≪韓非資≫コラム

高知FDのトライアウト韓国開催雑感

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 韓国では初の独立球団となるコヤンワンダースの解散後(コヤンワンダースに関しては過去記事参照)、ヨンチョンミラクルという別の独立球団が発足し、2015年のシーズンから活動をしている。「独立リーグ」をなしているのではなく単体の「独立球団」であるため、所属選手はプロの3軍や大学野球部などと練習試合をこなしながらKBOリーグ入りを狙い練習に汗を流している。  これとは別に「‘ジャーニーマン’チェ・イクソンの野球士官学校」を運営するチェ・イクソンも独立球団「ジャーニーマン外人球団」の創設準備をしており、今年に入りこれまで3度のトライアウトを実施してきた。11月か12月頭までに最終トライアウトを実施して正式に発足すると見られる。野球士官学校は韓国プロ野球選手協会と提携を結んだ点においても注目される。  日本と比較してしまえば微々たるものかもしれないが、コヤンワンダース解散の衝撃にも関わらず徐々に変化が起こっているようにも見える。韓国球界がそのような背景を持つ中、日本の四国アイランドリーグplusの高知ファイティングドッグスが10月26日、27日の両日、韓国のソンナムでトライアウトを実施した。  韓国国内での独立球団発足の盛り上がり、そして将来的には独立リーグ形成も期待される中で、海外から高知ファイティングドッグスが韓国で選手を募ることはこのような雰囲気に水を差すことになるのではないのか、そのように解釈することもひょっとすればできなくはないかもしれない。だが私はむしろ肯定的に評価されるべきではないかと考える。  ヨンチョンミラクルはこれまで、プロ経験のある3人の選手をKBOリーグに復帰させることに成功し、また途中退団したイ・ケビンは2015年8月に開催された新人ドラフトで高順位での指名を得た。所属選手をKBOリーグに送り込むことが目標であるとするのであれば、それは一応達成されたこととなる。ただし2年間でKBO球団4人入団という実績をどのように見るのかは難しい問題である。  解散後も含めると、コヤンワンダースはプロ経験者を含め30人以上の選手をKBOリーグに送り込むことに成功した。コヤンワンダースがこれだけの実績を上げたのには、球団オーナーの情熱と手厚い援助に加え、時期的な要因も大きく作用した。コヤンワンダースがフューチャーズリーグで交流戦を開始した2012年は、折しも9球団目のNCが創団され1軍参入の前段階としてフューチャーズリーグに参加した年であった。球団が解散したのは10球団目のktが1軍参入する前年の2014年9月であり、まさにKBOリーグ拡張期におけるリーグの底辺拡大に貢献したといえる。  一方現状を見ると、独立球団所属選手にとっては厳しい時代となってきている。NCのKBOリーグ参入と前後して各球団は申告選手(現在の育成選手)を増やすことで将来的に選手層が薄くなる危機に備えたと見られる。ほとんどの球団が新人ドラフトで最大の10巡目まで指名権を行使した。このようなことが可能なのは、韓国の新人ドラフトでは指名選手を正式選手(日本の支配下登録選手に相当)にする必要がなく実質的に申告選手と同様に扱うことができるためである(※追記参照/韓国の育成選手制度に関しては過去記事も参照のこと)。それに加えドラフト指名外でも申告選手が多く獲得された。  選手団の拡大時期は球団によって若干の違いがあるが、それでも気がつくと2014年には10球団合計で250人近い申告選手(開幕時点の人数)を抱えることとなった。育成軍などと称される実質的な3軍を持つ球団が多いが、それでも選手がダブついている感は否めない。2014年まで右肩上がりに増加していた申告選手の総数は2014年以降の3年間は250人前後で落ち着いており、今年は若干ながらも育成選手(申告選手は2015年以降育成選手と名称を改めた)が減少に転じた(記事末尾に育成選手の人数の推移を整理した表を掲載)。昨年オフはSKとLGがドラフト指名外での新規育成選手獲得を見送っており、選手飽和状態に陥ってきている球団も見受けられる。そのような状態で独立球団の選手が新たにKBO球団に入団し既存の選手を押しのけていくのは以前よりも困難といえる。(無論、KBOリーグを経ずに海外球界を目指した後に帰国した選手が独立球団に所属した場合には十分にKBOリーグ入団選手を輩出し得るが)。  一方で各球団が新人ドラフトで11人フルに指名(1次指名1人+2次指名10人)し、ドラフト指名外の育成選手まで獲得する球団があるということは、育成選手を含む選手団のオフでの入れ替えが大規模になりやすいことも意味する。育成選手に与えられるチャンスは所属期間、出場機会ともに少なくならざるを得ない。在野の選手のKBOリーグ入りやKBOリーグ復帰という目的の達成が難しくなる一方で、放出選手は多く発生しており、どんな形であっても選手生活を続けたいと考えている選手の受け皿の必要性は高まってきているのかもしれない。  そうであるならば韓国以外でプレーする道を探っていくというのも悪くないのではないだろうか。高知ファイティングドッグスに韓国人選手が入団したとして、球団側は彼らの到達点としてどこを想定しているのか、またトライアウトを受けた韓国人選手たちが目標とするのは何なのか。こればかりは外から知る術はない。だがもしもひとまずのゴールとしてKBOリーグだけでなくNPBも想定しているのであれば面白い試みとなるかもしれない。  韓国では独立球団に先立ちKBO球団の3軍組織が始まっていたが、日本ではまだ明確な形としての3軍制を導入している球団は多くない。これから3軍制を立ち上げる際には選手の需要が発生する可能性がある。もっとも彼らは仮に入団できたとしても外国人枠という高い壁が待ち受けるであろう。だが彼らにはドラフト指名を受けなくてもシーズン途中に入団することができるという日本人選手(NPB経験者除く)にはない強みも存在する。当然、どこを狙うにしても入団自体が困難であることに違いはないが、3軍まで含め飽和状態のKBOリーグだけでなく他の可能性も見据えて行動するというのは悪くない考えと見られる。  もちろん海外でのプレーを選択するということは同時にリスクも抱えなければならない。言葉や文化の問題、そして金銭面の心配(特に練習生となった場合)が発生することは考えられる。ただし韓国国内でも現状では金銭面の問題が大きく(ヨンチョンミラクルの場合は無給というだけでなく選手が会費まで納めなければならない)、韓国国内を選択したとしてもグラウンドの外の苦労は避けがたい。たとえ厳しい環境であったとしても競技生活を続け次のステップを目指すための選択肢が増えることは歓迎すべきことではないか。  以上は高知ファイティングドッグスの韓国トライアウトに関しての雑感であるが、韓国の独立球団に関しても思うところがある。  2年間に4人のKBO所属選手を輩出したことは、確かにコヤンワンダースには劣るが、ヨンチョンミラクル1球団での実績としては決して小さなものではない。しかし今後独立球団の数が増えたとして、あるいは仮に近い将来独立リーグが創設されたとして、KBO球団に入団できる選手が増えるのかは難しい問題といえる。KBO側で受け入れられる人数が増える訳ではないため、結局は数少ない限られた枠の奪い合いになる恐れがある。新たな独立球団(リーグ)創設の機運が高まる中で独立球団(リーグ)の存在意義をじっくりと考えるべき時期に差し掛かっているのかもしれない。  コヤンワンダースは大学卒業後に競技者として野球を続けられる環境が実質的になかった韓国にとって、再チャレンジの場を提供したその存在自体が画期的なものであったが、先述の通りKBOリーグの拡張時期と重なり多くのプロ入団選手を輩出したため、プロへの選手供給という役割が目立った感はある。もしその役割が強調されるのであれば、プロ入団選手をほとんど輩出できなくなった場合に独立球団(リーグ)の存在意義が問われてしまうことになる。大学卒業後や学校中退後の選手、韓国球界を経ずに海外球界に挑戦した選手、あるいは一度はプロの世界に進むも放出された選手が競技生活を続ける場としての意義がもう少し重要視されても良いように思う(なお独立リーグを形成しておらず試合が全て「練習試合」となっていることも、「競技生活を続ける場としての意義」が高まっていきにくい一因となっているのかもしれない。同じ独立球団でもコヤンワンダースの時には「交流戦」と称してKBO2軍球団との試合がリーグの日程に組み込まれていた)。  どのような選手でもひとつだけ自分で決定し得る固有の権限がある。それは競技生活を辞めるタイミングの決定権である。所属球団からの放出はあくまで相互契約の問題である。本人に意志と体力、経済的余力が残っているのであれば、場所にこだわりさえしなければ競技生活を続けることはできる。極端な例としては一度引退しながらも野球教室を主宰しながら国内の社会人野球でのプレーを経てSKに再入団したシン・ユノのケースがある。結果的に彼は2度引退することとなった。  最近ではKBO球団を退団後にオーストラリアで現役生活を続ける選手もいる(昨年はイム・ギョンワンとイ・ヘチョンがKBO球団退団後にオーストラリアのリーグに新たに参加した)。また昨シーズン終了後にサムソンを放出されたカン・ボンギュは舞台をヨーロッパに移し1年間プレーした後、最近競技生活に別れを告げることを宣言した。  逆を言えば競技生活に終止符を打つことができるのは本人しかいない。競技生活を続けることとそれを辞めることとは表裏一体の関係にある。独立球団(リーグ)は確かに競技生活を続け、次のステップに進むための場なのかもしれないが、多くの選手にとっては競技生活最後の場になる可能性があるということも考えなければいけない。果たして現在、あるいは近い将来の韓国の独立球団(リーグ)が競技生活最後の挑戦の場として選手たちに納得のいく環境となっているのだろうか。現時点で韓国においては選手の供給や競技の裾野拡大といった役割、あるいは現役生活引退後の指導者の雇用創生といった観点から独立球団(リーグ)が注目されているが、競技生活の締めくくり(プロ経験の有無にかかわらず)という観点からも考えられるべき問題なのかもしれない。  韓国では日本のような形での社会人野球はなく、あっても趣味の延長という感じである。となれば比較的長い期間の競技生活継続を視野に入れたプロとは別のカテゴリーがあっても良いのかもしれない。だが、選手に金銭的負担を強いている現在のヨンチョンミラクルのような状態ではそのような方向性を目指すことも難しいであろう。  10球団体制となり韓国球界は急速な拡大という局面を迎えたが、一方でアマチュアを含む球界の土壌はその急激な変化についてこれない部分もあった。選手の需要と供給のバランスの極端な転換現象もその表れのひとつといえよう。  裾野拡大という意味では確かに独立球団(リーグ)の果たす役割は注目されるべきであろう。しかし現在緩やかに進行している学生野球の拡大があってこそ、独立球団(リーグ)も次のステップに進むことができるのではないかと考えられる。しばらく時間はかかるかもしれないが、長期的な目線で見た場合に韓国において独立リーグが整えられた形で発展していくことを期待している。  韓国の独立球団(リーグ)発展にはしばらく時間を要しそうであり、また独立球団の存在を念頭に置いた場合には現実の選手需給関係のバランスがあまり望ましい状況とはいえないため、今の時期だからこそ高知ファイティングドッグスの韓国トライアウトは意味を持つのではないかと考える。

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