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速さを弄ぶペンスキーが、レースの順位を語れなくしている:2015 インディカー・シリーズ第10戦 インディ・トロント

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 わたしはジョセフ・ニューガーデンを好んでいることを公言しており、その走りについておそらくもっとも日本語を費やしてきた人間だろうと自負もしている――なにせ、google検索してWikipediaの次に表示されるのは昨年書いたこのブログ記事で、1万字近い文章であるうえ、その他にもひとつふたつおなじくらいの文字数を書いた記事がある――が、そんな偏りのある目で見ていても、たった一度の偶然にすぎない好機によって気付いたら先頭を走ることになった24歳が、そのままチェッカー・フラッグまで逃げ切ってしまったレースについてどう受け止めていいのかいまだ戸惑いの中にいる。贔屓のドライバーが勝ったのだから喜ばしいかといえばさほど単純なものではなく、つまり今年のアラバマでの初勝利がニューガーデンの恐れを知らない情熱的な本質に支えられた彼だけのためのレースだったのに対して、このトロントは幸運に過ぎて、終わってみればおよそだれが勝っても構いはしないものだったのである。それがたまたまわたしの好むドライバーの名札をつけていただけだ。アラバマが「優勝」で、トロントは「1位」だったと言ってもいい。どんなレースにも1位はいるとはしばしば書いてきたことだが、現象がおなじであることに疑いの余地はなくとも、その精神には大きな隔たりが横たわる。

 とはいえその責任がニューガーデン自身に帰せられるべきでは、もちろんない。結局のところ、インディアナポリス500以降に起きているシリーズの一貫性の欠如は、最速チームであるチーム・ペンスキーに端を発している。今季もう何度書いたかわからないことだが、予選から決勝の序盤にかけては明らかにペンスキーのためにあったはずのレースが、ありうべきフルコース・コーションのために必要以上に捩れて、なぜかその様相を大きく変貌させていってしまうのを目撃する、そういう日曜日をわれわれはまたしても過ごしている。そんな現象はインディカー・シリーズでは当たり前にあるだろうと皮肉っぽく賢しらに言ってみることは簡単だが、しかしさいころの出目に過ぎないというだけでは、スタートから30周にわたって1周たりとも揺らぐことのなかったウィル・パワーとシモン・パジェノーの1-2態勢が、1回のフルコース・コーションで無残にも崩れ去っていく展開についての理解は得られそうもないようだ。31周目以降、チーム・ペンスキーの彼らは車が変わったかのように――実際、速く走れる条件でなくなったという意味では変わったといえるのかもしれないが――勢いを失い、週末にサーキット入りしたころには歯牙にもかけなかったはずのカーペンター・フィッシャー・ハートマン・レーシングの影を踏むことすら能わなくなった。不測の事態で一時的に隊列が乱されたとしても、もとあった速さをもってすればふたたび優勝争いのさなかに戻ってくるだろうと想像するのはまるで滑稽ではないはずなのに、そんなふうに考えた自分が愚か極まりないと思わせるほど、ペンスキーはニューガーデンとルカ・フィリッピの2人に手も足も出なかったのだ。4位までは戻ってきたパワーはまだしも、パジェノーの最終順位は11位にすぎない。彼が、チームの中でひとりだけ苦悩せざるをえない立場に置かれてもまだ速さを誇示していた最初の30周は何だったのだろう。いったいわたしが才能を信じてやまないこのフランス人は、1時間もしないうちに車の中で凡庸なだれか――そうだな、ちょうどリタイヤしていた同国人のトリスタン・ボーティエあたりだ――と入れ替わってしまったとでもいうのだろうか。

 トロントでニューガーデンが首位に立った理由は、30周目のフルコース・コーションの直前、29周目という幸運極まりないタイミングでタイヤ交換と給油を済ませていたからで、それ以上の理由はないと言っていい。レースが乱れる前、彼はせいぜい10番手前後を走るドライバーにすぎなかったが、隊列が整ってから一斉にピットへと向かった車を尻目にコースに居残り、ただ運転しているだけでラップリーダーへと躍り出た。42周目のことである。もちろんそれはインディカーの風景の一幕ではあり、珍しくもない出来事だ。だがいったん攪拌されたレースが落ち着きを取り戻したあと、僥倖によるかりそめの首位としか思えなかったニューガーデンは、あたかもそこが最初から約束された当然いるべき席であったかのように堂々とした振る舞いで後続を従えつづけている。市街地コースで抜くのが容易でなかったというような話ではない。2位に上がってきたのはコーションに恵まれることのなかったチームメイトのフィリッピであり、その後ろ、ようやく3番手で、苦戦から脱するためにピットインのタイミングを遅らせたエリオ・カストロネベスが、首に縄を付けられた従順な犬のようにおとなしく着いてきていた。30周目までの圧倒とは裏腹に、レースはすでにペンスキーのものではなくなっている。そして、それですべて終わった。チェッカー・フラッグまで隊列が覆されることはなく、ペンスキーが自力によってラップリードを回復する場面は一度も訪れなかった。

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