2009年02月24日

イギリス下部リーグのちょっと良い話(?)

 4ヶ月にわたるWest Hamのアウェー不敗記録が、Boltonごときに終わらされてしまった暗黒の週末、久々に本棚を整理していたところ、大昔買った「Football Fans Guide」というイギリスのプロ92チームのスタジアム周辺のパブ情報や、行き方などが網羅されたガイドブックが埃まみれになって出てきた。懐かしさに思わず読み入ってしまったのだが、そんな中、目についたこれまた懐かしい話。ここでご紹介を。

 ご存じない方がほとんどだと思うが、イギリスの北ヨークシャーにScarboroughという小さな海辺のリゾートタウンがある。僕も大昔の学生時代に、暇を持て余して何の期待も無しに一人で訪れたことがある。とてもコンパクトかつ綺麗な町で、今でもイギリスの中で、最も思い出に残っている場所のひとつだ。

 ここにScarborough FCというやはり小さなサッカーチームが存在している。いまや、破産してConference Northというとてつもなく下のリーグにいるこのチームも、当時はプロリーグに属していたのだ。そのガイドの中で触れられていたのは、このチームの変わったシーズンチケットホルダーの話。何が変わっているかと言うと、このシーズンチケットホルダー、なんとSandyという名の犬だったのである。飼い主が、Scarboroughではちょっとした有名人の、イラストレーターのScarboroughファンのおじいさんで、雨の日も風の日も、Sandyはこの飼い主とともに、毎試合チームのカラーの服を身にまとって、なんと自分専用の席にちょこんと座って90分間を過ごしていたとのこと。

 当然ファンたちの間でも、この犬は大人気者で、やがてチームの愛称自体が、Seadogとなるほど。ファンジン(各クラブのファンが自主的に作っている同人誌のようなもので、オフィシャルプログラムのように試合ごとに発行され、スタジアムの外で売られている)のタイトルも、’The Seadog bites back’というもので、必然とチームの実質上のマスコットとなった。

 95/96シーズン、Scarboroughは、4部リーグでビリから2番目という最悪な結果となる。しかしながら、そのシーズンでファンが最も悲しんだことは、実はチームの成績ではなかったという。Sandyの死であったのだ。

 反響のあまりの大きさに心を動かされた飼い主は、その後、保健所にいき、2代目のシーズンチケットドッグを発掘、その後も2代目Honeyは1代目のあとを次いで、飼い主とともにSandyの席に座ってチームの成り行きを見守っていたらしい(ちなみにインターネットで検索したところ、この飼い主のおじいさんは既に亡くなっていた。犬の行方もわからずじまいであった)。

 サッカーをあくまで「スポーツ」としてしか捉えない大多数の方々には、「だから何?」的な話だろうが、僕はこんなほのぼのさ、そして地域のコミュニティーの暖かさが感じられることが、イギリスのサッカーが好きになった理由のひとつだったりする。日本のサッカー場だったら、「保健所の許可が下りない」の一言で犬など入れてくれないだろうに、、。


 

posted by fareasthammer |22:39 | ファンカルチャー | コメント(3) | トラックバック(1)
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2009-02-26 03:03 | 続きを読む
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イギリス下部リーグのちょっと良い話(?)

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はじめまして。

私も、つい最近までイギリスに住んでいました。CLの決勝トーナメントでマスメディアが、そして、このスポナビブログも沸きたつ中(私自身が、そこに投稿している者でもありますが・笑)、このお話は、実に英国的で、フットボール・チームとそのファンの、英国の小さな街独特の「距離感」を感じさせてくれる、素敵なお話ですね。Sandy、Honeyの後、きっと、3代目が、そのうち、出てくるのではないでしょうか・笑。

私も氾濫した様々な情報、というよりは、ノイズの中でサッカーを見る事に最近慣れてしまったせいか、こういう、ファン(この記事では主人公はお犬様ですが)とチームが、体温を通わせる事が出来る、日常的な距離での結び付きの大切さを忘れてしまう時があります。

応援しているチームが有名なチームではなくても、自分が住んでいる家の後ろに、その街のチームがいつもプレーしているピッチがあれば、誰もが世界一幸せなサッカーファンになれる、と、昔、思っていた自分を、記事を拝見させて頂いている途中で思い出しました。

posted by sinfonia | 2009-02-25 00:40

イギリス下部リーグのちょっと良い話(?)

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はじめまして。非常に面白く読ませていただきました。

上のコメントにもあるように、地域の中の地域という小さな単位でサッカーが行われて語られることは、スポーツが文化として認められている証拠ですね。

大学で地域コミュニティの再生とかに関わることも専攻してるんですが、英国のサッカー文化に根ざした
人々の交流ってのは是非参考にしたいです。てかそれで卒論書きたいです。

posted by pakesis | 2009-02-25 10:16

イギリス下部リーグのちょっと良い話(?)

コメント投稿者ID :

sinfoniaさん

>私も氾濫した様々な情報、というよりは、ノイズの中でサ>ッカーを見る事に最近慣れてしまったせいか、こういう、
>ファン(この記事では主人公はお犬様ですが)とチーム
>が、体温を通わせる事が出来る、日常的な距離での結
>び付きの大切さを忘れてしまう時があります。

仰るとおりですね。完全にビッグビジネスになってしまったサッカーと、それに群がるお馬鹿さんメディアとPlasticなファンたち、、。
本当のイギリスのサッカーの姿は、下のリーグでないと体験することが難しくなってきていますね。

pakesisさん

郷土愛、それに触発され隣町を何故か敵視するメンタリティー、そして階級といった複雑な要素が絡み合うからこそ、ああいったユニークな文化が生まれたのでしょうね。卒論の題材には良いと思いますね。参考文献もたくさんあることでしょう。

posted by Far East Hammer | 2009-02-26 22:24

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