2008年07月20日

ボランチ

ボランチとはポルトガル語で舵やハンドルを意味する言葉です。つまり中盤の底にポジションをとり、その位置で舵取りをし、または車のハンドルのようにゲーム全体の流れをコントロールすることを要求されます。ただ日本でボランチというと、ディフェンシブハーフといった意味合いが強いようです。前線から相手にプレッシャーをかけ中盤でボールを奪う際、ボランチがこれをコントロールし、インターセプトを狙います。また、ディフェンスラインに入っての守備。このようにディフェンシブなイメージが強いと言えるでしょう。これはボランチという言葉が日本で流行り始めた時、94年アメリカW杯からだと思うけど、ブラジル代表のキャプテン・ドゥンガがボランチをやって活躍し、守備的な中盤として逞しくチームを牽引していた印象が強かったからではないでしょうか。
 じゃあ、どっちが正しいの、ということになれば、僕は両方正解だと思います。中盤の底でプレイする選手を舵取りタイプ、守備的タイプにとらわれずボランチと言っていいと思います。だから、ボランチという言葉の出発は舵取りという意味だったけど、今では中盤の底を基本位置とするポジションの呼び方になっていると言えます。
 ACミランで言うと、ピルロが舵取り、ガットゥーゾが守備的。ユーベだとエメルソンとビエラの二人とも守備的ではないでしょうか。カペッロ監督らしいですね。正直、僕はあまり好きではないけど。だって、ほとんど中盤でのつなぎが観られないですもんね。それから、バルサで言うと、フォーメーションが4-3-3で中盤の3人は逆三角形でエジミウソンを底に置いて、その前の左右にデコとシャビ(負傷中)がいます。だからエジミウソンがボランチということになるんだけど、彼は守備的。で、ここでエジミウソンを特筆したのには理由があります。スペインではボランチのポジションの選手をピボーテと言うんだけど、ピボーテはこれまで元バルサのグラウディオラに代表されるような舵取りの意味合いが圧倒的に強かったんです。それがバレンシアのドブレ・ピボーテ(ダブル・ピボット)のアルベルダやバラハが活躍するようになって、ピボーテに少しずつ守備的な逞しい要素が備わってきました。そんな流れも関係しているのか、バルサも時代の変化とともに中盤の底を舵取りから守備的に変えて成功したというわけです。ロナウジーニョやデコ、メッシ、エトーの攻撃がきらめくのは、バルサのボランチの守備力の進歩があるからということを忘れてはいけません。

前出のグラウディオラ。本当は名ピボーテの呼び名のほうがピッタリはまるんだけど、中盤の底のポジションということなので良しとしましょう。もう全盛期は終わっちゃったけどグラウディオラの才能は、まずサイドキック。地を這うグランダーのサイドキックのパスはまさに芸術です。スッと背筋が伸びヘッドアップした姿勢は周りの状況を把握でき、その足元から正確無比な強いパスが繰り出されます。舵取りには、このサイドキックが不可欠なのです。パス能力を使って右へ左へ常にボールを動かせば、相手は当然、揺さぶられるわけで、これで縦パスのコースを創っていたということです。更にディフェンスラインの裏を狙った浮き球。FWの走り込むタイミングを観て、DFとGKの間に見事にコントロールされたボールが落ちる。絶妙でした。それから、もう一つ、グラウディオラの能力で挙げておきたいのは、リズムを変えられることです。一定の速いリズムで攻撃を仕掛けると相手も慣れてきて守備しやすくなる。そんな時、パススピードを落としたり、短いパスを多く入れて攻撃のリズムを変えます。舵取りタイプのボランチに必要なのは、正にこの能力だと僕は思っています。
 次はイングランド代表のランパード。彼は舵取りというよりも、ゴールハンター的ボランチです。グラウディオラは決してFWより前でプレーすることはありませんでした。常に一つ引いたところで前の状況を観てパスを出すことに専念していました。ランパードはFWとの縦の関係を利用して、前線のスペースへボランチの位置から飛び出してシュートを打ちます。それからドリブル。前にスペースがあればスピードに乗ってどんどんドリブルで仕掛けて突破を図りシュートを打つ。FWを使ってワンツーで入り込むという狙いもあるでしょう。もっと言えばクロスに対してもゴール前に飛び込んでいきます。守備の局面でもよく仕事をするので相当にタフな選手であるとも言えます。
 もう一人、守備的なボランチとしてフランス代表のマケレレを挙げたいと思います。特筆したいのはリスクマネージメント能力の高さ。前線の選手がボールを奪われてもマケレレがいれば安心。彼は常に味方がボールを奪われる状況を予測して、準備をしています。正確なポジショニングによって直ぐにボールを奪い返す、あるいは相手の攻撃を遅らせてカウンターを食らわないようにしてくれるのです。前の選手は安心して攻撃できますよね。よく「攻守の切り替えを速くしろ」と言いますが、マケレレの場合は切り替えが速いどころか、攻撃の最中も守備の準備をしています。彼からすると、切り替えをしていたら、もう遅いのでしょう。攻撃の中に守備があり、守備の中に攻撃がある。もはや「切り替え」という言葉は古いのかもしれません。僕は守備的なボランチは、エメルソンもビエラもいいけど、やっぱりマケレレが一押しだと思います。 

まとめると、その試合の良し悪しはボランチにあると言っても過言じゃないのです!!結果を予測するにはボランチに注目するといいかもしれません。 

posted by footballassociation |22:14 | フットボール一般 | コメント(5) | トラックバック(0)
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