2010年12月17日
■ジャブラニを使いこなしたのはだれだ?
先週の投稿では、「中長距離砲に関するエトセトラ」と題して、ペナルティエリア(以下、PA)内外別のシュートや得点について「チーム」ごとに示しました。 そこで、今回は異なる切り口から同様のテーマについて紹介したいと思います。 ●セットプレーの魔術師09年と10年のJ1リーグにおけるすべてのシュートを、PAの内側か外側か、流れの中かセットプレーからなのか、得点したかどうか、で分類したものが図1です。昨季と比べてPA外からのシュートが増加したことは、前回に示しました。ここで注目すべきは、セットプレーによるゴールが約1.7倍の36点となったことでしょう。 今季に使用された公式球が「ジャブラニ」であることや、同様のボールで行われた南アフリカW杯では多くのワールドクラスの選手がそれをコントロールすることに悩まされ、セットプレーを直接ねじ込んだ得点が日本の2点を含めてわずかに5つであったことは知られています。W杯では64試合で5得点(12~13試合で1点)だったことを考えれば、J1が306試合で36得点(8~9試合で1点)を記録したのは特筆すべきでしょう。 では、一体だれがFKなどでゴールを決めていたのでしょうか。表1には、今季においてセットプレーを2回以上直接決めた選手を挙げました。
断トツだったのは、先日新潟から浦和への移籍が発表されたマルシオリシャルデスです。7月24日の仙台戦では1試合でFK、CK、PKを直接決めてハットトリックを完成させるなど、リーグで随一のプレースキッカーであることは有名で、年間で8ゴールという偉業を達成。続く仙台の梁勇基も正確なキックが持ち味の選手で、09年はディビジョンが違うとはいえ2年続けてセットプレーで多くの得点を奪いました。また、わずか6回のチャンスで二度結実させた玉田とブルザノビッチの決定力は見事です。 ●76人→97人へ 流れの中に限定したものが表2です。
09年と10年において、流れの中でPA外から3点以上奪った選手は6人ずつでした。今季のトップはルーカス。正確なシュートで遠くからゴールを射抜いていました。 次に図2をご覧ください。
図2では年度別の流れの中でのPA外シュートによる得点者数を載せました。昨季が76人だったのに対して、今季は97人もの選手が流れの中でPA外からゴールを挙げているのです。さらに、表中にはないですが、97人の選手の得点数の合計は昨季より21増えて、130でした。これらの背景には、ボールの違いだけでなく、おのおのの力量が上がった可能性があるのかもしれません。 今季は昨季よりも遠い位置からのシュートや得点が増えました。しかし、セットプレーではマルシオリシャルデスが、流れの中からはルーカスと外国籍の選手が多かったのは確かです。来季は「スピードセル」を日本人が一番使いこなしてほしいと期待しましょう。 <使用データ> 2009、2010年度J1リーグ
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執筆担当: 山中 健太
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posted by 山中 |16:59 |
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09年と10年のJ1リーグにおけるすべてのシュートを、PAの内側か外側か、流れの中かセットプレーからなのか、得点したかどうか、で分類したものが図1です。昨季と比べてPA外からのシュートが増加したことは、前回に示しました。ここで注目すべきは、セットプレーによるゴールが約1.7倍の36点となったことでしょう。
今季に使用された公式球が「ジャブラニ」であることや、同様のボールで行われた南アフリカW杯では多くのワールドクラスの選手がそれをコントロールすることに悩まされ、セットプレーを直接ねじ込んだ得点が日本の2点を含めてわずかに5つであったことは知られています。W杯では64試合で5得点(12~13試合で1点)だったことを考えれば、J1が306試合で36得点(8~9試合で1点)を記録したのは特筆すべきでしょう。
では、一体だれがFKなどでゴールを決めていたのでしょうか。表1には、今季においてセットプレーを2回以上直接決めた選手を挙げました。
断トツだったのは、先日新潟から浦和への移籍が発表されたマルシオリシャルデスです。7月24日の仙台戦では1試合でFK、CK、PKを直接決めてハットトリックを完成させるなど、リーグで随一のプレースキッカーであることは有名で、年間で8ゴールという偉業を達成。続く仙台の梁勇基も正確なキックが持ち味の選手で、09年はディビジョンが違うとはいえ2年続けてセットプレーで多くの得点を奪いました。また、わずか6回のチャンスで二度結実させた玉田とブルザノビッチの決定力は見事です。
●76人→97人へ
流れの中に限定したものが表2です。
09年と10年において、流れの中でPA外から3点以上奪った選手は6人ずつでした。今季のトップはルーカス。正確なシュートで遠くからゴールを射抜いていました。
次に図2をご覧ください。
図2では年度別の流れの中でのPA外シュートによる得点者数を載せました。昨季が76人だったのに対して、今季は97人もの選手が流れの中でPA外からゴールを挙げているのです。さらに、表中にはないですが、97人の選手の得点数の合計は昨季より21増えて、130でした。これらの背景には、ボールの違いだけでなく、おのおのの力量が上がった可能性があるのかもしれません。
今季は昨季よりも遠い位置からのシュートや得点が増えました。しかし、セットプレーではマルシオリシャルデスが、流れの中からはルーカスと外国籍の選手が多かったのは確かです。来季は「スピードセル」を日本人が一番使いこなしてほしいと期待しましょう。
<使用データ>
2009、2010年度J1リーグ

唐突ですが、上表は昨季と今季のJ1リーグ戦におけるペナルティエリア(以下、PA)内外別のシュート数とその割合を示しています。今季は昨季に比べ、PA内外の両方でシュート数が増加しました。また、昨季と異なり総数の半分以上のシュートがPAの外から放たれており、中長距離からより積極的にゴールをねらっていたことがうかがえます。
同じようにして得点数とその割合を見てみると、PA内で記録したゴールは14点減りましたが、PA外は09年の129点から10年は166点に増加。
この背景の1つには、今季に公式球として用いられたジャブラニの存在が挙げられるかと思います。空気抵抗が小さくなるなどボールの改良が進んだことにより、球足が速くなるとともに「ブレ球」などがけり易くなり、GKが中長距離からのシュートに対処しづらくなったといわれています。では、実際にセーブするのは難しかったのでしょうか。また、中長距離のシュートから各チームは軒並みゴールを奪えるようになったのでしょうか。
●枠内比率に変化はないが・・・
図3では、年度別にPA外シュートの内訳を載せました。PA外から放ったシュートがゴール枠内へ飛んだ割合は、09年が30.2%で10年が30.0%と、割合自体に変化はほとんど見られず、GKがセーブを行った回数はリーグ全体で見れば増加(09年:1055回、10年:1166回)しています。
また、昨季は5チーム(山形、新潟、柏、川崎F、G大阪)が90%以上のセーブ率を記録していましたが、今季でそれを達成したのは2チーム(鹿島、新潟)のみ。もちろん、シュートを打たれた際にDFがコースを限定できていたかなど、そのほかの要素もかかわってくるとはいえ、昨季に比べてPA外からゴールをねらわれた際の対応にGK陣が苦労していたと思われます。
●各チームに生じた開き
一方で、今季は昨季よりも中長距離からのゴール数にチーム間でばらつきが生じていました。
図4では、PA外から奪ったゴールを3点区切りにして、各チームがおおむねどの程度の得点を挙げていたかを見ました。昨季は半数のチームが6~8点の階層に入りましたが、今季は前年よりもチームによって違いが生じています。
さらに、縦軸にPA外シュートの枠内率を、横軸に同決定率をプロットした図5で昨季と今季を比べてみると、例えば枠内率が30%以上のチームとそうでないチームとの間では、今季の方が決定率に開きが生じていました。
最後に、図4と5で示したデータをチーム別にまとめました。
以上のように、リーグ全体としてPA外からの得点は増えたものの、すべてのチームが軒並み中長距離からゴールネットを揺らしていたわけではありませんでした。
来季のJリーグにおける公式球は、現在UAEで開催中のFIFAクラブW杯2010で使用されている「スピードセル」です。ジャブラニのテクノロジーを踏襲しつつ、さらに手が加えられたボールを用いて行われる来季のリーグ戦では、いかなる傾向が表れるのでしょうか。
<使用データ>
2009、2010年度J1リーグ

●草津は後半に強い?
表2は、37節終了時点における時間帯別の得点です。これを見て分かる通り、草津は後半に多くのゴールを挙げています。その傾向が最も良く表れたのが、白星を重ねている34節以降の試合(表1)。計9得点のうち前半が2得点、後半が7得点と、残りの45分で抜群の勝負強さを発揮しています。
図1のエリア別のシュート数を見ても、後半の方がゴールに近い位置でのシュートが多く、これが得点を奪えた要因の1つといえるでしょう。
●ここ4試合で3得点の高田
好調を維持する攻撃陣の象徴となっているのが、今季限りで契約満了となり、来季は更新しないことが発表された高田。2トップを組むアレックスとともに3ゴールをたたき出し、チームをけん引しています。その高田がここ4試合で放ったシュートの内訳を、表3に示しました。左右の足とヘディングの本数にばらつきがなく、ゴールのパターンにもそのまま反映されています。
また、前後半でのプレー振りを調べると、エリア別のシュート数では特筆するような差はないものの(図2)、相手のゴールに近い位置でボールを受けた回数は後半に増加しています(図3)。放った本数に変化がないにもかかわらず後半の得点数が上回っているのは、ゴール付近でボールを受ける回数の多さが、より良い位置でのシュートにつながっているからなのかもしれません。
●柏に付け入るすきはあるのか
最後に、対戦相手である柏の時間帯別の失点数を見てみましょう(表4)。合計の数値では、大きな違いはありません。しかし、時間帯別に区切ると、前後半ともに終了間際での失点が多いようです。さらに、直近の4試合で奪われたゴールは2つとも後半に喫しており、それが原因で勝利を逃しています。
このようなデータを踏まえれば、堅守を誇る柏が相手とはいえ、草津にも付け入るすきはあるといえるでしょう。
今季のリーグ戦でトップを走り続けた柏が貫ろくを示すのか。それとも、草津での最後のプレーとなる高田がせん別のゴールを決めてチームを勝利に導くのか。目が離せません。
<使用データ>
2010年度J2リーグ
ここではF東京にスポットを当てたいと思います。
●いかに2トップへパスを届けるか
F東京と降格圏内である16位の神戸との勝ち点差は1。引き分けではライバルの結果次第という状況であり、自力で残留を果たすには、勝利を収めることが求められます。そのために必要なことは、間違いなく「ゴール」です。表2では大熊監督が就任してからの戦績と得点者を載せました。
安定した結果を残しているとはいい難いですが、15節から24節まで勝ち星がなかったことを考えれば、一定の結果を残していることが分かります。
また、得点者に目を向けると、チームの総得点(14)のうち5点ずつを奪った大黒と平山は特筆すべきでしょう。つまり、彼らに良質のボールを送ることが、勝利を収める条件の1つといえそうです。
表3は2人の位置別のシュート数とゴール数を表しています。
大黒は37本のシュートの中で89.2%に当たる33本をペナルティエリアの中で打っていることや、互いに得点はペナルティエリア内から挙げたものが多いことが分かります。当然ではありますが、ペナルティエリア内でシュートを打てるように彼らにパスを出すことが重要です。
●チャンスを演出するリカルジーニョ
では、彼らにパスを出しているのはだれなのでしょうか。表4では2人がペナルティエリア内でシュートを打ったときに、パスの出し手となった選手と回数を示しました。
これより、両者ともトップの回数であったのは石川。積極的なドリブルと精度の高いキックを生かしてチャンスを演出していました。最終節においても背番号18に掛かる期待は大きかったのですが、負傷により欠場が濃厚となってしまったのです。
それを考えれば、スタメンでピッチに立つかは不透明とはいえ、次に多い回数を残したリカルジーニョの活躍こそが、2人のストライカーが得点を奪う上で、そして残留へのカギの1つとなるのかもしれません。
最終節の相手はすでに降格が決定した京都。F東京が京都にリーグ戦で最後に勝ったのは06年までさかのぼらなければならず、苦手としている相手です。果たして、残留を達成できるのでしょうか。
<使用データ>
2010年度J1リーグ

