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シモン・パジェノーはふたたび正しい資質を証明する:2016インディカー・シリーズ第3戦 ロングビーチGP

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 わたしの贔屓にするドライバーはジョセフ・ニューガーデンとシモン・パジェノーであるとさんざん書いてきている。かたや下位カテゴリーのインディ・ライツ王者を経て順調に米国でのレース人生を歩んでいるように見える20代前半のアメリカ人、かたや若手のころをチャンプカーとル・マンで過ごしてから本格的にインディカーへとやってきて、すでに中堅ないしベテランの域に達しつつある31歳のフランス人と、似たところを探す方が難しいくらいだが、唯一わたしにとって共通しているのは、どちらもあらゆる来歴を些事へと追いやるたった一度のコーナリングで心を奪っていったことだ。2015年ミッドオハイオの64周目、長い弧状の中速ターン12「カルーセル」でニューガーデンが曲線を微分するように駆け抜けていった姿や、2012年ボルティモア、多くのドライバーが高く築かれた仮設シケインをばたばたと乱暴に踏んでいるなか、パジェノーひとりだけが魔法でもかけたように姿勢を乱さず静謐に通過していったさまは、いまでもこのスポーツでもっとも美しい瞬間の映像として脳裡に再生される。当時のふたりはともに、高い評価は受けつつもまだ優勝経験のない多くのドライバーのひとりに過ぎなかったが、その須臾の間に消えていくコーナリングを目にした瞬間、遠からず勝利を挙げる日がやってくる、それどころかインディカーは自らの価値を示すために義務として彼らを勝たせなければならないとまで確信したものだ(少なくともニューガーデンに関しては、証拠として当時書いた文章を出すことができる)。けっして強豪チームに所属していたわけではなかったふたりはやがて本当に、それも複数の素晴らしい優勝を遂げた。パジェノーがセバスチャン・ブルデーを削らんばかりに自分のラインを主張して通算2勝目を引き寄せた2013年ボルティモア69周目のターン8、あるいはニューガーデンがペンスキーの2台を完璧に攻略した昨年アラバマのターン14は、彼らの忘れられない場面として追加された。わたしは自分の勝手な予感がこうもあっさりと的中した事実に信じられない心持ちとなり、半ば呆然とその表彰台を眺めていたのである。

 そういうひとりのファンにとって、だから2015年は歓喜と失望の入り交じる一年であった。ニューガーデンが良質なアラバマの初優勝に続いて幸運にも助けられたトロントで2勝目を挙げ、のみならずシーズンを通してだれよりも多い345周のラップリードを記録しその溢れ出る才能を満天下に示した一方で、実力を買われてチャンピオンさえ狙えるチーム・ペンスキーに移籍したパジェノーはただの1勝もすることができず、選手権11位に沈んだのである。インディアナポリス500マイルを見に行った折、ドライバーズパレードでだれもフランス人の彼に声援を送らないなか、一人「サイモン、サイモン」と声を出す東洋人に向かってたしかに Thank you. と応えてくれたおかげで贔屓をますます強くしていた(なんとも幸運なことに、ニューガーデンでも同じようなことが起きた)わたしは、前年までの燃えるような情熱を失ったとしか思えない失速に歯噛みするほかなかった。単純にペンスキーを運転する重圧に耐え切れなかったのか、それとも、遅い車でときどき好走したから目立っていただけで真の能力はさほどでもなく、トップチームで走ればすぐにでも頂点に辿り着くと信じきっていたその才能は淡い幻にすぎなかったのだろうかといった具合に。

 昨季の11位は4人の好ドライバーを擁するチームのなかでたしかに最低の成績だったが、けっして箸にも棒にもかからない一年と貶められるほどでもなかっただろう。パジェノーはしばしば、ウィル・パワーには及ばなくとも十分に速く、ファン=パブロ・モントーヤほどではなかったが優勝に近づいた。ラップリード132周も、チャンピオンと同点の選手権2位だったモントーヤの145周に比べて大きく劣るものではない。それはモントーヤの走りが成績に見合わず不甲斐なかった事実を意味してもいるが、にもかかわらず2勝を記録できたのだったら、パジェノーにだってそれなりに機会はあったはずだった。むしろ、2013年のデトロイトがそうだったように、レース全体を支配せずとも時宜に適ったスパートで狙い澄ましたように上位を奪い取るのは得意とするところだったのに、昨季の彼はスピードを正しく使えずに苦しんでいたのだ。インディ500、テキサス600、ポコノ500……序盤から中盤にかけて目を瞠る速さを見せつけ、圧倒しうるラップリーダーとしてレースを席巻しかけた場面は間違いなくあったが、どれも一度として結果へと結びつかず、一瞬ののちには儚く消えていくばかりだった。それはペンスキー全体に蔓延した症状ではあったものの、パジェノーの場合はことさら酷かったように見える。彼のラップリードはすべてが仇花に終わり、そのうえつまらないミスもあった。少なくとも雨のルイジアナでリスクを冒しすぎて喫したリタイアは不要だっただろう。トップチームで通用しなかったわけではまったくなかったが、結局、下位チームで選手権3位に躍進した2013年や最終戦までチャンピオン争いに残った2014年に及びもつかなかったのは、そういう失意を繰り返した結果だったのである。

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