2010年01月14日

【MLB】マーク・マグワイアのステロイド使用とMLBの功罪

1994年のストライキによって人気低迷に苦しんでいた1990年代中盤、本塁打を量産してMLB人気回復の一端を担ったマーク・マグワイアが現役時代にアナボリックステロイドを使用していたことを告白しました。マグワイアやサミー・ソーサ、バリー・ボンズの本塁打量産に湧いていた当時から、ファンの大半もその活躍の裏に薬物問題が潜んでいることには薄々気づいていましたし、カージナルスの打撃コーチ就任のための「踏み絵」という背景も見え隠れしてしまうため、今回の告白には「何を今更」感が漂っていますが、今回はこの問題について考えてみたいと思います。

  
筋肉増強剤として1955年に開発されたアナボリックステロイドは、1975年には国際オリンピック委員会(IOC)で使用禁止物質としてリストアップされ使用が禁止されていました。アナボリックステロイドを使用すると、アメコミの主人公のような筋骨隆々のボディを手に入れることができますが、その一方で多くの副作用(心臓・血液系の疾患の誘発や欝病的症状など)が報告されています。エディ・ゲレロの38歳という若すぎる死(動脈硬化性疾患)やWWEなどで活躍したクリス・ベノワの無理心中は、アナボリックステロイドの副作用が原因という説もありましたし、彼が尊敬してやまなかった往年の名レスラー、ダイナマイト・キッド(トム・ビリントン)はアナボリックステロイドを含む複数の薬物摂取で50歳そこそこながら車いすでの生活を余儀なくされています。

このように恐ろしい副作用を持つアナボリックステロイドの歴史は古く早い段階から規制されていましたが、MLBにおいて薬物使用に関する規定はそれから30年後の2005年まで導入されることはありませんでした。要するに2005年以前にMLBでプレーする上で、ステロイドをいかなる理由で使おうともルール上は何ら問題ない行為だったわけです。ですので私は当時の記録を参考記録とするとか、除外するといった対応は必要ないと考えています。現在の基準を用いて遡及的に物事を評価するのではなく、当時の状況を考慮して鑑みることが大切ではないでしょうか。

しかし他競技で規制されていた薬物がMLBでは問題なく使用されていたことから、「穢れた時代」が生まれてしまったのは事実です。そういった状況を生み出したMLBという組織が、なぜ効果と危険性が公になって久しいアナボリックステロイドを2005年まで使用禁止としなかったのか、その体質にこそ問題が潜んでいると考えています。アメリカではアナボリックステロイドは一般社会にまで蔓延しており2004年には110万人が使用経験があるという報告※1がされています。そういった社会的背景からアナボリックステロイドへの反発が少ないと踏んでいたのかもしれません。しかし筋力増強というメリットの一方で選手の健康を著しく損なう恐れのある薬物が存在する以上、選手の健康面や競争の公正という観点からアナボリックステロイドの禁止を早急に行うべきだったのではないでしょうか。現状は薬物規定があるMLBですが、世界アンチドーピング機構(WADA)はこれに対して「徐々に進歩してはいるが、世界標準にはまだ足りない※2と述べています。最大のリーグであるMLBが他スポーツの世界基準から遅れを取っているという事実は、今後の野球競技の普及と市場の拡大の足を引っ張ってしまう可能性は十分にあると思います。より厳格な規定と運用を定めてほしいものです。

※1 ■参考記事:A Guide for Understanding Steroids and Related Substances(英語)@米国麻薬取締局
※2 ■参考記事:ドーピング対策、まだ足りない 米大リーグデイリースポーツオンライン

先にアナボリックステロイドの使用は当時規則的に問題なかったと申しましたが、もちろん道義的・倫理的な問題は残ります。マグワイアがメジャーへコーチとして復帰するための踏み絵という要素が強かったものの、使用を認め謝罪したことは当時の事実を明らかにし自身の禊をするという意味で評価できると思います。感情論で現在の物差しを振りかざして必要以上にマグワイア個人やその成績をどうこうするのではなく、当時の状況を踏まえて冷静に考えることが私たちファンには必要でしょう。私たちは考えることのできる唯一の動物なのですから…。

NPBも対岸の火事だと他人事のように考えずに、これを教訓としてもらいたいものです。

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posted by dongking |17:28 | 野球 構造改革 | コメント(3) | トラックバック(1)
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2010-01-14 17:44 | 続きを読む
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【MLB】マーク・マグワイアのステロイド使用とMLBの功罪

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ルールで禁止されていない以上、結果がすべてのプロスポーツ選手が倫理的な自主規制や使用の先にあるリスクよりも目の前にぶら下がる即効性あるメリットに流れてしまうのは仕方がないですよ…。選手みんなが聖人君主ってわけじゃなく、普通の人間が大多数なんですから。個人の倫理観を今になって糾弾するのはオカド違いですよね。

posted by 湾岸一番☆ | 2010-01-14 20:46

【MLB】マーク・マグワイアのステロイド使用とMLBの功罪

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穿った見方をしてしまうと一縷の望みを抱いていたHOFの夢が20%そこらの得票率にて潰えてしまった後の次の(指導者としての自分の将来を見据えた)アクションとして折込済みだったような気がしてならないです。この結果を受けてのバリー・ボンズのNext Moveが気になります。

元球団オーナーが出自のバド・セリグにとってスポーツマンシップのベースボールよりも、興行のベースボール寄りの哲学が強すぎた事が2005年まで延ばしてしまった遠因であるかもしれません。それによりベースボールのレコードブックに奇妙な注釈がつく事になってしまうであろうし、それに対しての違和感が今後ずっと付きまとう事はファンの1人としては残念でなりません。

posted by ノーウェイ・ホーゼイ | 2010-01-14 21:24

【MLB】マーク・マグワイアのステロイド使用とMLBの功罪

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先陣の皆様のCMNTと同様に、マグワイア個人への攻撃より、MLBの体質、組織体の糾弾が第一義かと思います。ルール違反が無い限り、道義的、道徳的責任を問うても犯罪ではありませんので。

当時、ステロイドを使用されていたとされる選手は、大半は目が充血し、体付きもB・ボンズが象徴されるように全く別人になりましたよね。
平成の大横綱Cの富士も使用していたのでは、とかねがね思っています。

記録と栄光がリンクするだけに、ステロイドの使用者が発覚すると、その時代に夢中になっていた自分自身もが否定されるようで、MLBファンとすれば気が滅入る事だけは事実です。

マグワイアが、コーチとして名伯楽となり、忌まわしいステロイド時代が払拭されることを、切に望みます。

posted by Ball Park | 2010-01-15 13:49

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