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ファン=パブロ・モントーヤの憂鬱は運動と制度のあわいに広がる:2015インディカー・シリーズ最終戦 ソノマGP

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 2015年のインディカー・シリーズにおける選手権制度の詳細が発表されたとき、それは明らかに歓迎されざる俗なやり方に思えた。いや、本来「俗」な観客にすぎないはずのわれわれがみな一様に首を傾げるような方策だったのだから、俗情と結託したとすらいえず、だれのためになるのかさえ不明な、冴えない発想だったにちがいない。実際、近年このうえなく迷走を続けるF1が採用し、そしてあまりに不評なため1回かぎりで廃止したような「最終戦の選手権得点2倍」という愚策に、まさかインディカーが1年遅れで追随しようなどとは思いもしなかったのだった。

 インディアナポリス500マイルレースの点数が2倍に設定されていることに異論のある向きは少ないだろう。2016年には100回目を迎えるこのレースが特別であるのは、車両やシリーズが「インディ」カーと呼ばれていることからももはや証明が不要なくらい自明な事実であって、その象徴的な特別感を多大な得点の形で表すのは非常に得心のいく帰結に見える。昨季は加えてポコノ、フォンタナの両レースにも同様のボーナスが設定されていたが、これとて「500マイルレース」という他とは差別化された事実が規則の根拠を下支えしていた。つまり特別でありうるレースという認識が制度に先行して存在し、そこに実際上の利益を付与するといった合理的順序があったのだ。同じ年のF1が、「最終戦」という日程以外に何の意味もない1レースを興行的な事情から恣意的に特別視したのとはまったく違い、インディカーはレースがもともと持っている価値――スーパースピードウェイで、500マイルの長距離を戦うレース――を尊重したうえで選手権の中で重みをつけたのである(昨季はこの3レース合わせて「トリプル・クラウン」としてスポンサーがついていたからではないか、といった経済的な事情はひとまず措いておこう。特別な共通点があるから金銭的価値が生じるという意味で同種の話である)。その動機主義的な運営の態度は、F1よりも優れたものとして好ましく受け入れることができたはずだった。

 だが、半ばわかっていたこととはいえ、迷走しているのは観客動員、テレビ視聴率の双方で苦戦を続けるインディカーも変わりはないようだ。2012年から秋の最終戦として涼やかな夜の闇の中で行われていたフォンタナのレースはインディカーとオート・クラブ・スピードウェイの思惑が対立した結果として6月の日中レースへと生まれ変わり、夏の砂漠地帯に人が来るはずがないという当初の予測どおりにわずか数千人の観客しか呼べずに終わった(挙げ句、来季の話し合いも物別れに終わって2016年のカレンダーからの除外も決定している)。観客がまばらどころか皆無と言っていいほどの寂しいスタンドを覚えている人も多いだろう。インディカーがオート・クラブ・スピードウェイに昼のレースを求めたのは東海岸の視聴率を考えてのもので、実際に目論見が当たって前年比2倍の高率を獲得したというが、視聴者の目にしたものがひたすら連なる空席だったのでは功罪も定かではない。

 フォンタナの顛末はともかく、その移動に伴っておなじカリフォルニアで開催されるソノマが最終戦に設定されたわけだが、ポコノとフォンタナのボーナスが廃止され、代わってこのレースの得点が2倍になるとニュースで見たときには目を疑ったものだ。それは明らかに最終戦まで王者争いを保留する可能性を高め、興行的興味を維持するためだけの恣意的な設定であり、ファン離れを指摘されて久しいF1が陥った根拠と正義なき帰結主義的判断そのものだった。FIAが大多数の反発にあって即座に廃止した方式であるのを知らぬわけでもあるまいに、なぜその失敗を追い求めるような真似をしたのだろう。ファンは現金なようでいて意外と結果に対する正当性や一貫性に敏感なものである。ポコノとフォンタナにあった先天的で正当な理由を捨て去り、たとえばアラバマとどう位置づけが違うのか説明のつけられそうにないソノマを特別扱いすることを納得できた者が一体どれほどいただろう。2015年の得点方式が発表された瞬間に、インディカーの選手権に先行していた「正しさ」は瓦解していた。そういうシーズンでもあったのである。

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