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おかえりダン・ウェルドン、たとえ嘘の物語としても:2016インディカー・シリーズ第6戦 インディアナポリス500

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 レースの正式名称は「The 100th Indianapolis 500 presented by PennGrade Motor Oil」である。つまりインディアナポリス500は100回目にしてはじめてその名にスポンサーの名前を冠することになったわけだが、1月21日にインディアナポリス・モーター・スピードウェイがツイッターの公式アカウントでこの「重大な発表」を行った直後から、そのツイートにはいくつかの批判が寄せられている。「なぜ100回目の象徴的なレースを売るような真似をするのか」「せめて101回まで待てなかったのか」……はては「守銭奴め!」まで。こうして可視化される反応は全体のごくごく一部であって全体に敷衍できるものではないと留保はつくものの、批判的(に見える――ひとこと「Why?」と書かれているツイートが意図するところは修辞疑問だと思われるがどうだろうか)ツイートが10に対して賛意を示す(といっても積極的にではなくモータースポーツの置かれている経済的状況を踏まえれば理解はできるという趣旨であった)ツイートがひとつしかなかったことからは、米国の人々の意識が垣間見えるようではある。インディ500はもちろんIMSが主催するIMSのレースだが、しかし同時に100回にわたって発展させてきた「われわれ」のものでもあって、断じて「だれか」のものではない。その名を金に換えて特定のだれかに与えるのは許される行為ではないのだと、勝手に忖度するとたとえばそういうことだったりするのだろう。

 さてそうした「精神の切り売り」がありつつも、幸いに史上初めて満員札止めになるなど大盛況で100回目を迎えたインディ500だが、テレビ中継で村田晴郎も言っていたとおり「100年目」ではない。1年1回の開催にもかかわらず回数と年数が一致しないのはもちろん戦争での中断があったからで、第1回から数えて100年目に当たるのは2011年である。5年前のインディ500を、近年稀に見る波乱に満ちたレースとして記憶している人も多いのではないか。チーム・ペンスキーのウィル・パワーが4戦中2勝を含む3度の表彰台と圧倒していた(それは春の風物詩となりつつあった)シーズン序盤から一転、この年はじめてのオーバルコースでポール・ポジションについたのがフル参戦1年目のサム・シュミット・モータースポーツを駆る37歳のアレックス・タグリアーニだったことからしてどことなく不穏な雰囲気は漂っていたわけだったが、特に最後の40周はだれに勝つ可能性が残っているのか見当もつかないほど激しく順位が入れ替わった。当時わたし自身が綴っていたところによれば、こうである。

 力強かったロードコースとは打って変わってまるでいいところがなかったチーム・ペンスキーのライアン・ブリスコーと、予選の速さを決勝に持ち込めなかったサム・シュミット・モータースポーツのタウンゼント・ベルが交錯した結果のフルコース・コーションは、158周目というストラテジストに困難な決断を強いるタイミングで提示された。ダニカ・パトリックをはじめ数台がすぐさまピットへと入って燃料を満タンに積んだが、フューエルウィンドウ約35周のコースではよほどの幸運に恵まれないかぎり200周目まで走り切ることは困難に思えた。上位勢はステイアウトを選択し、チェッカーフラッグまでアンダーグリーンで戦われることを願った。そしてリーダーのダリオ・フランキッティとヒルデブランドは、少し我慢してコーションラップが終わる直前に給油を行って、トラックポジションを失う引き換えに最後まで走り切る権利を得た。  ステイアウト組が178周目前後で次々にピットインし、最後のインディ500と噂されるパトリックが一度はトップに立つものの、189周目のピットインで万策尽きてチャンスを逸する。オーバル慣れしていないベルトラン・バゲットはスピードに賭けたが、さすがに空の燃料タンクのまま走ることはできなかった。労せずしてリーダーの座へと舞い戻りあとは走りきるだけとなったフランキッティの戦略に隙はないように見えたが、給油が完全ではなかったか、タイヤを交換しなかったことが影響したか、あるいはその複合なのか、1周ごとに5mphもラップの悪化するペースダウンを喫して、198周目、ついにヒルデブランドがトップに立つ。

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インディカー
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アレクサンダー・ロッシ
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