2008年06月06日

イビチャ・オシムがJFAアドバイザーに

2007年11月に急性脳梗塞で倒れた前日本代表監督のイビチャ・オシム氏が6月4日、JFAハウスで日本サッカー協会のアドバイザー就任会見を行った。内容は協会のアドバイザーとして日本サッカーの将来を創造し、提言していくというものだ。これからは未来を背負う子供達にもサッカーを通した“愛”を差し伸べてくれるに違いない。そんな事を期待しながらも、今後は表舞台というよりも裏方に徹するであろうイビチャ・オシムが、マスコミが定例会見でも要請すれば別だが、公の場で語る事は今後、そう多くは無いだろう。あくまで私の予察だが、いずれにしても、サッカーに命を懸けるイビチャ・オシムが、ニッポンの為に再び尽力してくれるその証を、素晴らしいメッセージを、私のブログでも残しておこうと思う。会見の全容は以下、スポーツナビからの引用である。

【イビチャ・オシム挨拶】
何を言ったら良いのでしょうか。向こう側の世界まで行って戻ってきました。私の復帰に激励を寄せて頂いた皆さんに改めて感謝申し上げます。私も努力してこの場に戻ってきました。それはプロとしてやらなければならないと思う努力をしてきたからです。新聞記者の皆さんもプロとして努力して貰いたいと思います。こんなに沢山フラッシュをたかれると知っていれば、サングラスを持って来たのですが。こんなに多くの方が来るとは誰も言ってくれませんでした。もう少し顔の化粧でもしてくれば良かったですね。それはともかく、人間誰でも人生の中で一つ、或いはそれ以上何かこれだけはしたいという希望があるものです。それがあったからこそ私は向こう側から戻って来られました。私がやり始めた事を完成できなかった。その思いが私を復帰へと後押ししたという事です。私だけで無く、生きている人間であれば、何かやり遂げたいという希望や目標があって当然です。私が代表監督の要請を引き受けた時、日本をワールドカップに導く事が最低限の仕事であると思っていました。勿論、それだけでは十分ではありませんが。もっと大きな希望もありました。それについて、いつも夢を見ていました。しかし、その夢の中身は教えません。余りに沢山の夢を見過ぎましたので、この場で言うには時間が足りません。その内の1つは、日本のサッカーは、自分たち自身の力でもっと良くなる事ができるという事です。それを上手く生かす事ができれば、世界チャンピオンになる事も夢ではありません。それは大き過ぎる夢かもしれませんが、夢を見るのは良い事です。少々時間が掛かるかもしれませんが、その夢が本当のものになれば良いと思っています。

先に言わなければならない事を忘れていました。田嶋さんに対しても、日本サッカー協会の皆さんに対しても、私をアドバイザーとして要請して下さった事にまず感謝を申し上げます。日本語は余りできないですが、覚えた日本語の1つに「頑張れ」という言葉があります。「戦え」という意味ですね。今度は、私が皆さんに」頑張れ」と申し上げる番です。頑張らなければ前進はしません。その際に忘れてならないのは、サッカーはただ戦えば良いというものではありません。ある種の技術、知識を身に付けなければなりません。美しいサッカーをしたければ特にそうです。世界中に沢山の紛争や戦争があります。だから、サッカーだけは戦えば済むというものにしたくないのです。但し、アドバイザーを引き受けましたけど、ここにこんなに新聞記者やカメラマンの方が沢山来ているのを見ると、私には少し荷が重いかなという気持ちもしてきました。というのは、皆さん全員にアドバイスを送るには、私一人では足りないと思うからです。ジャーナリストの皆さん一人ひとりが日本サッカー界にとってのアドバイザーです。でも、その数が少し多過ぎるかもしれませんが・・・。いずれにしろ、私は自分ができる限りの事をしたいと思っています。約束できるのは、私ができる範囲でという事です。もうすぐ欧州選手権がある為(自宅があるオーストリアに)帰りますけど、できるだけ多くの試合を観て、そこで起こっているサッカーの新しい発見を見逃さないようにしたいと思います。ジャーナリストの皆さんの中からも、私が闘病中に激励を頂きました。改めて御礼申し上げます。私は日本サッカーの日本化を掲げて仕事を始めた訳ですが、今その望みは後任の方に引き継いで貰う事になりました。これからは日本のチョコレートの日本化にでも取り組もうかと思っています(笑)。と言うのは、欧州選手権の開催国の1つがチョコレートで有名なスイスだからです。だから、お土産はチョコレートにしようかと思います。ちょっと喋り過ぎましたね。皆さん有難うございました。

Q:途中で後任監督が決まってしまった時の気持ち、(要請が有る無しに拘わらず)再び監督をやってみたいという気持ちはあるか。

私が生き残るという保障が無かったので後任監督を決めた訳では無いでしょう。私はどんな場所にいてもサッカーの話をする事が大好きです。どんな仕事をするにしろ、私は日本に来て日本のサッカー界に何かしたという痕跡を残したいと思っています。それは私に限らず、どんな分野の人でも同じ事だと思います。ひょっとしたらとんでもない、酷い痕跡を残すかもしれないと心配していますが。私がそもそも仕事を引き受けたのは、日本のサッカーに何か良い方向での変化を与えようとしたからです。その時、予め天国の誰かに相談しながら、これをやっても良いかと考えていた訳ではありません。自分の考えで変化を与えようと思っていました。しかし、私自身(病気に関しては)全く予想していませんでした。残念な事に病気になってしまい、仕事を続ける事はできませんでした。ですから、その分、私は別の形で貢献したいと思っています。以前程では無いかもしれませんが、皆さんの前で冗談を喋る事もできるようになりましたし、サッカーに関する知識や考えも失われていないと思います。その範囲で貢献したいと思います。ですから、私が今ここまで申し上げた一つひとつの単語を全部シリアスに受け取らないで下さい。夢についてですが、夢を見る事は禁じられていません。夢を見たって良いじゃないですか。皆さんも夢を見るでしょう。その夢の方向が少しでも揃っていけば、日本のサッカー界は前進するのではないのでしょうか。そこから変化が始まります。そろそろ、カメラのフラッシュをたくのは控えて頂けませんか。眩しくなってきました。アドバイザーのオファーに関しては感謝していますし、信頼して貰い嬉しく思います。信頼関係があり、やり掛けた仕事の一部を続けさせて貰うという事です。これまで私がやってきた痕跡がこれだと示す時間は、余りありませんでした。しかし今後は、別の方向でポジティブな変化を与えたいと思っています。そこで良くやったと言って貰えるなら、それほど嬉しい事はありません。新しい仕事は新しい責任です。それは、私が引き続き健康である事です。命を永らえるという事では無く、私が体を良くする事もそうです。私の人生は戦いの連続でした。選手時代は相手選手と、監督時代は自分のクラブの選手と、そして代表監督になってからは記者の人達とです。でも、負けたとは思っていません。まだまだ心臓が動く限り、私は働き、戦い続けます。

Q:日本代表監督として復帰したいという気持ちは。

ベンチに座りたいという気持ちはあるが、ベンチで死にたくないという気持ちもある。それはあまりスペクタクルでは無いでしょう。

Q:日本選手が学ばなければいけない事は。

言いたい事は沢山ありますし、そんな単純なものではありません。一般論ですが、日本選手はもっと走らなければいけません。良いサッカーをする為には、もっと走る量を増やさなければいけない。一見、日本の選手は技術があるように見えますけど、それには「?(クエスチョンマーク)」が付きます。つまり、技術レベルをもっと上げなければいけません。その為には、小さい時期から動きながらのプレーをもっと身に付ける必要があります。現代のモダンサッカーはスピードアップしています。それに伴い、考えるスピードを速める事、そして走るスピードも身に付ける事が必要です。速いプレーをする為には、もっと高い技術を身に付けなければいけません。これは一般論ですが。皆さん難しく考え過ぎてはいませんか?。シンプルですけど、そこから始めれば良いのです。サッカー強国が何故強いかを分析をし過ぎていませんか?。(サッカー強国の)真似をしても彼等を超える事はできません。真似は良い事ではありません。ですから、日本はコンプレックスから開放されて、自分達のストロングポイントを自覚する事が必要だと思います。トゥーロン国際大会で、U-23日本代表はフランスやオランダに勝ったでしょう。あれは良いサインです。あれを見習うべきだと思います。強いチームに対して良い戦いができるんだという自信を身に付ける事です。勿論、相手をリスペクトする必要はあります。しかし、サッカーは演劇と違い、予め勝者が決まっている訳ではありません。また、話し過ぎてしまいました・・・。

Q:現在、岡田監督のサッカーの印象は。

私は自分の後任監督について印象を述べるつもりはありません。というのは、私はあなた(質問した記者)の事を深く知らないからです。

Q:以前の(病気に掛かる前の)生活と比べて変わったところは。お酒を飲まなくなったとか。

代わりに、水を飲んでいます。

Q:アドバイザーとして、具体的に何をしたいか。

皆さんからのデリケートな質問に答える事です。失言したらこれから10日間、新聞を賑すかもしれませんし。まあ、後任者を困らす事は起こらないようにしなければいけませんね。

Q:アドバイザー契約は今年12月迄だが、その先はどうなるか。

まず、ドクターの許可を取らなければ何もできません。何か必要な手順を飛ばす事はできませんから。「ウサギを捕まえる前にあれこれ心配するな」ということわざのように、まず日本代表がW杯・南アフリカ大会に行けると確定してから考えます。日本代表が予選を突破すれば、もうアドバイザーは必要なくなるかもしれない。アドバイスがなくても、立派な戦いができるようになるかもしれない。その時に、田嶋さんが新しいポストを用意してくれなら考えてみますが。私にしてみれば、W杯・南アフリカ大会で日本代表を観たいとは思っています。ただ、ドクターと妻の許可を得る必要がありますが。

Q:田嶋さんにお尋ねしますが、アドバイザーの具体的な内容は。あと、代表に帯同して活動する事はあるのか。

まず、代表チームに帯同する事に関しては、契約の内容に含まれていません。あと、我々は今日のオシムさんの話を聞いただけでも、素晴らしいアドバイスになっていると思います。今回、欧州選手権を観て頂いて、U-18やU-16などいろいろな世代の日本代表チームが欧州に行った時に会う機会があれば、コメントを頂きたいです。あとは、日本ではS級ライセンスを始め、さまざまな指導者養成を行っております。そういう中で、今のような話、オシムさんの経験を是非、話して頂ければと思っています。オシムさんの健康を第一に考えて、その中の範囲で我々はお願いしたいと思っています。

Q:オシムさんは欧州選手権を観戦する予定と聞いたが、注目している国や選手はあるか。

これまで優勝した事が無い新しいチームに優勝して貰いたいです。注目選手は、クリスティアーノ・ロナウド、と言って欲しいんですよね。そうはいきません。ロシアやルーマニアにはサプライズを起こして欲しいと思っています。私に関係しているから言う訳ではありませんが、クロアチアもサプライズを起こす可能性はあります。まあ、半分希望もありますが。どうせなら、貧しい国が金持ちの国を倒して欲しいです。金で選手が買える国や、勝って当然という国が勝ったらつまらないじゃないですか。また、フランスやイタリアが優勝するような事があれば、日本にとって良い事とは言えないと思います。いずれにしろ、高いレベルのサッカーが観られる事を希望します。つまり、日本がその高いレベルに追いつこうという目標を持つ事が大切です。

Q:最近のJリーグの印象は。

(Jリーグを)観てはいけませんか?。先程も言いましたように、病気から復活できたのはサッカーのお陰です。私が何者であるかという事を忘れない為に、試合を観に行きました。サッカーが原因で病院に行かなくてはいけなくなりましたが、そこから戻るのもサッカーの力でした。ですから、試合を見に行っても良いじゃないですか。サッカーを観る事が私生活の復帰の手始めです。印象については少し前に言いましたよね。私の話を聞いていましたか?。耳に入っていても頭で理解していなくては同じですよ。つまり、走りが足りない。走らなければ良いサッカーはできません。それに良い技術がなければ速いサッカーはできません。そこを改善する事が、進歩というより、日本サッカーが生き残る道でしょう。まず走る事です。そこで残念な事は、日本サッカーの中には、上手な選手は少ししか走らなくて良いと考える傾向があります。それを直さなければいけません。逆ですよ。テクニックのある選手が沢山走れば、もっと良いサッカーができる、そのように考えてはどうですか?。そこから直しましょう。だからといって、そういうサッカーを許している監督を批判していると書かないで下さいね。監督を批判しているのでは無く、走らない選手達を批判しているんです。生まれてこのかた、撮られた写真の枚数よりも、今日一日で撮られた枚数の方が多いと思います。こんなに沢山のカメラマンが来るのなら違うネクタイをしてくれば良かったです。イタリアの言葉で「マスコミの沈黙」といった表現があります。それには2つの意味があります。1つは、選手や関係者にマスコミには喋るなという緘口令を敷く事。2つ目は、誰にも文句を付けられないぐらい立派な内容と、良い結果を残して、マスコミからの批判を寄せ付けないという事。ですから、私がここで自由に喋った事は、日本サッカー協会にとって大きな賭けであった事でしょう。つまり、私は何を喋っても大丈夫だという事ですね。もし、次の記者会見が開かれればですが。もう帰って良いですか?。どうも皆さん(会見に)来て下さって有難うございます。こんなに沢山の方達が来てくれたという事は、リハビリをもっと頑張れという事だと勝手に解釈します。

以上が日本サッカー協会・アドバイザー就任会見の全容である。時期尚早なのかもしれないが、「日本サッカーの父」がデッドマール・クラマー氏ならイビチャ・オシム氏は「日本サッカーの何であろうか」。そんな事を考えながら、夢見ながら、会見の全容に目を通した。イビチャ・オシム。将来、私がオシムの年齢に達した時、孫が居るかもしれないその年齢の時に、ニッポンのサッカーは一体どうなっているのだろうか。今回、オシムが語った会見の中で、その導き方を少し教えてくれた。今後は、「オシムによる、日本人の為の、日本人のサッカー」を創造していく事になるが、それはナショナル・チームだけでなく、Jリーグにも是非、尽力して頂きたいと願う。

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2008年03月25日

イビチャ・オシムからのメッセージ

日本サッカー協会は3月25日、昨年11月に急性脳梗塞で倒れ、入院・リハビリを続けていたイビチャ・オシム前日本代表監督が、都内の病院を退院した事を発表した。以下、「退院にあたって」と題されたオシム前監督のメッセージ。

「この程、入院治療から“解放”されるにあたり、これまでご支援、激励を寄せて下さった日本全国および世界各地のサポーター、日本サッカー協会を始めとする全ての皆様に改めてお礼申し上げます。とりわけ私の生命を救って下さった順天堂浦安病院、帰宅できるまでに回復を助けて下さった初台リハビリテーション病院の医師・看護士・スタッフの方々には、私個人と家族一同より心から感謝致します。プロとして適切な処置・治療をして下さり、私のような重症の場合でも、助言に耳を傾け、規則正しく規律ある努力を続ければ社会復帰できるという事を身をもって証明しました(と言っても、集中治療やリハビリを受けるような病気になるようにお勧めする訳ではありません)。私個人はこれからもリハビリトレーニングを続けて参りますので、今後ともご支援をお願いします。W杯2010年大会の予選、北京五輪での健闘と幸運を祈ります。日本サッカーの進歩は常に私の関心事ですから。応援しています。また、皆様には次のようにお願いします。スタジアムに足を運び、選手達に大いにプレッシャーを掛けて下さい。もっと走れ、もっとプレースピードを速くしろと。そして選手達が良いプレーをした時には大きな拍手を与えて下さるように。」

入院治療からの解放、本当におめでとうございます。もうすぐ退院かなと思っていましたが、突然の知らせに驚きと嬉しさが交叉しています。これからも、全快するまでゆっくりとリハビリを続けて下さい。そして全快になった暁には、日本サッカー発展の為に是非、力を、そして愛を、侍ブルーに注いで欲しいと願っております。オシムのサッカーをまた魅せて下さい。楽しみにしています。重ねて、退院本当におめでとうございました。

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2008年01月31日

イビチャ・オシムの勇姿

日本代表のイビチャ・オシム前監督が30日、国立競技場で行われた、日本と自身の祖国ボスニア・ヘルツェゴビナとの国際親善試合を観戦。昨年11月に脳梗塞で倒れた後、初めて公の場に姿をみせました。そのオシム前監督が、ハーフタイムでコメントを発表しています。

ご来場の皆さんこんばんは。
そしてボスニア・ヘルツェゴビナ代表の諸君、日本へようこそ。
私は治療を続けておりますが、これまでご支援頂いた全ての皆さんに改めて感謝致します。
共に私と縁のある日本とボスニア・ヘルツェゴビナ両チームの、代表選手たちの素晴らしいプレーを期待しています。どんな結果であれ、良いサッカーが勝利者となりますように。
両国代表が、『南アフリカ』で再び対戦することを期待しています。
2008年1月30日 イビチャ・オシム

名将が完治に向け大きな一歩。私は仕事に追われ、この日のボスニア・ヘルツェゴビナ戦は、テレビ観戦もできませんでした。オシム前監督の雄姿を見たのは、深夜のニュース番組。画面に映るオシム前監督。杖を持ち、大きな体を支えて、ゆっくりと足取りを刻む名将の姿を無心で見入った。その姿は数秒で終わってしまったが、もっと見たい。元気な姿をもっと見たかった。今後もリハビリを継続し、少しずつ少しずつ元気になっていくと思います。オシム氏が全快になった際には、必ずや日本サッカーに『力』と『勇気』を与えてくれるでしょう。今度は、もっと元気な姿を見せて下さい。一日も早い全快を心から祈っております。

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