2008年07月03日

【EURO2008】至福な微笑

欧州の最強国を決めるユーロ(欧州選手権)2008は6月29日、オーストリア・ウィーンで決勝戦が行われ、スペインが1-0でドイツを破り、1964年以来44年ぶり2度目の優勝を果たした。近年のW杯やユーロといった大きな国際大会で、毎回優勝候補に推されながら、あと一歩のところで敗北し続けていたスペイン。今大会はそのトラウマを克服して、実に44年ぶりの欧州王者に輝いた。言うまでも無いが、「無敵艦隊」躍進の原動力は才能ある若きタレント達である。ユーロ2008は、各チームの世代交代が順調か否かを光と影で写し出し、また大陸間のレベル差は有るにしても、アジアと同様、欧州でも全体的に各国との実力差が縮まっている印象を受けた。

私の職場も欧州サッカーファンは多く、連日ユーロの話題で盛り上がっていた。それぞれの思いを巡らせて各国の戦評を熱く語っていたが、個人的にはユーロと同様、否、それ以上にJリーグも盛り上がってくれればなあという思いだった。とはいえ、欧州サッカーファンもJリーグファンも愛するものは皆一緒。サッカー談議に花を咲かせて楽しい時間を過ごす事ができた。そして、気になっているのはユーロを観戦する為に母国へ里帰りしているイビチャ・オシムである。JFAアドバイザーに就任したオシムが現地観戦してどう感じ、また日本サッカーへどう提言してくれるのか。実はスペインが44年ぶりに優勝した事よりも、オシムが肌で感じたユーロを日本人の私達にどう語ってくれるのか。「欧州の現状と日本の今後」。簡単に題せばこんな感じだが、こちらの方が関心がある。来日した際は、日本サッカー発展の為に良きアドバイスを期待している。

そういえば、ユーロ開幕戦のスイスvsチェコ戦で興味深いシーンがあった。テレビ観戦なので僅かな時間だが、それは選手でも監督でも無く、美しい女性でも無い。表情のそれは、スイス側のスタンドで見守っていた老夫婦と思われるお爺さんの表情である。この試合は0-1でチェコに敗北。残念ながら、自国開催の初戦を勝利で飾れなかったスイス。敗れはしたが、拮抗したゲーム内容で、どちらが勝ってもおかしく無かった。試合は後半チェコが先制し、そのままロスタイムへ。スイスが最後の猛攻を仕掛けるが、あと一歩のところで阻まれてしまう。テレビには、スイス・サポーターの姿が映し出される。「大舞台・開幕戦・ホーム・後半ロスタイム・負けている」。これだけのキーワードが揃ったら、日本であれば、こんな時こそ、最後の最後まで声援を送り続けるだろう。しかし、その時映し出された僅か数秒の画は、スイス・サポーターの静観と微笑だった。

数秒の出来事で偶然なのかもしれない。とはいえ、現地で撮影しているカメラマンにはカメラマンの意図がある。いずれにしても、偶然か必然かの問題では無く、私にとって興味深いシーンに変わりはなかった。そのシーンとは微笑を浮かべるお爺さんだった。椅子から体を乗り出し、両手を軽く合わせて指先を下唇に付け、スイスの最後の猛攻をしっかりと見つめている。静観する優しい微笑は、母国の選手が勇気を持って戦っている姿に満足しているかの表情。ユーロというビッグ・トーナメントを母国で開催でき、さらに開幕戦でその勇姿を真直に観戦できる至福。それは勝ち負けに関係無い、幸せな時間と充実感に包まれているような光景だった。心の年輪を刻む人生ように、サッカーに関しても、愛情を刻みながら生まれる新しい価値観。勝ち負け以上の何かを見つけた時に、この上ない至福に包まれるのだろう。私は、この上ない至福の深遠はまだ分からない。しかし、日本代表で、Jリーグの某クラブで是非、それに出逢いたいと思う。一瞬の出来事だったが、スイスのお爺さんは心に残る1カットだった。

posted by 鹿太郎 |00:00 | UEFA CONMEBOL FOOTBALL | コメント(2) | トラックバック(1)
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