MLB 戦いの原理を求めて

カブス史上最悪のトレード セイバーメトリクスの限界とルー・ブロックに輝きをもたらしたもの 

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ルー・ブロックと言えば、打率300 3000本安打 1000盗塁にメジャー史上最も肉薄した選手としての印象が強い。リッキー・ヘンダーソン出現以前において、盗塁の象徴と言えばルー・ブロックであった。カブスの歴史においてルー・ブロックを1964年にフラッグディールで放出したトレードは、史上最悪のトレードとされており、ブロックは移籍先で一気に才能を爆発させることとなる。

カブス時代のブロックと言えば、外野守備ではボロボロと落球し、打率も260前後と平均的な打者であり、唯一の取柄は足の速さであったがチームの方針もあって盗塁はわずか20個前後にとどまっていた。当時低迷を続けていたカブスのオーナーであるリグリーはひとつの打開策として、監督グリムを含む8人のコーチが交代で指揮を執るという前代未聞の策をとったと言われている。

監督が代わるごとにチームの方針が数週間毎に変わったカブスに上昇する気配があるはずもなく、選手としてブロックは大変戸惑ったともいう。更にはクラブハウスでの新人への陰湿なイジメのようなものもあり、ブロックは精神的に極めて厳しい環境の中でカブス時代を過ごしたと自伝でも書いている。常に失敗を恐れながら、ブロックはプレーしていた。ところがそんなブロックの潜在能力に目をつけていた監督が、カブスではなく他のナショナルリーグのチームにいたのである。それがSTLの監督ジョニー・キーンであった。 21勝という最多勝も受賞したこともあるエースのアーニー・ブログリオを放出してまでも、STLはブロック獲得へ積極的に動いた。

当初カブスは使えないブロッグを餌に大魚のエース格を釣り上げることができたとして狂喜乱舞の騒ぎとなった。しかしカブスへ移籍したアーニー・ブログリオは1964年以降全く振るわず三流投手になったのに対して、「自然体で、好きなようにプレーしてくれ。走りたかったら、好きに走っていい。ウチの機動力野球のリーダーは君だ」とキーン監督はブロックにグリーンライトを与え全幅の信頼を示した結果、ブロックはこれまでの精神的な一切のくびきから解放され、見違えるような選手として生まれ変わることになる。

1964年カブスでは251だった打率も6月15日以降カージナルスでは348にまで跳ね上がり、移籍後だけで実に33個もの盗塁を決めることとなる。このブロックの大活躍もありセントルイスはペナントを逆転優勝し、最後はワールドシリーズでもヤンキースを破り、見事、世界一に輝くこととなった。

この1964年のワールドシリーズにまつわる物語は「さらば、ヤンキース」を紐解けば、克明に描かれている。時代に適応できず、アフリカ系の選手を拒否し、このワールドシリーズを境に没落してゆくヤンキース帝国の黄昏。対照的にルー・ブロックやボブ・ギブソン、カート・フラッドらのアフリカ系の選手が主力となってチームを牽引し1960年代に二度も世界一に輝いたカーディナルスの姿をハルバースタムは見事に描くことに成功している。

ブロックを選手として開花させた最大の要因は、間違いなくメンタルにあった。ブロックのメンタルをキーン監督がフォローしたからこその大ブレイクであったと言っても過言ではない。増井がコンバートされて以降、劇的な活躍ぶりを示している最大の要因も、技術の進化などではなくまさにメンタルであった。絶対に失点できない場面でのクローザーから、ある程度の失点は許容され、試合を作ることが仕事であるスターターになった時、パフォーマンスは劇的に改善された。

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「カブス史上最悪のトレード セイバーメトリクスの限界とルー・ブロックに輝きをもたらしたもの 」へのコメント

こんばんは。はじめまして。
毎回ブログを楽しみに読ませていただいています。

セイバーメトリクスでは確率論を超越した事柄を予測することは出来ないので限界がある。
スポーツには確率論を超越した「流れ」が主観を抜きにして存在し、メンタルやチームのケミストリーも重要視されるべきであるとの主張は理解しました。

数字という客観的な物差しを用いたセイバーメトリクスを用いて話を展開する場合、「確率的にものすごく起こる可能性が低い事柄」を「起こらない」と結論付ける事は一般的であるとおもいます。
逆にその「確率的に起こる可能性がものすごく低い事柄」が起こった「後」に結果論として「流れ」や「チームのケミストリー」を持ち出しても、ご自身が主張される「主観的ではない流れや勢い、チームのケミストリー」の存在証明には繋がらないと思います。

セイバーメトリクスでも「確率論を超越する結果」を小数点以下ながら「起こる」と予測しています。

「確率的に起こる可能性がものすごく低い事柄」が既に起こった後、それが起こった原因が「主観ではない流れやチームのケミストリーによるもの」だと主張なさるのであれば、結果論や主観ではない客観視可能で具体的な例を出さないと主観の域を出ないと思います。

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ブロガープロフィール

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大谷を口説くために日本ハムが用意した提案書に感銘して以来、日本ハムのファンとなる。二刀流については入団当初から 支持をする。

歴史や戦略 戦術をテーマにずっと研究してきました。

MLBで最も惹かれる人物は、リグリーフィールドの蔦を考案した人。7イニングストレッチで「Take Me Out to the Ball Game」を歌う文化を定着させた人物と言ってもいい。

2015年7月5日に自分がどうしても書きたかった記事をupする予定です。ビル・ベックを知らずしてMLBの歴史は語れない。


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