2008年03月29日
正直、世界戦のマッチメークとしては物足りないと感じた今回の日本人同士の一戦。スロースターターの王者の欠点を衝くかのように初回、2回と積極的にコンビネーションを集めポイントを連取。そして迎えた3回、狙っていたというロングからの右ストレートがものの見事にヒットし、坂田は思わずダウン。しかも、たんなるフラッシュダウンではなく、ダメージを十分感じさせるものでした。
しかし、ここからが激戦を数多く経験してきた王者坂田の真骨頂が発揮され出します。自ら距離を詰め、明らかにテンポを上げて挑戦者の山口にプレスをかけていきます。山口もLフライ級からの減量苦から解放されたのか、坂田のしつこい手数に押されっぱなしになるわけでもなく、上下に散らす連打で対抗します。その結果、中盤は非常に競ったラウンドが多かったものの、ラウンドが進むにつれ自力の差が出始めました。
坂田の相手を休ませずにショート連打を浴びせる戦法にさすがの挑戦者も苦しくなりバックステップを踏む場面が多くなり、ダウンを奪った右の一発を狙うようなシーンも目立ち始めます。接近戦での戦い方、ショートの当て方にも大きな差があり、坂田も時折被弾はするものの明らかにパンチの精度、数ともに挑戦者を上回りました。
初回から両者全力を出し切っての激しい打撃戦となりましたが、中差の判定で見事に世界王者としての自力の差を見せつけた坂田が、3度目の防衛に成功しました。今までの世界戦では、外国勢のパワーパンチに対し、あまり見栄えのよくないショートパンチのため、審判にうまくアピール出来ない面もありました。今回は、相手が小柄な選手だったということもありますが、ショート連打でも十分にアピールしながら、時折大きく鋭い右ストレートを狙い打っていたことで、今までよりも坂田の強さのアピール度が増したように思えました。
山口も敗れたとはいえ、素晴らしい出来でした。ただ、まだ王者とは少し力の差がありました。攻撃パターンの少なさ、接近戦での戦い方、そしてスタミナ。世界王者となるには、どこが足りなかったのか、今回の試合は非常に勉強になったことでしょう。まだ28歳、ボクシングとは経験が大きくものをいうスポーツ。このような敗戦を通して自分の弱点を知ることで、さらなるレベルアップを目指し精進していけるものだと思います。あのガッツ石松氏も、ロベルト・デュランに挑戦した試合で、負けはしたものの世界との差がどの程度なのかを実感したことで(デュランが一瞬石松のパンチで腰を落とした)、自信を深めていきました。
アマチュアボクシングの基礎がほとんど無い日本のボクサーだからこそ、プロになって世界を目指すには時間をかけて経験を積み、一歩一歩実力をつけていくしかありません。坂田にしろ、内藤にしろ、10年かけて今の実力を築いていったのです。一人でも多く、才能のあるボクサーを埋もれさせないためにも、長くボクシングという素晴らしい競技を続けられる環境作りが望まれます。ジム単位での育成だけではなく、才能のある選手には、協会が支援するような(オリンピックの強化選手指定のような)システムも考えられないのでしょうか?優秀な選手が時間をかけて経験を積んでいけば、もっともっと世界に通用する好選手が出てくると思っています。
多くの方に、この「ボクシング・ジャーナル」にアクセスしていただいています。有難うございます。もっとボクシングのことについて語りたいという方は、私のサイトであるWSCまで一度お越し下さい(http://worldsportsclub.org/)。掲示板、各最新ブログ記事の紹介、フリーマーケットなどを開催しています。
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国内ボクシング |
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2008年03月22日
本日、亀田興毅が8ヶ月ぶりにリングに上がり、フィリピンのレクソン・フローレスを相手にフルマークの3-0の判定で勝利を飾りました。8ヶ月というブランクの影響もあったでしょうし、何よりあの大毅事件によって亀田家を取り巻く環境が大きく変わり、純粋にボクシングに専念することが出来なかった時期もあり、今回は調整試合的な意味合いが強く感じられました。
第一ラウンドに運良くダウンを奪えたものの、ダメージを与えるようなクリーンヒットではなく、その後のラウンドでも興毅のパンチはかなり読まれていたため、フローレスは大差の判定負けはしましたがそれほどダメージを感じさせませんでした。フローレスという選手は、世界下位ランカーらしく老獪なボディーワークで相手のパンチを殺したり、また相手の動きを読みカウンターを常に狙う姿勢など、上手い面もありました。しかし、やはり予想通りと言うか、一階級下の選手ということもあってかパワー不足、迫力不足のため、久しぶりの実戦の興毅にとってはやりやすい(安全な)相手であったことは間違いないでしょう。
今日の興毅のスタイルは、以前のガチガチの亀式ガードよりも幾分リラックスしたもので、相手のミスブロー後のカウンター一発狙いだけでなく、やや自分からリズムを作るような動きが見られました。しかし、強引に倒すための亀ガード突進もなく、距離を十分にとっての戦い方でもなく、逆に中途半端なスタイルとなったためか、ほとんど見せ場らしい見せ場も作れずに淡々と試合が進んでしまったように感じました。ローレスにボクシングのレッスンを施されているかのような場面も見受けられました。
また以前にも書きましたが、パンチの切れ味が相変わらず悪いままです。押し込むようなパンチのためか、瞬間的なパンチが打てず、またフェイントや相手を攪乱するような体の動きも無いため、狙ったような左のロングなどはほとんど読まれていました。先週のパッキャオ対マルケス戦と比較するのは酷ですが、パンチの交換以外のフェイントの掛け合い、距離の争奪戦などといった勝負を決める重要な部分で、興毅のボクシングはまだまだ幼稚さを感じさせます。(以前、興毅は、パッキャオのボクシングをレベルが低いと、こき下ろしていましたが。)
今回は実戦感覚を取り戻すためだけの調整試合でしたから、無難な判定勝ちでも問題ありませんが、本人のいうように年内に世界王座を狙うのであれば、かなりのレベルアップをしなければかなり難しいでしょう。まだ若いとはいってもすでに形成されたスタイルを変えることは難しいのか、ここ2年ほとんど成長しているように見えないのは私だけでしょうか?
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亀田一家 |
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2008年03月16日
多くのボクシングファンが4年間待ち望んだ因縁の再戦、マルケス対パッキャオのWBCスーパーフェザー級タイトルマッチがたった今終わりました。両者とも現在のボクシング界を代表する選手とあって試合内容は本当に素晴らしかったです。
4年前に行われた初戦では、パッキャオが怒濤の先制攻撃でマルケスから3度ものダウンを奪うというセンセーショナルな出だしでしたが、その後のラウンドではマルケスが徐々に盛り返し、テクニックでパッキャオを上回りドローに持ち込みました。さて、あれから4年。マルケスは34歳、パッキャオも29歳になりお互いそれぞれ素晴らしいキャリアを積み上げてきました。どちらが4年前から進歩しているのか、それが今日の勝敗を左右するとも言われていました。
さて、その注目の試合ですが、両者ともベストコンディションでリングに上がったことが一目瞭然でした。お互いのパンチの交換だけでなく、間合いの取り方を見ているだけでも緊迫感が伝わってくるほどでした。第一ラウンドは、初戦の悪夢があるのかマルケスは、やや慎重に様子を見ながらの戦いでした。パッキャオの攻勢が目立ちました。第2ラウンドの終盤にマルケスのコンビネーションがクリーンヒット。そして迎えた第3ラウンド、ついにパッキャオの伝家の宝刀左が火を噴きました。マルケスが返しの左フックを放とうとしたところに、抜群のタイミングでパッキャオのショートの左フックがカウンター気味に顎を捉えました。マルケスは、背中からバッタリと倒れるほど完璧なパンチでした。起き上がってきたマルケスに、得意の連打攻撃を仕掛けロープにつまり防戦一方となったマルケスは、2度目のダウン寸前でしたが、そこで第3ラウンドが終わりました。
第4ラウンド、勢いに乗るパッキャオは、自信を取り戻したように攻撃のテンポを速めてマルケスを追いかけ、ラウンドを支配します。しかし、5ラウンドからは、また初戦と同じく不利な状況においても冷静に戦うマルケスの本領が発揮されてきます。特にパッキャオの左を相殺するかのようないきなりの右ストレートを有効に使いペースを奪い返すことに成功。特に第8ラウンドでは、偶然のバッティングでパッキャオの右目すぐ上からの出血がひどく、右目が見えなくなったこともありマルケスのビッグパンチが面白いようにヒットしました。しかし、続く第9ラウンドでは逆にパッキャオのノールック(相手を見ずに振りかぶるような)の大きな左フックがマルケスを捉え、マルケスの右目もカット。これをきっかけにまたもやパッキャオが攻勢に転じ、9,10ラウンドと連取しました。
最終の2ラウンドは、両者とも出血に悩まされながらも、勝利への執念は全く衰えることなく、倒して勝とうという気持ちを前面に出した一進一退の攻防が続きました。12ラウンドはマルケスの有効だがやや多かったものの、勝負は判定までもつれ込みました。
緊張の採点が発表されました。
一人目、115-113でマルケス
二人目、115-113でパッキャオ
そして三人目は、114-
113で
パッキャオ!の勝利を支持!
これでアジア人として初となる3階級制覇が達成されました。
1998年に勇利アルバチャコフよりタイトルを奪ったチャチャイ・ダッチボーイジムからWBCフライ級を奪取。体重苦のため一気に3階級上げ2001年にはIBFのスーパーバンタム級王座を南アの安定王者レーロホノロ・レドワバから。そして2003年には実質世界フェザー級王者だったあのマルコ・アントニオ・バレラをも粉砕し、一躍全世界のボクシング界のスターボクサーの仲間入りを果たしました。その後エリック・モラレスとの3戦、バレラとの再戦などビッグマッチに登場していましたが世界戦ではありませんでした。そして今日、2008年、意外にも5年ぶりの正真正銘の世界タイトルを獲得しました。
フライ級 48.97~50.80kg★1998年獲得
スーパー・フライ級 50.80~52.16kg
バンタム級 52.16~53.52kg
スーパー・バンタム級 53.52~55.34kg★2001年獲得
フェザー級 55.34~57.15kg
スーパー・フェザー級 57.15~58.97kg★2008年獲得
ライト級 58.97~61.23kg
階級をとばさなければ、6階級制覇をしていたかもしれません。フライ級上がりの選手が、10キロ近く体重を上げた今でもパワーを武器に戦っていることが、本当に信じられないです。そしてパッキャオは本日の興行の前座に登場したWBCライト級王者であるデビット・ディアズとの4階級目をかけた試合も予定されています。
欲しいものは全て手に入れたはずのパッキャオ。自分でも認めていますが、以前のようなハングリーさはない中で、これだけの試合を続けてこられたのは、フィリピン国民の期待を感じているからでしょう。パッキャオは、自分自身の名誉などすでに眼中になく、国民のために戦い続けているのです。普通の人間ならば、大きな期待をプレッシャーと感じ、満足な力すら発揮できずに終わってしまうところを、このパッキャオは国民の期待を大きな戦力に変えてしまう術を得ているかのようです。
最後に、今日の試合、私の採点では、115-113とパッキャオでしたが、正直どちらの勝ちでもおかしくはない、非常に競った試合でした。しかし。4年前、3度のダウンを奪いながらもドローに持ち込まれたパッキャオと今日のパッキャオは違います。得意の左ストレート一本槍だった4年前に比べ、ボクサーとしての総合力がアップしています。解説のスチュワード氏も言われていましたが、多くの人が言う右の使い方(右フックと右のジャブ)だけではなく、ディフェンス力が大きく向上しました。常に上体を左右前後に揺らしながらプレスをかけるため、以前ならばクリーンヒットされていた場面でも、今ではパンチを殺すことが出来ています。しかも、単調だった4年前に比べ、テンポの強弱を使い分けることも出来るようになりました。左ストレートの爆発力や驚異的なスタミナはやや影を潜めてきたパッキャオではありますが、やはりまだまだ成長過程なのでしょう。同じアジア人として、本当に誇りに思える選手です。
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海外ボクシング |
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2008年03月09日
結果は、三者三様のドローではありましたが、チャンピオン内藤にとっては実質勝利に等しい結果となりました。宿敵のポンサクレックとは、実に4度目の対戦。前回は、内藤が、17連続防衛記録を誇るポンサクレックから、奇跡の王座奪取劇を見せてくれました。しかし、この試合は、ポンサクレック側に油断があったとか、たまたま運良く内藤の戦法が功を奏したと見た方も多く、今回は王座奪回に燃える本来の強いポンサクレックで出てくるだろうと予想されました。
実際、ポンサクレック側も内藤の変則スタイルをよく研究し、内藤のどこから出るか分からない変則連打に対応出来ており、まともにパンチをもらうシーンは前回に比べて、かなり減りました。そのような十分な対策を練ったにも関わらず、内藤に今一歩及ばなかったのは、体の年齢ではないでしょうか?以前にも書きましたが、野木トレーナーと組む前までは、まともなトレーニングが出来ていない状況だったようで、年齢こそ33歳と高いですが、まだまだフィジカル面での伸び代が残っていたのでしょう。元陸上選手の野木トレーナーによる科学的なトレーニングが功を奏しているのが一目で分かるほど、今回の内藤は12ラウンドをフルに動き続けることが出来ました。少しでも足が止まると、ポンサクレックの恐ろしいコンビネーションが飛んでくるのですから、動き続けることが対ポンサクレックの有効策ではあるのですが、それを36分間一瞬の気の緩みも許されない状況で成し遂げることは、肉体的そして精神的な充実度が相当高かったのでしょう。33歳とはいえ、内藤の体はいまだに進化しています。30代後半まで王者として君臨することも不可能ではないと思います。次戦はどのような防衛戦になるのでしょうか?WBA王者の坂田との統一戦?それとも、亀田興毅との亀田家リベンジマッチでしょうか?まだまだ、内藤奇跡のロマンチックは止まりそうにありません。
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2008年03月02日
昨晩の新井田の戦いぶりは見事でした。前回のゲホン再戦といい、まさに脂がのりきった感のある最高の出来でした。上下に何発も自由に繰り出される左フック、特に勝負の決め手となった左のレバーブローなどは、タイミング、角度、そしてパワーと見事なぐらい完璧なパンチでした。解説のファイティング原田氏は、世界戦をやるような選手が、ボディーで倒れては恥ずかしい、というような発言をされていましたが、あのパンチで倒れない選手は、ほとんどいないのではないでしょうか?
今までの新井田と言えば、2-1のスプリットなど微妙な判定で何とか勝ち残ってきた印象が強く、その生まれ持った運動センスが十分に生かし切れていないような試合が世界戦では多く見られました。しかし、新井田本人が言っているように、最近になってようやく自分にあった調整方法、疲れを残さずに自分の能力をフルに発揮できるようになってきたそうです。それが、前回そして今回の素晴らしい出来につながったのでしょう。
ボクシングに限らず、試合で最高のパフォーマンスを披露するには、試合前のコンディショニング作りが鍵を握ります。精神面、肉体面から全てを最高の状態にチューニングして戦う必要があります。ボクシングの場合、過酷な減量のため、そのチューニングが非常に難しく、多くの優秀なボクサーが試合前に衰弱し、試合で十分な力を出し切れないケースがよくあります。体格的に有利に立とうと、絞りに絞って下のクラスで戦うことが多いのが我が国の伝統ですが、これが裏目に出ていることが多いと思うのは、私だけでしょうか?減量が厳しくても、上手く疲れが抜け超回復することが出来れば最高でしょう。しかし、これは長いキャリアを重ねて自分なりの調整方法を見つけていないと、やはり一か八かの賭けになってしまいます。新井田の場合、29歳になってようやく調整方法をマスターし、天性のセンスを本番で発揮できるようになったのかもしれません。
それにしても、階級制のあるスポーツでのコンディション作りは特に難しい。競走馬ではないけれど、自分が一番能力を発揮できる適正体重を早く知ることと、試合前の調整方法を見つけることが、勝利への最初のそして最も大きなステップと言えるのかもしれません。あのパッキャオも、フライ級時代の減量苦から解放されて(一気に3階級上のSバンタム級へ転身)、スピードとパワーが生まれました。きっと多くの日本人選手の中にも、試合のために減量をしない普段のほうが、体の調子が良いという人も多いのではないでしょうか?特に成長期にある若い選手は、自分の階級を一つに絞らずに、成長に合わせ階級を上げて試合をすることを忘れるべきではないと思います。以前にも書きましたが、日本の選手は、基本的に体の成長を無視し、一つの階級に長くとどまろうとする傾向が強くあると思います。長くボクシングを続けるためにも、無理な減量は禁物です。強くなるためには時間が必要。ボクシングを1年や2年で完成させるなんて普通は無理なのですから、長い目で見て、体の成長も考えて、体をこわすような減量などはせずに、育てて欲しいものです。
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