2007年09月26日

賜杯の向こうへ その1.

■賜杯への思い

 私のサッカー初観戦は天皇杯である。忘れもしない71年の正月元旦。
今でこそ、国内にプロサッカーリーグが誕生し入場料さえ払えば毎週のように国内各地でサッカー観戦が楽しめるようになった。しかしサッカーを観戦すること自体が奇異の目で見られた往時のサッカー不遇の時代は随分と長く続いた。
 だが元旦に行われる賜杯を賭けた天皇杯決勝の日だけは違った。観戦に訪れた人々の晴れがましさ、賜杯を争う張り詰めた空気、元旦の凛とした雰囲気。
明治神宮への初詣を済ませた着物を着た女性観戦客の彩りがスタンドを華やかにし、澄んだ都心の冬空の下いつの時代も元旦だけはいつでも別の空間であるようであった。
神宮国立競技場で釜本や杉山のプレーに目を見張らせられ私のサッカー人生が始まった。

元旦の決勝で掲げる晴れやかな賜杯には、そこに至るまでに多くのサッカードラマや選手たちの織り成すサッカー人生がある。
1921年度(決勝は日比谷公園グラウンド)から始まったこの歴史ある大会も、都合9大会が戦争などの為に中止となったが今年で第87大会目を迎える。

 今年も既に2回戦が終了しているが、日本サッカー協会主催のこの大会のシーズンが始まる度に、往時の独特な小さな高揚感が胸をよぎる。



■札幌の奇跡

 第86回目となる昨年度(決勝は07年元旦)は浦和レッズが1-0でG大阪を退け、天皇杯連覇とJリーグ優勝とともに2冠となった。
指揮官ブッフバルトの最後のゲームは彼自身の勇退に花を沿え名実ともに浦和が王者の時代を迎えるに相応しいものとなった。

 しかし昨年度のこの大会の注目は何といってもJ2コンサドーレ札幌の快進撃にあろう。3回戦からの出場となった札幌は4回戦でナビスコ杯を連覇したジェフ千葉をPK戦の末に見事に退け、5回戦もアルビレックス新潟にPK戦の末に勝利し、準々決勝ではヴァンフォーレ甲府を2-0で完封。
準決勝でG大阪に敗れたものの、この大会での快進撃は翌年(07年)のチームの浮上を暗示させるものとなった。

柳下監督を迎え3年目、リーグ戦の順位は最下位(04年)、6位(05年)、6位(06年)と振るわなかったもののこの大会で柳下(ヤンツー)サッカーがようやく結実したものとなったように見えた。

 世界的にも有数の長丁場でもあるJ2リーグ戦、今季の札幌はここ数試合息切れが続いているがこれまでの選手たちの自信をもった戦いぶりとチームの好成績の裏づけは、ヤンツーサッカーの結実(三浦氏のリアリズムサッカーも勿論あるが・苦笑)と間違いなく天皇杯トーナメントの躍動にあったように思う。



■名指揮官への道

 05年度の第85大会は、浦和レッズが25年ぶりに優勝。
未曾有の天皇杯決勝でのチケット争奪戦となったが、クラブとして浦和はアジアチャンピオンズリーグへと駒を進め念願のアジア進出を果たした。

 しかしこの大会の注目点はなんといっても清水エスパルスの快進撃であろう。

4回戦からの出場となった清水は、徳島ヴォルデスを5-0と順当に退け、5回戦でサンフレッチェ広島を3-0と完封、準々決勝ではジュビロ磐田に1-0、準決勝では、宿敵ガンバを敗ったセレッソ大阪をこれまた完封し1-0。
長谷川エスパルスは決勝に進出するまでの4試合を見事に無失点で勝ち上がった。

地元出身の中心選手が地元Jリーグチームの指揮官になるというなんともJのあるべき姿を実現した期待のサッカー人。しかも彼はJリーグを選手として経験した監督である。
彼の、失点数の少ない堅い守備をベースにした鋭いパス回とスピードを生かしたチーム作りは、健太のサッカーが(他のどの日本人監督よりも!)十分に魅力的で優れたサッカーであることを証明している。

長谷川監督のリーグ戦の成績は初年度の05年が15位、06年が4位、今シーズンも26節時点で4位と若干ながら優勝の可能性も残している。
彼の頭上に賜杯が輝くときもそう遠くないように思える。


■草津の奮闘

 04年の第84大会は老舗東京ヴェルディがアルディレス監督の下で、決勝で山本昌邦率いるジュビロ磐田を下し優勝。
決勝は読売(東京V)とヤマハ(磐田)の名門対決となったが、この大会における衝撃はザスパ草津の快進撃であった。

 選手たちのほとんどが温泉街で働きながらJを目指したザスパ草津は、この年JFL2位でようやく翌年度(05年度)より念願のJ参入が認められたばかり。
老将植木繁晴の下、この大会、5回戦でJ1セレッソ大阪に2-1、準々決勝では横浜Fマリノスに2-1と延長戦を制し、あれよあれよの準決勝進出。
残念ながら準決勝(諫早)で東京ヴェルディに敗れたが、いわば3部ともいうべきJFLリーグのチームが往時であればヤンマー、日産などの名門クラブを退けた衝撃は大変に大きかった。

翌年からのJリーグに参入に当たって必要で最も重要な「地域の後押し」と「スポンサーの参加」。この大会での選手たちの奮闘ぶりはそれだけでなく、何より手弁当でチームを後押し続けた地元サポーターたちの奮い立つ魂を揺さぶる泉源ともなった。



さて、今年はどのような草津効果や札幌効果を生み出すのであろうか。

posted by 曹汰 |09:01 | 天皇杯 | コメント(0) | トラックバック(1)
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