2007年11月12日
【Jリーグ】我那覇のドーピング問題について
川崎Fの我那覇のドーピング問題でとうとうチームドクターが辞意を表明しました。当該行為が行われたのは今年の4月ですので今更ながらのエントリーになってしまいますが、私見を記してみようと思います。
■経緯 今年4月、風邪の症状を訴えた我那覇へチームドクターがビタミンB1入りの生理食塩水を点滴しました。翌5月、Jリーグ側はこれを「正当な医療行為」ではないとし、我那覇に公式戦6試合出場停止、川崎に制裁金1000万円の処分を科します。この決定に対し日本アンチ・ドーピング機構(JADA)は、今回のケースが世界アンチ・ドーピング機関(WADA)の規約違反にはならないとの判断を示しました。JリーグがクロといったものをJADAはシロと判断したのです。その後、Jリーグ31クラブのチームドクターがJリーグ理事会に対し処分撤回を求めましたが、Jリーグ側はこれに応じませんでした。現在、川崎Fのチームドクターはクラブから辞職し、日本スポーツ仲裁機構(JSAA)への仲裁申し立てを検討しています。上記のような一連の流れを見てみると、いくつかの問題点が浮き彫りになっていると思います。 ■ドーピングコントロール委員会とアンチドーピング特別委員会 まず組織構造の問題があると思います。ある行為が違反しているかどうかを判断、認定するドーピングコントロール委員会と、そこからの陽性認定を受け制裁を下すアンチ・ドーピング特別委員会がともにJリーグの内部組織であるということです。アンチ・ドーピング特別委員会では制裁対象へ弁明の余地を与えています(2007Jリーグドーピングコントロール要項第18条)が、この構造ではアンチ・ドーピング特別委員会において同じJリーグの組織からあがってきた陽性認定を否定することは出来ないと思います(=公平性の欠如)。 また、上記のようにアンチ・ドーピング特別委員会において弁明の余地はあるものの、ドーピングコントロール委員会の陽性判断に対しての異議申し立てはできない(2007Jリーグドーピングコントロール要項第18条)のも問題があると思います。一旦陽性認定が出てしまったらそれに対して異議を申し立てることはできないのです。 WADAの事務局長も今回の件に関して「わたしの経験からすれば、医学的な過程と法律的な過程は当然分けるべきだ」とコメントしています(@産経ニュース)。 ■JADAの見解とJリーグの見解 Jリーグのドーピング禁止規定第二条には「本規定においてドーピングとは、世界アンチ・ドーピング機構及び国際サッカー連盟に規定されている内容と同一の定義とする」とあります。世界アンチ・ドーピング機構(WADA)の理念を国内で確立するための組織である日本アンチ・ドーピング機構(JADA)ホームページに掲載されている2007年禁止リストを見てみると、「禁止方法 M2.化学的・物理的操作」という項目に「正当な医療行為を除き、静脈内注入は禁止される」とあります。ドクターの主張の通り、風邪の治療であれば「正当な医療行為」に当てはまるはずですし、JADAも8月に我那覇への行為に対し「Jリーグがこれを主な根拠にしたとすれば、違反とはみなされないとの見解」を示しました。 ちなみにJリーグ側は今季開幕前に「緊急の医療行為以外の点滴などの静脈注射は原則禁止する」という告知を各チームドクターに伝えています。06年の禁止リストでは確かに「正当な緊急の医療行為を除き、静脈内注入は禁止される」とありますが、先に述べたように07年からは「緊急の」という文言が削除されています。WADA/JADAの定義に準ずるとしておきながらそれとは異なる告知をしたことは、アンチドーピング違反に対しての二つの定義が存在することになるという問題を生じさせています。 ドーピングとは何かの定義をWADA/JADAの内容と同一と明記している以上、JADAの見解は重視されるべきものでしょうし、同じ定義を採用しているのに見解が異なるのでは、定義を規定している意味が失われてしまいます。このJADAの見解が発表されても、Jリーグ側は我那覇及び川崎Fへの制裁の取り消しは起こしていません。Jリーグ側は「正当な医療行為」ではないと判断しているからでしょう。素人の私が「正当な医療行為」か否かを判断することはできませんが、少なくとも同一定義を基にしながらもJリーグとJADAで見解が異なるのは大きな問題だと思います。 ■川崎Fの対応 当事者の一人である川崎Fは、クラブとして日本スポーツ仲裁機構(JSAA)に仲裁を申し立てない理由として「合理的な医療行為と認められなかった場合、国際サッカー連盟(FIFA)などから追加的な出場停止処分を科される可能性を否定できず、我那覇を守るために処分に従った」と発表しています(@時事ドットコム、川崎フロンターレ公式HP)。 「本当はドーピングじゃないけど、これ以上の追加処分が下ったら我那覇が更に出場できなくなるかも知れないから、該当行為をドーピングとするJリーグの決定に従います」ということでしょう。ドーピングへの無罪を勝ち取るよりも我那覇がプレーできる方を取ったということになります。クラブとしてJリーグに異議を申し立てない以上、ドクターがJSAAなりスポーツ仲裁裁判所(CAS)による解決を求めるなら、クラブは関係ないから辞めてからにしてくれ、ということでドクターも辞意を表明したのでしょう。 ただ、個人的には既にJリーグがドーピング「クロ」として処分を下している以上、例えJSAAがJリーグの決定を妥当だと判断しても、追加の処分が下るとは思えないのです。追加の処分が下りるとしたら、「Jリーグの処分は軽すぎる」とJSAAが判断した場合でしょうが、JSAAは「紛争の仲裁や調停による解決」を前提としていますので、Jリーグ側の判断と仲裁を依頼する側の言い分のどちらか、もしくはその間での決着させるのではないでしょうか。仲裁の立場のJSAAがわざわざ事を大きくするような「仲裁」の範囲を超えての判断を下すことはないと思います。 そう考えると、川崎Fの決定は、「リーグの親玉を敵に回すことはしません」という事なかれ主義に思えてきます。クラブ側は名目上我那覇がプレーできないことを回避するということにしていますが、実際のところはJリーグに目をつけられたくないと考えたのでは…と勘ぐってしまいます。 ドーピングではないのであればドクターとともに戦って欲しかったですし、ドーピングと認めるのであれば公式HPのような遠まわしな言い方はすべきではないと思います。 ■ドクターの仲裁申し立て ドクターの主張は、当該行為は「正当な医療行為」だからドーピングではないというものです。先にも述べましたが、素人の私はこれが正当か否かの判断は出来ませんが、ドーピングコントロール委員会へ異議を申し立てることが出来ない以上、JSAAもしくはCASへの仲裁を申し入れるしかないのが現状です。JSAAへの仲裁判断を仰ぐには、Jリーグの同意も必要との事です。Jリーグも、自らの決定に何ら落ち度がないと考えるなら、JSAAへの仲裁に同意すべきでしょう。本来ならばドーピングコントロール委員会とアンチドーピング特別委員会は第三者機関として存在すべきですが、現状そうではないのですから…。JSAAへの仲裁に同意しないのであれば、Jリーグの他者の判断を受け入れない傍若無人ぶりは非難されるべきではないでしょうか。 ■その他 FIFAからの要請にこたえる形でJFAも検査と違反認定を担当するドーピング・コントロール小委員会と、制裁の決定などを行うアンチ・ドーピング特別委員会を設置するとのことです(@サンスポ記事)。これに伴ってJリーグのドーピングコントロール委員会とアンチドーピング特別委員会は廃止されるそうです。ただこれもJFA内部組織として設立されるようで、公平性が保たれるかどうかについては疑問が残ります。
posted by dongking |16:02 |
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【サッカー】スポーツ仲裁裁判所、我那覇の訴えを認める 【酒のツマミはスポーツ観戦】
昨年4月に我那覇へチームドクターがビタミンB1入りの生理食塩水を点滴した行為に対して、翌5月Jリーグ側はこれを「正当な医療行為」ではないとし、我那覇に公式戦6試合出場停止と川崎Fに制裁金1000万円の処分を科しました。我那覇側はこれを不服としてスポーツ仲裁裁判所(CAS)へ提訴し、その裁定が下りました。 ■「我那覇はシロ」スポーツ仲裁裁判所が無罪判決@SANSPO.COM
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【Jリーグ】我那覇のドーピング問題について
参考記事
我那覇問題でJは仲裁申し立てに合意せず
http://www.nikkansports.com/soccer/f-sc-tp0-20071112-282314.html
あと、明確ではありませんが、私の記憶では、川崎Fはドクターの行為がJのドーピング規定に違反していたことを認めていたと思います。
posted by E&S | 2007-11-12 20:34
【Jリーグ】我那覇のドーピング問題について
>>E&Sさん、
最新情報ありがとうございます。
「最終的にJリーグの処分に従うという結論に達しました」という公式HPの表現からも、クラブ側が暗に認めていることがわかりますね。であれば、ドクターの行為はJリーグにおいてはドーピング行為とみなされることを明確に表現し、そのような行為をチームドクターが行ったことをクラブとしてファンにわびるべきじゃないかなあと思うんですよね。公式HPのような奥歯にものが詰まったような表現ではなくて…。
posted by dongking(管理人) | 2007-11-12 20:55



