やきゅうのはなし

サブロー放出 千葉ロッテの思惑

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 まさに電撃トレードだった。「巨人、サブロー獲得」とスポーツ紙の見出しは踊るが、「ロッテ、サブロー放出」というのが実情であろう。ロッテはシーズン途中で、生え抜き17年目の主力選手を手放した。ケガで2軍調整中ではあったが、サブローは4番打者として昨季はチームを日本一に導き、選手会長も務めている。そんな選手が、明らかに格下の、しかも同じ外野手の工藤と交換されたのは、戦力補強という意味合いではなく、別の穏やかでない事情があるのは誰の目にも明らかだ。

 それでも表向きは、「チームに変化を与え、活性化させることが必要だった」(石川晃球団運営本部長)。どの世界も、人事については本当のことは明かされないものである。
 ただ、多くの関係者が口をそろえるのは、「苦しい球団経営によるリストラ策の一つ」だということだ。一昨年の清水直、昨年の西岡、小林宏と高年俸の生え抜きの主力が次々とチームを去っている。ロッテの外野陣は岡田、伊志嶺ら若手が活躍し、35歳のサブローは今オフの戦力外の対象になってもおかしくなかった。だが、オフでは遅かったのだろう。一刻も早く年俸1億3千万円のサブローを放出して、2千万円の格安選手プラス金銭と交換した。
 震災の影響もあり、球団の懐事情は厳しいものがあるのだろうが、もう一つの理由としてはサブローが「物言う選手会長」だったということ。練習環境の整備や裏方さんの待遇改善などをたびたび申し入れていた。選手会長としては、ごく当然の要望だと思うが、金にシビアになっている球団幹部にとっては、煙たい存在だったのかもしれない。いずれにしても、カネの問題だ。

 主力選手の突然の放出といえば、03年オフの小久保のダイエー(当時)から巨人への無償トレードが思い出される。球団経営を圧迫する高額年俸の物言うタイプの選手の放出という点で、同じケースだ。そしてダイエーは翌年、ソフトバンクに身売りした。

 ロッテが同じ道をたどるかどうかはわからない。球団にとっては身売りするような事態を招かないために人件費を圧縮する先行策なのだろう。ただ、そこにはファンの視点が欠けている。千葉に本拠を移してからのロッテファンにとって、「つなぐ4番」として日本一の立役者になったサブローは特別な存在ではないか。マリンスタジアムはもちろん、遠征先でも黒いユニフォームでスタンドを埋め、ホーム同様の大きな声援を選手たちに送り続ける熱いファンたちが、千葉ロッテ・マリーンズの一番の財産のはずだ。選手たちへの影響も心配だ。そのファンや選手たちを失望させるような球団運営を続ければ、目先の1億円より、大きな損失を生むことになる。

 一方の巨人は、またもや付け焼刃の補強を敢行した。5月に日本ハムから高橋信を獲得したのに続いて、他球団の元4番打者を手に入れたことになる。高橋信は1軍にはいるが、打率も1割を切っており、十分な戦力にはなっていない。チームは停滞が続き、清武・新GMとしては、何か手を打たなければとの焦りがあるのはわかる。外野はラミレスと長野が固定されているが、高橋由、亀井、谷、矢野、鈴木、さらに2軍には松本がいる。ここにサブローが入る。右翼のポジションを取るかもしれない。ただ、そうなると、他の選手のポジションがまた一つなくなる。清武GMは「刺激を与えたい」と言うが、彼らは高い能力があり、すでにレギュラー争いをしている。結果が思うように出ないのは、選手の気持ちの問題ではなく、首脳陣の使い方の問題が大きいだろう。

 ロッテに移籍することになった工藤にも気の毒な面がある。ロッテは工藤を獲得したのは表向き、俊足の守備のいい選手を欲しかったと言うが、実際には故障などで2軍の外野を守れる選手が足りないという理由での「補充」である。もちろん、工藤の頑張り次第で1軍のチャンスはあるが、「俊足好守の小技のきく左打者」は売出し中の岡田とタイプが重なる。ロッテが主力打者を放出してまで、シーズン中に獲得しなければいけない選手ではなかった。

 「両球団の思惑が一致し…」。プロ野球のトレード報道に出てくる決まり文句だ。だが、今回はロッテと巨人の「負の思惑」が一致したとしか思えない。



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かつてはプロ野球担当記者として、ヤクルト、中日、巨人、広島などを取材。斎藤佑樹ら黄金世代の大学日本代表や高校野球も。現在は現場から離れ、ファンの目で野球を楽しんでいる。
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