、そのほころびを誘う面積も必然的に大きくなる。中田の感性に全面的に依存するビジネス体質は、その感性がずれたりすれば、たちまち色あせたものになる。

中田を支持する同年代・世代も、中田と同じように年を食っていく。
中田を支持する側の感性も微妙に変質していく。変質のスピードと方向性がともにシンクロしている間は問題はないが、果たしてそううまくいくかどうか。

中田の行動には常に目を離せない。

posted by futbolwold |10:15 | 日本代表 | コメント(14) | トラックバック(0)
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中田英寿の行動原理

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サッカー選手としての中田は…
ローマ時代までは、特別な何かを持った選手でした。
総合力がどうとか、誰と比較して、とかじゃなくて。

それでも人生はつづいていく、か。

posted by あ | 2009-01-21 17:39

中田英寿の行動原理

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へー、ホント、中田英のことを嫌いな人が多いんですね。
それでイチローのことを好きな人が多くて。

WBCでイチローが飲みに言ったのは、演技なのも知らない人が多いんですね。
イチローがインタビューで「あれは演技なんです。うまくみんなを騙せました」と皮肉っぽく笑っていたことも、知らないんですねぇ。

チームがリーグ最下位だろうが何だろうが、ひたすらシーズン200本安打にこだわり続け、1番以外の打順はヒットが少なくなるから徹底して拒否し、五輪参加は鼻にもかけないイチローの利己主義に比べたら、中田英なんて全然利己主義じゃないですよ。
マスコミに躍らされてるだけでしょう。

ちなみ、スポーツの世界において、利己主義は決してダメなことだとは思いません。
私は、イチローも中田英も大好きです。

posted by ジダ | 2009-01-14 01:04

中田英寿の行動原理

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minさんへ
収支報告の件確認しました。
御礼とともに、皆さんには未確認のまま文章を掲載したことをお詫びいたします。後日訂正の上、再アップします。

posted by 管理人 | 2009-01-12 21:31

中田英寿の行動原理

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nakata.netの右サイドにある「TAKE ACTION」をクリックすれば、収支報告書のPDFをダウンロードできますよ。
http://www.takeaction2008.com/index2.html
寄付金の総額は約4,200万円となっています。

「中田英寿 チャリティーマッチ 収支報告」でググッても出てきました。

管理人さんはチャリティーマッチが「TAKE ACTION」という名前だったことはご存知ではなかったのでしょうね。
説明が足りなくて申し訳ありませんでした。

posted by min | 2009-01-12 20:52

中田英寿の行動原理

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あれは、チャリティマッチじゃないんですよ。みんな誤解しているけど。
要するにただのイベントです。

>中田の有名人好きをあらわしているひとつのエピソード
ここの文章はあんまりじゃないですかね。書き方にちょっと悪意を感じるというか、見方が偏ってますよね。


ちなみに僕は中田を好意的に見ている人間です。
中田は日本人的ではないとかよく言われるけども、僕はそういう事ではないと思います。実際には日本にだって色々な人が居ますよね。皆さんも、日々利己的な日本人といくらでも出会っていると思います。でもそれは別に悪人とは限りませんよね。
「日本人的」というような恣意的な枠組みで物を見るのは、排他的な考え方をもたらすのみと思います。わかりやすい例えをすると、かつての「非国民」のような。

まあ何事にも支持する人と支持しない人といるのでこういう意見が出るのも普通というか、ある意味健全なのでしょうが、中田英寿も一人の個人であり、人間なので、犯罪をしているわけでもないのだしなるべく攻撃的な物言いは避けるべきじゃないかなと思います。

posted by ひら | 2009-01-12 19:53

Re:中田英寿の行動原理

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はじめまして。いつも読ませて頂いております。
件の試合ですが、試合自体はチャリティーではなく、チャリティーを考えるイベント内のまあ目玉的な意味合いの試合なので、収支報告は必要ないです。
中田英寿の評価自体は同感なので指摘だけさせていただきましたm(__)m

posted by imayome | 2009-01-12 19:47

中田英寿の行動原理

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minさんのコメントについて
寄付の明細は、下記のことでしょうか?
この金額を1口500円で換算すると、17859名となりますが、このことでしょうか?チャリティーマッチそのものの収支報告がなされてないようですが?

<また、当日行われた様々なアクションの中のひとつとして、チャリティー・ラッフルを開催。ミャンマー・サイクロンへの食糧支援と中国・西部大地震復興支援を目的に1口500円でラッフル券が発行され、抽選で選手の背番号の入ったサイン入りユニフォームがプレゼントされました。集まった892万9500円は、全額を寄付させていただきます。>

posted by 管理人 | 2009-01-12 18:54

中田英寿の行動原理

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中田さんの行動に常に目が離せないのなら、もう少し彼のHPをよくご覧になったほうがいいのでは?

この記事を読んで「収支報告をしないとは何事!」と思ってHPを見ましたけれど、ちゃんと報告書が掲載されていましたよ。
もちろん、寄付先も金額も。

ちなみに彼のHPは「Hides Mail」ではなく「nakata.net」ですけれど。

posted by min | 2009-01-12 18:08

中田英寿の行動原理

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中田は本当に共感されない人ですよね~
全てが性格悪く見えてしまう。
それほどまでに悪い人ではないんでしょう。
ただ、みんなに好かれる人間性という才能はもちえなかった、という気がします。

イチローは確かに人間力を高めようとしていますね。
今更ながら、人間力も極める大切さをプロフェッショナルとして感じているのだと思います。
中田だって多分代表でがんばったんですよ。ただ、致命的にそういうことが下手だった、ということではないでしょうか。

興味深く記事を読ませていただきました。
ありがとうございました。

posted by shakking | 2009-01-12 18:05

中田英寿の行動原理

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私は中田のこと特別気になるわけではありませんが、これだけ社会的な影響力をうまく行使してるなぁと思います。ビジネス臭がしてしまうところが詰めの甘さなのかもしれませんが。
サッカー選手の引退後も色々ですね。
もんじゃ焼き屋創めるのもいればイメージ生かしてロックスターのようにメディア駆け抜けるのもいて面白い。カズさんやゴン中山さんは引退後どうするのかなぁ

posted by @ | 2009-01-12 17:25

中田英寿の行動原理

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そもそもあの試合はチャリティーではなかったような・・・
ホワイトバンドの活動もそうですが、どうもその辺が曖昧ですよね。
中田というか、中田の所属事務所は。

とりあえず、世間に忘れ去られるのが怖くて仕方ないんだろうなとは思います。

posted by K | 2009-01-12 17:06

中田英寿の行動原理

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彼の行動原理は、
「自分のために」
です。現役時代ずっと言ってきたことです。
だから、自分のためになることならするが、自分のためにならないことならやらない。ただ、それだけ。
究極の利己主義者。
 チャリティー・マッチも人のためではなく、自分のため。つまり、イメージアップのため、そして、その延長線上にある金儲けのためでしょう。
 彼は、評判良くないですから。
 
 中田を過大評価しすぎでは。サッカー以外の才能なんてあるんでしょうか。具体的には何ですか。
 それに、サッカーも世界的に見れば、大した選手ではありません。

posted by ゴハン | 2009-01-12 16:22

中田英寿の行動原理

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中田はサッカーで築き上げた人気と人脈を利用してどこまでビジネスを広げられるかという可能性を示していると思います。

まあ単なるサッカーファンでしかない我々には興味湧きませんが(笑)

チャリティの収支報告をちゃんと公表しないのは困りものですね。

posted by 酒式 | 2009-01-12 14:02

中田英寿の行動原理

コメント投稿者ID :

確かにその通りだと感じます。

確かに中田の感覚は鋭いですよね。
ただ時代にとっては早すぎるかな?

今の彼はあくまでサッカーで成功した人であって
今のところそれ以上でも以下でもないのでは?

ビジネスマンとして才能があるかはまだまだ未知数だと思います。
イベントの成功は日本テレビが演出したものですから。

彼の行動、言動を見ていると平たく、浅く物事を見ている
感じがします。

もしかしたら自分自身のことも深く知りえないのかも…。
自分が何に幸せを感じ、心落ち着く場所があるのか?

今の時代、自分自身がわからない人が多いので、
さまよっている若者たちから彼はかっこよく見え、
支持されるのでは?

今はその事で彼は自分を維持している印象です。

中田の時代にとって「早すぎる感覚」は事業を進めるのに
必ずしも優位に立っているとは言えないのではないでしょうか?
何か進めるのには「旬」というものがあり、同じことでも
早すぎてうまくいかない例はこの世の中
いっぱいあるので…。

自分の感性ややりたいことをどう周りに伝えていくのか?
っていうのがこれからビジネスを成功させるキーポイントなんじゃないかな?
結局はサッカーをやっていた時の課題と同じ。

彼がよく比較される「イチローとの違い」。
そこに彼にとっての肝があるような…。

日本代表で中田は「職業人」として日本代表を強くしようとしていた。
だけど練習や本番のピッチの上だけでは本当に
強いチームは作れない。正しい事を伝えているはずなのに伝わらない…。

イチローは最近、自分の「人間力」を高めようとしている
ように感じます。
WBCではみんなと飲みに言ったと聞きますし。
TVでも無邪気で子供のような一面を見るようになりました。

普通の会社でも職場だけの付き合いで尊敬され、
信頼されるリーダーにはなれないじゃないですか?

そういう意味では今の俊介の方がうまくやっているように見えます。俊介も決してリーダー的なタイプではないのだけどがんばって模索しているように感じるのは僕だけでしょうか。残念ながら中田の時は感じなかった…。

「正しい事」を周りに理解してもらうには本当に苦労しますよ。
そこから逃げていてはビジネスマンとして前に進めないのでは??
伝える事が出来る信頼するパートナーを作るでもよし彼が自分で伝えるすべを覚えるのでもいいですが伝わらなかったらアウトです。

ただ、ビジネスマンじゃなくても彼は生きていけるし
彼の今まで成してきた結果や感性だけでも成り立つ職業はありますよ~。
事業をしなくても「表現者中田」として生きて行く道もある。

個人的には今、彼が興味がある農業は事業としてはやらなくても「農業は大切だしかっこいい職業だぜ!!」ってこれからもアピールして続けて欲しいです(笑)
日本がこれから生きて行くために必要なことだから
その流れができるのは良いことですよ。

僕はサッカーやっている時の中田は好きでしたが
今の中田さんには興味があまりないので番組とか全然見ていないです。
彼が結婚し、子供ができたらまた、ファンになるかもしれないな~。

posted by siki | 2009-01-12 12:20

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