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4.5%のリーダーが選手権をリードしているならば:2015インディカー・シリーズ第13戦 アイオワ・コーン300

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 シーズンの残りを片手で数えられるような時期になると、レース単体の結果だけでなく選手権の行く末も気にかかるようになってくる。もちろんわれわれが見たいのはレースという運動であって、その順位の集積によって作り上げられた虚構の制度にすぎない選手権の得点に一喜一憂する理由もないわけだが、当事者であるチームやドライバーが制度の頂点を目標として定めている以上、その趨勢は往々にしてレースの強度へと跳ね返ってくるのだから、レースを「見る」ことに徹しているものとしても無関心ではいられない。選手権はレースと直接関係を切り結ぶわけではないが、状況に応じてレースの相貌をがらりと変えてしまう。それは時にチームの思考を混乱させ、ドライバーの精神を保守的に留めて手足を硬直化させ、あるいは過度に攻撃になるよう刺激したりする。おなじコース、おなじ勢力図であっても、時期が変わるだけでレースそのものが変質する可能性があるという感覚は、おそらくモータースポーツにかかわるあらゆる人間が共通して持っているはずである。

 その意味において、ファン=パブロ・モントーヤがアイオワ・スピードウェイのうねったターン2に魅入られてセイファー・ウォールに吸い込まれていった10周目の瞬間は、選手権に変動を促して2015年のインディカー最後の1ヵ月に情動を呼び起こす一事となるはずだった。インディアナポリス500で優勝してからというもの焦点のぼやけたレースを繰り返し、制圧できたはずのシーズンを主導しそこねたチーム・ペンスキーにあって、状況的にエースとして待遇されるべき存在になったモントーヤは、にもかかわらず、「なんとなく」としか表しようのないまま50点前後の得点差を維持して首位に居座り続けてきた。IndyCar.comのドライバー紹介ページはその時点での選手権順位で並べられているが、6月も半ばを過ぎてくると、それを見るたびに首を傾げざるをえなくなったくらいだ。レースをつぶさに見ていればいるほど、モントーヤが首位に立っている、それもつねに1レース優勝分に相当する大差をつけている理由がよくわからなくなる。40歳になる年を迎え、新人だった1999年以来16年ぶりの王者に数字上はまぎれもなく近づきつつあるこのコロンビア人は、いったいいかなる魔法を使ってこの位置を占拠しているのだろう。

 たしかにインディ500は優勝した。わたしはインディアナポリス・モーター・スピードウェイの観客席でそれをはっきり見た。しかしブリックヤードの200周目、モントーヤが33人の出場者の中で最初にチェッカー・フラッグを受けた周回は、彼のインディ500におけるほんの9周目の先導にすぎなかったのも事実である。序盤に追突を受けて車を壊され、リードラップ最後尾に落ちてからの追い上げは優勝に値するに十分だったとはいえ、4.5%のリーダーは、インディ500の完全な覇者であると言い切れるものでもなかった。最後に笑うものがもっともよく笑う、モントーヤの実践はそういう類のものだったと考えてもよい。少なくともフルコース・コーションの時期が彼を何度か救ったのは確かである。オーバルレースがそういう性質を持ち合わせているのだと理解していても、彼は約束された勝者ではなかった。それでもブリックヤードで獲得した、他のレースの2倍に設定された過大とも言える101点が、正当か不当かにかかわりなくいまに至るまで彼の立場に大きく寄与しているのはまちがいない。

 しかし結局、その後のモントーヤを見るにインディ500に多少の幸運があったことを受け入れなければならないようである。不運に泣いた強者と評せそうなのは雨に翻弄されて35周の最多ラップリードを獲得しながら10位に沈んでしまったデトロイトのレース2だけで、しかもこれを含めてなお、5月最後の週末以降にモントーヤが記録したラップリードはわずか56周でしかない。周回を重ねる途中でとりあえずの参加証明のように先頭に立つにすぎず、それどころか一度も先導せずに終わったことも7戦中4度を数える。もちろん優勝など望むべくもない。数字を見ているだけでは選手権の首位に立っているなどとはとても信じられず、特別なことをなす予感を抱かせるドライバーではまったくなくなってしまった。

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記事カテゴリ:
インディカー
タグ:
ファン=パブロ・モントーヤ
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