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グレアム・レイホールはたった一度のブレーキングで醜聞を忘れさせる:2015インディカー・シリーズ第14戦 ミッドオハイオ・インディ200

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 それが故意だったのかたんなる時宜にかなった偶然だったのかはすでに藪の中である。レース後の水曜日に出されたレポートにはいかなる処罰も記載されておらず、あらたな疑惑になりえた事件はレースにおいてありうべき出来事にすぎなかったとして幕が引かれた。公的な結論としてはそれ以上でも以下でもない。たしかにミッドオハイオの66周目に起きたセージ・カラムのスピンはあまりに「できすぎ」ていたように見える。ターン4の出口で彼が車の制御を失ったのは、選手権を争うチームメイトのスコット・ディクソンが最後の給油とタイヤ交換を完了したたった3周後のことであり、おなじころ、ポイントリーダーであり最近にしては珍しくレースの先頭を走っていたファン=・パブロ・モントーヤはまだ1回のピットストップを残していたのである。カラムが車を止めてしまったことによって導入されたフルコース・コーションは両者の差を無にし、そのうえ隊列が整ってからようやくピットに向かったモントーヤは12番手まで順位を下げて、最終的に11位でチェッカー・フラッグを受けた。「幸運」のおかげで4位に入ったディクソンのみならず、グレアム・レイホールまでもが漁夫の利を得て優勝した結果、レース前には40点以上の差があったはずの選手権争いは2戦を残してにわかに混沌としてきている。レイホールとモントーヤの9点差は、最終戦の得点が2倍に設定されていることを思えば、ほとんどないに等しい。

 もちろん「被害」に遭ったチーム・ペンスキーはレース直後からそこに悪意があったと疑いの目を向けている。チップ・ガナッシは新人のレースを犠牲にすることによってフルコース・コーションを喚起し、エースを助けようとしたのではないかと。それほど素晴らしいタイミングで、カラムは見事にターン5の路上に車を止めてみせた。ご丁寧に、すぐ復帰できないよう進行方向と逆に車を向けて。モントーヤは確実に順位を落とし、引き換えにディクソンが上位を窺うチャンスを得る、チップ・ガナッシはその「作戦」を完璧に成功させたのだ――かろうじて首位を守ったポイントリーダーはレース後のインタビューで、16年前に自分がデビューしてチャンピオンとなったチームを詰り、「調査が必要だ」と不機嫌を隠そうともしない。なにか指示があったのだろう、と言いたげだ。実際のカラムはブレーキバイアスを調整するよう指示されたところでターン4の外に片輪を落としてスピンを喫したのだったが、それともこれは暗号だったと主張すべきだろうか?

 レースを見ていればこんな「偶然」が起こる場合もある。2006年のソノマで、初優勝に向けて最後のスティントを戦っていた新人のマルコ・アンドレッティはゴールまで燃料が足りるかどうか心もとない状況にあった。最後の周回で止まるかもしれないと思われていた中、残り7周で「幸運」にもおなじアンドレッティ・グリーン・レーシングのブライアン・ハータがスピンして動けなくなったのだった。2周にわたるフルコース・コーションによって燃料は節約され、マルコはフランキッティの追い上げを振り切っている。今は亡きダン・ウェルドンはそのスピンを「間違いなく意図的だった」と言ったわけだが、もちろん結果が覆されることはく、マルコは2011年に至るまで勝利のない七光りドライバーと評され続けたかもしれない未来を避けられたのである。

 もちろんF1を見続けている人ならば、2008年のシンガポールGPで起きたいわゆるクラッシュゲートを思い出すことだろう。フリー走行で好調だったにもかかわらず予選でのトラブルで15番手スタートに沈んだフェルナンド・アロンソを救うため、ルノーチームは誰よりも早くタイヤ交換を行ったうえで、直後第2ドライバーとして扱っていたネルソン・ピケJr.に命じてターン19の壁にぶつけさせ、セーフティカーを呼び込んだ。そうして隊列が整った後にピットへと向かった他車を尻目にアロンソは労せずして順位を上げ、そのまま優勝を果たしたのだ。当初「幸運」と見られていたこの事故の真相が明らかになったのは1年後のことで、ルノーを解雇されたピケJr.の告発によって故意であったことが証明され、フラビオ・ブリアトーレとパット・シモンズに追放の処分が科せられる「ゲート」へと発展した。疑惑が証明された数少ない事例といえる。

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